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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
6章 おっさんがパーティを組んでみる
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条件提示

 大人びた雰囲気なかに、可憐な少女の素顔か見え隠れする17才の女冒険者チョコ・ティ。その弟で優しく素直な性格だが心の奥に秘めた思いを隠しているであろう14才のジェイク。ジェイクと同じ年齢でこちらはまだ幼い感じが残る獣人のノーグ。


 DA9(ディープアビスナイン)にある冒険者ギルドの2階の小会議室のような場所で、アールはパーティメンバー候補であるこの3人の冒険者たちと面談を行っていた。


 アール自身は顔を合わせた瞬間からパーティを組むことを決めていたのだが情報収集は必要だろうと考え、せっかくの機会だしこの際、聞けることを聞いておこうと思ったようだ。


 そこで最初に、相手が自分に対してどういう印象を持っているかの確認から始めた。


 チョコ・ティは置いておくとして、ジェイクとノーグがパーティを組むことについて、どう思っているかを知る事は今後活動して行く上で重要な事柄だ。


 それで対話を重ねてきたわけだが、そこで得たジェイクの発言からは、アールは自分が考えていた以上に優良物件である事を確信する。チョコ・ティもノーグもジェイクの発言に同意するように頷いていたのであまり変わらない印象を持っているのだろう。これであればこちらから下手に出てまで交渉をする必要はなさそうだ。そう考えたアールはさらに話を続けて行く。

 ・・・

 ・・

 ・

「じゃあ、そちらはパーティを組むのに何も問題は無い感じかな?」

「はい! あっ。でも、もちろん分配とかで、いろいろあるんであまりに不利になるなら困りますけど……」

「その辺はこっちもよく解らないから、ジャッジアが来てから話を詰めようか。だから先にどんなことが出来るのか……普段はどんな感じで狩りをしてるか教えてほしい」

「はい。いつもは姉ちゃんがリーダーをやってて色々指示を出してくれます。戦う時は、まずノーグが盾で敵の攻撃を防いで、ぼ、俺が片手剣で相手の注意を引きながら手傷を負わせて、後ろから姉ちゃんとオ……姉ちゃんが弓で仕留める感じです。敵の数が多い時は姉ちゃんも防衛に入って俺が少しずつ削っていきます」


 きっちり役割を分けながら戦ってる感じだな。ノーグって身体が大きな獣人がタンクでジェイクが遊撃。チョコともうひとりがアタッカーだった訳か。で、リーダーのチョコは臨機応変に立ち回ると。


「普段は何を狙ってるんだ?」

「ちょっと前まではゴブリンを倒してたんですけど、メンバーがひとり……今は、離れていて。最近はホーンラビット(角ウサギ)を狙いながら、薬草採取もしてます。でも、もうひとりいればすぐにでもゴブリン狩りも出来ます」

「ゴブリンから魔石を取り出したり、耳を剥ぎ取るとかは問題ない?」

「はい、大丈夫です。みんな一通りできます」

「オークの魔石だったり採取部位の剥ぎ取りなんかはどう?」

「自分たちで倒したことはないんですけど……剥ぎ取りの依頼で高ランクパーティといっしょに狩りに出た事はあるので、大丈夫……大丈夫です」


 言い淀んだジェイクだったが、途中横に座る二人に視線を向けると、チョコとノーグもうんうんと頷いているのを見て安心したように断言した。


 最悪出来なければ、私が教えればいいか。それより素材を回収してもらえるのなら助かる。何に時間が掛かるって、ひとりだから特になのかも知れないが素材の回収って一番時間が掛かるのだ。そんな風に考えていると、ちょうどジャッジアがやって来た。


「アールさんごめんなさいね、遅くなっちゃったみたいね」


 仲介役だからだろう、そう言いながらジャッジアが私の右手、上座とでも言うのか、私と対面に座るジェクやチョコ・ティを横から見るような位置に座り、私と彼らの表情を窺っている。


