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太陽が昇らない国の物語(仮) 第四部  作者: 岸田龍庵
太陽が沈まない国
24/46

還る(かえる)時がきた

一旦、元の世界(かつて太陽が昇らなかった世界)に戻ります。


もう時間がないヒューマの父ファロス、

火の力をなくしたミラン、ペガサスであちこち飛び回るセレンのお話です。

【東の最果ての村 フレアの家】

        

靴紐(くつひも)をきっちりと結ぶファロスの指

ファロス:「よしっ」

向き合う太陽の夫婦

ファロス:「どうだフレア。オレは男前か?」

フレア:「もちろんよ。いつだってあなたは光り輝いていたわファロス」

ファロス:「ありがとう」

笑顔の太陽の夫婦

ファロス:「じゃあ行ってくるよ」

フレア:「行ってらっしゃい」

ドアを開けてまぶしい光りの中に消えていくファロス

送り出したフレアの頬を涙が静かに流れ落ちていく




【北の山脈 氷の女王居城】


氷の女王居城 遠景




【氷の女王居城】

        

居城を囲む、鏡のような湖面を横切るペガサスの影




【氷の女王居城 バルコニー】

破壊音:「ドカーン」

白煙を立てて半壊するバルコニー





【氷の女王居城 女王の間】

        

部屋中に粉のような氷が巻き上がり、視界が悪くなる

ユーベ:「どういうことだいこりゃ?」

巻き上がっている氷が収まり、大男と小柄な女性、巨大なウマのシルエットが浮かび上がる

セレンとミラン、ペガサスが立っている



ユーベ :「こらぁ!ここは玄関じゃないんだよ!」

セレン:「申し訳ありません、氷の女王」

ペガサス:「すまんな氷の女王。足がすべった」

ユーベ:「それでこの騒ぎかい?押し込み強盗だってもっと静かに仕事するもんだよ」

        


カウガールスタイルのミランを見るユーベ

ユーベ:「なんだい。趣味が変わったのかい?」

セレン:「趣味は変わっておりません。というより今日、お伺いしたのはそんな用事ではありません」

ミラン:「お姉さんが氷の女王なの?」

ユーベ:「そういうあんたは?」

セレン:「彼女はミランと言います。ミリアムの娘といえば、おわかりになりますでしょう?」

目を細めるユーベ



        

 氷のソファに向かい合って座っているセレンと氷の女王ユーベ

ミランはすべてが氷でできているユーベの部屋を興味津々(きょうみしんしん)で見回って落ち着きがない



ユーベ:「なるほど、それで返して欲しいってことかい」

セレン:「もう5年も経つのですから、正式な持ち主に返すのがスジだと思います」

ユーベ:「ふん。確かに『欲しい』と言ったのは確かだけど、私は『盗め』とは言ってないよ」

ミラン:「盗っていったの、ヒューマたちでしょ?」

ユーベ:「そうさ、盗んできたのはあの子たちだよ」

セレン:「そんな押し問答をしている場合ではありません、氷の女王。

 私たちが本当の意味で『司る者』になるために必要なのです。いえ『司る者』ではなく『声を聞く者』になるために。私たちだけではなく、私たち人間すべてが『声を聞く者』になるために」




睨むようにミランを見るユーベ

ユーベ:「どうして力を無くしたんだい、あんた?」

ミラン:「きっと、バツなんだと思う」

ユーベ:「バツ?」

ミラン:「うん。火の力を大きくしすぎたバツなんだと思う。これ以上、火の力を大きくしちゃいけないって。それまでは火の力を大きくすれば、みんな幸せになるって思っていたの。でもそうじゃなかった」

黙って聞いているユーベ

ミラン:「ちょっとの火だってみんなで分ければ暖まることができる。大きな火はみんな燃やしちゃうって、わかったの」

セレン:「彼女は大きすぎた火を消して、それで力を失いました。確かに大きすぎる火は危険です。ですが、私たち人間には火が必要なことも確かです」

ミラン:「返して欲しいなんて思ってないわ。ほんの少しだけでもいいの。お母さんからもらったイヤリングに触りたいだけ」

ユーベ:「仕方ないね。少しだけだよ。触らしてあげよう」



戸棚から小振りの、恐ろしく透明度が高い氷でできている、ほぼ透明の宝石箱を出して、ミランとセレンの前に置くユーベ。小箱の中に凍り付いた一組のイヤリングが見える

静かに箱を開けて、()()()とイヤリングを取り出すミラン。イヤリングは白く凍り付いたまま、ミランの手の中に収まる



ミラン:「暖かい・・・」

セレン:「え・・・?」

ミラン:「お母さんの手と一緒だ。とても暖かい。お母さん、体が弱くて()()()してくれなかったけど、いつもミランをなでてくれたの」

ミランの目から涙があふれる

ミラン:「もっと早くに気がつけばよかった。お母さんの手くらいの火でこんなに暖かくなれるんだって。もう、間違ったりしない。もう火を大きくしたりしない」

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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