大好きで大好きで。
オレの長所は、一途なところだ。
でもみんなはそれを、短所と言う。なんでも、オレはいつもしつこいらしい。
オレはしつこいとは思わない。だってそれは好きだから。好きになった人を追いかけたい気持ちは、誰だって持ってるいものだ。フラれたからって、すぐには諦められることは出来ない。
それが、オレの長所だ。
「亜ー衣ー!」
3回の教室の窓から名前を呼ぶ。中庭で友達としゃべっている亜衣を見つけた。
どうしたの?口パクで亜衣が伝えてきた。
「今日も一緒に帰ろうぜー!」
亜衣が頷く。その後、横にいた友達が亜衣に何か言ってたが、別にオレは気にならない。
満足して自分の席に戻ると、孝太がやってきた。
「よぉ、孝太」
「健ー、お前そろそろ諦めろって。葉山が健のこと好きなわけねぇじゃん」
ムッときた。
「亜衣が俺のこと好きかどうかなんてわからないだろ。それに、オレ諦めないし」
孝太が鼻先で笑う。
「じゃあ、隣のクラスの佐々木も亜衣のこと好きらしいけど、勝つ自信は?あの王子と張り合えるの?」
その話題を出されると、俺も言い返せない。
佐々木は、頭良いしスポーツ万能だし、その上、かなり顔が良い。女子がキャーキャー騒いで、"王子"って言うのもわからなくはない。
オレが黙り込んでいると、教室の出入り口から亜衣が入ってくるのが見えた。
「まあ、頑張れ」
上から目線で言い残すと、孝太は他の奴らのところへいってしまった。
「むかつく」
負けた気分で、ものすごく悔しかった。
昇降口で亜衣を待つ。ほとんどの人が帰っていったのに、亜衣はまだ来ない。
「野田君、ゴメンね。待った?」
亜衣が小走りでやってくる。
「ううん、全然!」
二人で並んで歩き始める。
「ねぇ、さっきまで何してたの?」
「えぇ・・・?」
亜衣が言いよどむ。何だよ、とオレが言う。
「佐々木君に、告白されたの」
心臓の鼓動がやたら大きく聞こえる。何だよ、こんな時に。
「ふ~ん、亜衣モテルんだぁ」
オレは、亜衣の顔を見ないようにした。
ショックが多すぎて、黙って歩いた。亜衣と帰り道が同じこと、家が学校から遠いことを初めて恨んだ。
「野田君?」
沈黙に耐えられなくなってか、亜衣が話しかけてきた。それでも、俺は目を合わせないようにする。
「よかったじゃん。王子に好きになってもらえて。幸せじゃん・・・」
心苦しかったが、精一杯の強がりだった。カッコをつけて、手をズボンのポケットに突っ込んだ。
明日からどうしようか。こうやって一緒に帰れないのか・・・。というより、顔をあわせるのもつらいよ、きっと。
頭の中も心の奥も、切なくてつらい気持ちがあふれてきた。すっと冷たくなっていく。
――――――それは、唐突だった。
俺のポケットの中に、するっと手が滑り込んできた。そして、その温かくて柔らかい手が、俺の手をぎゅっと握る。
びっくりして横を見る。亜衣がにっこり笑ってる。
「野田君。私が好きなのは野田君だよ」
顔が一気に赤くなるのがわかる。
「勘違いだよ。佐々木君はいい人だけど、野田君は大好きな人」
「え、それホント?」
「何で嘘つく必要があるの?」
照れくさそうに笑う亜衣。オレは、素直に嬉しかった。
「ヤバイ。マジで嬉しい・・・」
「これからは、ずっと隣にいてもいい?」
涙が出そうなほど嬉しかった。
「あたりまえじゃん!」
オレの長所は、一途なところだ。
でもみんなはそれを、短所と言う。なんでも、オレはいつもしつこいらしい。
今はもう、そんなことどうだって良い。
「健ー!」
亜衣を想うこの気持ちを、亜衣に捧ぐことが出来たら、それで良い。




