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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
1章 おっさんがダンジョンマスターになるまで
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とろけるゼリー

 魚を捌くためにバラしたナイフを槍に結び直しながら、今後の事を考える。


 今いる場所は鹿を見つけた所から北に半日ほど進んできた地点だ。水と食料の為にもこの湖から離れると危険だろう。このまま湖沿いを探索して、人里を探すのがよさそうか。言葉は通じるんだろうか。


 焚火の火を見つめながら、コンロの燃料が勿体なかったなと思う。4日も歩き続けてお腹も凹んで来たな。など色んな事を考えながら、湖に視線を戻しのんびり眺めていた。


 いつの間にか夕日に照らされた湖をながめていると、以前見かけた渡り鳥だろうか中央付近で固まって浮いている。対岸・・には水牛だろうか、今まで見た中で一番大きそうな動物が水をのんでいる。


 その時、いきなり!!


 水牛が湖の中に引きずり込まれていく。微かに聞こえるバシャバシャという水音とともに暴れていたがが、ほんの数秒で姿が見えなくなってしまった。


 ワニでもいるのだろうか、ここも危険だ。頼りない槍を握りしめながら湖を睨んだ。


 日が沈みあたりが暗くなってきたのでテントの中のリュックを探ってヘッドライトを装着する。


 湖面をヘッドライトの明かりで照らしながら油断なく周囲の気配を伺う。すると、水中に違和感を感じた。直径1メートルぐらいの物体が数匹、浅瀬沿いにモゾモゾと近付いて来るのが解る。


 槍を持つ手に力を込めながら迎撃にむかう。


 何かがいるのは間違いない、スピードはそれほど速くはない。でも水辺に近寄り過ぎるのは危険だ、慎重にすすむ。相手との距離がどんどん縮まる、もう直ぐそこに居るのは解ってる。


 湖へ近付き過ぎないように3メートルぐらいの距離で身構える。おもむろにライトの中の水面が膨れ上がった。直径1メートルほどの水の塊がそのまま岸の上にあがってくる。


「‼⁇ 」声にならない声をあげ、咄嗟に手に持った槍で突き刺す。


 ゼリーような感触、無我夢中で何度も槍を突き出していると、水の塊は崩れるようにだらしなく広がった。


 倒せたみたいだ。何となく理解した。だが、まだ安心できない。後ろにいた2匹も岸に上がってきた。


 近い方に向き直って、後退あとずさりしながら必死に突き刺す。何度か繰り返していたが、急に槍の手応えがおかしくなった。穂先を目をやるとナイフが見当たらない。結んでいたタオルが薬品でもかけられたようにボロボロになっている。


 ただの木の棒となった槍を投げすて距離を取る。瞬間、さっきまで立っていた場所に水柱が立ち上がり、水飛沫(しぶき)が飛び散る。


「熱っ!! 」飛沫が掛かった左手の甲に痛みがはしった。思わぬ反撃に自然と腰が引け、踵を返してその場から逃げ出す。


 テントに駆け込み左手にライトをあてた。手の甲は火傷をしたように皮膚がめくれあがり、赤く腫れあがっていた。混乱しつつ服を確認してみるとあの水飛沫がかかった場所には穴が開いている。胸や足も軽く火傷をしていた。


「なんだ、あれ………スライム? みたいだ……酸による攻撃!? 」


 一度否定した、信じれなくなっていた思いがまた湧き上がってくる。……やはり異世界なのか!? 俄かに興奮が沸き起こってくる。だが手の痛みに心を引き締める。”俺は選ばれし者”とか慢心したら死ぬ。


 少し落ち着き外に気を向けると先ほど水飛沫を飛ばしたスライムも死んだようで、残った1匹が這うようにゆっくりだが近づいてくるのが解る。


 槍はもうない、リュックを漁る。レインコートを着込み防虫スプレーとライターを握りしめた。


 テントから飛び出し近づいてくるスライムを待ち構える。スライムはスピードをかえない。槍とは違い今度は近付かないといけない。


 こちらもジリジリと進み距離を詰める。


 1.5メートル、もうすぐ手が届きそうなところまで近づいた瞬間、スライムがいきなり立ち上るかのように大きく拡がった! 。中心付近から液体を吐きかけてくる、さっきの攻撃だ。


 驚きながらも辛うじて体を右に捻って直撃を避けたが、少し掛かってしまった。だが、レインコートは穴が開いただけで体に痛みはない。


 スライムは連続で吐き出せないのか、バウントしながら元の形に戻った。その隙をつく。


 ライターに火をつけ、スプレーを吹き付ける。ボウッという音ともに暗闇の中、思いのほか大きな火柱がまき起こりスライムを包み込んだ。


 火炎放射器とかした防虫スプレーを30秒ほど吹き付ける。


 目の前には形を崩しだらしなく広がった死体がある。


 もう、こちらに近づくスライムは居ないようだ。海外の衝撃映像も役に立つもんだ、とバースデーケーキのろうそくを消そうとして火だるまになったかわいそうな子供に想いを馳せながら「ふぅ」と大きく息を吐き、胸を撫で下ろす。


 緊張が解けるに従ってじわじわとモンスターを倒したという事実に興奮してきたのか、心の底から力が溢れ出る感覚に包まれた。


 不思議な感覚に高揚しながら戦果であるスライムの死体をじっくり調べたかったが、ヘッドライトの明かりでは良く判らない。


 仕方ないので明日調べようとテントに戻ろうとしたその時、湖とは反対の方向から近づく2匹の存在を感じ取った。


 素早くそちらに意識を向ける。今度はゴブリンだ。武器は持っていないようだが、真っすぐこちらに近づいてきてる‼


 こちらにも武器はない。身の危険を感じ、走ってテントに潜り込んだがさらに近づいて来るのが解る。


 『速い、片付けてる暇はない』テントや寝袋などを放置して、リュックを背負い外に飛び出す。


 しかし遅かった。10メートルほど先に2匹のゴブリンがいる。向こうもこちらを見ている。


 目が合った。ゴブリンは大きく口をあけてガラガラ声の威嚇音を響かせた。




 咄嗟にテントの外に置いていた、魚の切り身を投げ付けて全速力で走り出す。

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