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Half-elf

そのうち改題……

 ハーフエルフ、森人族エルヴスと他の種族との間に生まれし者。

 エルフは、広大な『イプシロン大森林』を領土とする<妖精国>ムンダスに暮らす長命種の一つだ。金髪碧眼に透き通るような白い肌を持ち、先端の尖った耳が特徴的な種族である。また、他の森人族エルヴスには金眼を持つエルフの王族、ハイエルフや銀髪赤眼で褐色の肌をしたダークエルフが存在する。

 因みに、エルフは非常に排他的な種族であり、同じ森人族エルヴスであるダークエルフですら身体的特徴の違いから敵対している程だった。


 ハーフエルフは親の種族的特徴の幾つかを受け継ぐ。モーメットはくすんだ銀髪、褐色の肌といった風貌からダークエルフの流れを汲むハーフエルフだと判っていたが、物心つく頃には孤児として路上生活をしていたため、出自は不明だった。



◇◇◇



 モーメットが自身のことをハーフエルフであると明かした時には、少なからず奇異な目を向けられるのが常だったが、巨人族ギガースであるゴライアスは一切、意に介さず別のことに注視していた。


「これは驚いた……やけに認識しづらいと思うとったらそのローブが理由だったのか。モーメット、それを何処で手に入れた?」


「ああ、このローブは第二界層の戦利品だ。今履いているブーツもそうだが、魔具は全部で八つ手に入れた…………効果は分からないが」


 それからモーメットは今回が初めての迷宮であること、第二界層に至る道中や帰路の途中での粉砕蛇クラッシュテールとの邂逅までの顛末をゴライアスに語っていく。

 モーメットの話を訊いたゴライアスは、まさか第二界層まで走り抜けるような命知らずがいるとは思わなかったと愉快そうに笑うのだった。



◇◇◇



 ゴライアスと地上までの道行きについて幾つか打ち合わせを済ませたモーメットは、フードをかぶり直すと先行して歩くゴライアスの後に続いた。

 打ち合わせの末、ゴライアスは極力いつも通りの行動を心掛け、それをモーメットが周囲の警戒をしつつゴライアスの邪魔にならないようにしながら実地で見学することとなった。

 モーメット自身の天性の『隠密ハイド』スキルとアビスローブの永久効果『闇衣ステルス』の重複発動のお陰で、ゴライアスに同行者の存在を意識させることなく普段と変わらない行動を取らせることを可能としていた。



 迷宮『伏魔殿パンデモニウム』地下一階、既にモーメットの視界には地上への階段が入っている。モーメットは地下九階から地下一階までの短い道程ではあったが、とても貴重な経験が出来たことを実感していた。

 唯ひたすら走り抜けた第二界層への道行きで常に付きまとう死の恐怖、それはモーメットの心に深く刻まれた。

 そしてゴライアスと行動を共にしたことで、モーメットは迷宮探索における実践的なノウハウと修めるべき技術の数々を実地で目の当たりにし、多くのものを得ることが出来たのだった。



 最後の階段を昇り、迷宮の入口脇の開けた場所へと移動したところでゴライアスはモーメットにある提案を持ち掛けた。


「特に問題もなく地上うえに帰って来られて何よりだ……モーメットよ、他に用事もないのならギルドに向かう前にと武器屋に寄っていかんか。儂がぬしの得物を見繕ってくれよう」


「いや、流石にそこまでしてもらうわけには……」


「遠慮なんぞせんでいいわい。冒険者の先達から新米冒険者への餞別とでも思ってくれ。それに高々第一界層序盤の道行きを帯同させただけじゃあ、魔具一つとは釣り合わんしな」


 そこまで言われては固辞するべきではないだろう。モーメットはゴライアスの提案を受け入れ、連れ立って武器屋のある中央通りへと足を向けるのだった。



◇◇◇



 迷宮都市パルマリウス西方通り市場。日が傾き夜が近付いているにも拘わらず、冒険者向けの露天商がひしめき合い喧騒が止まる気配を見せない。


 夜市の賑わいを見せる通りの一角にゴライアスとモーメットの姿はあった。


 武器を求めるのであれば中央通りにある大手の商会が営む店舗に行くのが一般的である。価格も適正価格の範囲で落ち着いているし、武器の種類も一通り揃っているからだ。


 モーメットたちも初めは中央通りに足を運んだ。しかし、残念ながら五メルトルを超す巨人族ギガースが中に入れる程の店舗がなかったのだ。そもそも自分たちで武具を拵える巨人族ギガースが武器屋を訪れることなど殆どないため、店舗が巨人族ギガースの来店を想定した造りになっていないのも仕方がなかった。


 幾らか武器の代金を渡してモーメットだけで武器屋に行かせようかともゴライアスは考えたが、そんなことをすればこの義理堅い男はこちらに遠慮して一番安い武器で済ませようとしかねないことに思い至った。そこで、ゴライアスは酒の席で一緒になった交易商が西方通りで商売をしていることを思い出し、今は市場の中を件の交易商を探して歩いていた。


「たしか市場の外れになったとボヤいておった覚えが……」


 予想を遥かに超える露天商の数にゴライアスは辟易としていた。すると市場の賑わいから少し離れた所で見覚えのある女性が此方に気付いて声を掛けて来た。


「おお、巨人のダンナじゃないか。アンタがこの辺りに居るなんて珍しいねえ、何か用事かい?」


「元気そうで何よりだ、シア。今日はぬしの店に用があってな、以前武器を扱っていると話していただろう。連れが扱えそうな得物を見繕おうと思ってきたのだ」


 ゴライアスと親しげに話すシアと呼ばれた女性は妙齢の牛の獣人(ワッカム)ーー牛鬼ミノタウロスとは異なり色白の美貌を持つ種族で、零れんばかりの豊満な谷間を惜しげもなく晒し、男好きしそうな肉感的な肢体の持ち主だった。化粧気はないが茶髪黒眼の愛らしい顔立ちをしたその女性に対し、ゴライアスは用件を伝えると傍らに立つモーメットを紹介する。紹介を受けたモーメットはフードを外し、簡単な自己紹介を済ませたが、先程とは打って変わって女性は心ここにあらずといった様子だった。

 モーメットは訝しく思い、ゴライアスに説明を求める。


「彼女は一体……」


「時々ああなるのだ、気にするな。彼女は交易商のフリーシアン、近しい者はシアと呼んどる」


 少々変わっとるがいい奴だとゴライアスは付け加えたのだった。



 その後、何とか元通りになったシアはゴライアスの頼みを快諾すると店仕舞いを手早く済ませ、二人を連れて倉庫街へと向かう。

 近況を語り合う二人の後をついて行くモーメットだったが、顔合わせからこれまでことある毎にシアから妙に熱っぽい視線を向けられている気がすることに困惑し、フードを目深にかぶり直すのだった。

随時改稿

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