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宇宙に実際に現れる ニュータイプ について

作者: 本田じゅん

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 ニュータイプとはガンダム世界における宇宙において進化した人類の革新であり戦争を終わらせる希望として富野由悠季によって考えられた存在である。

 優れた直感と洞察力それに高い認識力を持ち高い反応速度と空間認識能力を持ちサイコウェーブやテレパシーなどの超能力を使いこなせ高い共感力を持つ存在とされている。

 しかしその出自はアムロ・レイという素人のパイロットをプロの軍人に勝たせるために考え出された方便にすぎず、発想が安易であると業界からは冷ややかに見られ、超能力描写が古いなどガンダムがsfでない理由としての筆頭にもあげられている。またファンからもオカルト描写から敬遠される傾向にあるようである。

 考えた本人も近年は否定的に捉えているようになっている。

 が、しかし意外な気もするがニュータイプはsfどころか宇宙時代になってリアルに現れる。 

 しかも実際に現れるニュータイプ達は富野由悠季ニュータイプ論の要件を全て満たしているのである。

 意外な現場での調査からデータも膨大に存在し現時点において宇宙時代に現れる実際のニュータイプのシュミレーションはほぼ100パーセント可能である。

 ニュータイプとその延長上のアイデアは主要な富野作品の多くに何らかの形で反映されており実際に現れるのだから自己否定にも繋がるので否定するべきではない。

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 富野監督のニュータイプに対する考えには三つある。

 一つは宇宙における人類の進化やギャザースタイムなどに見られるアーサーcクラークの影響。それにインタビューなどで語られる世代論。

 だがガンダム本編でかたられるニュータイプは洞察力や高い直観力を持ち神通力に通じる超能力を持っている。また逆襲のシャアにおいてはニュータイプを語るうえでもっとも重要な設定が登場する。

 それがクェスパラヤ曰くニュータイプになるためにインドで修行していたというものである。

 つまり富野監督はニュータイプの具体的イメージとしてヒンドゥ教の修行者やチベット僧であることが分かる。このニュータイプに関しては実際に細部に渡るデータがありベジタリアンが多いことまで分かっている。

 富野監督は何ゆえにニュータイプで躓いてしまったのだろうか。

 それは仏教を始め多くの宗教が悟りを開いた人間がどういう変化を遂げるかについて曖昧なまま放置していたのが最大の理由である。

 煩悩を克服したとか神通力を得たなどが語られるが。やはりよくわからない。

 三島由紀夫を始め多くの作家達が躓いた道でもある。

 ところが悟りを開いた人間がどう変化するかを解く鍵が意外なところにあるのである。

 それがチベット死者のである。

 チベット死者の書はチベット仏教ニンマ教の経典であり臨終を迎えた者の枕経として死者の死後の案内

する役割を果たすとともにこれから修行を目指す僧の解脱の為の指南書としての役割もはたしている。

 つまり真理に至る道が二つあることが分かる。

 一つは僧となって厳しい瞑想修行を行うこと。そしてもう一つは死ぬ体験をすることである。

 つまり臨死体験である。

 臨死体験の方は曖昧に放置されていた宗教関係と違って、レイモンド・ムーニーよって紹介されていらい医療現場で起きていたこともあって多くの医師やトランスパーソナル心理学などの心理学者や脳神経学者さらにはまとまった統計調査も行われ体験内容に関してはマイケル・セイボムが体験後の追跡調査をケネス・リングおよびシェリーサザーランドらによって行わた。その中には価値観の変化や超心理学的能力などの現れなども含まれる。

 基本的なニュータイプの全体像は臨死体験者の変化から読み解くことが可能である。

 では臨死体験とチベット僧と宇宙を結びつけるものは何だろうか。

 それが感覚遮断状態にあるといわれる。

 感覚遮断による宗教的神秘体験の研究はジョンcリリーがアイソレーションタンクによって行われており光の存在との遭遇についても言及がなされている。

 宇宙だと容易に感覚遮断状態が実現可能であり、ニュータイプに相当する人間がごく普通に現れることが予想できる。

  具体的に宇宙で宗教体験をした宇宙飛行士はエドガーミッチェル、アランビーン、ジムアーウィンの三人いるがいずれもアポロ計画のムーンウォーカーであり月に人が住むころになってから出現することが予想される。

