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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
3章 おっさんがダンジョンを強くする
36/81

会話より脳筋が好き

 ノームの爺さんが“守りの森”のクロップスビー(キノコ蜂)の巣の中へ入っていく。


 その後を若いノームの2人が追い、続いてうちの冥府の番犬( ハチ )、コボルトのナナとロク、ピクシーのサンが入っていった。


 最後にスーが「マスター、スー頑張って女王蜂、連れてくるね。待ってて~」と明るい声を出しながら巣の中に消えて行くと、急に沈黙が訪れた。



 グリフォンの少し荒い息遣いと、ケンタウロスの周囲を歩き回る蹄の音だけが響いている。


 うーん、ちょっと重苦しい。雰囲気を変えようとケンタウロスのミーズに話し掛ける事にした。


「ミーズさん、お仲間ってどれくらいの数がいらっしゃるんですか?」

「近隣のかたよ、外部の者に我らの戦力を教える事はできん」

「いや、そう言う意味で聞いたんではないんですが……それならどの辺りに住んでるんです?」

「外部の方よ、我らの防衛拠点を教える事は出来ん。我らの事をお探りか」


 そう言いながら腰にさげる長刀に手を掛けた。


「キュピィーーー!!!」グリフォンの鳴き声も響いく。


 いやいやいやいや、なんだこいつら。雑談さえ出来んのか。排他的とか言ってたけど、これ本気まじか。しかしヤバいなノーム爺さんも居ないしどうしようか。


 悩んでいるとダンシングレー( お玉さん )ドルが「ガシャン!!」と音を立ててひざまずき、助け舟を出してくれる。


主様あるじさま申し訳ございません。私が食事にお招きする人の数を教えて欲しいと言ったばかりに……」


 さすが気が利くお玉さんだ、上手く繋がないと。


「いや、私の聞き方が悪かったみたいだ。お玉さんが謝る必要はないよ。ミーズさんもフィラさんも不快な思いをさせてしまったようで申し訳ありません」


 謝罪の言葉に少しケンタウロスとグリフォンの態度が和らいだみたいだ。


「もしご足労でなければ、お仲間と一緒に来ていただけないかと思いまして。どうです、我々と食事など如何でしょうか?」

「近隣の方よ、招待は感謝する。だが遠慮しておく。我らが“守りの森”の外に行く必要は無い」

「そうですか、残念です。いろいろお話を伺いたかったのですが」


 ケンタウロスのミーズが顔をしかめた。あっ、これも失敗か。秘密をとか言われそうか、クソ、めんどくさい。と思った瞬間、お玉さんがまた頑張ってくれた。


「ええ、残念ですよね主様あるじさま。好きな食べ物が分れば自慢の料理を振る舞う事もできましたし、お困りの事があればお役に立てる事があったかもしれません、私もお話を伺いたかったです」

「鎧の方よ、ご厚意感謝する。されど我らの種族はこの森の物を食し、森と星の声を聴く。お気遣いは無用だ」

「そうですよね。さすがは森の賢人たるケンタウロスさんだ。さすがですわ!!」


 その言葉にケンタウロスのミーズは軽く会釈して見回りに戻った。ダメだ、適当になってる。ミーズは気づかなかったようだが、お玉さんからは刺すような冷たい視線を感じる。まあ、兜の中に目は無いのだが。


 変に話し掛けて敵対するより沈黙の方がましか。仕方なく周囲の警戒にあたる。


 そう言えばお玉さんの鎧だが昨日より格好良くなってるな。頭の部分だって昨日はまるでひっくり返したバケツだったのに、今は色々と装飾が施してある。あのフェイスガードなんて開いたら本当に顔がありそうだ。それで、ありもしない視線なんて感じるんだろうか……。


 そんな事を考えていると、突然フィラが重心をさらに落として警戒しだした。気を取り直して巣穴に目をやると、サンが飛び出して来た。続いてノーム三人が茸がいっぱいに詰まった大きな袋を背負って出てくる。遅れてナナとロクも大きな袋を背負って這うようにして出てきた。


