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おっさんはダンジョンマスターになって青春を取り戻せるのか  作者: 烏龍お茶
2章 おっさんがダンジョンマスターを楽しむ
17/81

エサを与えて太らせる

 具体的な目標、DP(ダンジョンポイント)を2000ポイント貯めると決めた次の日からオオカミが近寄って来なくなった。


 夜になっても洞窟の入り口付近に姿を現さなくなったのだ。あれほど馬鹿みたいに毎日来てたのに。


 コボルトのハチに外の様子を見に行ってもらったら『オオカミ 怯えてる』と伝えてきた。どうやら殺しすぎたようだ。とりあえずまた来るのを待つか、それとも何とか洞窟に来るように仕向けるか。


 オオカミの目的は? と考える。食い物か……。となるとおびき寄せるにはエサが必要だな。だが今はエサになるような物は持って無い。


 いや、干し肉は私用だしバラ撒くほど無いし。何かないかと色々と調べてみると蓋の上に肉を置くタイプの落とし穴があった。が、結構いい値段だ。


 あれ!? ここにも肉あるじゃん。ふと、これって食べれるのかと思ってコアさんに聞いてみた。


『食べれます。エサが無くなるとDPを消費して補充します』


 おっ、行けそうだな。お玉さんが毎日、味は変えてくれてたけど干し肉って実は飽きてた。罠のコストは150ポイントで肉の補充コストは50ポイントになるそうだ……コボルトより高価な肉だな。前に設置した落とし穴をこっちにして置けば良かった。いちおう確認してみるが『後から肉は付けれません』と言われた。この罠を作ろうかどうしようか悩んでいるとダンシングレーデル( お玉さん )が話し掛けてきた。


「誘き寄せるのでしたら、撒き餌が有効です」


 脱線してた思考を元に戻してくれた事を感謝しつつ、聞き返す。


「そう思って、罠を見てたけど罠だと結局はそこで殺してしまうし……」

「魔物をエサにすればどうでしょうか?」と、怖いことを言う。


「ダンジョンの魔物を狩らせて、魔石を奪わせるのは常套手段です」


 確かに魔石の魔力量って設定できるし、そう言う事なんだろう。ただハチやお玉さんは論外、コボルトにも愛着がある。スライムは……生き返ったらレベルも下がらないし、まあいいか。


 エサにするのにスライムだけだと味気ない、ついでにゴブリンも召喚するか。ゴブリンが死ぬ姿は……もうなんか慣れてる。最初はあれほど気持ち悪かったのに慣れとは恐ろしいものだ。


 ゴブリンを召喚してエサにするなら、ダンジョンを広げないと駄目だな。あれっ? 貯めようと思うのに消費してしまう。しかも、オオカミが来なくなった状況でのDP消費って本末転倒な感じだ。……こういうのを捕らぬ狸の皮算用というのだろうか。



 ……おっさんは失敗するからおっさんなのである。こういう時に少年のような心が頭をもたげるから駄目なのだ、だから”おじさま”には成れなかったのだ。


 分かっている、新たな世界で失敗しないためにもダンジョンを拡げるべきではない。しかし、それでもまだ悩む。そう、ここは魔力に彩られた世界。少年のような冒険の心こそが必要な世界。失敗しても外にでも行って魔物を狩ればいいのだ。


 どうせ命は懸けている。命を懸ければ大概の事はできるはずだ。良し覚悟は決めた。



 1階はゴブリンとスライムだけにする。ゴブリンとスライムを新たに召喚して、そのまま1階に配置。ゴブリン2匹が一定時間ごとに洞窟の外に出て警戒にあたるという感じに設定してみる。


 今まで居たメンバーは地下1階に連れていくが、下の階は狭かったので階段を中心に部屋を大きくした。ついでにエサ付きの落とし穴を設置して、挟みこめるように配置しておいた。


 1階にゴブリン5匹とスライム3匹、地下1階にコボルト3匹とスライム3匹という大所帯になってしまった。


 丸一日掛けてダンジョンを作り替えた時にはDPはすでに半分になっていた。生き返らすのが前提だからこれ以上の消費はやばい。後はオオカミさんが来てくれるのを待つだけだ、上手く行くか不安だ。


 次の日、ゴブリンを洞窟の外に出し……たらすぐにオオカミは現れた。やっぱりオオカミは馬鹿なのか。しばらくすると1匹また1匹と徐々に森から姿を現し近づいてきた。数を増やしながらオオカミは現れ続け、これまですでに4匹のゴブリンが殺され、魔石を奪われた。


 夜になると洞窟の入り口付近にたくさんのオオカミが集まっている。集まったやつらは洞窟から出てくるゴブリンを待ち構えているようだ。


 撒き餌は成功! もうすぐ中に入ってくるだろう。


 ただ前みたいに殲滅しては駄目なのかもしれない。生かさず殺さず、だなと思っていたらお客さんが入ってきた。


 その夜は早速に5匹のオオカミが中に入って来た。中にいたゴブリンとスライム部隊はがんばったが、オオカミを1匹倒しただけで全滅してしまった。残ったオオカミは転がっている魔石を噛み砕き、さらなる獲物を求めウロウロと探し回ってから帰って行った。



