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なっちゃんのクリスマス  作者: 幻想売りの十夢
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菜穂美編

なっちゃんのクリスマス〜菜穂美編



洋介が部屋を出て行った

一人になった部屋で菜穂美はしばらく動かなかった


明日はクリスマス

…誰が『クリぼっち』なんて言葉を考えたんだろう?「イブは一緒にいれるから」なんて調子のいい事ばっかり言って…


二の腕あたりが痒い

今晩は冷え込みが厳しく空気が乾燥している


洋介が既婚者であることは初めから知っていた

デスクのパソコンを叩けば、住所・家族構成・月収まで全て知ることができる

見た目にもタイプであり、いかにも人の良さそうな人柄

洋介を次のターゲットに決めた

しばらく観察した後、加奈子が懐妊中を狙って洋介に近づいた

思惑通り、洋介は菜穂美と関係を持った


飼っているハムスターが起き出し、回し車をカラカラ回っている

「私も起きよう。なんかお腹も減ったし」

さっき洋介と食べたケーキがまだ残っている


昔からそうだった

既婚者や恋人がいる男にしか興味が持てなかった

略奪愛をすることでしか独占欲は満たされなかった

しかし、結局捨てられるのは菜穂美の方ばかり

…洋介も同じなのかな…

菜穂美に男運がないのか、見る目がないのか


だから人より多くの『修羅場』はくぐってきた

「狡猾で執拗なヘビみたいな女」

そんな罵声は何度聞いたことやら


太ももあたりも痒み出した

一度掻いたらまわりも痒くなるのは何故かしら?


洋介との関係は大丈夫と信じていた

「来年には加奈子と別れるから」

洋介の方からそんな事を言い出した

しかし、最近の態度は冷たく、関係の終焉に向かっている雰囲気がある

「嫁と別れるって言ったじゃない」

何度となく問い詰めた

今日だって、別れ際に洋介の見えない位置に口紅をつけてやった

加奈子に気付いてもらえるように

そうして洋介を逃げられないようにして、奪ってやるわ

…ふふっ、私ってまるで『ヘビ』ね

つい一人で笑ってしまった


それにしても体が痒い

お腹周りや背中あたりも痒みだした

「あっ、そろそろそんな季節ね」

食べかけのケーキを冷蔵庫にしまい、代わりにカエルを取り出し、丸呑みした

まだ少し満たされない

菜穂美はハムスターゲージからハムスターを取り出すと、ハムスターも丸呑みした

…まぁまあね

舌舐めずりした菜穂美の、長く先が割れた舌が見えた

脱皮が始まった

掻きむしった手の甲の皮がパリパリめくれ、その下から新しいウロコが見えた

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