まりょくで、ごはん
「にいさま うそつき」
ぷくぅっ
真っ赤なほっぺを膨らませて口を尖らせている小さくて可愛いアヤナ。まだ5歳であるその妹の可愛さといったらもう、食べてしまいたいほどである。
普段から、「にいさま」と呼んでは兄の後ろをちょこちょこと追いかけている姿を、真封士一族の者達は暖かな目で見ていた。
だが、今日はちょっといつもと様子が違うようである。アヤナが兄に対して怒っているのは初めてではないだろうか?
「ふういんしたら、けいやくできるいった!わるいの けももちがった。アヤナ、けももにわるいことした・・・」
目に涙を溜めて兄を見上げるアヤナに、兄は戸惑うばかりである。
「ご、ごめんね?」
昔から、「悪いことしたら、森の魔獣に喰われるよ」と言い聞かされて育つわけなのだが、何故かアヤナが勘違いして出会ったのは森を守護する聖獣だったわけで・・・。まさか封印までしようとするとは。
真封士一族は、成長して魔力の操作が出来るようになると封印の修行を始める。その後、封印・解放・祓いなどの術が使えるようになってから、真封士に力を貸してくれる聖獣・魔獣・妖獣等の中で、人間の魔力を糧とし力を貸してくれる獣と契約をするのである。
・・・・が、そんな難しい話しを4歳の小さな子供に説明しても理解はできないだろう。そう考えた兄は、かなり説明を簡略化した。その結果がこれである。
「ね、アヤナは契約がしたかったの?」
兄の質問に、アヤナはコクコクと頷き兄の肩の上に乗っかっている小さな契約獣である妖猫を見た。その視線は真っ直ぐで熱い。妖猫は狙われている小動物な気分になってゾクリと背中を振るわせた。
「じゃあ、まず魔力を知ること操れること」
人差し指を立てて、にこにこと兄が言った言葉にアヤナは首を傾げた。
「どして?」
「アヤナと契約してくれた獣は、アヤナの魔力がご飯なんだ。だからアヤナの中にある魔力を感じて外に出したり入れたりしないとね。それに、魔力を札に絡めて術を発動させるから真封士になるには大切なことなんだよ」
そう言いながら、兄は自分の手のひらをアヤナの前に差し出して目を瞑り集中する。パチリと目を開いた瞬間に手のひらから赤い半透明の霧がポワポワと溢れ出す。
そっと、その霧のような魔力に触ってみたアヤナは、優しくて暖かな感じが伝わってきて幸せな気持ちになった。
兄の肩を見たら、上に乗っている妖猫が溢れ出す魔霧を嬉しそうに吸い込んでいた。妖猫は身体の奥から満たされたような幸せそうな顔をしていた。
「にいさま、アヤナもしたい」
この幸せな気持ちを、森に居るけももに分けてあげたかった。
「ああぁ、もっと!!もっとくださいっ!!!おかわり、おかわりっ んにゃにゃっ」
ピョンピョン飛びながら、空中に霧散する魔霧を追いかける妖猫に真封士の皆様ノックアウト~!
真封士一番人気の契約獣は、妖猫で決まりですね(笑)