 ニュータイプの実際の定義は宇宙において感覚遮断などによって宗教的神秘体験をして変容を遂げるというものになりそうだ。変容の内容は臨死体験に準じたものとなる。

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 ニュータイプになる時にどの様な体験をするのだろうか。

 体験内容に関しては有名なコア体験というものがあり体外離脱後、暗闇の中トンネルの様なものを抜け光の存在と出会う。このコア体験を描いたものがヒエロニムスボスの祝福された者の至高天の上昇だといわれている。

  このコア体験に様々な解釈や要素が加わり宗教的神秘体験ないし臨死体験をした者は様々な体験をする。ある者は大いなる存在や神の様な存在と出会いまた別のある者は異界の楽園に到達する。当然臨死体験者は死後の楽園となる。近年は宇宙人との遭遇体験も宗教体験の変則的なモデルであるとケネス・リングによって指摘されている。

 この時の体験の内容としては

 1ライフレビューの様なものを見る。

 2時間の消失があり自己を永遠の存在として認識する。

 3全宇宙との一体感がある。

 4至福感がある。

 また富野作品とコア体験との関係については存在論的な解釈を行った場合はイデとなり異界の楽園と解釈した場合はバイストンウェルとなる。イデもバイストンウェルいずれも実際には人間の集合的無意識に存在する。バイストンウェルに関しては全ての人間が同じ夢を見たら一つの世界を構築するであろうという富野監督自身の発言もある。

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 宇宙での宗教的神秘体験の後大きな変容を遂げ人はニュータイプとなる。

