甲の回ー子
初めましての人も、お久しぶりの人も、どうもポルポンです。
今回は、僕の悪友が某動画サイトに投稿しているあの名作SPECをオマージュした、SPEC片をノベライズ化しました。
是非最後まで、ご覧ください。
どこで、なにを間違えた。
「生きている限り、意識は連続する。」と言ったのは誰だったか。
俺、こと新美翼の意識は連続している。
口の端からは血が滴り、ゆっくりと身体が倒れる間すらも、俺は何が起こったか理解できなかった。
友人と他愛もない世間話をしながら、狭く過疎化を体現したような道を歩いていただけのはずだ。
厚手の黒いコートを着込んだ男と肩が触れた瞬間、世界が歪んだ気がした。
地球はこんなにも不規則な速度で回っていただろうか。いや、自分の脳が本来の働きを放棄し、視界がうまく捉えられないだけだ。
意外、というよりは不思議なことに、体は苦痛を感じていなかった。
身体を構成しているパーツを繋ぎ止める糸を、一本一本ほどかれているような感覚。
魂が空気中に三々五々と拡散し、溶け込んでいくようだ。
未だ連続している意識の中、友の声が遠くに聞こえる。
ピントの定まらない俺の視界に最後に映ったのは、しゃがみこんでもう動かない俺の体を揺さぶる友、七徳貴虎の姿と、全身を黒で包み、先程俺とぶつかった男が、七徳の頭に手をかざしながら不気味な笑みを浮かべる男の姿だった。
連続していた意識が、揺蕩った命とともに、ここで途切れた。
「ん、じゃあそろそろ行くわ。」
快活な城井の声が高くなった空を切る。
「少しの間だが、寂しくなるな。」
「彼は騒音の元凶だろう?少し静かになるくらいだ」
「急にカナダへ留学すると言い出した時は驚いたが。絶対に帰ってくるんだぞ。」
「そういうのを俗にいう死亡フラグと言うんじゃないか?」
煽るように言うと、案の定、七徳が声を荒げる。
「不吉なことを言うな、鎌鞍。」
私のことを鎌鞍と呼ぶ筋肉ダル、いや、七徳をあしらいながら、言葉を続ける。
「ははっ。まあ飛行機が墜落しないことだけ祈っておくよ」
「なにが面白い。」
七徳が私の胸倉につかみかかってくるのを、慣れたように制したのは城井だ。
「まあまあ、喧嘩するなって。少しの間だが、代行審判官を頼むよ。」
私たちが、ジャッジメントと呼んでいる代行審判官とは、警察が捜査しない「予言」や「発火」などといった頭がおかしいとしか思えない事件の依頼を受け入れ、警察に代わって事件を捜査する組織だ。
創設者である七徳をはじめとした、過去に奇怪な事件に遭遇した鎌鞍、城井の三名の他、依頼人を事務所まで案内する仲介人の仁木が所属している。
城井の言葉に「善処する。」と答えた七徳をやさしい笑みで一瞥してから、城井はマンションをあとにする。
小さくなっていく友の背中を見送りながら、私は七徳に語り掛ける。
「喧嘩をするなとは言われたが、多分無理だな。」
間髪入れずに飛んできた七徳の拳が私の顔を抉るとともに私の視界はブラックアウトした。
いかかだったでしょうか。
陳腐で拙い語彙力と文章で構成したので、読みぐるしかったとは思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回の更新をお待ちください。
では、甲の回ー弐でお会いしましょう