ちいさき けもの
その小さき獣は、人間にいつも身体を弄りまわされていた。
魔獣の生体を調べ、魔腐獣へと変化する様子を発見する為の実験体であるらしく、小さい身体は切り刻まれ、様々な術式を彫られる。
術を発動され身体が軋んだ。痛みで気が遠くなる。周りは全て、闇だった。
何度も傷付き傷んだ身体は、治療術を掛けられ復活する。
そして再度術式を彫られ、体内を切り刻まれ何かを植え付けられる。
何度も何度も実験を繰り返され、どれだけの歳月をそうして過ごしてきたのかわからなくなった。
— クルシイ クルシイ イタイ イタイ オナカスイタ キモチワルイ —
— タスケテ タスケテ!!モウヤメテ —
どれだけ叫んでも、助けを呼んでも、誰も小さき獣を助けてはくれない。
濁った瞳で、小さき獣の身体を弄る人間どもを見つめる。
ずっと、何も食べていない空腹の中、この人間どもを喰らってやろうと小さき獣は大きく口を開いた。
ある日、ある場所でひとつの施設の中にいた人々が恐怖と悲鳴をあげ掻き消えた。
それを知るものは、まだ居ない。
そして、小さき獣は自由になった。
ただただ、喰らい尽くしたい欲望のまま 地下を這い蹲り 地上へ上がると眼下に広がったのは広大な結界の中にある数多くの魔力を持った人間ども。
まず、ココから喰らっていってやろう。
そう決心した小さき獣は、再度地下へ潜り込むため小さい爪で地面を掘り結界の下へと侵入するのだった。
結界が張られているその下は、何の抵抗もなく小さき獣を受け入れた。スルリとその中に入り込み、最初に喰らう人間を探す。
そして小さき獣は、次に喰らう人間をみつけた。
ニィと歪んだ笑みを浮かべ、地上に這い出しズルズルと身体を引きずりながらその人間に向かって行った。