「ジャッジアお疲れ様。もう大丈夫なの?」

「朝のピークは大体終わりね。あとはユリアンが受け持ってくれるわ」

「そう。聞きたいこともあったので良かった」

「聞きたいこと?」

「うん、分配とかってどんな感じにすればいい?」

「分配ってケースバイケースなんだけど、アールさんとこの子たちがパーティーを組んだ時の分配って事でいいのかしら」

「問題なさそうなら、パーティーを組もうと思ってる」


 そう言いながらジェイク、ノーグ、チョコ・ティへと視線を向けて行く。


「僕らでいいんですか!?」


 その言葉と視線を受けたジェイクが嬉しそうに感嘆の声をあげる。


 私は軽く頷きながらジャッジアの方に視線を向けると、彼女はジェイクが最初に発言しているのに、ちょっと驚いたような表情を浮かべたがすぐに気を取り直し話を続けた。


「そうねぇ……普通なら格上の冒険者にこの子たちを雇ってもらう形にするわね。この子たちぐらいのランクなら1日3人で銀貨2枚ぐらいが妥当な報酬になるんだろうけど、この子たちとアールさんならもっと稼げると思うのよね。アールさんは剥ぎ取った素材を直接お店にもちこんでるんでしょ?」


 見えない角度でウィンクをしながらジャッジアが問いかけてきた。冒険者ギルドが店を紹介したことは秘密だったな、言葉短く答えておく。


「ああ」

「それなら私の提案は、アールさんがその日の稼ぎの半分をこの子たちに渡すぐらいがちょうどいいと思うの。どうアールさん?」


 私の一昨日の稼ぎが金貨1枚と銀貨8枚。あれで限界って訳じゃないけど、余裕は必要だから今後の稼ぎの線としては妥当な所だと思う。その稼ぎの半分を出す……のはさすがに無理だ。ダンジョンに戻るのが遅れてしまう。


 私の表情を読み取ったのか、ジェイクとノーグが私の顔を真っすぐに見つめながら不安そうな顔をしている。チョコ・ティは顔を伏せているので、表情は窺えない。ジャッジアに視線を向けると、ジャッジアが言葉を続ける。


「確かに1日銀貨2枚掛かるとか、稼ぎの半分を差し出せなんて言われて不安な気持ちがあるのは分るわ。でもねアールさん、アールさんも凄腕だけどこの子たちも結構やるのよ。

 まだ見習いでランクはFに上がったばかりだけど、それはこの子たちが同じ年頃の見習いだけで集まってパーティーを組んでたからなの。アールさんみたいな実力ある冒険者と組めたら、ランク以上の力を発揮すると私はそう思うのよ。

 もし、どうしても納得がいかないならその時はもう一度私に声を掛けてほしい。だから一度私を信じてくれないかしら?」


 態々冒険者ギルドが損をしているんですよ、なんて言う必要もない。だから、ジャッジアにはオークを倒している事を伝えて無かったので、誤解させたようだな。けど、彼女がここまで断言するならある程度は役に立つのだろう。稼ぎが増える可能性は十分にある訳だ。なら妥当なところを提案するか。


「まずは稼ぎの2割で様子をみる。これ以上は渡せない。これが飲めないならパーティーの話は無かったことに……」

「そんなの無理だ!! その金額じゃ暮らせない」


 私の発言を聞いて、まずジェイクが声をあげる。そして、その声に反応するようにノーグが大きく頷く。チョコ・ティは俯いたまま……反応してくれないと面白くないじゃん。なんて思ってたら右手から大きな声が飛んできた。


「アールさん、それはさすがにひど過ぎよ!! 私を信じてなんてもう言わないわ。でも、いくら見習い冒険者でもそれは無茶苦茶。アールさん考え直……」

「焦らないで聞いて欲しいんだけど、渡せるのは稼ぎの2割まで。これは決定。ただし1日で最低銀貨4枚は保証する」


 ジャッジアの言葉を遮る様に条件を加える。さっきジャッジアが言った3人で銀貨2枚が妥当な所って発言をくみ取ると、見習い冒険者が固定給で1人銀貨1枚以上の報酬を得るって事は十分に魅力的な提案になっているはず。その上、頑張ればそれ以上稼げるのだ。まだ、理解の進んでいないジェイクとノーグに分かりやすく説明する。


