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太陽が昇らない国の物語(仮) 第四部  作者: 岸田龍庵
太陽の試練 大地の試練
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贅沢(ぜいたく)な悩み



【夕刻】

 

煙突から立ち上る煙

山の稜線(りょうせん)を赤々と染めて沈む太陽




【夜 山岳都市メンヒル 全景】 



【大地の大聖堂 育苗(いくびょう)室】


水畑に浮かぶ様々な(なえ)

葉の色やら裏返して葉脈(ようみゃく)の様子やらを丹念(たんねん)に見て回るサーラ

サーラについて回るミラン

ミラン:「これ、食べるの?」

サーラ:「これは来年のために育てているの。こうして苗を作って春になったらみんなに配るの。そうするとおいしい野菜になるの。それまでに大切に育てているの」

ミラン:「一個一個様子を見るの?」

サーラ:「そう。草木は私たちみたいに『痛い』とか『苦しい』とか言えないじゃない。だから、そうなる前に病気なんかも取り除いてあげないと」





【山岳都市メンヒル郊外 養蜂場(ようほうじょう)


蚊帳(かや)をすっぽり被ったオーバーオールに麦わら帽子のサーラとミラン、それにアリア

巣箱を開けるサーラ

おびただしい数のミツバチが飛びかう

びっしりと(みつ)が付いた養蜂板(ようほうばん)を取り出すサーラ



ミラン:「これ、なあに?」

サーラ:「蜂蜜(はちみつ)よ蜂蜜。今年も沢山取れたね」

ミラン:「ハチミツ?」

巣箱から蜜板を取り出していくサーラ達


分離(ぶんりがま)釜の中に固まりの蜂蜜を入れていく

固まりのかけらを少し取るサーラ

サーラ:「食べてみる?」

ちょっと引き気味のミラン

サーラ:「とっても甘いよ」

かけらを手に取り恐る恐る口に運ぶミラン

ゆっくりと噛んでいくミランの表情が満面の笑顔に変わっている

ミラン:「おいしい!」

サーラ:「でしょ?」



分離釜のハンドルを回すサーラ

釜の底のじょうごから液状になった艶々(つやつや)の蜂蜜が出てくる

()()()()に瓶の口をつけて蜂蜜を取るアリア

ミラン:「蜂って、甘いんだね」

サーラ:「蜂が甘いんじゃないの。これはほとんどが花が持っている蜜なの」

ミラン:「花って、あの花?」

サーラ:「そう、あの花の蜜。蜂は花から少しずつ蜜を集めてきて貯めるの。それがあの固まりの蜂蜜なの」

ミラン:「じゃあ花は取られっぱなしってこと?」

サーラ:「花は蜜を蜂にあげるかわりに、蜂に花粉を運んでもらっているの。花粉がないと花は実をつけられないから、次の種も作れないから、蜜蜂がいないと花のほうも困ってしまうってこと」



ミラン:「ふーん、うまくできているんだね。ねえ、さっきどの箱にもひとつだけ残してたよね。あれは?」

サーラ:「あれは蜂の食べる分。全部取ったら蜂がかわいそうでしょ。私たちは、敵に襲われにくい頑丈な巣箱を蜂に使ってもらって、安心して蜜を集めてもらって、それを分けてもらうの。全部とっちゃったら蜂だって怒るわよ」

ミラン:「全部取っちゃダメなんだ」

サーラ:「そう。私たちが思っている以上に自然はデリケートなの。だから根こそぎなんてやっていたら、すぐにダメになってしまうの」

ミラン:「サーラって先生みたいだね」

サーラ:「私にとっては自然が先生なんだけどね」

笑い合うサーラとミラン





【山岳都市メンヒル 大地の大聖堂 議事堂】

        

円卓を囲む村長達、大地の司祭、それにサーラ

頬杖(ほほづえ)を付いて村長達の苦言を聞いているサーラ

村長①:「このまま太陽が強いと、来年の水瓶が心配ですね」

村長②:「例年通りに雪が降るのかが心配です。雪解け水がないと土壌に栄養が流れ込みません」

解散する村長達

だだっ広い議事堂に残ったのはサーラと大地の司祭が数人



サーラ:「太陽が昇らなかったら昇らなかったで大変だし、出ていれば出ていたで問題だし、贅沢(ぜいたく)な悩みよね」

司祭:「そうおっしゃいますな。みんな太陽が昇らない時期を過ごしてきたから、こと太陽の動きには敏感なんですよ」

サーラ:「そりゃ、分かるけど」

円卓に突っ伏すサーラ



サーラ:「確かに、最近太陽が強すぎるのは事実よねえ。どうしちゃったんだろ」

大地の司祭:「お体に異変はないですか?」

サーラ:「私?私は全然元気よ。でも何で?」

大地の司祭:「いやなに、あまりに強すぎる太陽の熱は大地にも負担になりますからね」

サーラ:「うーん、私は全然平気だけど。私自身はむしろ以前より感覚が鋭くなってきたっていうのかな」

大地の司祭:「どうでしょう?明日は作業を休んで()に出て見るというのは」

サーラ:「見て回るってことですか?」

大地の司祭:「そうです。このところ収穫ばかりしていましたから、目を大地に向けてみるのも良いでしょう。それにサーラ様のお姿を見ればみんな安心しますしね」

サーラ:「そうね、ミランもつれていこ」



大地の司祭:「そのことなんですが乙女様」

サーラ:「その事って、ミランの事?」

大地の司祭:「皆が不安がっているのも事実です。いつ不審火が起きるのではないかと・・最近雨も降らずに乾燥していますので・・・」

サーラ:「そのことなんだけど、私はミランから炎の匂いじゃなくて、なんだろう。火の気配みたいなものを感じないのよ」

大地の司祭:「火の気配?」

サーラ:「熱っていうのかな?ちょっと説明しづらいのだけれど、以前のミランは火の勢いとか暖かさとかがあったの。それが今は全然感じないの。多分、ヒューマとかジェスも今のミランと一緒にいたら私と同じ事を言うと思うのだけれど。

だって、ミランが近くにいるのに火の勢いがあがらないっておかしいでしょ?火の勢いがない所から不審火なんて起きると思う?」

黙って聞いている大地の司祭



サーラ:「それにあの子、ヤケドしているのよ手のひらに。炎の探求者がヤケドっておかしいでしょ?きっと何があったのよ」

大地の司祭:「お聞きになさらないのですか?」

サーラ:「そのうちミランの方から話してくれると思う。今は話しをしたくない理由があるんでしょ」

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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