第8章 15話
カチリ
そういう音が聞こえた。
いや。
気がついたら押していた。
いつの間にかストップウォッチが僕の手の中にあった。
すると。
美喜子の血がどんどん、元に戻る。
「え?」
美喜子も驚いている。
いや。
一番驚いてるのは僕かもしれない。
磁力も解かれている。
「ばっ馬鹿な!?」
そうか。
これは。
分かった。
これを使ってる僕だからこそ分かる現象。
「くっ!」
ディルスはさらに鉄球を投げつける。
だが。
その鉄球は僕の周りで動きが止まる。
そして。
僕の右腕も治っている。
「一体何が起こっている!?」
すでにディルスの攻撃は無力化出来る。
そう。
奴のDNAを操る能力すらも無力に出来る。
「くそっ!」
ディルスが近づく。
「いいのか?近づいて」
「お前がそれを言うか!その台詞は俺の台詞だ!!」
まったく。
まだ何が起きているのか分かって無いようだな。
「お前のDNAを操ってやる!!」
右腕が伸びる。
だが。
そのディルスの動きも止まる。
「な!?馬鹿な、動きを止めるのは俺の能力の方だぞ!!」
ここまで来たら説明するか。
「これが何なのか分かって無いみたいだな」
僕の右手に現れたのを見せる。
それは僕の手に現れたストップウォッチ。
アナログ式のストップウォッチ。
それが左回りに回っている。
「なんだ、それは?」
「分かるだろ?普通とは逆方向だ。そしてこれが全ての時を支配していたとしたら?」
そう。
それがこの能力。
これこそが。
時間の精霊クロノスの能力。
「くっだがそれは防御の能力に過ぎない!!」
「防御?分かってないな。僕がいつ時間を巻き戻すだけって言った?」
これこそがこの能力の中で最大の力。
「くらえ!今まで巻き戻った時間の余波を!」
ディルスに向かって時間を解放する。
「なっ!?」
ディルスの周りだけ、時間が急加速する。
「え!?」
美喜子も林道さんも驚いている。
どんどんディルスが老化している。
これが数秒巻き戻した余波。
それほど時間を操るというのはリスクが伴う。
だが。
そのリスクをディルスにだけ向けた。