第4章 3話
「そういえば」
不意に健一が口を開く。
「葉子はどうしたんだい?もう夏休みも終わるってのに姿を見かけないみたいだけど」
確かにそうね。
あの日から一度たりとも見てない。
そりゃあ健一も心配するでしょうね。
幼い頃からずっと私の家族とも仲が良かった。
当然、妹の葉子とも本当の兄妹みたいに仲がいい。
「さあ?会ってないから推測になるけど、私達みたいな事になってるんじゃない?」
「僕達みたいに!?」
「それしか考えられないじゃない。それ以外に突然長い間いない理由があると思う?」
そう。
私達はまだ瞬間移動等のおかげで、それほど日数がかからずに戻る事も出来る。
でも、すぐに戻れる状態じゃないとすれば。
「あっちはあっちで大変なのよ」
「なるほど」
さてと。
この辺りかしら?
私が怪しいと思った場所。
それがここ。
矢印のちょうど中心。
私は矢印の先とか端とかは怪しいとは思わなかった。
だいたい、その辺りは十分調べられてると思う。
でも、それ以外の場所はそこまで調べられてない可能性は十分高い。
しかもこの矢印の中心はそれこそ何もない。
こんな所、それこそ盲点だと思う。
「う~ん。やはり何も無さそうだけど?」
「おっかしいなぁ。ここが一番怪しいと思ったんだけど」
私の勘も外れる事があるって事なのね。
「ん?」
あれ?
地面ばかり注意してたから気がつかなかったけれど。
ちょっと不思議な現象に気づいた。
「どうした?美喜子」
「あれ見て」
私は上空を指さす。
そう。
それは普通の雲に見える。
いや、それこそマジマジと見ないと見過ごすほどのごく普通の。
「?あれが何か?」
「気づかない?あれちょっと変じゃない?」
「何が。あっ!」
ようやく健一も気づいたみたいね。
「あの雲だけ、動いていない!?」
そう。
私達の真上で止まっている。
周りの雲は微妙ながら動いているのに。
「良く気づいたな、さすが美喜子」
「でも、あれどういう意味なの?」
こういう、何かを見つけるのは私は得意だけど原因までは分からない。
「そうは言っても、自然学的に考えてもありえないとしか」
「ねぇ。もしかして次の私達の目的地って、あれじゃない?」