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太陽が昇らない国の物語(仮) 第四部  作者: 岸田龍庵
太陽が沈まない国
30/46

集まった人々は幸いである

宗教的要素が強い作品ですが、この件は、イエスの磔刑です。

【カナン大地】


威厳(いげん)を持って壇上に立つ預言者アレキサンダー。

両手を広げ全身で「目覚めよ」コールを受ける



アレキサンダー:「聞け!」

雷鳴のようなアレキサンダーの声に静まる群衆

アレキサンダー「ここに集った人は幸いである。なぜなら新しい世界の始まりを見ることができるからだ」

地鳴りのような応呼が群衆からわき起こる

アレキサンダー:「ここに集まった人は幸いである。なぜなら、まもなく到来する『神の国』を目の当たりにするからだ」




【丘陵地帯】


ジェス:「神の国だあ?そんなものが来ると思っているのか?」

ベルタ:「ここに集まった人は本気で思っているわ」

ジェス:「ベルタ?」

ミラン:「神の国・・・」





【カナン大地】

        

磔刑(たくけい)になっているファロスの足下に進む預言者アレキサンダー

アレキサンダー:「聞け!」

水を打ったように静まりかえる群衆

アレキサンダー:「この者は『太陽の子』であった。だが、この者はあなたたちに背を向けた背徳者である」




【丘陵地帯】


ジェス:「背徳者だと?勝手なこと抜かしやがって。野郎ども、突撃するぞ」

ベルタ:「待って兄さん」

ジェス:「なんで止める妹よ」

ベルタ:「何か意味があると思うの。この場所、この状況、この雰囲気。仕組んだ意図があるはず」

ジェス:「当たり前だ。あつらが仕組んだんだ。俺たち『司る者』を亡き者にするために」

ベルタ:「違うわ。仕組んだのはファロスさんよ」

ジェス:「なんだって?」





【カナン大地 大集会】

        

群衆を前にボルテージを上げようとするアレキサンダー

アレキサンダー:「聞け!神の国の住人よ!」

黙って聞いている群衆

アレキサンダー:「背徳者の素顔を。太陽の子の真の姿を知るがよい!」

原子の炎が入ったランタンを(かか)げるアレキサンダー




アレキサンダー:「この炎は、太陽から生まれた炎ではない。人間の手で生み出された原子の炎、聖なる炎だ。太陽に左右されることのない、人間のための炎だ」

磔刑になっているファロスに「原子の炎」が燃えるランタンを近づける。

アレキサンダー「もしこの者が清廉潔白(せいれんけっぱく)であれば、その身は火に焼かれて天へと旅立つであろう。

もしこの者が背徳者であるならば、(よこしま)な契約を結んでいる者ならば、火をも受け付けぬ体を持っているであろう」

ランタンを叩き付けるアレキサンダー

原子の炎が足元からファロスを焼き始める





【丘陵地帯】


ミラン:「大変!たいへん!大変!」

銃を抜くミラン

ミラン:「()()()()にするって、何考えているのよアレックス!」

ジェス:「ファロスの旦那は太陽の子だぜ?火あぶりくらい平気じゃねえのか?」

ミラン:「あれは、太陽から生まれた炎じゃないのよ。人間が生み出した、消えることがない炎なの」

ベストのポケットから銃弾を取り出すミラン

ミラン:「これでもない、これも違う」

ようやくお目当ての銃弾を手にするミラン

ミラン:「これこれ!」

弾頭にキスをして、一発だけ弾倉(だんそう)装填(そうてん)するミラン。

ファロスに銃口を向ける。




ベルタ:「何をするのミラン?」

ミラン:「火を消すの。火は燃えるときに酸素を使うから、この銃弾で酸素を吹き飛ばして・・・説明すると長い!

 ジェス、ファロスさんの近くまでの風を教えて」

ジェス:「風?」




ミラン:「ファロスさんの所まで銃弾を届けたいの。それには風速とか湿度とか解らないとちゃんと届けられないの」

ジェス:「わかった。ファロスの旦那まで見通せればいいんだな」

何を思ったかミランに目隠しをするジェス

ミラン:「ジェス!ふざけないで」

ジェス:「お前は見るな。オレがお前の目になってやる。だからって目で見るわけじゃねえ。感じるんだ。風を感じるんだ」

ミランの網膜(もうまく)に気流に乗ってファロスの所に届く、銃弾のイメージが飛び込んでくる。

ミラン:「見えた!」

引き金を引くミラン

落ちる撃鉄。

ジェス:「風になれ!」

銃口から飛び出す銃弾。

風の流れに逆らうことなく、風になって狂気の集団の上空を進む銃弾。





【カナン大地 磔刑場】

        

遥か彼方から飛んできた銃弾がファロスの足元に当たって、周辺の空気を吹き飛ばし、原子の炎を吹き飛ばす

アレキサンダー:「むっ?」

爆破の衝撃で木製の十字架が崩れて、ファロスを解放した





【丘陵地帯】


ファロスが助かったことを確認する『司る者』たち

ミランとジェス「やった!」




【カナン大地 磔刑場】


磔刑(たくけい)から解放されるファロス

ファロス:「ミラン、余計なことを・・・・ありがとよ」

読了ありがとうございました。


ミランが放った銃弾は、消化爆弾というものです。

爆発で一時的に火災周辺の空気(酸素)を吹き飛ばして、消火するというものです。

油田火災など大規模火災で利用されるものです。

もちろん、人がくらったらひとたまりもありません。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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