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境界の双子〜二つの雷鳴が響くとき〜  作者: ユーディ
第一章 輪廻の双極 ― 黄金の誓いと紫電の断罪

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第一章4『黄金の誓い』

十四歳の冬のあの日、カイルに抱きしめられた夜を境に、二人の関係は「監視者と対象」から「共犯者」となった。

カイルは、表向きは光帝ソルへの報告書に「異常なし」と記し続けましたが、その裏では、リオナの魔力が暴走するたびに、自身の『太光』を彼女の『雷光』に同調シンクロさせる訓練を自らに課しました。


「リオナ、怖がらないで。君の闇を、僕の光で包む。そうすれば、君の雷はもっと遠くへ、もっと純粋に届くはずだ」


二人が手を取り合い、魔力を循環させるたび、リオナの体内に澱んでいた夜国の波形が、カイルの温かな光に解かされていきます。それは、禁忌の触れ合いでした。光の国において、魔力の同調は魂の結合に等しく、婚約者同士であっても成人の儀を終えるまでは許されない深淵な行為です。


しかし、二人はあえてその禁を破りました。カイルの光がリオナの血管を巡るたび、彼女は生まれて初めて「自分は汚れていない」と感じることができたのです。


しかし、順風満帆ではありませんでした。十五歳を目前にしたある日、リオナはカイルを突き放そうとしたことがあります。


「カイル、もうやめて。あなたは王都の英雄になるべき人よ。私と一緒にいれば、いつか父様に、あなたまで『不浄』だと断罪されてしまう……」


リオナの叫びに、カイルは初めて激昂しました。彼は王家から賜った聖騎士の紋章を自らの手で引き剥がし、暖炉の火の中に投げ込んだのです。


「僕が欲しいのは、王都の栄光ではない! 君の隣に立つ資格だ! もし君が不浄だと言うなら、この世界の『正義』こそが間違っている。僕は、神に背いても君を愛する。それだけが、僕の生きる理由だ!」


炎に照らされたカイルの瞳に、迷いはありませんでした。リオナはその時、悟ったのです。この人は、自分の「影」さえも、光と同じ熱量で愛してくれているのだと。


そして、十五歳の誕生日の前夜。黄金の雲が渦巻き、雷鳴が祝福の鐘のように鳴り響く天雷閣の頂上で、二人は「黄金の誓い」を立てました。


それは、王家が定めた形式的な婚約の儀式でもなく2人だけの密約。 リオナは自らの指先を少しだけ黄金の雷で傷つけ、カイルもまた、短剣に雷を纏わせ手のひらを切りました。二人は血の混じった手を強く握り合わせ、互いの魔力を最大出力で解放しました。


「私はリオナ・エル・ディアル・ヒノクニ。この命、この雷、そして私の魂を、カイル、あなたに預けます」


「私はカイル・ヴァン・アストラル。この剣に纏った雷に懸けて誓う。君が光の中にいる時も、闇に沈む時も、僕は君の半身であり続けよう。僕たちの愛は、黄金の雷よりも激しく、永遠を貫く――」


その瞬間、二人の魔力が共鳴し、夜空に向かって巨大な黄金の柱が立ち昇りました。それは、遠く離れた帝都の光帝ソルさえもが目撃したと言われる、奇跡の光でした。


この誓いの日を境に、リオナの『雷光』は、破壊の力から「守護の力」へと変貌を遂げました。 カイルという唯一の理解者を得たことで、彼女の心に巣食っていた「父への恐怖」という影が消え、代わりに「姉を救い出す」という明確な希望がその中心に居座ったのです。


二人はそれから、成人となる十七歳までの二年間、辺境の地で文字通り「一心同体」となって戦い抜きました。カイルが盾となり、リオナが矛となる。その無敵の連携は、やがて「黄金の双星」として世界にその名を轟かせることになります。


しかし、このあまりに強固な絆こそが、境界線で姉・シオンと対峙した際、カイルを「守るべき愛」と、シオンという「血の宿命」の間でリオナを引き裂く、残酷な楔となっていくのです。

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