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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
2章 おっさんがダンジョンマスターを楽しむ
22/81

襲撃で安らかに眠る

 ダンシングレー( お玉さん )ドルの支援効果がさらに強力になり、トロルの首を一刀両断に出来る様になった翌日の未明に、出発していた外周りユニーク部隊(ナンバーズ部隊)がすぐに戻って来た。


 コボルトのハチにどうしたのか尋ねると、ゴブリンの集落がある方向からオークとゴブリンの群勢がこちらに向かって進んで来ていると報告してきた。すぐに、ピクシーのサンに空から偵察してくるように指示をだす。


 ダンジョンには迎撃準備を整えるように指示をだし、いつものレベル上げはすぐにやめさせた。コボルト達には、私とお玉さんと共に1階の大部屋の防衛に当たり、危なくなれば地下か、2階に逃げろと先に指示を出しておく。地下と2階は敵が来るまでそこで待機だ。


 大方の流れを説明しおえた所でサンが戻って来た。


「あと、30分ぐらいかな、到着すると思うですわ。オークの数は20ぐらいですの、ゴブリンは50以上は居そうですわ」


 コア部屋に戻り、各所に人数を伝えさらに細かい指示を与える。今までと比べ物にならない数だ。ダンジョンを守り切れるんだろうか……緊張する。いざという時の為の脱出方法をシミュレートしておく。


 外の様子を見ていると、入り口にいるゴブリン部隊が騒がしくなった。……と、思ったら数十匹のゴブリンが突撃してきて一瞬で蹂躙されてしまった。敵のゴブリンはそのまま立ち止る事なく、洞窟入り口にドンドン侵入してくる。


 慌てて、お玉さんと一緒に1階に駆け降りる。


 大部屋に着くと、すでに戦闘は始まっていた。入り口通路から沸いてくるゴブリンに対しコボルトとスライムペアに吸血バットが加わり攻撃を続けている。


 お玉さんの奏でる音を背に、私も前に進み出てゴブリンと対峙する。


 それまで不安だったのだが、対峙してみるとまったく怖さを感じない。オオカミの時もそうだが相手の動きが、ひどくゆっくりに見えるのだ。目の前にいるゴブリンの首を横に跳ねつつ、体を開き2匹目を袈裟に斬り捨てる。


 そのまま流れで一歩踏み込み、奥にいたゴブリンの首を突く。一瞬で3匹の命を刈り取った。体勢を起こし右手を前に突き出してストーンバレット( 石の礫 )を詠唱する。次の瞬間に石のつぶてが入って来たばかりのゴブリンの腹に穴を開ける。


 狭い通路から侵入してくるゴブリンを順番に片づけて行く。周囲を見てみると、コボルトのペアもそれぞれ死体の数を増やしている。しばらくそんな作業のような戦いが続き、余裕じゃないかと思っていると、ゴブリンたちの雰囲気が変わった。


 ゴブリンに混じるようにしてオークが入って来たのだ。オーク達は周りにいるゴブリンを盾にしながら攻撃してくる。手強そうな挙動なのだが………やはり、それほど脅威に感じない。攻撃を躱し、盾にしたゴブリンごと胴体を薙ぎ払った。


 ハチも素早く移動してオークとゴブリンを次々と始末していく。


 しかし、残りのコボルト2匹の様子はすこし違った。ナナとロクはオークを仕留めるのに少し時間が掛かってしまうのだ。その間に数を増やすオークに少しずつ押し込まれスライムと蝙蝠は数を減らされていく。そうなるとさらにナナとロクの攻撃の手数が減っていく。気付けば包囲されつつあった。


「ハチ!! ナナとロクをサポートしながら2階に後退しろさがれ、こっちも周りを倒しながら後退する!」


 叫ぶように指示を出し、周りにいるゴブリンとオークを滅多切りにする。魔法を放ってコボルトたちを援護し、無事に後退するのを見てから自分も移動を開始した。


 奥の通路の前で時間を稼ぐ為、殿しんがりで戦っていたが、その間にスライムと吸血バットが私の盾になり全滅してしまった。お玉さんを背に庇い、集中する攻撃を防ぎながら通路を後ずさっていく。


