美味しい理由
「…………美味しい」
「……そっか、なら良かった」
それから、十数分経て。
チーズケーキを一口含んだ後、ややあってポツリと感嘆を洩らす。……うん、美味しい。チーズケーキどころかケーキ自体、恐らくは初めて食べたけど……うん、こんなに美味しいなんて。でも、
「……ん? ああ、まだ欲しいか? それなら――」
「いやいやそうじゃなくて! じゃなくて……」
すると、私の視線をどう解釈したのか再びメニューの冊子を手に取るエリス。いやいやそうじゃなくて! その、図々しくおかわりを要求してるわけじゃないって言いたかっただけで、いらないっていう意味じゃ……だから、お願いだからシュンとしないで! ……まあ、そんなところも可愛いけど。
ただ、それはともあれ私が言いたいのは……その、こんなに美味しいのはケーキ自体の味だけが理由じゃなくて……それ以上に、貴方と一緒に食べているからで。だから――
「……ねえ、エリス。今、言うことじゃないかもしれないけど……また、一緒に来よ? 今度は、私がエリスの分も全部出す」
「……へ? いや、また来るのはもちろんだが、なにもお前が出すことは――」
「出すから。少なくとも、次は必ず。じゃないと……もう、一緒に行かない」
そう、緊張を抑え告げる。……言わなきゃ良かったかな? もし、これでじゃあもう一緒に行かないと言われてしまったら――
「……分かったよ。じゃあ、次は頼むな」
「……っ!! うん、任せて!」
すると、ふっと微笑み応えるエリス。そんな彼の言葉に、笑顔にホッと安堵を覚える。……ふぅ、良かった。