大した食事
「……あの、エリス。これは、その……」
「……悪いな、大した食事は出せな――」
「いやそうじゃなくて! そうじゃなくて……その……ただ、申し訳ないなって。エリスは、お客さんだし……そうでなくても……その……」
「……ああ、そんなことか。別に気にすんなよ。客側が勝手に出す分には自由だろ?」
「……まあ、そう言われれば」
それから、数分経て。
そんなやり取りを交わしつつ、円卓にて向かい合う私達。そんな二人の前には色の良い羊肉、ほんのり湯気の漂うスープ、イチジク、黒パン、そして芳醇な香り漂う飲み物が。控えめに言っても、私にとっては十分に大した食事で――
……でも……なんで? なんで、そこまでしてくれるの? 私なんかのために、どうして――
「……ご馳走さまでした。その……ほんとに美味しかった」
「……そっか、それなら良かった」
それから、十数分経て。
そう伝えると、仄かに微笑を浮かべ答えるエリス。もちろん、お世辞でなく本当に――本心から、美味しかったと思っている。でも、それはきっと食事そのものだけが理由ではなく――
それから、暫し経過――とうとう、その時間がやって来て……うん、ここまでしてもらったんだ。せめて、返せるものは……最低限、お代以上のものはお返ししないと。そんな決意を固め、二人ゆっくりと毛布を纏い――
「………………あれ?」