ヤカンはいなかったけど、お玉がいた
この話から2章の開始となります、お楽しみ頂ければと思います。
現在は地下1階で美味しい朝ご飯を食べながら、ダンジョンコアに写し出された説明書を読んでいる。
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昨日あれから安全の為に洞窟を封鎖してしまい、ダンジョンコアと一緒に籠ってしまおうとしたのだが……無理だった。いや、なんとなく無理だろうとは思ってたけど、必要なコストが全然足りないそうだ。とりあえず理由を聞いても内容がうまく理解できない。
『封鎖空間は……で何とかと何とかと言う空間にバイパスをつくり、そこを経由するときに何とかという処理をして……する』と。うん、意味不明だ。結局、何とか理解できたのは『魔力を保ったまま空間を封鎖すると、ダンジョンが壊れるから処理をしないとダメだ』ということだった。
他にはドアにロックは掛けれるけど、外にキーを置かないと駄目。もちろんロックを掛けるにもポイントを消費する。だとか、ダンジョンの中を魔物や罠で埋め尽くしたりするのも『封鎖空間は……』という理由でだめらしい。もっと解り易くできないかと言うと『ダンジョンコアにタッチすると操作しやすいです』と教えてくれた。
言われた通りタッチすると、目の前の空間に画面が浮かびあがり指であれこれと操作できた。マップや罠の種類を選択すると、その構造が立体的に浮かび上がってくる。つまんだり、回してみたりしてする。まるで星の列が旗の国の”鉄の人”がやってたみたいだ。便利すぎる。これも新概念だそうだ。
画面には使える魔力が数値化してあった。表示はもちろんDPだ。現在は1034ポイントある。これが多いのか少ないのかは分らない。とりあえず色々見ていると、ラフィン○ケトルならぬダンシングレードルってのがいた。
ヤカンじゃなくてお玉だ。あの食べものを掬ったりする匙というか柄杓というか、お玉だ。
試しに240ポイントで召喚してみる事にした。目の前の景色が揺らぎ、黒い霧が沸き上がるとお玉の姿が現れた。お玉は宙に浮きリズミカルに踊っている。銀色のお椀部分が光沢を放つ。
名前:ダンシングレードル
種族:踊るおたまじゃくし
レベル:5
HP:101
MP:56
力:38
器用さ:53
耐久力:63
素早さ:45
賢さ:58
スキル:支援演奏 調理
なまえ持ちの魔物で1点ものらしい。めちゃくちゃ優秀! これは大当たりだ。しかも「ご主人様、よろしくお願いします」と普通に喋って来た。こちらも「よろしく」と答えると「後ほど、お食事はいかがでしょうか?」と。
これまた使えるやつだった。
これはいい! と他にも召喚しようと色んな種類を試してみたが、その後は何も召喚する事ができなかった。コアさんに聞くと『ダンジョンが狭く、眷属の数を増やせません』と言われた。召喚がダメならと、罠を設置しようとするが通路とか良さそうな場所に設置できない。
それでは、とダンジョンを広げようとするが広げることも出来ない。いろいろ試してたら、ベッドがある部屋に階段を作ることが出来た、500DPもした。誰かがいる場所では地形の変更はできないらしい、ここしか触れなかった。
階段を降りた所につくられた部屋から通路を作り、もう一部屋作ったらポイントがほとんど無くなっていた。その部屋には扉を付けて、ベッドを運び込みダンジョンコアを移設する。そして、ここをダンジョン内の本拠地の部屋とした。
最後に残ったポイントを使って地下階に魔物を召喚してみるが、DPは足りているのにトロルとかオーガとか強そうな奴は召喚できなかった。選べたのは小さいのだけだった。スライムとかゴブリンとか妖精とか。
理由は『狭いから』ばかりだ。それでハチと同じコボルトを召喚して、寝た。もう、夜になっていたので晩御飯を食べて寝た。寝なくていいけど寝たいから寝た。
まあ、寝る前に食べた晩御飯。レードルが料理をしてくれたんだけど絶品だった。今まで食べてきたナンチャッテ料理じゃなく、きちんと調理されたシェフの作るような味に舌鼓をうつ。調味料がもう少しあればとか、お玉だけに炊事全般行けるらしい。本当に使えるやつだ。
ちなみに召喚したコボルトのステータスはこんな感じだった。
名前:―
種族:コボルト
レベル:5
HP:22
MP:8
力:11
器用さ:9
耐久力:11
素早さ:13
賢さ:8
スキル:―
ハチは相当優秀だった。
朝起きて、寝ていた時の事を思い出す。確か夜の間にオオカミが侵入してきたのだが、ハチにすぐ処理されていたはずだ。すぐに戦い終わったので気にせずまた寝直したんだった。
1階に上がって入り口付近の様子を見るが死体がない。ハチに聞くと倒したが、そのあとは何もしてないらしい。他の眷属にも聞いてみたがやはり、何もしてないらしい。
下にもどり調べるとDPはちゃんと30ポイントほど増えてる。コアさんに尋ねたら『3時間放置されていたので死体を吸収しました』と。前の死体も片づけなくてもよかったのか。まだまだ、分からない事がいっぱいだ。
1階にいるレードルに画面越しに朝ごはんを頼む。ダンジョン内なら召喚した仲魔と画面越しに会話できるらしい。さっき知った。
レードルを見ると鍋に材料を入れたあと、その中に入り自分自身がグルグルと回っている。言語化するとなんか気持ち悪いが、それはごく普通の光景だ。鍋の中の煮込み料理をお玉でかき混ぜてる。ただ、そこにはお玉を扱う者がいないだけだ。
まあ、そんなの関係ない。食べると、うん美味しい!