 無事2階に上がると、サンにナナとロクを治療するよう指示し、ハチとリッチ先生にこの場を任せて自分はコア部屋に移動した。


 部屋に着くとさっそく戦況を確認する。1階の大部屋には、オークの死体が7と無数のゴブリンの死体が転がっていた。残った敵は二手に分かれてダンジョンを進んでくる。


 2階に来た敵はスケルトンとコボルトが囲みながら攻撃し、後ろからリッチが魔法で追撃する。オークも上がって来るが数を増やす前にどんどん仕留められていく。2階は大丈夫なようだ。


 地下も罠を上手く使いながらケット・シーを中心に戦っていた。しかし、しばらくするとスライム、ゴブリンが殺されて次第に乱戦になっていく。


「地下はやばいな。鍵は大丈夫か」


 そう呟きながら、ふと1階に目を向けると大部屋にひと際目を引く大きな剣を持ったオークが入って来た。



 そのオークはゴブリンに周囲の死体から魔石を集めさせると、それを奪い取っている。中央台座の宝箱に近づき、隣のゴブリンに開けるよう命じているようだ。ゴブリンが宝箱をあけると、沸騰した油が噴出して顔を焼く。悲鳴をあげるゴブリンを横に宝箱の中のカギを取り出した。今までのやつとは違う!?


「こいつはちょっと危険か」と呟くと、お玉さんが


「オークリーダーです。オークの中で知能が高く強力な個体が群れを率います」

と説明してくれた。


 オークリーダーはその場にとどまり、命令を出している。


 2階は階段付近にオークの死体が数体転がり、ゴブリンの死体は数え切れないほど重なり合っている。オークは警戒して、すでに上がって来なくなっていた。


 一方、地下にもオークとゴブリンの死体があるが数が少なく、味方のスライムとゴブリンがすでに全滅している。ケット・シーとピクシーも壁際に押し込まれている。1階にいたオークリーダーが状況を判断したのか地下への進攻を指示し、残ったオークを引き連れて自らも降りて行った。


 チャンスだ!! 1階にはオークが2匹残っているだけで、あとは雑魚のゴブリンだ。1階を制圧して、敵を後ろから攻めれば混乱させることが出来る。


 ナンバーズ部隊とリッチに1階に降りて制圧するように命令し、自分もお玉さんと一緒に1階に向かう。


 1階に降りるとすでに制圧は終わっており、そのまま全員で地下に向かった。


 階段に近づくと、地下からトロルの咆哮が聞こえてきた。もうすでにケット・シーとピクシーは全滅していてトロルとオークたちが戦い始めている。地下にいるオークはリーダーを含め、もう4匹ぐらいか。お玉さんの音楽を背中に受け、階段を駆け下りる。


 トロルが扉の前でコブリンを捕まえ、頭を握りつぶしている。もう1匹のトロルは腕を切り落とされ、オークリーダーたちに囲まれているが、腕を振り回し近づけまいと暴れている。


 まず、コボルトのナナとロクに周りのゴブリンを始末するように指示をだし、自分とハチはトロルを取り囲むオークの背に迫る。ロングソード(両手剣)を脇に構え、背中を見せるオークにダッシュで近づき真っ二つに切り払った。


 隣にいたオークが驚いたようにこちらに顔を向けたが、リッチのアイスニードル(氷の棘)に腹を撃たれて膝をつく。そのまま、剣を返して横に振りぬきオークの首を飛ばした。


 ハチはオークリーダーに飛び掛かり、槍を突き出し攻撃した。オークリーダは殺気に気づいたのか寸前で身を躱し、距離を取る。もう1匹のオークは急に現れた敵に混乱した所をトロルに叩き潰されていた。


 残りはオークリーダー1匹と、ゴブリンが10匹ほどだ。勝敗は決したか。暴れるトロルを落ち着かせ残りはゴブリンを殲滅するよう命令し、ハチとオークリーダーの戦いを見守る事にする。


 オークリーダーは周りの状況を見て一瞬ギョッとした表情を浮かべたが、覚悟を決めたのかハチに集中したようだ。


 ハチとオークリーダーが距離をつめる。オークリーダーが体に似合わぬ大きな剣を振り下ろす。ハチは素早い動きで、その軌道から体をずらし槍を繰り出そうとする。カウンターが決まると思った瞬間、ハチの槍が宙を舞う。


