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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
1章 おっさんがダンジョンマスターになるまで
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大きな獲物を捕まえた

 さぁ、出発だ!


 コンパスで進行方向をきっちり確認する。南東方向にまっすぐ進むのだ。太陽が昇りだし真正面から顔を照らす。眩しさに目を細めながら一歩一歩足を前にだす。

 ・・・

 ・・

 ・

 昼過ぎまで進んだが周囲の草原の雰囲気は変らない。唯一あった変化と言えば地平線の彼方に、薄っすらと山脈やまなみが見えてきたぐらいか。それでも、山があるなら川があるはず。直観は間違っていなかったという事だ。


 日差しは相変わらずきつかったがそれほど暑くない。


 ここまで進んでくる間に何度か動物の気配を感じたが、近付く前に居なくなってしまう。種類はネズミやうさぎのような小動物から、シカのような大型の動物まで。ただ、すぐに逃げてしまうのでしっかりとは確認できてない。


 それより今はとにかく前進だ。食料と水を節約しつつ軽快な足取りで進んで行くのである。

 ・・・

 ・・

 ・

 昼休憩から4時間ほどが経過したのか。それほど疲れて無いしまだまだ明るいが、野営の準備を始めようと思う。


 まだ初日。無理をする必要はないしライトも貴重品だから暗くなってからの行動は避けようと思う。節約するのだ。


 太陽が沈み切る前に保存食のチョコレート味を食べて、ひと息ついた。なんか、のんびりとした時間がながれる。ふと上を見上げると今まで見たことのない満点の星空である。昨日の夜は気づかなかった。数分に一度流れ星が尾をひいて瞬いていく。星空にみとれ、圧倒されながら思いをはせる。


 以前に星空を見に出かけた時は、傍らに柔らかな温もりがあった……もういい、寝よう。

 ・・・・・

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 出発して4日目の朝である。朝焼けの中、目を覚ました。3日間(・・・)歩き続けて体は疲れ切っていたが、寝るのが早いからか少し明るくなるとすぐ目が覚める。緊張で神経をすり減らし、過敏に反応してるのかもしれない。寝袋から這い出てテントをたたみ、出発の準備をする。


 遠くに見えてた山脈やまなみの輪郭がクッキリしだし、上半分が真っ白な雪で覆われているのが見て取れる。全然近づいてはこない、もしかして滅茶苦茶遠いのだろうか……。分かる事は、まだまだ時間が掛かりそうだという事だけ。


 膝上まであった草も短くなり、まばらにしか生えてない。所々あった木も少なくなり、ゴロゴロとした大きな岩が転がっている。動物の気配もどんどん少なくなっている。


 誰にも会えない。何も手掛かりがない。保存食はあとフルーツ味が1本残っているだけだ。水は昨日最後の一口を飲み干してしまった。


 もう、やばい。水がない。


 いや、最初から何もなかった。冷静になって、考えてみる。


 何故か根拠のない直観を信じて、ここまで進んで来てしまった。自分自身の能力を過信してたのか。ここまでの人生経験で、安全性や慎重さ、冷静な判断力を養ってきたと思ってのに……。


 常識的に考えて異世界転位、異世界転生なんかあり得ない。”俺は選ばれし者”とか浮かれていたのか。特殊なサバイバル技術を持ってる訳でも無いのに、広大な平原のど真ん中で、生き抜いて行けるなど舐めていた。


 やはり、最初から何かおかしかったのだ。不安も焦りも何も感じていなかった。狂っているのか、それとも夢でもみてるのか。こういうのは自分では分からないと言うが、そういう事か……。


 だいたい”魔物”など居る訳がない。いきなりこんな所に放りだされた夜に見た幻だったのだ。失敗した、もう来た道をもどる事など出来ない。


 ……今は何としてでも、生き抜く事を考えなければ。


 生命の危機からか、感覚が研ぎ澄まされている。これを頼りに今なら何とか生き物を見つけれるはずだ。狩れるなら狩る、が無理ならせめて追いかける。動物がいるなら何処かに水飲み場があるかもしれない。



 準備を整え、朝のひんやりとした空気のなか慎重に進み。とにかく生き物の気配をさぐりながら進むで行く。


 しばらく歩いていると、進行方向の右側、離れた所に鹿がいる気配を感じ取った。素早く伏せ『頼む、ばれるな』と祈る。


 最後のチャンスかもしれない。


 ゆっくりとその方向に視線をむけると、他にも何匹かいた。さらに注意深く見ていると、どうやら小さな子供もいるようだ。


 はやる気持ちを抑えつつ、慎重に近づいていく。こちらが近づいていくと、向こうが離れていく。


 気付かれてるのか、いないのか。でも、走って逃げて行くという事はない。息を潜ませ心臓の鼓動を抑え、じっと待つ。

 ・・・

 ・・

 ・

 群れが動きだした。


 一定距離を取りながら、逃げられないよう、見失わないよう、こっそり、こっそりつけていく。付かず離れず、ひたすら尾行しつづける。


 以外にばれない物だと変に感心する。少しホッとしながらも、集中を切らさないよう気を入れ直した。


 途中何度か小休止を挟み鹿の群れは歩き続ける。


 そして太陽が真上まで来たころに、ついに見つけた。対岸までの距離は300メートルぐらいあるか。左右に大きく広がる真っ青な湖面・・



 思わず鹿の群れの事を忘れ駆け出した。湖に手を差し込み水を掬う。手に心地よい冷たさを感じた。


 まずは水分補給だ。


 はやる気持ちを抑えコンロで煮沸したあとにひと口。


 ……熱いが変な味も無い。そのままじっくり時間をかけてコップの水を飲み干し「とりあえず、助かったのか」と独り言ちた。



 湖周辺にテントをはる事にし、水面から少し高い位置にある平らな場所に設置した。途中、鹿の群れの事を思い出して慌てて周りを見回したがもう何処にもいなかった。


 水筒に水を溜める為に何度か往復しながら、湖の様子を見てみる。遠くのほうで、小動物が水を飲みに来ているのはちらほら見える。


「さすがに、捕まえれないだろうな」

少し落ち着いたのそんな言葉がひとりでに続く。


 湖の方に気持ちを向けてみると、近くにも魚がいるのが感じ取れた。テントから少し離れた岸辺に葦のような植物があるのだが、その根元にナマズのような魚がいるのが解る。煮沸作業をいったん止め、音を立て無いようゆっくりと岸辺に近づき槍を構える。


 狙いを定め、槍を突き刺した!


 槍の先にバタバタとあばれる手応え。逃げられない様にぐっと槍を押し込み、水の中に飛び込んで魚を抱きかかえる。80センチメートルはあるだろうか。


 腕の中でまだあばれているので岸に向かって強引に放り投げる。外れた槍を拾い地面の上でバタバタと跳ね回っている魚に止めを刺した。趣味で釣りをしていたがこれまでの中で一番でかい。


 大物を手に入れた興奮に包まれながら調理の準備を始める。


 岸辺に打ち上げられた枯れ枝を集め、それを並べた真ん中に手ごろな石を置く。その石の上にさばいた魚の半身を置いて、枯れ枝に火をつけた。とにかく火を通せば食べられるだろう。


 久々に嗅ぐ食べ物の匂いに思わず、よだれが垂れてくる。生焼けの所もあったが、久しぶりの魚を美味しく頂いた。




 腹も収まりなんとか落ち着いたので、今後の行動を考えてみようと思う。

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