ちいさいが ちがう
ペタペタペタ・・・。
レンエンは侵入者にギュウギュウと抱き着かれたまま、自分の目の前にあるその人の胸に手を当ててポソリと呟いた。レンエンをまだ抱きしめたままのその人も、やっと発見することができた探し求めていた兄の身体を抱え込みポソリと呟いた。
「やっぱり、小さい?」
二人はハッと我に返ると、慌てて起き上がりじっくりとお互いを見つめた。
「あの・・・お兄様は、私とは違って小さくなってしまわれたのですか?もしかして、あの時に私のせいで・・・」
ジワリと目に涙を溜めながら、唇を噛みしめているその妖艶な人が可愛らしく見えた。だが、レンエンが気になるのはそこじゃない。フワフワと柔らかそうな長い髪に、美しく着こなされた真紅の服から覗くスラリとした手足。ふんわりと漂ってくる甘く優しい香り。
すごく美人で妖艶なお姉さんに見えるのだが、レンエンがペタペタと触った真っ平らと言って良い目の前の、ソレ。
「貴女は・・・だれ?男の人?」
目を見開いて信じられないといった表情でこちらを見ているその人が、ポロポロと涙を流しはじめた。信じられないのは、こちらの方である。結界を壊したかと思えば、抱き着きレンエンをお兄様と呼び泣きだす。
周りの真封士やヘキとモエも呆然として、こちらを見ているばかりだった。
「お兄様、私です、ショウです!まさかお忘れに・・・。小さくなったばかりか記憶まで・・・・ごめんなさい、ごめんなさい。私が未熟なばかりにこんなことに!!」
「え?僕、記憶、きちんととありますよ。ここで生まれ育ったから、あなたのお兄様じゃないです。それより、ショウさん?あなたは、いったい・・・」
何者ですか?そう問いかけようとした時に頭上から、結界を舐め溶かしていた妖獣が侵入者であるショウの目の前に降りてきた。そのままレンエンの方を振り返り、クンクンと匂いを嗅ぎ
― グルルルッ ―
妖獣が警戒音を出しながら牙を剥いて威嚇してきた。危険を感じたヘキが妖獣に向かって殺気を飛ばし、周りの真封士達も反撃に備えて真封札を構える。
物凄い速さでレンエンに向かって飛びかかる。カッと口を開けて噛みつこうとしたところを、とっさに手を伸ばしたレンエンの手のひら中にスッポリと妖獣の頭が収まった。
妖獣のものすごく短い前足がカシカシカシと宙を蹴る。
数名の真封士達がその様子を見て、ポロリと真封札を落としていた。
「ええぇ・・・っと」
カシカシカシ、グルグルルルゥッ
垂れた長い耳がフワフワと揺れ、短い前足からぷにっとした肉球が覗いて見える。長い胴体を支える短い後ろ足がプルプル震えている。
すっごく威嚇してきてるけど全然怖くない・・・いやむしろ可愛いんだけど。ナニコレ。
「メロン?まさか、本当にお兄様じゃないの?」
侵入者であるショウが困惑しながら、そっと妖獣を抱き上げる。
「だから、そう言ってるのに・・・」
レンエンはガックリと肩を落とした。