気絶するわ。
「ぐっ、ぐぁああぁぁあああっ!!」
熊男は、絶叫を上げて次々と襲いかかるナイフを受け止めた。
幾本ものナイフが突き刺さっていくのを見ながら、私はヘタんと地面に座り込んだ。
「な、な…何なの?何が起きてるんだ?」
一体何が起きてるんだ?
目覚めたら知らない場所にいるし、見た目は変わってる。しかも、襲われた時に咄嗟に変な呪文を唱えたら光るナイフがいっぱい出てくるし。
考えている間にも、熊男にはあのナイフが突き刺さっている。
私は、呆然と辺りを見ていると、熊男にカツアゲされていた男性が、興奮した様子で話し掛けてきた。
「貴女は何者なのですか!?【千本刃】を発動させるなんて!これは夢ですか!?ああ…それよりも、大丈夫ですか?顔が青い。発動させるだけでも天才なのにそれを完璧にコントロールをしているからですかね。あ、貴女のお名前を…ああっ!」
男性は、私の肩を揺さぶりながら猛烈な勢いで話すが、私には何を言っているのかサッパリだし、分かりたくもない。
目の前の光景が信じられなくて、そろそろ意識が混濁してきた。
熊男は大丈夫だろうか。
あのナイフどうやったら消えるのだろうか。
意識が途切れる寸前、消えて…と思うと、ナイフはアッサリと消えた。
「ホントに…どこなの…ここ…」
一言だけ呟いて、私は気絶した。