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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
4章 おっさんと外の世界とのまじわり
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新たな仲魔を召喚する

 ダンジョンの配置や形状の変更を無事に完了させた私は、翌朝に皆を呼び出した。


 今までは私が人族の町に出発したあと皆が問題なく暮らせるようにハード、つまりダンジョン自体を整備してきたのだが今からはソフト、つまり運用方法について色々と指示を出しておこうと思う。


 これまではDP(ダンジョンポイント)を集める為に継続して狩りを行わせていたのだが、私がいない間は無理をする必要はない。帰ってくるまで何も問題なく無事であればそれで良いのだ。


 だから、積極的にダンジョンの外に出て狩りを行うのではなく、初期の頃のようにシャドウウルフ(オオカミ)なんかがダンジョンの支配範囲の中に侵入してきた時のみ、それを撃退すればよい。


 まあそれでも、うちの眷属のゴブリンにケット・シー、それに招き入れたゴブリンの雄たちが洞くつの外で色々と作業を行う予定だから、オオカミは引き寄せてしまうだろう。侵入してきたやつだけを狩ったとしても、ある程度はダンジョンポイントの収入もあるはずだ。


 トロイの情報ではしばらくの間、オークたちがここに来る事は無いと言っていたが、念には念を入れて置かなければならない。この前のオークの襲撃みたいに多くの敵が殺到してきた時の対応も指示しておく。


 基本的に洞窟に入ってすぐにある大部屋は一種の殺し間になっている。1階の守備要員であるケット・シーとなまえ持ちの魔物(ユニークモンスター)に新たに2階に配置したスケルトンアーチャーが連携すれば、まず問題は起きないだろう。しかもクロップスビー(キノコ蜂)も参戦するはずだし、スライムもゴブリンもいる。それに少しでも危険を感じたらオーク襲撃の時のように撤退しながら戦えばいい。2階の階段上の部屋まで下がれば、リッチ先生とスケルトン達も参戦してくるから戦力がさらに増える。その為の場所は用意しておいたし、みんなの実力もあがっているから大丈夫だろう。


 冥府の番犬( ハチ )に、コボルトのナナとロクを率いて留守の間のダンジョンを守るように頼んだ。


「「「ダンジョン防衛 お任せ下さい あるじさま!!」」」ハチは誇らしげに3つの首を真直ぐ伸ばして返事してくれた。


 横にいるナナとロクにも声をかける。


「ナナは身重なんだから体を労りながら、ロクはナナをきちんとフォローしながらダンジョンコアを守ってくれ」


 二匹はそれぞれ『ハイ マスター』、『了解 ロクはナナ 守ル』と伝えてきた。ハチの3つの頭、ナナ、ロクと順番に頭を撫でてやりながら感謝の気持ちを伝えておく。


 次にピクシーのサンとスー、それにゴブリンのトロイに向かって指示をだす。


「サンとスーは引き続き外の畑の監理をしながら、新しく作った洞窟内の畑の様子もみてくれ。トロイはゴブリンの雌と子供たちを上手く率いて、サンとスーの指示に従いながら洞窟内の畑で作業してくれ」


 するとサンが「外の畑は順調ですわ。そんなに手はかからないですの」と返事し、続いてスーが「スー頑張る! マスター、帰って来た時 ビックリさせて見せるね」と張り切って声をあげる。


「ご期待にそえるよう頑張りマス」トロイは深く頭を下げながら了承の言葉を発してくれた。


 トロイとは今後のゴブリンたちへの扱いについて、どんな感じにしていくか行くか何度も何度も話し合っているので、何をすれば良いのか十分理解してくれているはずだ。


 バンパイアバット( 吸血蝙蝠 )たちへの指示は特にない。いつものように偵察しながら、怪我をしないように狩りでもしておいてもらおう。


 最後にダンシングレー( お玉さん )ドルに声をかける。


「お玉さんは大変だろうけど、全体の状況を見て不味そうな所があったらフォローしたりバランスを取りながらして、皆の作業を手伝ってあげて欲しい」


「信頼していただき、ありがとうございます。主様あるじさまのご期待に沿えるように頑張りたいのですが………主様、私をダンジョンに置いて行くのではなく、主様と一緒に町へ連れて行って貰えないでしょうか?」


 お玉さんは、言い辛そうに留守番ではなく同行したいと言ってきた。


 少し吃驚びっくりしながら考える。いや、お玉さんを連れて行くのなんて論外だ。情報が殆どない所に行くのだ、絶対に安全という保証はない。もしもお玉さんが死んで居なくなってしまったら、今後のこの世界での生活は成り立たない。しかもお玉さんには、DPの全ロストという恐ろしい罠ペナルティもあるのだ。


 今までのように、すぐに逃げ込める場所があったり安全な場所であるならお玉さんが戦闘に参加するのも問題はないが、今回は違う。連れて行く訳にはいかない。それに単純に町に行く目的の事を考えたらお玉さんを連れて行きたくはないってのもある。


 とりあえず適当に理由をつけて、断わって置こうと思う。


「うーん、バイコーン(双角幻馬)を召喚してないから何とも言えないけど、2人も運ぶのは大変じゃないかな」

「少し時間を頂けたら、この私の鎧の体を主様が装着出来る様に調整いたします。それなら実質一人分になります。主様がお一人で出かけて、万が一の事があったらと考えると、私はどうしたら良いか解りません。だから、どうか私も一緒にお連れください」


