高貴なお店?
「……ね、ねえ、エリス。ほんとに良いの? こんなに高そうなお店……」
「気にすんなよ、ソフィ。そもそも、別にそんなに高いわけでもねえし」
それから、数日経た昼下がりこと。
控えめに尋ねてみるも、言葉の通り気にした様子もなく答えるエリス。一応、自分の分は自分で出すと言ったし、本当にそのつもりなのだけど、彼は自分が出すと断固として譲らず。それは、お金を返そうとしても一度として受け取らなかったあの断固さと同じくらいで。……うん、ほんとになんで?
とまあ、そんな疑問と申し訳なさはさて措き……今いるのは、白を基調とした石造りの空間。優美なクラシック音楽が流れる中、窓から差し込む柔らかな光がゼラニウムの花を優しく照らすお洒落なカフェ――私のようなみすぼらしい貧乏人には、本来足を踏み入れることさえ許されない領域で。
「……さて、今日は何を……そうだな、とりあえずチーズケーキとカプチーノでいいか。ソフィは?」
「……あっ、じゃあエリスと同じので!」
「そっか。まあ、またなにか欲しくなったら言えよ」
「あ、ありがと」
その後、フリフリ衣装のウェイトレスさんに注文を伝えるエリス。……良いなぁ。私も着てみたいな、あんな可愛い服。まあ、私には似合わないだろうし……そもそも、相応しくない。この汚れた私に、あんな眩しいほど真っ白な服は。
ただ、それはそうと……うわぁ、やっぱりお洒落な人ばっかり。見るからに高貴な服装に、物語で見たことあるようなお洒落な髭を……いや、髭はあんまり関係ないか。ともあれ、きっと私とは別世界のたいそう偉い人達ばかりで……だけど――
「……そう萎縮するなよ、ソフィ。当然だけど、食事代さえ出せば誰でも来て良い場所なんだから、堂々としてろ」
「……あ、うん、ありがと……」
すると、私の挙動から察したのか、少し呆れたように微笑み告げるエリス。……でも、こっちは気づいてないんだろうな。このお洒落な場所の、きっとたいそう偉いお洒落な人達の誰よりも断然輝く貴方にぐっと惹かれている私の胸中なんて。