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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
5章 おっさんがこの世界の街に生きる
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ポーションと魔石と

 街に来て5日目の早朝、アールはいつものように宿屋で朝食を食べたあと、身支度を整えて出発した。


 ただいつもとは違って冒険者ギルドに向かうアールの背中には、籐籠が背負われている。採取系のクエストを受けている見習い冒険者たちが背負っているのをみて欲しくなったようだ。


 今までの状態だと、タンポポの採取がいくら楽だとはいっても持ち運べる量が知れていたのだ。こなせて午前中に依頼2つ分、午後に2つ分が限度である。それならばと、少し余裕のできた所持金で昨日の帰り道に買った物である。


 銅貨3枚したがタンポポの依頼なら4つ分は一気に運べるようになるので、直ぐに元は取れるだろうと考えたようだ。


 アールがそれまで背負っていた袋は宿屋に置いてある。すでに宿泊代金は支払い済みだし、宿屋の主のマイルズに聞いて荷物を置いて行っても問題ないと確認は取ってある。それにダンシングレー( お玉さん )ドルが揃えた野営セットと新たに購入した着替えが入っているだけだ。


 盗まれてもそれほど高価な物がある訳では無いし、宿の主のマイルズ自体も信頼できる。



 冒険者ギルドに到着するとアールはさっそくタンポポの依頼書を4つ剥ぎ取りクエストを受けた。


 受付嬢のジャッジアに「今日はやる気ですね」なんて声を掛けられて嬉しそうな表情を浮かべたあと、直ぐに出発した。


 いつものように西の城門で隊長のリキッドに挨拶してから依頼を開始する。


 昨日と同じく川辺に移動して採取を始めるが、さすがに近場のタンポポは数が少なくなってきていた。仕方がないので川沿いを進み西の方向に足を延ばしていく事にしたようだ。


 やはり場所を移動したら、まだまだタンポポの数は少なくない。アールは順調に採取できたようでちょうど依頼3つ分を集め終えた所でいったん街に戻ることにしたようだ。このタイミングで戻ればちょうど昼前に戻れて温かい物を食べれるし、昼からの分の依頼を追加しておくのもよい、そんな事を考えているのかホクホク顔で帰っていく。


 街に戻る途中にゴブリンの姿を見かけたが、距離があって危険は無いと判断したのか無視してやり過ごす。



 アールは冒険者ギルドでタンポポ採取依頼3つ分の報告をおわらせると、追加で依頼を受けようとする。たが1つしか残っていなかった。やはり昼まで残っている依頼は少ない。


「まあ、無いよりはましだ」と、あきらめた表情を浮かべ昼食を食べにいった。


 昼食は前の日から目を付けていた店に行ったようだが、ショートパスタのような物を食べることができて満足していた。ただ値段が少々高かったため、毎日食べるのはさすがに厳しそうだ。



 昼からの採取はさらに足を延ばしたため、移動に時間がかかってしまったが採取自体は順調でもうすでに依頼の量は集め終わっていた。アールはたまに視界に入るゴブリンを警戒しながら少し休憩を取っていた。


 このまま採取を終わらせても時間が余る。そこで以前から考えていたようにポーション作成ってのを試してみようと考え、時間は早かったが多めにタンポポを採取して街に帰る事にしたようだ。

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 今日は冒険者ギルドの裏口で依頼報告をする前に、先に受付窓口に行く。まだ時間が早い為か待たされることなくジャッジアと話すことができた。


「おかえりなさい、アールさん。納品の方はもう済みましたでしょうか?」

 いつもの笑顔で迎えてくれた。


「いや、今日は納品前に聞きたいことがあるんですけど、ちょっとだけいいですか?」

「はい、私に解る事でしたらお答えしますよ」


 すこし不思議そうな顔をしている。


「いま、薬草採取してるんですけど、これってポーションとか作ったりする材料になるんですよね」

「はい、納品された薬草は薬剤師ギルドに引き渡され、薬剤師が様々な材料を組み合わせてポーション製作を行っています」

「ですよね。それなら、自分でもポーションを作ってみたいんですよ。買うってなったら、なかなかいい値段するじゃないですか。何処かでポーションづくりを教えてくれる所って紹介してもらえません?」


 私の言葉を聞いたジャッジアは困惑しながら話し出す。


「ポーションづくりですか……。アールさんが以前に住んでいた場所とは違うかもしれませんが、この国ではポーションを作るのには資格が必要になります。

薬剤師ギルドに加入して、それなりの人に師事して、ちゃんと学を修めないと資格は与えられません。アールさんの年齢だと、不可能とは言いませんが相当厳しいと思います。それよりも今お持ちの力を使ってこのまま冒険者を続けて頂いた方が私共も助かるんですが」

「いやいや、そんな本格的な物じゃなくて。ちょっと余った物を使ってちょちょっと作れないかと……」

「余った物でちょちょっとですか……。確かに、薬草そのものを煎じて飲んでも薬効がある物も有るようですが、そう云う物はそれ自体が高価でなかなか手に入りません。申し訳ありませんがアールさんが採取しているような薬草だと、煎じただけではそれ程の効果はないと思います。

