第9章 3話
「僕はこの冒険が始まるまで、そこまで大切って思える人はいなかった。漠然と家族とか友達とかが大切だとは思っていたけど」
やっぱり。
その辺りは私の予想と同じ。
だけど、この口ぶりから見るに。
健一の大切な人ってのは一人。
しかも、女性の匂いがする。
まず間違いない。
理恵子だわ。
この冒険で仲良くなったし。
理恵子に憧れる男は数多い。
「僕には失いたくない人がいるって気づいた。それは、美喜子。君だ」
へ?
わ、私?
え?
今、私って言った!?
「えぇーーーー!?」
なっ、なんで!?
いや。
嬉しいんだけど。
へ???
「あの時、ディルスに君が殺された時に気づいたんだ。いつも当たり前に側にいる君が、どれだけ大きい存在なのかを」
顔が真っ赤になる。
まさか!
私!?
え?
これって夢?
私の妄想!?
思わずほっぺをつねる。
痛い。
夢じゃない。
「だから僕は、君の為に戦いと思う」
うわーーー!!
どうしよう。
突然の告白で、軽くパニックになってる。
えっと。
その。
うわーーーー。
ちょっと待って。
「すまない。突然な話で。でも言っておかなくちゃいけない事だし。それじゃ」
へ?
「ちょっと待って!」
ふー。
ちょっと深呼吸。
「私の意見も聞かずに何処に行くのよ」
そうよ。
よく考えてみればこれって、両思いじゃない!?
「美喜子?」
「健一が私の為に戦うってんなら。私だって健一の為に戦うわよ。だって、私は健一が好きだから!!」
思いの全てをぶつけた。
「え!?」
「私もこの冒険で気づいたのよ。この気持ちを」
ずっと、言いたかった気持ちをぶつけた。
怖くて言えなかったけど。
「なんだ。それじゃ、僕達、両親の思い通りになったって訳か」
「ま、そういう事になるわね」
ふふ。
そういえば、そうかもね。
私達の意志の強さは分かってるしね。
「でもいいさ。どうせ言われる事は変わらない」
「そうね。散々夫婦って言われてるしね」
周りはきっと変わらない。
そう。
変わったのは私達だ。
今はつかの間の平和を楽しみましょう。
やがてやって来る、新たな戦いまでの間までだけど。
でも、それも大切な事。
だって、それが私達が戦う理由なんだから。
奇妙な日々 完
今回の物語はこれにて終了しました。