 次の夜、オオカミは数を10匹に増やし洞窟に入って来た。あっと言う間に1階にいたうちのゴブリンとスライム部隊を殲滅し、また洞窟内をウロウロとしている。


 そろそろ頃合だろうか、半分程が帰ったのを見計らって階段に続く扉を開け、残ったオオカミを地下1階に引き込んで前と同じようにして倒した。


 先行投資が成功したようだ。少年のような心が報われたのだ、動機は不純な欲望だが。そこは置いといて計画どおりに上手くいったことに喜ぶ。


 ゴブリンとスライムが倒され魔石を奪われたが、5匹のオオカミを殺すことが出来た。少しDPを増やすことが出来て、ホクホクした気持ちになる。

 ・・・

 ・・

 ・

 このまま行けばと思っていたが、次の日のお客さんは様子が違った。現れたのは夜中ではなく、夕方。いつものオオカミではなく、ゴブリンが10匹にオークが3匹だ。外に居たうちのゴブリンがあっという間に蹴散らかされた。


 5匹のコブリンを先行させながら、それに続いてオークが洞窟内に入ってくる。敵の先行ゴブリンをうちのゴブリンとスライムたちが2匹倒したところで、オークが参戦してきた。何とか粘るも、さらにゴブリン1匹を倒しオーク1匹に傷を負わせた所で全滅してしまった。オークは武器の扱いもいいし、うちのゴブリンとスライムじゃ太刀打ちできなかったようだ。


 オークとゴブリンは眷属が残した魔石を拾い集めたあと、洞窟内を色々と漁りまくる。樽をあけ酒をのみ、箱をひっくり返し何気に鍵も見付けられた。扉を開けて階段のある部屋にも入って来る。


 そして階段の下に新たな獲物の気配を感じたのかゴブリンが興奮しながら降りて来た。先頭切って降りてきたゴブリンが目につく所に設置されたエサ付きの落とし穴に飛び込む。1匹が罠に落ちて悲鳴を上げた。残りのゴブリンは混乱している。


 その混乱に乗じてハチたちコボルト3匹とスライムの3組のペアが攻撃を仕掛ける。まずはハチが槍で突き刺し、続いてコボルトが剣で切り掛かり、そこにスライムたちが酸での追撃を与える。ペアで戦わせて来たので連携もばっちりだ。


 続いてオーク3匹が警戒しながら降りてきた。コブリンを素早く処理したコボルトたちは、それぞれが正面のオークと向かい合う。


 オーク1匹に対してこちらはペアで当たるのだ。しばしの睨み合いの後、上の階でゴブリンに傷つけられ苛立っていたオークが斬りかかって来た。ハチのペアが立ち塞がる。ハチが攻撃をいなしスライムが追撃、その隙をハチがさらに突いて深い傷を与えた。それと同時に残った2匹のコボルトたちも斬りかかりスライムもいっしょに動き出す。コボルトの攻撃はそれぞれ躱されてしまい反撃まで受けてしまったが、スライムが酸による攻撃で火傷はきっちりと与えていた。


 火傷を負った2匹のオークは思わぬダメージを喰らったからか後退り距離をとる。その間にハチが最初のオークに止めを刺していた。ハチは本当に頼れるやつだ。オークの思ったより高い悲鳴が響き渡り火傷を負った2匹のオークは逃げて行った。


 なんとか撃退する事が出来てほっとする。というか前の配置だとオーク3匹に突破されていたかもしれない。オオカミしか来ないから油断していた。鍵も簡単に見つけられていたし、下手したらコア部屋まで攻め込まれただろう。オークがもっと多ければ、私が加勢しても危なかったかも知れない。


 デーモンとの戦闘を思い出し、背筋が寒くなる。


 ……さらなる増強をするかどうか悩む。頭を掻きむしり顎に手を伸ばす。髪の毛と髭は伸び放題だ。ここにきて1か月以上経っている。気分を変える為にも髪を切り、髭を剃る。ここなら信頼できる仲間もいるし安全だ。久しぶりにさっぱりとした。頭を洗い、お湯で体を拭きながらどうするか決めた。


 危険があるのは事実だ。だが今回も危なかったとはいえ、上手くいった。DPも増えた。それに、まだ見ぬ脅威を怖がり続けるのは無駄だ。せっかく上手くいったのをいじるのも面倒くさい。もっと多くのDPを貯めなければならないのだ。


 前から考えていたのだが、そんな問題に対して有効な手段がある。ダンジョンはこのままに、まだ見ぬ脅威に対応する為の方法があるのだ。その方法をハチとお玉さんに伝える。


「外に行ってレベルあげするから、準備して」


 別に準備する事は何も無い。命を懸けて外に行く、ただそれだけだ。




 もちろん最大戦力で余裕をもってね。

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