第1章 3話
「いや、ちょっと待って!妹の葉子はどうするんだ?」
確か彼女もどこかへと出かけてはいるが、ずっとって訳じゃない。
僕達まで旅行に行ったら、それこそ彼女は一人になってしまう。
「いいのよ。私たちも親と同じようにメモ残して行けばいいんだから」
まったく・・・。
こういう所は親そっくりだな。
こうして・・・。
かなり強引な取り決めだけど。
僕達は一緒にエジプトのカイロへと行く事になった。
そういえば・・・。
二人だけで海外に行くなんて初めてだな・・・。
そもそも二人だけでどこかへ行くという事が久しぶり。
「ねぇ。やっぱ薄着の方がいいよね?」
美喜子はすでにウキウキ気分だ。
「カイロだけならそれでいいけど、ピラミッドへ行きたいんだろ?それなら長袖の服も持って行った方がいいよ」
「え!?なんで?」
「だって砂漠を行くんだろ?砂漠というのは想像以上に暑いけど、その日光も鋭すぎて肌をさらしていたら火傷するんだよ」
だから、普通に観光気分で行ったらとんでもない事になる。
「へぇー。行く気ないのに詳しいのね」
「あのねぇ。これは当然の知識だけど・・・」
「いやー。私は知らなかった」
まったく・・・。
これだから僕は不幸なんだ。
そう。
これで美喜子を放っておければ、どんなに楽か。
でもそこはやはり幼い頃からずっと一緒だったから、どうにも見捨てる事は出来ない。
これはやはり・・・。
徹底的に面倒を見ないといけないって訳か・・・。
あと、専門知識を得ておかないと・・・。
どうせ美喜子の事だから、後先考えて無いと思う。
ただでさえ、美喜子はトラブルを呼ぶ。
だからこそ・・・。
万全の準備をしなくては。
なにせ、今度は海外。
しかもエジプトのカイロ。
何が起こるか想像も出来ない。
しかも・・・。
ピラミッドに行くとも言ってる。
・・・絶対、とんでも無い事になるに決まってる。
それが分かっても、巻き込まれる事を覚悟しないといけない訳か・・・。
だから、僕は不幸なんだ・・・。