第8章 14話
あまりにもあっと言う間だった。
目にはゆっくり映っていたけれど。
身動きも出来なかった。
僕の前に美喜子が突然現れた。
最後の瞬間移動を使ったのだ。
そして。
鉄球をその身に受ける美喜子の姿。
ゆっくりと倒れる。
目に映るその映像が、まるで実際に映ってる映像でないような。
まるでテレビや映画を見てるような。
そう。
信じられない光景だ。
「美喜子!!」
やっと我に返った。
これはテレビや映画じゃない!
あまりに信じられない光景で、頭が拒絶してしまったようだ。
くそっ!
なんでこんな時でも、体は動かないんだ!!
「良かった。健一は無事ね」
「何故、何故最後の瞬間移動を使ってでも来た!?」
ディルスに聞こえてる事なんてもうどうでもいい。
美喜子が、美喜子が!!
「そんなの分かんない、気がついたら健一をかばってた。だって好きな人を守るのは当たり前でしょ?」
え?
美喜子が?
僕を?
「えへへ。こんな時じゃないと告白出来ないってのも間抜けな話ね。この冒険の途中でそういう気持ちになったんだけど。でも言えたからいいか」
そんな。
血が大量に流れている。
これは早急に治さないと。
だが。
僕の右腕はピクリとも動かない。
くそっ!
なんで・・・。
僕は無力なんだ。
僕を好きだと言ってくれる人一人守れないのか!!
この世でもっとも僕を理解してくれる。
いや。
そうだ。
僕も気づいた。
僕も、彼女は大切な存在なんだ。
だから。
だから!!
「死ぬなーーー!!」