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太陽が昇らない国の物語(仮) 第四部  作者: 岸田龍庵
太陽が沈まない国
35/46

血に染まる太陽

【カナン大地 磔刑場】

        

ファロスに投げられる大小の石

目が血走り、狂気に駆られた群衆が力一杯石を投げている

ファロスの目の上に石が当たり、血が流れる




【丘陵地帯】

ジェス:「これでも何をするなっていうのか!?」

ミラン:「ファロスおじさん死んじゃう!」

ベルタ:「・・・・」




【カナン大地 磔刑場】

        

降り注ぐ石の雨を払いのけながら、ジェスやミラン、それにベルタが隠れているであろう丘陵を見るアレキサンダー


アレキサンダー:「(なぜだ?なぜ風をよこさない。なぜ風の力を使わない?)」

石の雨が次第に止む

アレキサンダー:「うん?」




【丘陵地帯】

        

群衆の中をざわつきが波のように伝わっていく

ジェス:「石が、止まったぞ」





群衆:「私たちは、自分たちの手で太陽を殺そうとしていないか・・・・?」

ざわつきが、地鳴りのように響き渡る

今までは傍観者だったが、自ら手を下していることで、その行為に恐れおののく群衆

アレキサンダー:「人間どもめ!何と弱く、なんと脆く、なんと不安定なのだ、お前達は!」

群衆:「太陽を解き放て!」

群衆:「そうだ、解放しろ!」

群衆:「太陽を解放しろ!」





【丘陵地帯】

        

ジェス、ミラン、ベルタの元にも届く『太陽を解き放て』の大合唱

ジェス:「どうなってんだ?これは」





【カナン大地 磔刑場】

       

舌打ちをして、ファロスを解放するアレキサンダー

刑場に弱々しく倒れるファロス

ファロス:「ヒューマ・・・」





【上空 白夜】

        

東の空から金色に輝く鳥の姿が現れ、沈まなくなった太陽に吸い込まれる





【カナン大地 磔刑場】


ファロス:「ヒューマ、戻ったか・・・」

全身を奮わせて立ち上がるファロス

ファロス:「どうした、怖くなったのか?」

恐怖に駆られて短剣を抜くアレキサンダー

ファロス:「弱いやつめ」

どこにそんな力が残っているのか、アレキサンダーに向かって猛然と体当たりするファロス




ファロスとアレキサンダーが交錯する

衝撃を与えるファロス

衝撃を受け止め、目を見開くアレキサンダー

ファロスの体に、アレキサンダーの短剣が埋め込まれている

短剣を握るアレキサンダーの手を刃の向きが自分の方に向くように押さえつけるように握っているファロス

ファロス:「自殺は、できないんだったな・・・」






【丘陵地帯】


ジェス:「なっ!」

ミラン:「おじさん!」

ベルタ:「ファロスさん!」





【カナン大地 磔刑場】

       

自らの左脇腹から刃を抜くファロス

おびただしい量の血が磔刑場と足元を赤く染めていく中で倒れないファロス

震える刃の先から落ちるファロスの血

恐怖で打ち震えるアレキサンダー






【丘陵地帯】


ジェス:「旦那・・・」

もう走り出しているミラン






【カナン大地】

        

突如として叩きつけるような雨が降り、風雨となって荒れ狂い、狂った天候が稲妻を呼び寄せて、落雷があちこちで火災を起こし始める

パニックに陥って右往左往する群衆






【丘陵地帯】

        

猛然と磔刑場に向かって走り出す風と火と水を『司る者』たち

ファロスの声:「落ち着け、落ち着けみんな」

ベルタ:「ファロスさん」

ミラン:「おじさん!」

ジェス:「これで落ち着いていられるか!」

ファロスの声:「ジェス、落ち着け。これはオレが選んだことだ。遅かれ早かれ、こうなったんだ」

ジェス:「だからって黙って指くわえて見てろってのか!」



ファロスの声:「ジェス、風がすさぶと、心もすさぶ」

ジェス:「・・・」

ファロスの声:「ベルタ、お前に涙は似合わないなあ」

ベルタ:「・・・・」

ファロスの声:「ミラン、ミラン、ここにいるみんなを暖めてくれ。ずぶ濡れのみんなを暖めるくらいの大きさでいい。火を、みんなが暖まることができる火を・・・」

ミラン:「おじさん」

ファロスの声:「みんな、心を枯らしてはダメだ。この大地のように豊かな心を持ってくれ。心を枯らすと、大地も枯れる。この地を以前のような砂だらけの土地にしてはならない。緑と水と風が溢れる、暖かな大地に・・・」






【カナン大地】

        

周囲から現れた星の騎士団

オリバー:「落ち着け!みんな落ち着くんだ!」

群衆の中を縫うような巧みな馬術で駆け抜け、落ち着くように諭す星の騎士団

いつも目にする騎士団の姿に安心したのか、やや落ち着きを取り戻す群衆

オリバー:「そこの!法衣の男!この地は人が管理をしない地である。しかしむやみに民衆の不安を煽り立て、よからぬ企てをすることは、許される行為ではない」

法衣の男:「お言葉を返すようだが、この状況は誰が作り出したのだ?そなたか私か?違う。太陽だ。あの沈まぬ太陽が民衆の混乱に陥れているのだ、違うか?」

オリバー:「・・・・」

法衣の男:「どうだ星の守護者よ。そなたたちは世界の秩序を守ってきた。混乱の原因である太陽を排除することが、乱れた秩序を回復することだとは思わないか?」







【丘陵地帯】

ファロスの声:「ジェス、ジェス、頼みがある」

ジェス:「旦那・・・」

ファロスの声:「オレの声を、みんなにオレの声を届けてくれ」

声:「聞いてくれ!みんな」







【カナン大地 磔刑場】


アレキサンダー:「なに?」






【丘陵地帯】


声:「聞いてくれ!みんな」

ベルタ:「この声は?」

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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