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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
2章 おっさんがダンジョンマスターを楽しむ
25/81

ピクシーと美味しい晩餐と

 昨日に引き続き南の森に行く。


 帰って来た外周りユニーク部隊(ナンバーズ部隊)に私とお玉さん、新しくなまえ持ちの魔物(ユニークモンスター)にしたピクシーのスー、バンパイアバットたちも加えて全員で。


 南の森に入るとすぐにピクシーのサンとスーが野菜を次々と見つけだす。


「こっちに、トウモロコシあるわ。そこにはお芋がうまってるの」

「むこうにカボチャ!!」


 手分けしてどんどん採取していくが、追いつかない。コボルトたちや私がなかなか採りに行かないので、焦れたのかピクシーたちも一つずつ運び始めた。


 そんな感じで集めると、あっという間にいっぱいになる。


 全員で移動するのも面倒だ。ロクとナナに偵察のバンパイアバット( 吸血蝙蝠 )を1匹ずつ付けて洞窟に運ばせる。


 残りで採取を続ける事にした。


「トウモロコシをもっと集めて」


 それでも、手分けして集めるとすぐにいっぱいになる。これでどれくらいあの生地が食べれるのか、ダンシングレー( お玉さん )ドルに確認する。


「マスターが食べるだけでしたら、1ヵ月分の量になります」

ならこれぐらいで、大丈夫か。


 さらに集めたトウモロコシの番をお玉さんに任せ、残ったメンバーで今度は魔物を狩ることにする。


 偵察に出したピクシー2匹と蝙蝠たちは次々と獲物を見つけてくる。私とハチは別れて狩って行くことにした。


 サンダーボア(稲妻猪)を1匹とジャイアントスパイ(大蜘蛛)ダー2匹を狩ってお玉さんの所に戻って来る。すると、そこにはすでに稲妻猪2匹と大蜘蛛の魔石4つが置いてあった。


 うわっ、はや!!負けじと他に情報はないかと見回す。


すると、スーが戻ってきて森の奥を指さしながら叫んだ。

「むこうにおおきなのがいるよ~。クロップスビー!」


 私は新たな獲物を求めて駆けて行く。


 そこには、中型犬ほどの大きさで丸く黒い体に、黄色の毛が生えたずんぐりとした巨大蜂が飛んでいた。熊蜂くまんばちをそのまま大きくしたような姿だ。


「キャハハハハ。クロップスビー、クロップスビー。あぶな~い」


 スーがはしゃいで声をあげている。遅れてやって来た蝙蝠も巨大蜂を見て激しい警戒音を発した。


 その声と音で、巨大蜂がこちらに気付いたようだ。尻の先につく大きな針から液体を吹きかけてくる。


 騒ぐピクシーと蝙蝠にイラつきながら、巨大蜂の攻撃を躱し一撃で首を落とした。尻の針は脅威だが、体が大きい分小回りは効かないようだ。スーと蝙蝠が発する声を無視して魔石を探す。検討をつけて抉り出しながら、ピクシーを睨みつけようと顔を上げた。


「うわおっ!」

目の前が黒と黄色に染まっている。


 十数匹の巨大蜂がブンブンと飛んでいるのだ。奥からもドンドン沸いてくる。先頭の巨大蜂が突っ込んできた。焦って躱しながら切りつける。しかし、頭を傷つけただけで一撃では殺せない。外殻部分は固い、さっきみたいに関節部分を狙わなければ。


 体勢を立て直しながら、胴の部分で真っ二つに分ける。巨大蜂は2つに分かれても、すぐには死なずにビクビクと針は動いていた。次々と来る巨大蜂の針に刺されないよう気を付け、避けては攻撃、避けては攻撃を繰り返す。


 20匹ぐらいは連続で倒した。……が、いっこうに数が減らない。後ろの巨大蜂は味方が殺さやられても、気にすることなく飛んでくる。


 なんとか攻撃を繰り返しているが、こちらが1匹倒すより向こうが集まってくる方が早い。徐々に囲まれる、このままだとヤバイ。


 死角で巨大蜂が動く気配がする。間に合わないと思いながらも、目の前の敵を斬り捨て振り返る。


 そこには、お玉さんが巨大蜂の頭を刈り取っている姿があった。音楽を奏でながら、その体を大きくスイングさせ、オタマの部分で頭を刈り取っていく。気が付くと、ハチが周りを駆け回りながら次々と巨大蜂の体をバラバラにしていく。ナナとロクもいつの間にか戻っていたようで、それぞれが蝙蝠と共に斬りかかっている。


「助かった」

安堵しながら向き直り後ろから迫りくる巨大蜂を倒そうとすると、すでに逃げ去った後なのか姿は見えなかった。


「いたいの、とんでけ~」

いつの間にか傷だらけになっいた私の体を、サンとスーが”手当て”してくれている。サンは無言で、スーはおまじないを唱えて……ムカッ。


「こんな危ない魔物がいるところに連れてきやがって、殺す気か!!」

スーに向かって怒鳴りつける。


「誰のせいでこんな状態になったと……。もう少しで命を落とす所だったんだぞ」

「だってぇ……」


 口答えをしようとするスーを黙らせる。

「言い訳するな、黙ってろ!!」

 ・・・

 ・・

 ・

 2匹からの治療を受けつつ、ほかのメンバーに手分けして巨大蜂から魔石を取り出すように指示をだす。巨大蜂の死体は40以上あったので、魔石を取り出すだけでも時間が掛かったが、何とか終えて帰る事にした。


