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けっかいが こわれる

 アヤナと別れたレンエンは、道場横から神社がある場所へと全力で走り、長い階段を駆け降りた。真っ赤な鳥居が何本も並んでいるその近くで空を見上げると結界からキシキシと音が鳴っている。


「コクスイ・・・」


 レンエンの肩に乗っている妖猫が、目を細めながら結界を睨んでいた。


『主、早く真封士の方々の所へ行きましょう。恐らくこの結界は後少しで・・・』


 コクスイの言葉にレンエンはゴクリと生唾を飲み込んだ。結界が破れることはすなわち、いつでも魔獣や妖獣だけでなく魔腐獣までもが侵入してくる可能性があるということ。レンエンの額から汗が、ツツと首筋まで流れた。頬に柔らかな髪が張り付く。それらをグイと袖で拭うと、警告音が鳴る場所へとまた走り出した。




 ハァハァと激しく呼吸をしながら、その場所にたどり着いた時には真封士達の数名が真封札を発動させ、魔腐獣が侵入して来たらすぐに封印ができるように準備をしていた。その横で結界士が壊れかけている結界の場所を探知し修復しようと試みている。


「・・・若」


 レンエンは後ろから呼び止められ、振り返った。そこには父の側近でもある真封士がひとり、ヘキが立っていた。スラリと伸びた身体にガッチリとした肩、そして全身に引き締まって付いている筋肉の凄さ。見上げるくらいに大きいヘキにいつもレンエンは圧倒されてしまう。


「ヘキ?何故ここに・・・父さまと一緒に帝都に行ったのではなかったの?」


 ヘキはゆっくりと首を横に振り、ヘキの後ろに立っていた黒髪長髪の儚げな少女の手を優しく握り腰に手をまわした後、そっと引き寄せた。少女は微笑むとレンエンに向かって軽く会釈し薄く形の良い唇を開く。



「若様、モエと申します。普段は若様の母君のお側にて仕えさせていただいております。此度、この結界に攻撃を仕掛け、この場所に侵入しようとせしモノを感知致した故・・・そこのヘキにこの場所まで連れてきてもらったのです」


 そう言ってこちらを見るモエの瞳は薄い灰色をしており、その瞳はレンエンの姿を映してはいない。


「若、モエは魔力が眼に集中しており視力が悪い。ほとんど見えていない」


 見えないのであれば、さぞ生活しにくいだろう。レンエンは密かにモエに同情した。




「ですが、若様・・・私は見えない分、感じることができ、人とは違うモノが視えるのです」



 若様が、私に対して可哀そうだと思っていることも感じるのですよ。そうクスクスと笑っているモエが少し怖く感じてしまったのは内緒にしておこうと思っているレンエンだが、それすらも感づかれていた。





「モエ、たのむ」


 ヘキのその言葉に、ゆっくりと頷いたモエは意識を集中する。瞳が薄い灰色から、魔力が更に瞳に集まることによって金色に輝きだす。


「アァ・・・感じます。すごく・・・おおきい」


 頬を赤く染め、ギュッと両腕を胸のそばで交差させ自身の身体を抱きしめる。モエの身体中が敏感に音を拾い気配を感じ、異変を察知する。


「ヘキ、私を支えてくださいまし。意識が保てませぬ」


ピクピクと小さな身体を震わせて、ヘキにしな垂れかかるその姿に周りにいる男性の真封士達から黒い空気が発生しているように感じたのは気のせいではないのだろう。レンエンは侵入者とは違う異変を感じて首を傾げた。




「若、モエは稀なる能力の持ち主であるが・・・能力が強すぎて感じやすすぎる。その能力を発揮させる時に守護者である俺がいないと・・・色々と危険でな」


 ヘキがポリポリと頬をかきながら、慣れた様子でモエを支えている。



「アアァァアッ!!!」


 ビクビクと震えて叫ぶモエ。その表情は切羽詰まった感情が読み取れた。



「モエ!?」


 皆が心配する中、凄まじい怨念を感じたモエがその場所を突き止める。震える腕を真っ直ぐに伸ばし、頭上を指差した。

 太陽の眩しい光の中、目を凝らして頭上を見上げると、そこには結界がピシピシとひび割れてその上に妖艶な雰囲気を醸し出す美人と小さい妖獣が佇んでいた。



 真封士達は、驚愕し大きく目を見開いた。


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