表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
5章 おっさんがこの世界の街に生きる
68/81

裏通りから薬を買いに店へ向かうまで

 DA9(ディープアビスナイン)の南西の隅にある貧民街の裏通り。


 街娼の姿を求めてやって来た訳だが、いざその姿を目にするとアールは、余裕がない(テンパった)状態になっていた。

 ・・・

 ・・

 ・

 ここまでは意識しないようにしてきたが、いざ目の前にしてみると……これって自分から声を掛けるのか? この前、恥を掻いたばかりなのにハードルが高いな。


 そんな事を考えてしまうと二の足が出なくなり思わず佇んでしまっていた。すると、猫の獣人だろうか近くにいた30代前半ぐらいの色っぽい仕草のお姉さんが声を掛けてきた。


「お兄さん、暇なら私と遊んでかない?」


 おお! 向こうから話し掛けてきてくれた。なんとか驚きの声をあげるのは我慢したが、心臓がバクバク言ってる! 何て答えればいいんだ?? ……何処かの映画で見た誰かになりきる。


「いくらだ?」


 おっ!? 何とか話せた。少し気持ちが落ち着く。


 その言葉で私が客だと分かったのか、胸元が大きく開いた服を着るお姉さんは、にまっと笑いながら、さらに色っぽい声を出す。


「銅貨6枚で抜いたげる♡ サービスするわよ」


 その表情を見てその言葉を聞いて、またドキドキする。……けど、相場より安いな。なぜだろう?? そう思うと口が勝手に動いてくれた。


「どんなサービスをしてくれるんだ?」

「手だけじゃなくて、お口も使って抜いてあげる。テクニックはあるのよ♡」


 そう言って先が少し細くなった舌をペロッとだして唇を舐めた。


「………」


 なるほど! と思いながらも、舌と唇の艶っぽい動きに下半身に血が回っていくのがわかる。


 咄嗟に返事が出来ずに黙っていると、せっかくの客に逃げられるとでも思ったのか艶っぽいお姉さんが話を続ける。


「お兄さんが追加料金を払ってくれるなら、上のお口だけじゃなく、下のお口を使っても良いのよ♡」


 視界が狭まる。混乱しているが、誰かになり切った私はなんとか言葉をつづける。


「……それはいくらになるんだ?」

「全部で銀貨4枚でいいとよ。ねぇもう待てんと。今すぐどうね?」


 目の前の猫の獣人の女は甘えるような調子の声でねだってくる。


 高いな。初めての体験に混乱しながらも、頭の中のどこか冷静な所がそんな思いが浮かび上がらせる。


 いや、前に比べればずいぶん安いのだが……「銀貨2枚でも」なんて話をきいた後だと、そう感じてしまうのは不思議だ。実際はこのあと、さらに値段交渉をするんだろうがまだ私には難易度が高い。そんな真似、出来てひとり。それなら最初は普通の娘、スベスベ肌の人族の出来ればもう少し若い娘の方が良い。


「あれだ、今日は人族の気分なんだ……」

「そんな、意地悪なこと言わんと~。お兄さんかっこいいし、もう少しまけるけん、ね。あっ、気が変わったら戻ってきてや、まってるけんね~」


 歩を進め出した私を見て、お姉さんが後ろから声を掛けてくる。


 逃げるように離れたのだが、あと5秒あそこにいたら……喰われてたな。


 まあここまで来たら、これって娘を。そんな思いを抱いて街娼通り(裏通り)を進んでいく。十分に魅力的な獣人族の娘さん、人族の肉感的なお姉さん方から微笑みかけられ手を振られ、時には声を掛けられる。


 以前行った娼館通りとは全く違う雰囲気だ。


「これこれ、これを求めてたんだよ!!」意味もなくモテモテだわと喜ぶ。



 しばらく進んでいくと、なかなかいい感じの娘の姿が目に入った。


 年は二十歳前だろうか、細身でところどころに小さな傷はあるが整った顔立ちをしている。身長は私より頭一つ低くショートボブなのに長めの前髪が左目にかかるように流れてて、かわいらしい。胸がもう少し……いや、なかなか良いどころか相当に良い。これ以上望むのは贅沢すぎるだろう。