 その後の追跡調査についての方がニュータイプを語る上から重要な意味を持ってくる。

 wikiにあるケネス・リングの報告について触れる。

 1「人生についての評価」日々の平凡なものに対して評価が高まる。

 2「自己受容」他者からの評価を気にせずありのままの自分が受け入れられるようになる。

 3「他者への気づかい」他者への思いやりが増大する。

 4「生命への尊敬の念」特に環境問題や生態系への関心が高まる。

 5「反競争主義」社会的な成功のための競争への関心が弱まる。

 6「反物質主義」物質的な報酬への興味が薄れ臨死体験で起きた精神的変容に関心が移る。

 7「知識欲求」精神的な知識への強烈な渇きを覚えるようになる。

 8「目的意識」人生は意味に満ちており、全ての人生には神聖な意味がるという意識が育つ。

 9「死の恐怖の克服」死への恐怖は完全に克服される。死のプロセス自体への恐怖は残る傾向がある。

 10「死後の世界の確信」や「生まれ変わりの存在について肯定的な信頼」が育つ。

 11「自殺の否認」

 12「光への信頼」

 13「自己超越」

 また立花氏の臨死体験では

1他者に関しては

 他者を助けたい気持ち、

 他人に対する寛容心、

 他人に対して愛情を表現するようになった

 他の人がどういう問題を持っているかが見抜けるようになった

 他人を理解出来るようになった

 他の人を受け入れる気持ち

 これらの要素が大幅に増加し他者への同情などの感情がポジティブに移行し人間関係がよりよくなっていくのだという。

2他者の印象に関しては

 他人に良い印象を与えたいという気持ち

 有名になりたい気持ち

 他人がどう思っているかを気にする気持ち

 これらが著しく激減する、他人の思惑や評価を気にしなくなるである。

3一方スピリチュアルな面では

 スピリチュアルな面での関心

 人間にははかりしれない高次の力が働いていると思う

 生命の尊厳性

 神が存在するという内的実感

 死後の生があるという確信、また輪廻転生にも偏見をもたなくなる

 これらが増大しスピリチュアルな傾向が強まる。

 また日々の生活の普通の出来事の一つ一つが素晴らしく感じられるようになり自然の美しさもより感じられるようになった、などの変化が起きる。

4物質的な関心については

 生活の物質的側面に対する関心

 人生の物質的成功を収めることに対する関心

 生活水準を上げたいという欲求

 これらが著しく低下する。

 一方で高次の意識を獲得したいという欲求

 人生がそもそも何なのだという疑問が解明されてきたという気持ち

 自分には人生に目的があるという実感

 生きる意味は内面世界の中にある

 自分というものをもっと理解したいという欲求

 個人的な意味の探求をやってみたいという欲求

 これらが著しく増大し、物質的欲求が無くなり精神的欲求に移行していることがわかる。

 ニュータイプになるとこれに近い変化が生じると思われる。

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 ここからニュータイプの実際の姿が見えてくる。

 ニュータイプは他者や生命を尊重し争いを好まず、立身出世や名声に関心を持たず、また物質的な報酬や権力に関心を持たない。

 レビル将軍の言う「ニュータイプは戦争をせんですむ人間だ」と言われるが実はこれらの生き方や価値観の変化によってもたらされるものである。というのも多くの争いが富や資源などの物質的なもの、あるいは地位や名誉を巡って行われるからである。アフリカでは石油などの地下資源を巡っての戦争が絶えないことからでも明らかである。

 地位や名声、物質的なものに関心を持たないニュータイプが争う理由が無い。

 なら何ゆえに大きな価値感が生じるのだろうか。

 臨死体験の研究者の間では二つの理由が挙げられている。

 一つは神秘体験および臨死体験の体験内容があまりに衝撃的すぎて生き方を変えざるをえないからだという。

 もっとも有名な例としてはサウロの回心が有名である。

 サウロはキリスト教を迫害する立場にあった人間だが神秘体験をして神のお告げを聞いたサウロはその後回心し熱心なキリスト教徒になった。名もパウロと変え布教に努め聖人に列せられる程になった。

 体験の衝撃によって人生観や価値感が180度ひっくりかえってしまうことも少なくない。

 もう一つは人生を走馬灯の様に眺めるライフレビューを見ることによって自分自身を見つめなおすことによって反省するというものである。今まで行ってきた悪事を自身が見ることによって悔い改めるということなのだろうか。

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 臨死体験後の身体的変化としては

 1五感が鋭敏になる。

 2超能力に目覚める。

 3特異な電気的な生体エネルギーが現れるようになる

 臨死体験後に得られる超能力についてはシェリーサザーランドによって調査が行われている。

 臨死体験後、透視、テレパシー、予知、既視感、体外離脱体験、直感、霊体験、ヒーリングなどのサイキック現象が多く見られるようなったという。

 また特異な電気体質に目覚める場合もある。電気的なエネルギーフィールドが体の周囲に発生し電気機器に影響を与え機器を狂わせたり電球を点灯させたりなどの現象が起きるようになる。

 特異な電気体質の調査を行っていたマイケルシャリスは気の現われようなもではないかと見ている。

 また臨死体験者バーバラハリスも自身のバイオエネルギーと呼んでおり生命エネルギーの現われととらえてもいいかもしれない。

 超能力に関しては全ての臨死体験者がもっている訳ではなく超能力を持ってない臨死体験者の方が多い。当然、宇宙時代に現れる実際のニュータイプも超能力が使えないニュータイプの方が多いと考えるのが自然である。

 そもそも超能力に拘るべきではない神秘体験において重要なのはあくまで人生観や価値感の変化である自己変容にあり超能力に固執するとオウム真理教と同じ落とし穴に落ちてしまう。

 あと、細かいライフスタイルの変化としては非殺生に目覚めることから肉などを避けるようになりベジタリアンになる傾向があるようである。また体に良くないという理由から酒、タバコをやめる傾向にあることがシェリーサザーランドによって報告されている。

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 ニュータイプで一番重要な要素であり定義にもなっているニュータイプどうしであれば誤解なくわかりあえるについて。

 ニュータイプが争をしないのはテレパシーなどによって相手の心が完全に理解でき誤解がなくなるから争いが起きないだろうというものである。

 シェリーサザランドによると臨死体験後、テレパシー能力に目覚める臨死体験者が多く現れているのが確認されている。その能力は「テレパシー」や心を読み取るなど様々なものがある。