 途中、さっきの場所でイノシシとトウモロコシを回収する。トウモロコシはナナとロクで、イノシシは私とハチで背負う。体の大きい私が2匹だ。


 持ちきれない魔石は、ピクシー、お玉さん、蝙蝠が分けて運んでいる。いろんな意味で欲張り過ぎたか……。


 少し冷静になり、スーに目をやる。重い袋を持つように命じたスーはフラフラしながら飛んでいる。その体には所々傷がついていた。


 ちょっと可哀そうかなと思っていると、ブツブツと小さな声で文句を言っているのが聞こえてきた。


「サンより、たくさん見つけただけなのに」「キノコ蜂がいるから危ないって教えてあげようとしたのに」「マスターのほうがキノコ蜂よりつよいのに」「スーもキノコ蜂に攻撃したんだもん」「サンより、いっぱい治したかっただけだもん」「スーも頑張ったもん」


 こいつは聞こえないとでも思っているのか。それともわざとなのか?


 それでもスーの言葉を聞いて状況を振り返ると、たしかに思い当たる節もある。少し反省しながら、スーの持つ袋を腰に下げた軽いものと交換してやる事にする。


「小さい体だと、運ぶのも大変か」

私が優しく声を掛けてやると、嬉しそうな顔をするスー。そして


「洞窟前だと、楽ちんなのに」

と、訳が分からないことを言いながら、フラフラと飛んで私に近寄って来たかと思ったら、私の頭に腰かけた。


 少し甘くすれば、すぐに調子にのる。怒りで顔が赤くなるのがわかる。


()()()()

叱ろうとすると、スーは速度をあげ一目散に洞窟に飛んで行った。


 サンは「スーは少し頭が足りないの」とフフフと笑い、お玉さんは「ピクシー相手に怒っても」と宥めてくれた。ナナとロクは特に興味無さそうだったが、ハチは機嫌が悪そうだった。

 ・・・

 ・・

 ・

 陽が暮れ始めた頃、洞窟に着いた。


 食材を保管するよう指示して、手に入れた魔石をダンジョンコアに吸収させる。


 魔石は全部で58個。午前中に集めた分と合わせると、400ポイントをこえるDPだ。思いがけず大量の魔石を回収できて、なんとなく心が浮き立つ。


 これなら、夜の狩りは中止でいいかなんて思ってしまう。さらに労を労うために、今日はお玉さんに外回りの仲魔全員分の料理を作って貰おうかとおもう。


 量が多いのでナナとロクにも手伝うように指示をだした。



 蝙蝠達は、すでに皿に入れられたイノシシの血をペチャペチャと舐めている。飲み終わったら、偵察に行くようだ。


 料理が出来たとお玉さんが声を掛けてきた。コア部屋の前につくった臨時の食卓には、みんながもう揃っている。席につき「いただきます」と私が食べ始めたのを見てみんなも食べ始めた。


 トウモロコシの薄い生地のパンが良い。昨日と少し味付けを変えてくれてる、美味しい。さすが、お玉さんは気が利く。


 コボルト達もすごい勢いで食べている。もちろん素手で、頭を皿に突っ込む勢いだ。ピクシー達も美味しそうに食べている。コボルトに比べるとすこし上品か、もちろん手掴みだ。


 サンがお玉さんとお喋りを楽しみながら食べていた。が、スーが喋ろうとするとハチが威嚇する。ハチは私の事を気遣っているのだろうか、可愛い奴だ。


 今日は夜の狩りを中止することを伝えて、解散した。少し残った料理をリッチ先生の所に持って行ったが、先生は生気を直接吸うそうで料理は食べないそうだ。


 勿体ないので、地下のみんなに少しずつ食べさせる事にした。


 トロルは最初のひと口を食べ終わった瞬間、隣の分を奪おうと争いだし最後は”いつものトロル”が残った分を巻き上げていた。


 ケット・シーは素早く逃げて自分の分を確保して食べたあと、もう無いのかと残念そうな顔をしている。


 また今度持ってきてやろう。部屋に戻り、お玉さんにみんなが喜んでたと伝えると嬉しそうにしていた。

 ・・・

 ・・

 ・

 今日はいろいろあった、修行は休憩だ。のんびりしながら、一日を振り返る。


 しかしスーはどうなんだろう、失敗なのか、そうでもないのか。言動を思い出すとイライラしてくる。けど言い訳はある程度、筋が通ってるのか。いやいや、甘くするとすぐに調子にのる。最後も「洞窟前だと、楽ちん」とか訳の分からない事を呟きながら、私の頭の上に座りやがった。


 大体「洞窟前だと、楽ちん」ってどういう意味だ。お玉さんに尋ねても、分からないと。すると後片付けを手伝ってたサンが、私の言葉を小耳にはさんだのか一言。


「洞窟前で、採れたら楽ちんですの」


 どういう意味だ、理解できん。


「いや、南の森にしか無いから大変なんだろ」

「ここで作ればいいと思うですの」

「ん、作るって何を? 野菜の事か?」


 話を聞くと、ピクシーなどの妖精は植物を育てるのが得意なのだそうだ。サンも種をもらえれば、一応は作れると言っている。ただ、体が小さいのでそんなに、たくさんは作れないみたいな説明だ。


 取り敢えず試してみる事にする。洞窟前には土地も水もある。それに普段は働いていない労働力もある。


 サンに明日から、ゴブリンとケット・シーを使って畑を作ってみるようにと指示を出した。もし上手くいくなら食料も安定するし、食材集めの手も減らせる。





 新しいこころみに期待しながら、その日は眠りに付くことにした。

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