悲しみを知る者たち
前話に引き続き、月の使徒セレンと、星の騎士団の折衝です
【聖都スクード 星の騎士団本部 会議室(円卓の間)】
セレン:「何も今更過去のことをほじくり返しても誰も得はしません。ましてや神話のような話です。
しかし、人は清廉潔白な騎士団を大いに疑うでしょう。それが調停者としてどれだけ不利に働くかは自明の理です」
オリバー:「それはおっしゃる通りだ」
セレン:「誰も流血は好みません。太陽の子を救出すれば、ことは終わるのです。民衆を扇動している連中も、自然といなくなるでしょう。秩序が戻るのです。それがあなたたちの望みであり、役目でしょう」
オリバー:「分かった。調停に向かおう」
円卓の騎士:「オリバー!」
セレン:「さすが一等星の騎士。話が早い」
オリバー:「今回はあなたの提案を受け入れよう月の使徒よ。だが悲しみを受けたのは失われた流星の騎士だけではない」
セレン:「というと?」
オリバー:「我々も同じ悲しみを受け伝えているのだ。
正論だけでは秩序は保てない。
言語、人種、生活習慣、文化、さまざまな要素を持って世界は存在する。その違いを越えるには正論だけでは無理なのだ月の使徒よ」
セレン:「だからといって一部の犠牲だけで成り立つ世界など、どんな意味があるのでしょう」
オリバー:「そうだ。世界は悲しみにあふれている。それがわかるのは悲しみを知る者だけだ」
ガシャガシャと音を立てて出て行く十二人の騎士
【聖都スクード 聖廟 牢獄】
牢獄の中で、椅子にうなだれているフレイ
フレイ:「ミラン・・・」
ドアの音:「(ガチャリ)」
フレイ:「あなたは・・・」
セレン:「お久しぶりですね。何かとご縁がありますが、今回は大変な縁に巻き込まれているようで」
フレイ:「・・・・」
セレン:「この紋章に見覚えは?」
地下深い場所で拾ってきた五芒星の流星の盾を見せるセレン
フレイ:「その盾は?」
セレン:「見覚えがあるようですね」
フレイ:「いったい、その紋章はなんなのですか?星の騎士団と何か関係があるのですか?」
セレン:「あなたが持っている剣を見せてもらえますか」
柄に流星が刻まれた剣をセレンに渡すフレイ。
セレンは柄を吟味する
柄には「カノンからエルランドへ」という刻印がある
セレン:「この剣と盾はある騎士の持ち物です。その騎士は裏切りにあい、非業の死を遂げました。
その恨みは天地を分かつくらい強力です。
悲しみは理解を超えるくらい深いです」
フレイ:「恨みと悲しみ?」
セレン:「それを理解できる者こそ、真の星の守護者になるのでしょう。そのものこそが、剣と盾を持つのにふさわしいのです」
フレイ:「ふさわしい?」
セレン:「これをあなたに差し上げます」
流星の盾をフレイに手渡す
フレイ:「なぜ、この盾を私に?」
セレン:「悲しみを知る者こそ悲しみを理解できるのです。ではまたお会いしましょう」
退出するセレン
扉が閉まり、再び1人になるフレイ
フレイ:「悲しみ・・・」
【丘陵地帯】
大群衆を見下ろしてジリジリするような時間の中にいるジェス、ベルタ、そしてミラン
ジェス:「ベルタ」
ジェスの方に向き直るベルタ
ジェス:「お前、さっきこの状況を作り出したのはファロスの旦那自身だって言ったよな」
ベルタ:「・・・・」
ミラン:「どうしてそう思うの?」
ベルタ:「ファロスさんは、もう太陽の子、正確に言うと夕陽の子じゃないのよ」
ジェスとミラン「えっ?」
ベルタ:「だから太陽が沈まないのよ。ファロスさんには太陽を沈ませる力がないのよ」
ミラン:「力がないから捕まったの?」
ジェス:「話がつながってねえぞ」
ベルタ:「ファロスさんは身をさらすことで、世界がおかしくなっていることをみんなに知らせたの。一つの世界の終わりを、一つの太陽の終わりをね」
ジェス:「太陽の終わりって?」
ミラン:「おじさん死ぬ気なの?」
頷くベルタ
ジェス:「そんなのダメだ!絶対に助けるぞミラン!」
ミラン:「うん!」
ベルタ:「言ったでしょう。ファロスさんはそれを望んでいないって」
ミラン:「どうして?どうしてファロスさんは死ぬ気なの?」
頷くベルタ
ベルタ:「あの集団は太陽を消すことで新しい世界を創ろうとしている。
ファロスさんは彼らに殺されることで、『太陽殺し』という汚点を植え付けようとしているの、たとえ『神の国』とかいう世界が始まっても消えない汚点をね」
ジェス:「殺されて、太陽が殺されてどうなるんだよ?また真っ暗な世界になるっていうのか?」
ベルタ:「違うわ」
ミラン:「じゃあ、どうなるの?」
ベルタ:「太陽は生まれ変わるのよ。新しい太陽が昇るのよ」
ジェス:「新しい太陽・・・?」
ミラン:「それって?」
ベルタ:「そう、ヒューマよ」
読了ありがとうございました。
今後もごひいきによろしくお願いします。




