……いったい、何が――
「――悪いな、付き合わせちまって」
「ううん、気にしないで。そもそも、悪いも何も私が勝手に付いてきたんだし」
ある日の黄昏時。
金色に輝く空の下、和やかに会話を交わし街の中を歩いていく。もう、すっかり日の落ちる時間も遅くなっていて。なのに、エリスと出逢ったあの日――もう数ヶ月も前のあの冬の日が、まるで昨日のように鮮明に思い出せる。願わくば、これからもずっと――
「――到着だ、ソフィ」
「……へっ? あっ、うん! …………えっ」
そんな感慨の中、ふと鼓膜を揺らすエリスの声。少し慌てつつエリスの視線を追うと、そこに映るは大きな敷地一面に広がる数多の墓石で。
「……それじゃ、行くかソフィ」
「……あっ、うん……」
すると、そう言って再び歩を進めるエリス。そんな彼の後を、ポカンとしつつ付いていく私。用事がある、と言っていただけで場所は知らされてなかったけど、よもや……いや、別に驚くことでもないか。きっと、大切な誰かを弔いに来たんだろう。……うん、思いっきり場違いだったよね、私。まあ、もう今更だけども。
ともあれ、エリスに続き歩みを進めていく。場所柄不謹慎な感想かもしれないけど、生い茂る夏草の匂いがどこか心地好い。
それから、ほどなくしてピタリと立ち止まるエリス。そして、一基の墓石の前にて跪き目を瞑り――
「……本当に……本当に、すみませんでした。どうか、安らかに」
「…………へっ?」
そう、そっと手を合わせ告げる。その声音は……表情は、こちらの胸が痛くなるほどにありありと苦痛に満ちていて。……いったい、何があったのだろう? 彼の過去に、いったい何が――