 少しく……しばくすると巣の中から、何かがカサカサと動くような音が聞こえてきた。まだ、ハチとスーが出てきてない、ロングソード(両手剣)に手を掛け待ち構える。


 すると牛ぐらいの大きさの蜂がスーに引きずられるようにして出てきた。


「マスター、攻撃しちゃダメ~。スーが女王蜂を連れてきたの!」


 グリフォンの動きを遮るように一歩前に出て様子を窺うと、スーは女王蜂の首に紐を結んで持っている。攻撃してくる事は無いようだ。


 最後に後ずさりしながらハチが出てくると、口から緑の霧を吐き出した。あれが毒ブレスか!? 初めての技に見とれてるとハチがかたわらまで下がって来て報告してくる。


主様あるじさま、ご注意を」「蜂の大軍 来る」

「大軍か分かった。それよりハチ、全員無事か?」

「大丈夫 全員 ケガない」


 そう答えながらもう一度、巣穴に向かってブレスを吐きつけている。巣穴からは毒ブレスで弱っている蜂を飛び越えるようにして一匹また一匹とキノコ蜂が飛び出してくる。そこにバサッとグリフォンのフィラが飛び掛かり、キノコ蜂の体を鋭い爪でおさえるとくちばしで頭をもぎ取った。ミーズも駆け寄ると、長刀で斬りかかりキノコ蜂の体を少しずつバラバラにしていく。


 グリフォンは私より少し弱いぐらい、ケンタウロスはロクより弱いぐらいだろうか。戦力を分析しながら、しばらくミーズとフィラに任せていると巣から出てくるキノコ蜂の数が凄い勢いで増えてきた。次第にミーズとフィラは押され出し、チラチラとこちらを見ている。そろそろ出番かな、変な会話より戦う方がよっぽど楽ちんだわ。


 ナナとロクにノームの護衛を、ハチとスーに女王蜂の見張りを。サンに周囲の警戒をそれぞれ命令したあと、剣を構えながら前に進む。


 横に付き従っていたお玉さんが音楽を奏で、踊るように蜂の頭を刈り取りだした。私もお玉さんの支援効果を受けがら、出てくるキノコ蜂を一撃で次々と仕留めて行く。なんか、横スクロールのシューティングゲームをやっているような気分だ。あまりの殲滅スピードにミーズは途中から呆気にとられたように手を止めている。フィラは戦うのを放棄して蜂の死体をついばみ始めた。


 出てくる勢いより殲滅の方が早いな。2人で50匹ほど倒したタイミングで、ひと際大きいキノコ蜂が出てきた。


「将軍クラスのキノコ蜂です。トロルより手強いと言われていますのでお気を付けください」とお玉さんが忠告しながら、一撃で首を刈り取ってしまった。


 ん?? 将軍はもうすでに死んでいるようなんだが……。ツッコミを入れた方がいいのか? と悩んでいると今のが最後だったようだ。キノコ蜂はもう出てこなくなった。



ノーム爺さんが警戒を解きながら近づいて来て笑う。


「こんな大きな女王蜂は見た事ないですじゃ。大体じゃ、蜂の数が減ったのでこっそり採る予定じゃったのに、全滅させるとは。さすがはマスターさんじゃ。ウハハハ」

「強き者を統べる方よ、この女王蜂を如何するのですか?」と、一緒に近づいて来たミーズが話し出す。


 ん!? 強き者を統べる者……こっちを向いているし私の事だろうか、少し態度が変わったミーズに答えてみる。


「少し調べたい事があるので連れ帰ろうと思っているのですが、何か問題はありますでしょうか?」

「そうでしたか。此れ程の女王蜂は危険だが、統べる方なら問題ないかも知れぬ。それに先程は助けて頂き、礼を言わせていただく」

「いえいえ、助けたとか。もともと仲間じゃないですか」

「そう言って頂くと嬉しい。貴公達の腕前には感服いたした。これからも良しなに頼みます」

「キュピィ~~~」


 グリフォンのフィラも機嫌が良いのか嬉しそうな鳴き声を上げた。


 目標は達成したし、長居は無用か。女王蜂を早く安全な所まで連れて行きたい。ナナとロクが背負った袋に魔石と茸が大量に入ってるそうだし、外の魔石は勿体ない気もするが置いて帰る事にした。


「こちらこそ、よろしくお願いします。それでは私たちはこの辺で失礼しますね」

「統べる者よ、ノームが持ち帰った茸の分け前は如何する」

「最初からこちらの目的は女王蜂でしたし、こちらの分はもう確保しています。そちらの分は皆さんでお分けください」


 そう言って、女王蜂を連れながらダンジョンに引き返すことにした。しかし女王蜂は言う事を聞いてくれるだろうか。




 上手くいけばハチミツに調味料に紅茶まで手に入れる事ができるのだが……。

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