 が多くの能力者はその能力を煩わしいものだととらえている。というのも他者を理解できるといえば聞こえはいいもの悪い言い方をすれば読心能力ととらえることもできる。

 シェリーサザランドは自身の著、光の中で再び生まれてでベンという少年について紹介しているが、ベンがこの能力を人前でやってみたところ社会に受け入れられない能力であることを思い知らされたという。人は自身の内面を覗かれるのを何よりも嫌がるということなのだろう。

 ネガティブな形とはいえ実際に反応が返ってくるということは実際に相手の心を理解する能力があるととらえることもできる。

 お互いがニュータイプどうしで心を覗かれることに抵抗が無いのであれば誤解なく分かり合えるかもしれない。

 一方、理解、出来る相手は人間だけではないのかもしれない。立花氏の臨死体験には植物の心を理解する臨死体験者について紹介されている。ということは動物や植物の心を理解するニュータイプが現れる可能性もあるということだろう。ただこちらはリアクションなどで確認することもできず証明は難しいだろう。

 これならニュータイプどうしであれば誤解なく分かり合えそうだ、だがニュータイプが戦争をせんですむのはあくまで自己の変容による生き方や価値感の変化によってである。

 インドの宗教であるジャイナ教、仏教、ヒンドゥー教では神秘主義と一体となっており神秘体験による変容がそのまま戒律に組み込まれている。

 その中でもっとも重要なのが不殺生と不所持という考え方である。いずれも臨死体験後の価値感の変化における生命への尊敬の念と反物質主義が反映されているのは間違いない。

 不所持に関しては仏教の托鉢(食料を所持しない)という考えのほかジャイナ教やヒンドゥ教の修行者が全裸で修行(服を所有しない)という形で反映されている。

 不殺生という考えは肉食を禁ずるという戒律とともにアヒンサーという用語すら存在する。

 インドの独立の父、マハトマ・ガンディーはこのアヒンサーという思想を独自に発展させサティヤー・グラハという思想を展開していく。サティヤー・グラハはサンスクリット語で真理の主張を意味しこの思想を背景に非暴力による抵抗を進め戦争をすることなくインドの独立に成功する。

 基本的にニュータイプは非暴力の存在故に軍人のニュータイプが現れることはまずない。またそういう事情から軍がニュータイプを研究対象とすることもない。ニュータイプを研究対象とするのは臨死体験同様にトランスパーソナル心理学そしてニュータイプ達自身によってである。

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 ニュータイプに相当する人間は宇宙時代にごく普通に現れることが分かったが問題もある。

 彼等にニュータイプという名称が与えられるかどうかである。ニュータイプという名称にならない可能性の方が高い。強力なライバル候補があるからである。

 代表的なものとしてはケネスリングは宗教的神秘体験者と臨死体験者をオメガプロトタイプと呼び彼等による世界の変革をオメガプロジェクトと呼んでいる。

 オメガとは、かのテイヤールドシャルダンのキリスト教的進化論におけるオメガポイント理論に由来している。

 オメガポイント理論とは人類の進化の最終段階において一なるものオメガに到達しキリストが復活するというもである。

 欧米においてはテイヤールドシャルダンの思想はトランスパーソナル心理学などに今だそれなりに大きな影響を与えているのでテイヤールドシャルダンに由来する名称は強力なライバルになりうるだろう。

 彼等にニュータイプの名を与え富野由悠季をニュータイプの預言者としたければガノタの心理学者が宇宙時代にまで生き残り現れた新人類達に宇宙における人類の革新、ニュータイプと命名しなければならな

い。

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 フローについて。ニュータイプが高い反応スピードと空間認識能力を生み出すのはフローである。

 フローは一種の変性意識の状態であり同じ変性意識を経験したニュータイプであれば容易に移行しやすいのではないかと考えられる。

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 ここに触れたニュータイプ論はあくまで筆者個人のもであり人それぞれのニュータイプ論もまたありだと思います。こういうものもありと思ってくだされば幸いです。

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