熱く切なく
第二部、第三部にも出てきた「原初の闇」(初登場時は「すべての闇」)が、唐突に出てきます
【大地の大聖堂 育苗室】
水畑を循環している水音が静かに流れる
向かい合っているサーラとミラン
サーラ:「随分、危ないことしてきたんだね」
ミラン:「あいつらは間違いないわ。神の信者達よ」
サーラ:「私たちが邪魔だから、やっつけにきたってこと?」
頷くミラン
ミラン:「多分。私をつけてきたんだと思う。私がここまであいつらを案内したのと同じ」
サーラ:「だからってミランが出て行くことないじゃない」
ミラン:「だって私がここにいたら、サーラやアリア、司祭のおじさんたちにも迷惑がかかるし」
サーラ:「あなたが言う神の都って、もうないんじゃないの?」
ミラン:「うん、でも何で帝都の人間がいるのかが分からない」
首を横に振るミラン
ミラン:「私が、私たち、私とフレイと、リエルとメタリオン、がんばったんだよ、がんばってがんばって、やっつけたんだよ!
火の力を全部使って、やっつけたんだよ!お母さんも手伝ってくれて、火の力をいっぱいいっぱい使って!」
感情が高ぶるミラン
高ぶる感情が涙を抑えきれずに、頬を濡らしていく
ミラン:「私、私は、がんばったんだよ!火の力、なくなるくらいがんばったのに!それなのにどうして!」
静かにミランを見つめるサーラ
ミラン:「火の力、なくなっちゃった!もう村にも帰れないし、どこへいけばいいのかわからない!」
サーラ:「ミラン・・・」
顔を上げるミラン
サーラ:「ミランさえ良かったら、ここにいてもいいのよ」
ミラン:「でも・・・」
サーラ:「最初はぎくしゃくするかもしれないけど、すぐに仲良くなれるわよ」
ミラン:「だって、私は火の力をなくしちゃったんだよ」
サーラ:「火の力があってもなくても、ミランはミランじゃない。そうでしょ?」
気持ちが落ち着くミラン
サーラ:「私は火を自由に使えるミランが好きだけど、ヤケドしちゃうミランも同じくらいに好きなの」
ミラン:「・・・・」
サーラ:「ヒューマもジェスもベルタも、グレイスだってセレンだって、ファロスおじさんにフレアおばさんだって、そうよ。ミランのお母さんも私たちと同じよ」
ミラン:「お母さんも?」
サーラ:「もちろんよ。ミランは、ミランだから素敵なの。火の力があるとか、ないとかは関係ない。ミランだから私たちは好きなの。そんな好きな人がどっかいっちゃうなんて私は悲しくなる。ミランは好きな人がいなくなっちゃうと悲しいでしょ」
こっくりと頷くミラン
サーラ:「じゃあ明日も明後日も明明後日もここにいて」
ミラン:「ここにいてもいいの?」
サーラ:「当然よ。まだ刈り入れ残っているんだから!刈り入れ終わったって冬の支度とかやることは山ほどあるのよ」
ミランに笑顔が戻る
ミラン:「私がんばる。いっぱい刈り取りしていっぱいパンをつくるね!」
サーラ:「無理にがんばらなくてもいいの。ミランはミランのできることをすれば」
ミラン:「うん!」
実の姉のように優しく微笑むサーラ
サーラ:「それにしてもフレイはダメねえ。騎士だとか騎士じゃないとか、そんなことどうでもいいのに!まったく男の子ってやつは」
ミラン:「ヒューマもそうだったの?」
サーラ:「ヒューマはフレイなんかよりもっとテキトーよ」
ミラン:「ヒューマってテキトーなの?」
笑い合う大地の乙女と火の探求者
【夜 最果ての村へ向かう街道】
ヒューマ:「(くしゃみ)」
ヒューマ:「誰か噂してんな」
月が雲に隠れて夜の闇が濃くなる
ただならぬ気配に足を止めるヒューマ
街道の先に12の白い影が浮かび上がる
ヒューマ:「こんな時間になんの用だ?」
ヒューマの問いに、抜き身の短刀を構えて答える12人の白装束達
ソロリソロリと忍び足でヒューマを取り囲む
ヒューマ:「問答無用か?」
白装束①:「明日の朝はこない。太陽はここで死ぬ」
ヒューマ:「そいつはどうかな」
ヒューマの体が一瞬にして朝陽のごとく強烈な光りを放つ
目をつぶされて、やたらめったら短刀を振り回す12人の暗殺者
ヒューマ:「相手が悪かったな」
ヒューマに輪になってのされる12人の白装束達
ヒューマ:「明日も快晴だ!」
先を急ぐヒューマ
【夜明け 街道】
足を一時止めて、朝焼けに見入るヒューマ
光りの粉を散らしたような朝陽が大地を照らしてゆく
ヒューマ:「・・・・」
原初の闇:「夜明けとはいつでも美しいな」
突然現れるヒューマの顔になっている「原初の闇」
※原初の闇(第二部36部、第三部32部にも登場)
弾かれたように飛び下がり、同時に構えるヒューマ
ヒューマ:「テメーは!」
原初の闇:「まあ落ち着けよヒューマ。今はこの美しい世界の目覚めを見ようじゃないか」
ヒューマ:「・・・・」
読了ありがとうございました。
今後もごひいきによろしくお願いします。