「つまり私と一緒に狩りに出かけるなら、その日稼ぎが有ろうが無かろうが、4枚の銀貨を必ず渡す。何もしなくても銀貨4枚ってわけ。まあ何もしなくてもその日の銀貨は渡すが、さすがにそうなったら私も困るので次からはパーティーを組まない。けど私がある程度納得できる動きをしてもらえるのなら問題ない。次の日もまた次の日もパーティーを組んでほしい。それに稼ぎの2割が3人に渡す銀貨の合計の4枚を上回れば、その分は勿論上乗せして渡す。頑張り次第で十分稼げると思うけど、どう?」


 ジェイクは頭の中で必死に考えているようだ。ノーグはピンと来ていないのかもしれない、不安そうな顔でみんなの顔を見回している。ジャッジアは目を見開きながら、驚いた表情を浮かべている。


「確かにアールさんとこの子たちなら、場合によっては2割でも銀貨4枚以上の報酬を受け取る可能性は十分に考えられるわね。その条件ならわたしは構わない……というか、うーん。むしろ、銀貨4枚も貰えるならこの子たちも、次のステップに進む資金を貯められるだろうし。でもそこまでの条件になると、こんどはアールさんの方が心配ね」

「ジャッジアが問題ないなら、こちらは全く問題ない。あとはそちらが決めるだけなんだけど?」


 そう言いながらもう一度ジェイク、ノーグ、チョコ・ティへと視線を向けて行く。ジェイクとノーグの視線はチョコ・ティに集まっている。するとチョコ・ティはジェイクへ向けてうんうんと、うなずき返し、それを見たジェイクが私に返事する。


「アールさん、その条件でお願いします」


 そう言ってジェイクが頭をさげると、続いてノーグとチョコ・ティも頭を下げた。


 ジェイクに右手を差し出しながら声をかける。

 

「とりあえずはこの条件でよろしく。また何か問題があればその都度対応はして行こう」


 そう言ってジェイクの手と固く握手する。次にノーグと握手し最後にチョコ・ティの柔らかい手を握る。


「で、ジャッジア。パーティーを組むことは決めたんだけど、何か処理とかあるの?」

「そうね。この子たちはまだ見習いだからこちらで処理できるけど、アールさんにはギルドカードを出してもらって、承認してもらわないといけないわ。このあと、ちょっと時間をもらえるかしら?」

「今日は1日あけてるから問題ない……でも、そんなに時間はかからないような感じかな。ジェイク、昼からの予定は組んでいる?」

「まだ何も決めてない……よな、姉ちゃん」

「アールさん、昼からの予定はなんも決めてないん……です」

「じゃあ昼から一度狩りに出てみたいんだけどいい?」

「問題ないです。ジェイクもノーグも良い?」


 チョコ・ティが二人に問いかけると二人は肯いた。


「じゃあ、ちょっと早かも知れないけど昼飯でも食べて時間をつぶしておいて。昼一番に西の城門で待ち合わせしよう。ジャッジア、処理はそんなに時間はかからないよね?」

「大丈夫よ。アールさんもゆっくりご飯を食べる時間はあるわよ」

「じゃあ、そういう事で」と解散を促し全員で席を立つ。


「あっ、そうだジャッジア。聞きたいんだけど、チョコ・ティやジェイクたちは、どれくらいの“徳”をもってるんだ?」


 最後に思い出したように“徳”の確認をしておく。するとチョコ・ティ、ジェイク、ノーグの3人はジャッジアに視線を向けた。


 視線を向けられたジャッジアが答える。


「見習いの場合、“徳”の管理はギルドが行うのよ。といっても見習い冒険者だけじゃ“徳”を積めるような依頼は受けられないから、ほとんどは昇格時に与えられる分だけの管理になるわね。問題がないならこっちで教えておくけど、あなたたちいいかしら?」


 会話の最後、ジャッジアの視線はチョコ・ティたちに向けられた。チョコ・ティたちは頷いて了解の合図を返す。


「じゃあ、手続きしながら調べるわね」


 最後にそんな会話をしながら冒険者ギルドの1階にに移動すると、ジャッジアは受付カウンターの中に入り私からギルドカードを受け取った。


 そのやり取りをみてチョコ・ティとノーグ、ジェイクが頭を下げながら声を掛けてきた。


「後はよろしくお願いします」「お願いします」「午後一番で西門で待ってます!」




 そう言って3人はギルドから出て行った。



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