そう云う物から薬効を抽出して、魔力を込めながら組み合わせてやっとポーションになるのですが、資格がない者が勝手にポーションを製作する事はこの国では禁じられています。

それに無資格の者が作ったポーションなんて、私なら怖くて飲めませんよ。稀に出自不明のポーションなんかが露店で売られているようですが、アールさんもお気を付けくださいね」


 どうやらレベルを上げて俺Tueeeなんてしてたから、ゲーム脳になっていたようだ。ポーションのレシピを教えてもらって自分でも作ろうかと思っていたのだがそんな簡単な物じゃなかった。


 たしかに前の世界でも薬剤師は国家資格だったわけだ。そうそう簡単には取れない資格だったが、どうやらこっちの世界でも同じようだ。


 それにこの街で店舗を構えているような所なら何となく大丈夫だろうと思えるが、言われてみれば、誰が作ったか分からないポーションが露店売りなんかされてたら、流石に私でも怖くて飲めない。


 この街というか、こっちの世界の人間社会が想像してた以上にしっかりしてたから信用していたみたいだ。そう考えれば資格がないと作製できないってのも納得できるか。


 とは言えポーションが作れないってのは、新たな回復手段が欲しかった私としては非常に残念な事だ。まだポーション自体を使った事は無いが話に聞いたところ、ダンジョンにいるピクシーのサンやスーが使う回復と同じように、直ぐに効果が表れ裂傷程度ならその場で完治するそうなのだ。


 他の回復手段としては神聖魔法の回復ってのがあるそうなのだが、神官なんかの教会関係者以外は使えないようなので、ポーション作製を覚えたかったと言う訳だ。


 理由も理解できるし無理なものは仕方がない。ジャッジアにはちゃんと謝罪しておこうと思う。

 

「そうだったんですか。ちょっと簡単に考えすぎてたようです。くだらない事を話してすみません」

「いえいえ、わかっていただけたら結構です。それよりアールさん、ポーションを作りたいなんてお金に困ってるのですか?」


 思ってもみなかったジャッジアの話題展開に付いて行けず、愛想笑いをしながら適当に話を合わせておく。


「何とか生きてはいますが、余裕はないですね」

「ですよね。ならアールさん討伐依頼をやりませんか? アールさんの力ならなんの問題もないはずです。もしそれでも不安があるならパーティを組むっていうのもありだと思うです。いちど検討してみてません?」


 いつもの笑みを浮かべたジャッジアの顔なのだが、その実は有無を言わせぬ感じがあり、この提案を容易に断れない雰囲気が読み取れた。少し気圧されるような感じで返答する。


「ええ、そうですね。そろそろ討伐依頼の検討も考えていたところなんですよ」

「よかったです、アールさんに頑張って頂けるみたいで。せっかくアールさんのように有力な方がいらっしゃるのに、いつまでも常注の採取依頼ばかりしていただくというのも問題がありますし……ね」


 意味深なちょっと茶目っ気を含んだ表情を浮かべた。とは言えこちらも安全マージンを無視できない。


「けどすぐに討伐依頼をという事では無いですよ。今は防具を修理に出していますし、安全を確保したうえで依頼は受けさせてもらいます」

「それは勿論よ。ただこちらも手助け出来るところ手助けさせてもらいたいの。たとえばアールさんはこの街に知り合いはいないんでしょ。だから自力でパーティメンバーを探すのはちょっと難しいと思うの。

そこでギルドの方で声をかけてみようかと思うのよ。アールさんみたいな人にパーティを紹介するのも私たちの仕事になるわ。ただ、どうしても格下になると思うんだけど構わない?」


 格下でも真面目な奴が味方になってくれるなら大歓迎だ。単純に目が二つ増えるだけで、どれだけ危険を防げるか。最初の頃にダンジョンコアを持ち歩いていた状態の私って、この世界の者たちにとってはまさにチートだったな。そんな事を考えながら、いちおうデメリットが無いかを確認しておく。


「………別に紹介してもらっても、必ずパーティを組まなければ為らないって事はないんですね」

「ええ、何度も何度も断られるとさすがにあれだけど、組まなければ為らないって事はないわ。それに条件なんかもあるし、お試しで組んでもらってから細部を決めるのが一般的よ。どう?」

「それならこちらに不都合な事もないですし、こちらから是非お願いしたいぐらいです」

「よかったわ、引き受けてくれて」

 ジャッジアはさっきと違い、にっこりとした笑顔を浮かべた。


「いえいえ。こちらこそ、ありがとうございます」


 ジャッジアは、ちらっと横に座っているギルド職員の男の顔色を見たあと話を続けた。


「アールさんの扱いについてなんですが他所よそからも意見が出ていて、冒険者ギルドでも対策を考えていた所なんですよね。ただアールさんの意向を無視するわけにもいかないしって事で困ってたのよ。アールさんがお金に困っているならば、討伐依頼をどんどん受けてもらいたいってのもあるの。ただいきなり大物ってのもさすがにね。だから角ウサギ(ホーンラビット)とかゴブリンとかの常注の討伐依頼ででも慣らしてほしいんだけど、さすがに報酬がすくないのよね」


