還る(かえる)時がきた
一旦、元の世界(かつて太陽が昇らなかった世界)に戻ります。
もう時間がないヒューマの父ファロス、
火の力をなくしたミラン、ペガサスであちこち飛び回るセレンのお話です。
【東の最果ての村 フレアの家】
靴紐をきっちりと結ぶファロスの指
ファロス:「よしっ」
向き合う太陽の夫婦
ファロス:「どうだフレア。オレは男前か?」
フレア:「もちろんよ。いつだってあなたは光り輝いていたわファロス」
ファロス:「ありがとう」
笑顔の太陽の夫婦
ファロス:「じゃあ行ってくるよ」
フレア:「行ってらっしゃい」
ドアを開けてまぶしい光りの中に消えていくファロス
送り出したフレアの頬を涙が静かに流れ落ちていく
【北の山脈 氷の女王居城】
氷の女王居城 遠景
【氷の女王居城】
居城を囲む、鏡のような湖面を横切るペガサスの影
【氷の女王居城 バルコニー】
破壊音:「ドカーン」
白煙を立てて半壊するバルコニー
【氷の女王居城 女王の間】
部屋中に粉のような氷が巻き上がり、視界が悪くなる
ユーベ:「どういうことだいこりゃ?」
巻き上がっている氷が収まり、大男と小柄な女性、巨大なウマのシルエットが浮かび上がる
セレンとミラン、ペガサスが立っている
ユーベ :「こらぁ!ここは玄関じゃないんだよ!」
セレン:「申し訳ありません、氷の女王」
ペガサス:「すまんな氷の女王。足がすべった」
ユーベ:「それでこの騒ぎかい?押し込み強盗だってもっと静かに仕事するもんだよ」
カウガールスタイルのミランを見るユーベ
ユーベ:「なんだい。趣味が変わったのかい?」
セレン:「趣味は変わっておりません。というより今日、お伺いしたのはそんな用事ではありません」
ミラン:「お姉さんが氷の女王なの?」
ユーベ:「そういうあんたは?」
セレン:「彼女はミランと言います。ミリアムの娘といえば、おわかりになりますでしょう?」
目を細めるユーベ
氷のソファに向かい合って座っているセレンと氷の女王ユーベ
ミランはすべてが氷でできているユーベの部屋を興味津々で見回って落ち着きがない
ユーベ:「なるほど、それで返して欲しいってことかい」
セレン:「もう5年も経つのですから、正式な持ち主に返すのがスジだと思います」
ユーベ:「ふん。確かに『欲しい』と言ったのは確かだけど、私は『盗め』とは言ってないよ」
ミラン:「盗っていったの、ヒューマたちでしょ?」
ユーベ:「そうさ、盗んできたのはあの子たちだよ」
セレン:「そんな押し問答をしている場合ではありません、氷の女王。
私たちが本当の意味で『司る者』になるために必要なのです。いえ『司る者』ではなく『声を聞く者』になるために。私たちだけではなく、私たち人間すべてが『声を聞く者』になるために」
睨むようにミランを見るユーベ
ユーベ:「どうして力を無くしたんだい、あんた?」
ミラン:「きっと、バツなんだと思う」
ユーベ:「バツ?」
ミラン:「うん。火の力を大きくしすぎたバツなんだと思う。これ以上、火の力を大きくしちゃいけないって。それまでは火の力を大きくすれば、みんな幸せになるって思っていたの。でもそうじゃなかった」
黙って聞いているユーベ
ミラン:「ちょっとの火だってみんなで分ければ暖まることができる。大きな火はみんな燃やしちゃうって、わかったの」
セレン:「彼女は大きすぎた火を消して、それで力を失いました。確かに大きすぎる火は危険です。ですが、私たち人間には火が必要なことも確かです」
ミラン:「返して欲しいなんて思ってないわ。ほんの少しだけでもいいの。お母さんからもらったイヤリングに触りたいだけ」
ユーベ:「仕方ないね。少しだけだよ。触らしてあげよう」
戸棚から小振りの、恐ろしく透明度が高い氷でできている、ほぼ透明の宝石箱を出して、ミランとセレンの前に置くユーベ。小箱の中に凍り付いた一組のイヤリングが見える
静かに箱を開けて、そろりとイヤリングを取り出すミラン。イヤリングは白く凍り付いたまま、ミランの手の中に収まる
ミラン:「暖かい・・・」
セレン:「え・・・?」
ミラン:「お母さんの手と一緒だ。とても暖かい。お母さん、体が弱くてだっこしてくれなかったけど、いつもミランをなでてくれたの」
ミランの目から涙があふれる
ミラン:「もっと早くに気がつけばよかった。お母さんの手くらいの火でこんなに暖かくなれるんだって。もう、間違ったりしない。もう火を大きくしたりしない」
読了ありがとうございました。
今後もごひいきによろしくお願いします。




