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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
2章 おっさんがダンジョンマスターを楽しむ
21/81

リッチ先生とトロルの決死の働き

 サキュバスという目標が無くなった……気落ちしてないと言えばウソになる。けれど、小遣いが無くなって夜のお店に行け無くなったようなもんだ。残念だがそれだけだ。


 それにすぐに処理が出来ないってのも、実は良いのかも知れない。血が滾り若返ったようなのだ。立ち止まってる暇はない。強くなろう。


 今日も朝から外周りユニーク部隊(ナンバーズ部隊)を送り出す。稼げるうちに稼いでおかないと、何が起こるか分からない。崖上のゴブリンが全滅するとか、大軍が攻めてくるとか、私自身がこんな世界に転移して来たのだから、なんでも起こりうる可能性はあるのだ。


 送り出したあと、スキルの事を聞くために昨日召還したリッチの所に移動する。


「どんな魔法がつかえる?」

「低級魔法とネクロマンシーです」

「それは知ってる。具体的には?」

「水の魔法のアイスニードル(氷の棘)、土の魔法はストーンバレット(石の礫)、ネクロマンシーのペインスティング( 激痛の付与 )ドミネイトアンテッド( 不死者の支配 )の4種類になります」

「どんな魔法?」

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・

 リッチは魔法に詳しく色々な事を聞くことが出来た。第一印象と違い、聞けばきちんと答えてくれる性格のようだ。4大元素魔法は体内に魔力があって、正しく音をつむげば誰でも魔法が使えると説明してくれた。


 種族的に苦手な物は魔力の消費が増えるみたいだ。あと発声できないネクロマンシーの魔法は、人族には使えないと説明された。


 まあ、ネクロマンシーの魔法は置いといて、リッチの使う水の魔法と土の魔法の詠唱を真似すれば、魔法が使えるかも知れないって事だろうか。


 いちおう練習する前にコアさんに確認すると、ダンジョンマスターの私でも詠唱できれば魔法は使える可能性はあると言う事だった。



 リッチの元に戻り早速、ストーンバレットの詠唱を教えてもらう。

〈ドァイ スォウ メチェン プロゥ カァ シヴァ クラァン スカリィ〉


 唱えてみるが魔法は発動しない。リッチに聞くと細かいところが全然違うらしい。相当にシビアなようだ。リッチの詠唱に合わせ、ひたすら繰り返し練習する。ナンバーズ部隊を出迎えて送り出した頃にやっとてのひらの前に小さな土の影が現れて消えた。


「おっ、今のは?」

「その感覚をつかんでください」


 新しいPCを買った時? 新車に乗り込む? 私に取って一番近いのは彼女との初デートかな。新たな力を得ることに、そんなワクワクして心が躍り出しそうな気分が沸き起こる。が、興奮して詠唱が乱れてしまった。……必死に心を落ち着け練習を続ける。


 そのうちに数十回に1度、小さな岩が現れる様になった。掴めて来たのか、期待が膨らむ。しかし、現れるだけで何も起きずに消えるというのが続いた。


「なんで消える?」

「目標に向けて発射してください」


 横にいる、スケルトンに向かって詠唱を続ける。不意に掌の前に岩のつぶてが現れ、スケルトンの頭部めがけてシュバっと飛んでいった。ボガンと大きな破裂音が響き、スケルトンがゆっくりと倒れて消えた。


「あっ、やってしまった」


 魔石を拾い上げながら、失敗したことよりも喜びの方が大きい自分に苦笑する。まあ仕方がない、練習を再開する。……今度は壁に向かって。その後、何度か魔法が発動したが時間切れだ。外に出ていたナンバーズ部隊が帰って来た。出迎え、褒めて、魔石を貰うとコア部屋に戻って、吸収させた。その日は、疲れていたのでそのまま寝る事にした。



 翌朝いつもの様に部隊を送り出した後、ワクワクしながら練習に向かう。リッチ先生の後に続きしっかりと確認しながら詠唱する。10回に1度は成功する様になったと思ったら、その後、まったく成功しなくなってしまった。先生に聞くと、


「MP切れではないですか」


 当たり前のことを先生に言われる。頭から完全に抜けていたのだ。ステータスでMPが0になっているのを確認して、少し休憩する事にした。



 コア部屋に戻り、食事をしながら昨日のスケルトンの事を考える。復活コストが4しか掛からなかったは不幸中の幸いだ。魔石も残っていたし、放出された魔力はほぼ回収したからだろう。4ポイント分の魔力はどっかに行ったようだ。


 ……あれ、サキュバスの時は全部回収したのに。コアさんに尋ねる。


「昨日のスケルトンの魔力の内、回収できなかった分は何処に行った?」

『マスターが吸収しました』


 吸収………それって経験値じゃないのか。


「ダンジョンに召喚した魔物を私が倒したとして、私のレベルは上がるのか?」

『魔力を吸収するのでレベルは上がります』


 本気まじか、ダンジョンの中で安全にレベル上げが出来るじゃん。と、言う事は魔物同士も行けるって事か。今日は興奮の連続だ。すぐにダンジョンコアのマップを睨みどうするか考える。