そう言えば、ハチの昨日のお手柄を褒めてないなと思い出し「ハチ、下に来て」と画面に向かって呼びかける。ハチは尻尾をフリフリ走り出すが、階段近くまで来て『下 行けない』と伝えてきた。
コアさんに聞いても『地下1階には移動できません。移動すると魔力が封鎖されます』としか言わない。昨日はハチにベッドを運んでもらってたのに訳分からん。そこでいろんな所を見ていたら説明書みたいなのが出てきたという訳だ。
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で、今ここ。
少し分かってきた。どうやら通路が原因だったようだ。上にあった通路も下に作った通路も、どちらも細いらしい。
3匹以上の魔物を配置した場合、巡回中に偶然に魔物が横並びになってしまって魔力を塞いでしまうのを防いでいるみたいだ。あの封鎖空間ってやつなんだが………なんというシビアな設定だ。
1階に罠を設置にし難かったのもこの所為みたいだ。回避する方法は、通路の拡幅か仲魔の行動範囲を設定する事。地下1階にいるコボルトの行動範囲を変更して階段下の部屋から出ないように設定したら、ようやくハチが降りてこれるようになった。
とりあえずハチの頭をワシャワシャと撫でておく。魔物を召喚する時に設定してからの召喚も出来るようだ。というか設定してから召喚しないと駄目っぽい。直ぐに召喚できなくなる。
いちおう問題が解決したので、上の大きな部屋にコボルトとスライムを1匹ずつ追加して、階段のある小さな部屋にもコボルトを1匹召喚した。ハチとレードルの行動範囲は設定をせずに、自由に動けるようにしておいた。
部屋をつくる時に厨房なんてのも設定できるようだが、コストが高くて見送った。焚火炉などの施設もダンジョンの中ならそのまま移設できるようだが今はポイントがない。
普通の仲魔となまえ持ちの魔物の違いも判った。普通の仲魔は死んでも体は消えて魔石だけを落とすらしい。しかもコストを払えば数時間後に自動的に生き返るらしい。ポイントがない場合や設定変更すると消滅しちゃうそうだ。
それに対してユニークモンスターは死んだら死体も残るし存在が消えちゃうそうだ。ユニークモンスターにするのにコストが掛るのは体を手に入れる為のようだ。利点はもともと強力だったり、特殊技能があったり、成長力が高くなったり、成長パターンが変わったり、といろいろあるらしい。
ハチとレードルには期待しようと思う。
あと魔石と魔力を調べた。ふつう生き物が死んだらその魔力の半分は外に放出されて、半分はヘソの下にある魔力器官に残り魔石になるらしい。まあ人族は何故か無くなるそうだ。
放出された魔力は近くにいる倒した者に少し奪われるのだが、それが経験値みたいな物になる。ダンジョンは放出され奪われずに漂っている魔力を壁や床から吸収するらしい。
体内に残った魔石も回収すればダンジョンコアから吸収できるそうなのだが………。
これって今まで魔石を回収し忘れてたって事か。ハチに聞くと命令がなかったから回収しなかったそうだ。ハチ、ダメじゃん。
ただ全てを回収し損ねたってわけではないようでコアさんに確認したら、ダンジョンに残っていた死体を取り込む時に魔石があれば一緒に吸収していたらしい。今までの夜のオオカミの分は吸収していたそうだ。まあその辺りは安心した。
魔石の事で他に分かったといえば、ダンジョンの眷属が落とす魔石の魔力量というのは設定できるという事だ。そとの魔物よりダンジョンにいる同じ種類の魔物の方が魔石に含まれる魔力が多ければダンジョンに来る者に対してアピールできるし、減らせば復活のコストを減らす事ができるという事だ。まあ、この辺りは今はまだ関係ないなんだが……。
問題は設定変更出来ないやつがいることだ。しかも死んだ時、ダンジョンコアに残ってる魔力まで持っていかれてしまう奴がいる。なんか、壊れ性能すぎるとおもったわ。
踊るおたまじゃくしってダメダメだ!!
ステータスとか目障りなら飛ばしてください。自己満足です。
ラフィン○ケトル初めて聞いたとき、なんてセンスのネーミング!! 感じたのを覚えています。最近では某ゲームのプレイヤーが名乗っていた「くるく○する指」というネーミングセンスに嫉妬しました。
もしあれなら、削除します。




