第3章 15話
「どういう事?」
美喜子が不思議に思っている。
「ほら拒否反応ってのがあるだろう?あいつは自ら細胞を回復するほど細胞が異常なんだ。そこに違う物質を投入したら」
それがあの結果だ。
「それにしても思い切った事をしますね」
「仕方無いだろう。こんな事、女性には頼めない」
いくら治せるとは言っても、危険な事には変わりない。
林道さんには頼めないし、当然美喜子にも頼めない。
「無茶な事をするだろとは思っていたけど」
「理解してくれて助かったよ」
美喜子には感謝するよ、まったく。
恐竜はだんだん弱まっていく。
「あと一つ。あの膨大な細胞を理解したんですか?」
「ああ。科学は得意な方でね」
将来、科学者の道に行こうかと思ってるぐらいだ。
元素記号の情報も理解しなきゃならない。
「んで、あれもう倒していい?」
「ああ。もうあの恐竜は細胞が混乱して、ボロボロな状態だ」
自ら細胞を回復する能力が災いしたみたいだ。
「よーし!!」
美喜子は喜々として走り出す。
いつも元気で僕も助かる。
あの元気で僕も元気を貰える。
「はぁ!」
一撃で恐竜は倒れる。
まぁ、予想通りだ。
あれだけ細胞が混乱していれば、当然かもしれない。
「あれ?もしかしてあの恐竜、肉食なのに肉を食べていない?」
「そういう事。あれは姿形こそ肉食だけど肉を食べていない」
「どういう事?」
「つまり林道さん。あれは全て自分で供給してるんだよ。あの傷の回復量は見ただろう?」
だから、あれは食料も必要としない。
それこそが、彼らが目指した”神”の存在。
確かに。
食料を必要としないというのは、他の生物を殺す必要も無い。
理想的な話だ。
だが。
残念ながら、動物の本能を完全に消す事は出来なかった。
だからこそ、他の生物を襲う事がある。
そして。
それが僕達にも向けられたんだ。
「あれも、科学の悲劇的な末路って所だろうね」