 色々考えた結果、決めた。地下にトロルとゴブリン、1階はスライムと吸血蝙蝠、2階にはスケルトンを追加して召喚する。追加したトロルは自分で殺してレベル上げを行う。死んでも最短6時間ごとに復活するので、日に4回稼げるか。


 他に追加した魔物達は全体的な防衛の底上げとレベル上げに使う。魔物たちのレベル上げは各階ごとに全員で戦い合わせ、最初の2匹が死ぬまで続けるよう命令した。もちろん、ナンバーズ達やダンシングレー( お玉さん )ドルは戦わせない。



 自分は地下に降りて行って召喚したトロルに反撃しないよう命じる。ひざまづかせたトロルの首にロングソード(両手剣)を振り下ろす。バシッ、剣は皮膚を切り裂いただけで止まる、うおっ硬いと、吃驚していると目の前の傷が見る見る塞がっていく。


「おおぉ、これが超再生か、凄いな」


 腰を下ろし剣を構え一気に振り下ろす。


「チェストー!」


 ガシュッ! 刀身は食い込んだが太い首はビクともしない。トロルが涎を垂らしながら咆哮をあげると、傷がまた回復し始める。恨めしそうに見るのを無視して渾身の力を込め何度何度も連続して斬り続ける。


「ぅおりゃぁあぁ」


 斬り下ろし、斬り上げ、ガシ、ガシュ! ガシ、バシ、ガシ、バシュ! 30分の間、剣を振り続けやっと首を落とすことが出来た。死んで体が消えたトロルの魔石を拾いあげ、これが敵で出てきたらと恐怖する。


 少しでも強くならねば。リッチ先生の元に戻り魔法の練習を続ける。4回か5回に1回魔法が使える様になったがすぐにMPが切れてしまう。休憩をはさみMPを回復しながら修行を続けた。


「成功率が上がって来たな」と思ったら、もう夜中になっていたようだ。


 ナンバーズ部隊が帰って来た。今日も魔石の回収は順調だ。これが有るからレベル上げが出来るのだ。


 最後に復活したトロルを倒しに地下に行く。また、剣を振り続け何とかトロルの首を落とした。思った以上に時間が掛かるので日に4回は無理だな、そんな事を考えていると、ちょうど力が湧き上がる感覚が来た。


 ようやくレベルが上がったようだ、ステータスを確認する。


     名前:―

     種族:ダンジョンマスター

    レベル:12

     HP:74(37)

     MP:62(31)

      力:44(22)

    器用さ:58(29)

    耐久力:30(15)

    素早さ:36(18)

     賢さ:66(33)

    スキル:ダンジョンコア操作

        低級土魔法


 少しステータスが上がったようだ。それにスキルに魔法が増えている、修行の成果が出ているようだ。ちなみに呼ばれない名前は捨てた。



 翌日も未明からレベル上げの影の主役を送り出す。今度はお玉さんと一緒に地下に移動した。


 部屋に入るとトロルの機嫌が明らかに悪くなったが、そんな事を気にしていてもしかたない。無視してトロルに動かないよう命じて跪かせた。お玉さんに支援を掛けてもらい能力値を上げる。大上段に構えて飛び上がりながら全体重を乗せて振り下ろす。剣は首の半分近くまで切り裂きすすんだ。


 レベルが上がりさらに支援の効果を受けたことで威力が上がっている。一撃で切り落とす事は出来なかったがトロルの意識を刈り取ることはできた。剣を引き抜き傷口が塞がる前に、繰り返し剣を振り下ろし命を奪った。


 続けて魔法の修行を始める。ほとんど失敗しなくなってきた。MPの回復の待ち時間が長いのでその間に仲魔達の戦いも観察する。今まではバラバラに戦っていたのをペアやチームを組ませて連携するよう指示する。弱い仲魔も粘るようになり練度があがってきたようだ。単純に殺し合わせるより良いのかもしれない。


 MPが回復すると魔法の練習をして、トロルが復活すると経験値をいただく。その間にナンバーズ部隊は順調に魔石を集めてくれる。


 こうして2日間、修行を続け私はもう1つレベルを上げ、お玉さんは3つもレベルを上げた。ナンバーズ部隊のメンバーも外で戦い続けているのでレベルを上げている。他も順調に経験値を稼ぎ、連携を深めている。


 DPはレベル上げの消費と回収してくる魔石がほぼ同じでほとんど変わっていない。魔法の方はストーンバレットが、ほぼ完璧に出せる様になった。




 リッチ先生の教育とトロルの決死の働きに感謝だ。

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