 うんうんと頷きながら話を促す。


「あとこういうのは普通は言わないんだけど、アールさんは経験がないから特例でね、教えちゃうんだけど、ちょっとなれた冒険者なら依頼の抱き合わせは普通にやってるの。朝一に来てもらえれば受けられると思うんだけど“ホーンラビットの角”だとか“ゴブリンの耳”だとかの素材回収依頼とそれぞれの討伐依頼を同時に受けて報酬の嵩上げするの。

ただ、素材回収依頼は数が少ないから競争率が激しいのよ。で、もっと慣れた冒険者なら競争率の激しい依頼を受ける事無くお金を稼ぐ方法をしってるの。そういう素材を欲しながら依頼料金をケチってるお店だとか欲しいけど少量しかいらないとかがあるんだけど、そういう店を知っていて、そんな所を何件か廻って買い取ってもらってるってわけなの」


 たしかにこういうのは普通は言わないな、ギルドが不利益をこうむる。それを私に教えるってことは私が珍しい存在で相当期待されてるってことの現れか……。面倒だと思う反面に利益をもたらしてくれるなら問題ないという思いもある。最悪は逃げればいいと割り切ろう、利用できる分は利用させてもらう。


「で、その店って教えてもらえるんです?」

 思わずニヤッと悪い顔が出たかもしれない。


「機密ですから、他の方には絶対に見せないでくださいね」

 そういって机の中から羊皮紙を取り出し私に手渡してきた。


「分かりました、約束は必ず守りますんで」

 と言いながら羊皮紙を受け取って中身を見ると……。


「これは助かるわ、本当にありがとう」

 頭を下げお礼を言ってから薬草の納品に向かう。

 ・・・

 ・・

 ・

 羊皮紙にはフェイ・ユンの店の名前が載っていた。他にも3件の店の名前が書いてあり、素材ごとのおおよその買い取り金額まで書かれている。さっき人目を忍んでギルドの素材回収依頼の報酬を確認したけど、大体8割ぐらいの買い取り額のようだ……まじでマル秘資料だわ。


 これで魔物の討伐さえうまくいくなら、いっきに状況が変わる。まだ暗くなるまでには少し時間はある。試しに外にでて魔物を狩ってみようと思う。



 角ウサギの方が弱いのだろうが、あれは駆け出しに人気だからこの時間からはさすがに無理かも。薬草採取していた時に何度か見かけたはぐれ(・・・)ゴブリンを探してみる。


 ゴブリンのルートは大体決まっているようだ。それほど時間を掛けずに2匹のゴブリンが彷徨っているのを見つけることが出来た。最初は1匹だけの方が良かったのだが、さすがにそこまで都合よくはなかったか。


 まだ距離は遠いので見つかってはいない。グギャグギャ騒がしくしながら近付いて来るゴブリンを藪に潜みながら待ち構える。


 さてどうしようか……いくらゴブリンだからと言って鎧がない状態で接近戦は避けたいな。周りに人も居ないしと、ストーンバレット(石の礫)の呪文を詠唱する。


 火や風の魔法も使えるようになったのだが、まだまだ安定感に不安がある。10回唱えて9回成功しても残り1回の失敗が致命傷になる可能性もあるのだ。ここは使い慣れた魔法で!


〈ドァイ スォウ メチェン プロゥ カァ シヴァ クラァン スカリィ〉


 タイミングを見計らって唱えられた魔法は、ゴブリンが射程範囲に入った瞬間に発動し拳大の石の礫が飛んでいく。


 バシュン!?


 ゴブリンの胸で赤い血の花が咲いたあと大きな穴が現れた。


 ……魔力を込めすぎて速度が出すぎたようだ、あれだと魔石は砕けてるな。横にいたゴブリンが混乱から立ち直ったのか驚いた様子で私に目を向けて来たのを確認しながら、もう一度、魔法を唱えられそうだと考える。刹那に魔法の種類を変えようかと逡巡するが詠唱するのに迷いは禁物だ、同じ石礫の魔法を唱えた。


 ゴブリンがこちらに向かって走ってくるが、魔法はある程度の余裕をもった状態で発動して石の礫はゴブリンの頭に向かって飛んでいった。


 バアァーン!!


 ゴブリンの頭が弾け飛ぶ。あれだ良く小説なんかで描かれていた熟したトマト(・・・・・・)がって奴だ。念のために剣の柄に手を掛けていた私の体に、ゴブリンの血飛沫が降り注ぐ。


 ……最悪だわ。ゴブリンの死体をみると、今度は素材になると言っていたゴブリンの耳がズタズタになっていた。


 血塗れになった体を袖で拭いながら、残っている魔石と耳を剥ぎ取る。




 どんよりとした気分で『これでも銅貨4枚か』と、なんか納得する。

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