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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
3章 おっさんがダンジョンを強くする
39/81

成功と異変と

 ダンジョンを拡張してから十日程が経過していた。ピクシーのスーが頑張ってくれたおかげで、クロップスビー(キノコ蜂)は数を増やしブンブンと飛び回ってる。


 今はようやく平気になったのだが、実はこの状態に慣れるには相当に時間が掛かったのだ。


 ダンジョンマスターである私はダンジョンの支配範囲内にいる全ての者を感知できる。ダンジョンの眷属である仲間の魔物は自然に受け入れられるのだが、眷属になっていないキノコ蜂は……。


 最初は女王蜂1匹だけだったので『そこにいる』と思うだけでよかった。卵が産まれても、まだ大丈夫だった。けど卵から幼虫が次々と孵りだすと、そこからはもう整理し切れなくなった。


 幼虫がモソモソと移動するたびに、生え始めた羽をブンブンと羽ばたかせるたびに気配を感じ取る。そして多くの幼虫が成長し、数を増やし、洞窟の外に飛び出し、また戻ってくるようになったら……まさに寝ても覚めてもって奴だ、存在が気になって仕方がないのだ。



 私の機嫌はドンドン悪くなっていった。


 そんな私を気遣ってか冥府の番犬( ハチ )の様子が変わった。今までは、出来るだけ狩りをして魔石を集めようとしてたのに、最近はナナとロクが集落に向かうとすぐに帰ってくるようになったのだ。


 ダンジョン内での様子も違う。前は時間が空いたら訓練なんかもしてたのだが、今では常時、横に付き従い離れる事がなくなった。私が寝る時も、以前はコア部屋の外で警護してたのに最近はコア部屋の中に入ってくるようになった。


「ハチ公 部屋の中 護衛する」「主様あるじさまの事 心配」「お願い ハチ公 静かにする」


 信頼できるハチの存在を身近に感じられるので、心が癒される。


 それにダンシングレー( お玉さん )ドルも気遣ってくれてるようだ。今までも全く気にならなかったのに、さらに気配を消そうとしてくれてるようだ。


主様あるじさま、気に障るのなら鎧の召喚を止めましょうか?」

とまで言ってきたが『イヤイヤそれは心の癒しです』と心の中で突っ込んで、断っておいた。


 二人の気遣いが嬉しくて幸せな気持ちになる。それでもキノコ蜂の気配が消えることは無い。夜中にイライラしてたまらず喚いてしまった。


「この気配の多さ、なんとかならんのか」


 するとコアさんが、教えてくれた。


『紛れ込んだ者の気配を感じ取り、ダンジョンや眷属に対する敵意や悪意の有無を選別してください。そうすれば眷属と同じように気にならなくなります』


 うん、このタイミング。コアさん健在だ。頭を掻きむしり、それでも助かったと思う。


「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えておいた。


 たしかに、今までも小動物や魚はあまり気にならなかったのだ。魔物だからだろうか、敏感に気配を感じ取ってしまうようだ。


 その後は1匹1匹の敵意、悪意の有無を瞬時に判断する訓練を続けていった。今ではキノコ蜂が外から帰ってきても敵意も悪意もないので全く気にならなくなっている。



 キノコ蜂の件はこれでもう大丈夫かと思ったが、今度はスーが頑張りすぎた。


 女王蜂には「ダンジョンに対して危害を加えるな」と命令していたので、最初の内は全く問題なかった。だが、時間が経ちさらに蜂の数が増えてくると、通路になってる一階大部屋でキノコ蜂と、バンパイアバット( 吸血蝙蝠 )やゴブリン達との間で小競り合いが起こりだしたのだ。


 次第に小競り合いは争いに変っていく。一回一回の争いは小さく、ただ単にダンジョン内で魔物の蜂が死ぬだけなので、これは美味しいかもと放置してたのだが、だんだんと回数が増え途中からうっとおしくなってきた。時間構わずに戦いだすので寝てる時でも敵意を感じて意識が集中してしまうのだ。


 そこでスーに状況の確認をさせたのだが、どうやら働き蜂が増えすぎて巣が手狭になってきたらしい。それで本能的に巣を広げようとして命令違反を犯してしまうそうだ。しかも働き蜂は生まれ続けるので、女王蜂は自分でも制御しきれないと言ってきた。それどころか「ここから追い出すぞ」と脅しても「迷惑なら間引いて。お願い」とまで言ってきたのだ。働き蜂が減っても、この洞窟に居られるならその方がいいらしい。


 仕方がないので、1階の大部屋に配置していた蝙蝠2匹をなまえ持ちの魔物(ユニークモンスター)にして外の偵察部隊に加え、残りの仲魔の拠点は別の場所に移すことにした。ゴブリンは地下に、スライムは奥にそれぞれ寝床を移して場所を確保しつつ、働き蜂を定期的に間引いていく。