 オークリーダーは大剣を力一杯に地面にぶつけ、跳ね返る衝撃をそのまま力で制御し槍を下から撃ち払ったのだ。武器を失ったハチは槍を追いかける事無く、咄嗟に後ろに飛んで逃げ、バランスを崩して両手をついた。……気付くとさっきまでハチが居た位置にオークリーダーの大剣が振り下ろされていた。


 ハチのカウンターが防がれるのを初めて見た!! というか、ハチが危険か! 援護に入ろうと思った瞬間、ハチはが目にも止まらぬスピードでオークリーダーの横を駆け抜けた。


 見ると、四本の手足を地面につけたまま、大剣を持つ腕を口に咥えている。


 片腕のオークリーダーは呆然として立ち竦んでいる。踵を返しハチはもう一度横を駆け抜ける。オークリーダーの首からは血が噴き上がり、ゆっくりと倒れて行く。


 周りを確認すると、残りのメンバーがゴブリンを全て始末し終えていた。


「これで終わったかな。ふぅ」


 少し落ち着き、サンに怪我をしているのがいれば治療するよう指示して周りの惨状を見る。そこらじゅう死体だらけで足の踏み場もない程だ。もし敵の戦力が残っていたら、この状況で攻められるのはまずいな。


 地下はトロルに、1階はコボルトとリッチにそれぞれ死体を部屋の隅に積み上げ、その後そこを守るように命じて上に戻る。スケルトンに1階に移動するよう命じたあと、コア部屋に入った。


 入り口付近に敵の姿は見当たらない。洞窟入り口を監視しながら、オーク襲撃の結果を確認する。


 戦闘時間は4時間ぐらいか。昼を回ったぐらいだ。味方は1階がナンバーズ以外全滅、地下もトロル以外全滅。2階は無傷だったか。敵方はオークリーダーが1匹とオークが23匹、コブリンが78匹だ。


 数だけを見ると凄い戦いだったが、実際は結構余裕があった。味方も殺されたが主力メンバーは死ぬことなく終わっている。自分自身もお玉さんの支援効果あったとはいえ、まったく危なげなく戦えた。実際に今日の戦いの中で唯一、手強そうに見えたのも味方のハチだけだ。


 そう言えば、ハチは槍を落としてからの方が強かった。画面越しにハチに声をかける。


「ハチ、四足の方が動きやすいのか?」

『四足移動 早い』『槍 爪・牙 同じ』


 四足移動の方が速くて攻撃力が変わらないなら、あの槍を別のコボルトにでも持たせるか。ハチは武器を装備している方が弱くなるのか……。コボルトだから、犬から人間に似てくるのかと思ったら逆だったわ。


「ステータス」


     名前:ハチ公

     種族:コボルト族

    レベル:19

     HP:60

     MP:41

      力:32

    器用さ:30

    耐久力:28

    素早さ:52

     賢さ:32

    スキル:咆哮、牽制、回避

        高速移動   


 今回の戦闘でレベルが上がってるようだ。しかし、ユニークモンスターは変な成長をするもんだ。


 洞窟入り口を警戒しながら生き残った仲間のステータスを確認していく。私はもちろん結構沢山のメンバーがレベルを上げていた。お玉さんの淹れてくれたお茶を飲みつつ、次に増えたDP(ダンジョンポイント)で新しく表示された項目をチェックしていく。


 項目が増えて、なんか強くなったとような気がする。楽しみながらチェックを続ける。


 3時間が経ち、死体が徐々に吸収され始めた。各階に装備の回収と分類を指示して、死んだ仲間の復活を待つ。


 さらに3時間が経過して洞窟入り口のゴブリンから順に復活しだし、警戒態勢を解いた。今回の戦いで増えたDPは2000ポイントを越える量だ。


 どう使うか悩む。各階の戦闘のことも考えないといけない。今日はこのまま終わり、明日ゆっくり考えよう。俺、Tueeeをしたからか、今日はすぐに寝れそうな感じだ。




 ダンジョンマスターはそんなの関係なくすぐに寝れるのだが……。

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