未知なるスキルの調査
翌朝はスキルの可能性について聞き取り調査をすることにした。
あっ、その前に調査と言えば性別の調査なのだが、あれはしばらくの間は聞かない事に決めている。なぜなら私は楽しみをギリギリまで取って置くタイプなのだ。
まあヘタレともいうが、すぐに結論は出したくない感じなのだ。もし調べて万が一全員がオス!! とかいう結果になったら立ち直る自信がない。
いや、ダンシングレードルはメスというか女だろうけど今回は除外だし、ピクシーのサンとスーも女の子っぽいが性格があれだし、体も小さいし、大きな複眼が虫っぽさを感じさせるのであまり性的な興味はない。しかもあれで男とかいうオチもありそうだし……。
問題はコボルトのナナとロクで、何となくナナがメスなのでは? と期待している。少し前にレベルが17になったからもうすぐなのだ。クラスチェンジの時が楽しみでもあり不安でもある。
話がそれた、今はスキルの方だ。注目はリッチ先生だが他の眷属も確認しておくべきだろう。ちょうど帰って来たバンパイアバットたちから聞いてみようかと思う。
まずは報告を受ける。うん、やっぱりシャドウウルフは集落を襲撃してるようだ。昨日少なかったのは何かあったのだろうか、経過観察が必要だな。
それよりスキルの確認だが、蝙蝠とは意思の疎通が上手く出来ないのを忘れてた。初っ端から難しい相手だったけど、それでも質問を繰り返した結果、レベルが上がれば微妙なスキルを覚えるかもしれない、という事が分った。うん、放置だ。ただ安全に倒せる敵がいるならレベルを上げておいてと言っておいた。
次は外周りユニーク部隊だ。狩りへ送り出しながら質問する。
冥府の番犬はレベルが上がれば新しいブレスを覚えるみたいだ。炎とか吐くようになるんだろうか、楽しみだ。ナナとロクは特になにも無いらしい。まあこの二匹はクラスチェンジの方が重要だ。スーは風魔法をおぼえたら、作物の成長が早くなるみたいなことを言っていた。
部隊を送り出した後、畑に行ってサンにも聞くと同じような答えが返ってきた。風魔法に回復の手当てを混ぜて、作物の成長を促すらしい。面白そうだが風魔法か。ここでも新たな魔法が必要に……。魔法の石板、頑張ってみようか。とりあえずはサンに土魔法の修行を頑張るよう言っておいた。
横にいるゴブリンにも聞いてみるが特に何もないらしい。畑仕事を頑張るように言っておく。厩舎によって牛乳を受け取りながらケット・シーにも聞いてみる。スキルについては特に何もないらしい。
それより昨日の狩りで水牛がハチに怯えてしまったらしく牛乳の出が悪くなったと報告してきた。散歩の為に狩りに連れ出したのは失敗か。もうめんどくさいのでケット・シーに畑の回りを散歩させ、ついでに農耕にも役立てる様に指示して上に戻った。
牛乳を持って食料倉庫に行くと、寸胴を積み重ねた様なフルプレート鎧がこちらに近づいてくる! 何事かと驚いているとその寸胴が話しかけて来た。
「主様、毎日運んでいただき有難う御座いました。明日からは私が牛乳を運搬しますので、お任せください」
牛乳の入った樽を不器用そうに鎧の腕が受け取る。おお、この声はお玉さんか。一瞬なにが起きてるのか理解できなかった。
お玉さんは不格好な鎧をロボットのようにガチャンガチャンと騒がしく動かして、受け取った牛乳を奥にしまい込んだ。不思議な光景を眺めながらいちおうスキルの事を聞くが、さすがにまだ何も感じないそうだ。
これで大体の仲魔から話を聞いたかな、そろそろリッチ先生の番だ。先生に会うためにもお玉さんに魔法の修行を始めようと声を掛けるが、後回しにして欲しいと返事してきた。理由を聞くと、午前中はサンの畑仕事を手伝いながら鎧を動かす感覚に慣れたいらしい。それが終わってからサンと一緒に魔法の修行をやるそうだ。確かにそっちの方が効率も良さそうだ。
お玉さんを置いて1人でリッチ先生の所に移動する。先にスケルトンとガーゴイルにスキルの事を聞くが予想通りの結果だ。この2つの種族は人形みたいなもんで、答えが返って来ないのだ。言われた事はきっちりとこなすし、喋らないしで2階の守りにはうってつけである。
さあ、本命のリッチ先生に聞く。
「先生、レベルが上がったりして新たな魔法を覚えそうな予感はしてない?」
「我々リッチは魔道を極めんとしたが故に、不死を求めた存在です。私はレベルが低いので使える魔法が少ないですが、Lv.10で四代元素の残りの火と風の魔法が、Lv.25で死体からアンテッドを作り出す魔法を覚えるはずです」