 ここまでのを探すのはもう無理かもしれない。そう思って決めてしまうと、もう我慢が出来なくなった、一直線に進んで行く。


「お兄さ「いくら?」……どっ、銅貨3枚」


 一直線に進んでくる私の姿に、すこし怯えた様子の娘が話し出そうとした瞬間、その言葉に被せるように値段を聞く。


 すると焦ったのかさっきのお姉さんより相当に安い金額を口にした。だが私の気分はそれじゃない! ゆっくりと首をふる。


「相場より安い値段やで、これ以上はまけ……」


 少し怒ったように言葉を吐き出す娘を遮るように、もう一度ゆっくりと首を振る。目の前の娘は困惑したような表情を浮かべている。


 なんかこういうのってこっちから口にしたら駄目なような気がするのは前の世界のあれかな。じっと見つめていると、れたように喋り出した。


「うちは本番はやらん「いくらだ?」……。だーかーらー、それなら他のひとのとこ「いくら欲しい?」…行っ……」


 欲しい言葉を聞いた瞬間一気に畳みかけることにした。私なんかが、こんな状況で下手に交渉すると絶対にボロが出る。なんとか押し切る! とじっと見つめる。


「もし、もしもお兄さんが銀貨5枚払ってくれるいうんなら、考えてもええよ。でも、これ以上びた一文いちもん「それでいい」……銀貨5枚やで?」


 自分で値段を言っておきながら、驚いたような表情を浮かべる娘。だが、この娘で銀貨5枚なら全く問題ない。


「ああ、それでいい」

「あ、あと、そうや、うちはこんなところでやるのは嫌ややねん。肌をあわすんなら、ちゃんとした所じゃないと絶対に嫌。それが無理なら他所よそに行ってや………」


 動揺しているのか、話す言葉の調子がかわっている娘。駄目だわ、なんか庇護欲をそそられてさらに可愛く感じる。


 それにしても、こんなところと言う娘の目線の先には家と家に挟まれた細い路地裏がある。もしかして、通常はその場でやるのか!? 分らんが、もしそうなら想像すらして無かった。とにかく妥当な返事をしなければならない。


「通りの北にある休憩できる宿でもいいのか?」

「あ、うん。それならいい……けど……」


 正解のようだ。これ以上の交渉は無理!「じゃあ」と言ってこの娘の腕を掴んで強引に確保しようとするがそれを遮るように、この娘がまた口を開いた。


「あっ! それと、うちはこんな予定じゃなかったから薬を用意してないん……お兄さんはちゃんと持っててくれてるんよね?」


 薬ってなんだ!? フェイの店の冒険者たちの話には出てこなかったぞ……あれか!! 今日あいつらが手に取って見てたあの薬か。くそっ、ここまで来て諦めきれるか! 鎌をかけてみる。


「前の女は使ってなかったぞ。なくても問題はないんだろ?」

「う、うちは絶対に嫌やで。使わんなんてありえん、まだうちは若いんよ! それにこんな事してるけど、うちには、やらないかんこともある。病気になってる暇もないし死にたくもないん。あんたがいつも使うてない、言うんならなおさらや。持ってないならこの話は、これでお・わ・り!!」


 やっと反撃する隙を見つけたと、交渉を打ち切ろうとする娘の勢いに押されながら、必死に言葉を探して話を繋げる。


「なら、薬を買えばいい。それなら全く問題ないだろ?」

「……そ、それなら問題ないけど……結構高いんやで。本当(ほんま)? 本当に買ってくれるん?」

「ああ、約束する。今から店に寄るから君が選べばいいよ」


 そう言ってこの娘を引き寄せる。今度は抵抗なく近付いて来る。………駄目だ、柔らかい二の腕を掴んだだけで下半身が反応してしまう。


「……絶対やよ」


 完全に了承したのか、目の前の娘が私の左手に腕を回し、私の目をのぞき込みながらそう言った。


 いや、本気(まじ)でかわいい!!

 

 さらに左腕にそっと触れる女性の胸の柔らかさに心臓がバクバクと脈打ち下半身が大きくなる。


 自分の鼓動が隣にいる娘にまで聴こえてしまうんじゃないかと心配になるぐらいだ。


 そして、そんな自分を悟られまいと街娼通りの隅々にまで視線を飛ばし、必死に娘から意識を背けるようにして、フェイの店に向かって歩き出す。



 気を紛らわすために辺りを見回していた視線が路地裏の奥でピタッと止まる。そこにはスカートを捲り上げた女を後ろから抱きかかえている男の姿があった。


 本気まじか!? さっきの娘との話はやっぱり勘違いじゃなかったのか。思わず二人の様子を凝視してしまったのだが……腰を抱える男の腕に発疹が見える。


 急激に興奮が冷めて行く。


 落ち着いてさらに見回すと、さっきまで気付かなかった路地の奥に物乞いの女が座り込んでいるの見つけたのだが……鼻が溶け落ちている。


 …………梅毒。


 たしか梅毒って接触感染だったはず。それで、特効薬ってたしか抗生物質のペニシリン。黒カビ? 青カビ? を精製して作るはずだが……。江戸末期にタイムスリップした医者の漫画は読んだけど、少し前の事だから記憶があやふやだ。けどあの時代まで、梅毒は発症したらお終いだったのは覚えている。病気になって死にたくないとか、薬とかってそういう事か……。


 そういえば、エイズとかと同じで潜伏期間とかがあるんだったか。急に不安になって隣を歩く娘に質問する。


「君、こういう事はいつもやってるの? 一日にどれくらいのお客さん取る?」

「肌を重ねるんは……はじめて。やからお兄さん……お願い優しくしてえよ」

 と上目づかいでのぞき込んでくる。


 予想外の答えに驚く。数が多いなら諦めようと思っていたのだが、初めてなら心配なさそうだ。少しほっとしながらフェイの店に向かう…………てか、初めてか!?


 また興奮してくるが一旦は冷静になってしまったからか、それともこの娘の緊張度合が肌から直接伝わってくるからか、こちらの衝撃の事実には結構落ち着いていられた。


「呼びにくいから名前を聞いても?」

「えっ!? ……うん。……チョコ・ティ」


 名前を言うのが恥ずかしいのか、顔をあげずに組んだ腕にギュッとしがみ付いて来る。女性特有の柔らかい感触がムニュンと腕に伝わってきた。




 ムーリーです。この破壊力……落ち着いてなんかいられません!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