 結果的には、日に10匹ほど間引く事になった。普通なら駆逐してしまう数らしいが、スーがグロウスアップを使っているのでバランスが取れるようだ。何にしても、これで夜中に起こされる事は無くなったしDP(ダンジョンポイント)も安定して入ってくる。それにスーからはキノコとハチミツがそろそろ収穫できるという報告まであがってきた。


 問題もあったけど、やっぱり女王蜂をダンジョンに連れてきたのは成功みたいだ。



 DPも良い感じで増えている。蜂の分が増えたし、ゴブリンの集落で集めている魔石の量も安定してるし“守りの森”でのジャイアントスパイ(大蜘蛛)ダーも狩り続けている。


 それに、自分達のレベル上げも再開している。私もお玉さんもリッチ先生も1つずつレベルが上がった。


 外周りユニーク部隊(ナンバーズ部隊)もそれぞれレベルを上げている。ナナとロクもレベルが19になったが、あちらの準備も万端だ。


 “守りの森”ではノームの爺さんとも仲良くやってるし、たまにグリフォンのフィラも顔を見せるようになった。フィラは私たちが倒した蜘蛛を目当てに飛んできてそれを美味しそうに食べるのだ。自分でも倒せるだろ! と思ってたが、最近は何となく私たちの事を気に入ってくれているのが分かったので、まぁ問題ない。それに魔族の動きも無いし、こちらも良い感じだ。


 剣の修行は、劇的に腕が伸びるということは無いが地道に戦闘を繰り返している。魔法の方も、低級魔法なら一応すべて使えるようになった。もうすぐ寒くなるらしいが食料も蓄えている。良し! 全てにおいて順調だ。

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 そんなある日、異変に気付いた。



 休憩時間にお玉さんがお茶を淹れて持ってきてくれる。


「お玉さん、いつも有難う」と言いながら、いつもの様に頭に手をもっていく。


 ほとんど習慣になっているがお玉さんは多分喜んでくれてるはずだ。だが、表情が読めないからいまいち分かりずらい。頭をこちらに近づけてくるし、嫌なら雰囲気で分かると思うが……。


 順調すぎて思考が負のスパイラルに陥る。もしかして、嫌々やっているのか。今度、頭に触れるのを止めて様子をみようかなど、止め処なくそんな事を考えて、昼になったのでナナとロクを送り出す。


 洞窟の入り口まで降りて行き、見送った。ふと、畑をみるとサンとスーが飛び回りながら色々とゴブリン達に指示を出している。あれ、スーはこの時間は狩りに行ってるはずなんだが……何か言ってたかな。


 気になって、サンとスーの様子を見ているとちょっとおかしい。何がおかしいのだろうかと悩んでいたのだが、分からないままハチが帰って来たので出迎える。


「ハチ、お帰り」と言いながら頭を撫でてやる。


 嬉しそうにしながら、魔石の入った袋を渡してくる。中を確認すると、シャドウウルフ(オオカミ)の他にロックリザードやマッドラット、ポイズンワーム等、最近新たに手に入れだした魔石がいろいろと入っている。DPも合計で150ポイント以上、十分な量だ。


「おお、ハチお疲れさま。でも、最近帰りが早いのに、こんないろんな種類を集めんの大変じゃないのか?」

「魔石集める 主様あるじさまが喜ぶ ハチ公嬉しい みんなも嬉しい」「主様あるじさまの護衛 一番大事」「ハチ公 すぐ戻れる。 みんないる 問題ない」


 いつも頑張ってくれてるし、可愛いことをいう。思わず体中を撫でまわす。ハチがお腹を見せて喜んでいる。これで姿がいかつくなければ……まあもう慣れた十分可愛いのだ。


 ひとしきり撫でた後、ふと思う。あれ? ここではお腹を見せる事は無いのに……。


 周りに格下の者がいるときは、必死に耐えるのだ。その姿もまた可愛いのだが。


 それでようやくさっき感じた違和感の正体に気付いた。サンとスーの指示している畑の位置がこの場所から遠いのだ。あらためて、周りを見回す。あれ、畑の面積が増えてる!?


 広くなった畑の中を冷たい風が吹き抜け、体がぶるっと震えた。




 そういえばもうすぐ寒くなると言ってたな。

説明回になりました。くどかったかもしれません。

ちなみに↓は上手く組み込めずカットしました。


必死の訓練の結果、蜂の敵意や悪意を感じ取れるようになった。

これはもしかして、ニュースキルが!!

興奮しながら、ステータスでスキルを確認してみる。

がそこには何も書かれて無かった。

ガッカリしながらコアさんに聞いてみると、ダンジョンコア操作のスキルの扱いが上手くなっただけだそうだ。

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