おおお、期待以上の答えだ。早々に先生のレベルを二つ上げてもらおうか。最近”守りの森”に行くようになって、毎日400DP以上稼げている、問題ない。
まずはこれをリッチ先生に伝えておく。
「先生、ガーゴイルを三時間に三体ずつ壊して経験値をどんどん稼いでください。それで、レベルを10まで上げちゃって欲しいんです」
さっそくとガーゴイルを壊してもらう。今回は集中的に上げるので、反撃もさせず私も後回しだ。見る間にガーゴイルが崩れて行く。しかし先生とガーゴイルは相性がいいな。
それが終わってから剣の修行をはじめる。スケルトン三体とは十分戦える様になってきた。昨日レベルが上がってから、ほんの少し動きが早くなったようだ。それでほんの少しだけ余裕が出来ると三、四手先の攻撃まで見えるようになったのだ。
これまでの剣の修行の成果だろうか。何手か先の攻撃を誘導し、スケルトンのスピードでは躱せない一撃を叩き込む。会心の一撃だ。ステータスにスキルが付いたからでは無いが、自分が強くなったのを確信した。先生にスケルトンを四体に増やしてもらう事にした。
……少し早かったようだ。
畑仕事を終えてお玉さんと一緒に魔法の修行をしていたサンに、治療をしてもらう。ちょうど良いタイミングなので、先生に水魔法と土魔法を二人に教える様にお願いして地下に移動した。あとスキルの確認をしなければならないのは、トロルとスライムだけだ。
期待せずトロルたちに聞いてみる。最初は意味が伝わらない。何とか説明して、やっと理解してくれたがやっぱり何も無いようだ。
スライムに説明しても……と思ったが、折角だからと聞いてみる。すると『ひたすら何かを食べたい』そんな感情が伝わって来た。そう言えば、エサが無くなってたんだな。ハチが持ち帰って来てくれるはずだ。
スキル調査で少し疲れたが、気を取り直して久しぶりにトロルと戦ってみる事にした。こっちは木刀だから殺す事はないだろう。“いつもの”も相当腕を上げてる様だが、こちらも腕を上げているのだ。
支援が無くても大丈夫、殺される事もないだろう。
木刀を構え“いつもの”と向き合う。……が、昨日の光景を思い出すと一抹の不安を感じる。
「一応、そっちは寸止めな」
戦ってみると、思った以上に差は付いていた。少しは工夫するようになったトロルの攻撃も、スケルトンたちの攻撃に比べると単純すぎる。数回打ち合い誘導してやると、確実に隙を見せる。そこを思いっきり叩く。
これはこれで練習になりそうだ。明日は刃が無くなったロングソードを持ってこよう。そんな事を考えながら打ち込みを続けていると、傷はないのに“いつもの”の動きが悪くなってきた。
いや、動きが悪くなった訳ではなく不器用に防御し始めたのだ。
今まで殺され続けた“いつもの”は、たびたび急所に打ち込まれる攻撃が普通なら命を刈り取るものだと気づいたようだ。なんとか急所だけは守ろうと防御に徹しだす。あのバカで攻撃しかしないトロルが防御!?
そんな事を考えていると、思わず笑いがこみ上げてきて集中が途切れてしまった。
その瞬間をまっていたのか“いつもの”の強烈なカウンターが飛んで来た。
うおっ! 必死にいなそうとするが、木刀が折れる。
やばいっ!! 襲い来る衝撃に耐えようと身を固くしたが、軽く押されて転んだだけだった。“いつもの”は一瞬喜んだが、直ぐに攻撃を当ててしまった事を謝りだした。
「いやいや、全然問題なし。それより、最後の攻撃は見事だったわ」
「オデ モッド ヅヨグ ナリダイ モウイッガイ」
「すまん時間だわ。また戦いに来るから」
と答え、そろそろ昼なので上に戻る。
トロルはバカだし貪欲だ。だけど、バカなだけに強くなることに愚直なんだろう。今日は防御までしてた。どんどん強くなっていく事に笑みがこぼれる。
ふと思いついて、スキルに『バカ』とか増えて無いか確認してしまった。
参考資料
名前:主 名前:ダンシングレーデル
種族:マスター 種族:踊るオタマジャクシ
レベル:18 レベル:14
HP:106(53) HP:107
MP:76(38) MP:63
力:62(31) 力:42
器用さ:70(35) 器用さ:62
耐久力:44(22) 耐久力:65
素早さ:50(25) 素早さ:50
賢さ:80(40) 賢さ:64
スキル:コア操作、剣術 スキル:支援演奏 鎧召喚
低級魔法
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