 いつものような従順で可愛らしい雰囲気ではなく、必死な感じで訴えかけてくる。


 そこまで必死に言われると、考えてしまう。確かに私が1人で町にいくのは危険があるかもしれない。


 しかし、お玉さんを装備するのか……お玉さんが女騎士の鎧姿ってのもあったのだろうが、考えたことも無かった。確かにお玉さんという鎧を私が装備してしまえば、実質一人分だ。しかも、クロップスビー(キノコ蜂)の毒針を弾くあの強度があれば、ゴブリンの粗末な武器なんかでは傷すらつかないだろう。あの鎧を私が装備すれば、相当に安全性が高まるのは間違いない。


 それにお玉さんがやられてしまうような敵と遭遇したら、自分ひとりで対応するのも難しいし、出発前にはダンジョンポイントをほとんど使い切っている予定だしな……。


 そんな風に悩んでいたらお玉さんが言葉をつづけた。


「それに、主様は双角幻馬を召喚して町に向かうとの事ですが、馬に乗った事はあるのでしょうか? 私と一緒なら問題なく騎乗することはできますが……」


 ……うん、一緒に行くのは決定のようだ。全体の管理は、ハチとリッチ先生に任せれば問題ないか。


 それにしても騎乗して移動するって事を、ちゃんと考えていなかったわ。このファンタジーの世界に随分と毒されてきたのかもしれない。勝手に自分が馬に乗れると思い込んでいた。前の世界で馬に乗るなんて、大事おおごとだったのにな。


「お玉さんの鎧の体!? を私が着れるように調整するのには、どれくらいの期間が必要になる?」

「今日一日頂ければ、問題ありません。明日の朝には出発できるかと思います」

「じゃあ、お玉さんは今日一日は準備をお願い。で、お玉さんが忙しくなるからナナとロクは、今日の食事を用意して。どうせ、明日から俺たちが帰ってくるまでの間は食事の用意をして貰わないといけないし、今日から作ってもらうのも問題ないとおもう。

その分、ハチには迷惑かけるけど今日は何が何でもDPを稼がなければならないって訳でもない。だからいつにも増して安全重視で今日の狩りに向かってほしい」


 ひと息ついて、言葉を続ける。


「サンとスーはさっき話した通り、トロイに指示を出しながら作物を育てるように。俺は明日まで時間ができたのでバイコーン()を召喚した後、“守りの森”のノーム爺さんの所にしばらくの間留守にするって事を伝えてくる」


 と、みんなに指示を出し直しそれぞれの仕事に向かうよう送り出した。


 そのあと私は双角幻馬を召喚するためにコア部屋に移動する。そして魔物の名前が並んだ画面をスクロールさせていき、コストが280ポイントの欄に並ぶお目当ての馬の名前を選択した。


     名前:バイコーン

     種族:双角幻馬

    レベル:5

     HP:51

     MP:7

      力:17

    器用さ:8

    耐久力:34

    素早さ:24

     賢さ:6

    スキル:嘶き


 選択した後にDPが消費されると、いつものように目の前の景色が揺らぎ黒い霧が湧き立ち、召喚した魔物の形に集まり黒い大きな馬体が形作られていく。青毛の競走馬のようにたてがみも尻尾も真黒で、頭部からは山羊のような湾曲した角が2本生えている魔物が立っている。


 姿を現した仲魔が「ブヒヒィーン」といななきながら、その大きな体を摺り寄せるようにして甘えて来た。ステータスの“賢さ”が低かったので予想はしていたが、やはり言葉は喋れないようだ。体を撫でてやりながらユニーク登録するために、こいつの名前を考える事にする。


「ちなみにお前は雄か雌どっちなんだ。雄か?」


 そう尋ねると、首を横に振りながら「ブルブルブルル」と返事する。


「じゃあ雌か?」すると首を大きく縦に振り「ブヒヒヒヒン」と明るい声で嘶いた。


 どうやら雌のようだ。第一印象は黒い立派な馬体を見て“日曜の静寂号サンデーサイレンスゴウ”とか“黒龍号コクリュウゴウ”とかが頭に浮かんだのだが雌ならあれだ、今まで付けてきた名前と同じ系統で問題ない。


「黒い体だしお前の名前はクー。ピッタリだろ」


 そう言うと、クーは嬉しそうに頭を上下に振り興奮して前足で地面を掻いている。


 気に入ってもらえたようだ。待ちきれないという思いが伝わってきたので、クーの体に血肉を与えるためにユニーク登録をさっそく行う事にした。ダンジョンコアに表示されていたDPが一気に2800ポイントも減る。


「ステータス」


     名前:クー

     種族:双角幻馬

    レベル:5

     HP:64

     MP:12

      力:21

    器用さ:10

    耐久力:43

    素早さ:31

     賢さ:8

    スキル:嘶き


 無事ユニーク登録が完了した。クーの大きな首筋を撫でてやりながら声をかける。


「これから“守りの森”のノーム爺さんに挨拶しに行くんで、散歩がてら一緒にいこうか」




 そう言って“守りの森”に出かけることにした。

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