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大好きで大好きで。

作者: 万里
掲載日:2010/03/17

 オレの長所は、一途なところだ。

 でもみんなはそれを、短所と言う。なんでも、オレはいつもしつこいらしい。

 オレはしつこいとは思わない。だってそれは好きだから。好きになった人を追いかけたい気持ちは、誰だって持ってるいものだ。フラれたからって、すぐには諦められることは出来ない。

 それが、オレの長所だ。


「亜ー衣ー!」

 3回の教室の窓から名前を呼ぶ。中庭で友達としゃべっている亜衣を見つけた。

 どうしたの?口パクで亜衣が伝えてきた。

「今日も一緒に帰ろうぜー!」

亜衣が頷く。その後、横にいた友達が亜衣に何か言ってたが、別にオレは気にならない。

 満足して自分の席に戻ると、孝太がやってきた。

「よぉ、孝太」

「健ー、お前そろそろ諦めろって。葉山が健のこと好きなわけねぇじゃん」

ムッときた。

「亜衣が俺のこと好きかどうかなんてわからないだろ。それに、オレ諦めないし」

孝太が鼻先で笑う。

「じゃあ、隣のクラスの佐々木も亜衣のこと好きらしいけど、勝つ自信は?あの王子と張り合えるの?」

その話題を出されると、俺も言い返せない。

 佐々木は、頭良いしスポーツ万能だし、その上、かなり顔が良い。女子がキャーキャー騒いで、"王子"って言うのもわからなくはない。

 オレが黙り込んでいると、教室の出入り口から亜衣が入ってくるのが見えた。

「まあ、頑張れ」

上から目線で言い残すと、孝太は他の奴らのところへいってしまった。

「むかつく」

負けた気分で、ものすごく悔しかった。


 昇降口で亜衣を待つ。ほとんどの人が帰っていったのに、亜衣はまだ来ない。

「野田君、ゴメンね。待った?」

亜衣が小走りでやってくる。

「ううん、全然!」

 二人で並んで歩き始める。

「ねぇ、さっきまで何してたの?」

「えぇ・・・?」

亜衣が言いよどむ。何だよ、とオレが言う。

「佐々木君に、告白されたの」

 心臓の鼓動がやたら大きく聞こえる。何だよ、こんな時に。

「ふ~ん、亜衣モテルんだぁ」

オレは、亜衣の顔を見ないようにした。


 ショックが多すぎて、黙って歩いた。亜衣と帰り道が同じこと、家が学校から遠いことを初めて恨んだ。

「野田君?」

沈黙に耐えられなくなってか、亜衣が話しかけてきた。それでも、俺は目を合わせないようにする。

「よかったじゃん。王子に好きになってもらえて。幸せじゃん・・・」

心苦しかったが、精一杯の強がりだった。カッコをつけて、手をズボンのポケットに突っ込んだ。

 明日からどうしようか。こうやって一緒に帰れないのか・・・。というより、顔をあわせるのもつらいよ、きっと。

 頭の中も心の奥も、切なくてつらい気持ちがあふれてきた。すっと冷たくなっていく。

 ――――――それは、唐突だった。


 俺のポケットの中に、するっと手が滑り込んできた。そして、その温かくて柔らかい手が、俺の手をぎゅっと握る。

 びっくりして横を見る。亜衣がにっこり笑ってる。

「野田君。私が好きなのは野田君だよ」

 顔が一気に赤くなるのがわかる。

「勘違いだよ。佐々木君はいい人だけど、野田君は大好きな人」

「え、それホント?」

「何で嘘つく必要があるの?」

照れくさそうに笑う亜衣。オレは、素直に嬉しかった。

「ヤバイ。マジで嬉しい・・・」

「これからは、ずっと隣にいてもいい?」


 涙が出そうなほど嬉しかった。

「あたりまえじゃん!」


 オレの長所は、一途なところだ。

 でもみんなはそれを、短所と言う。なんでも、オレはいつもしつこいらしい。

 今はもう、そんなことどうだって良い。

「健ー!」

 亜衣を想うこの気持ちを、亜衣に捧ぐことが出来たら、それで良い。

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