第8章 11話
とりあえず美喜子が前に出る。
この辺りは性格ゆえか。
だが、あの余裕の表情を見る限りかなり危険な感じがする。
それでも、攻撃をしなくては始まらない。
あえて危険だと分かっていながらも、やらなくてはならない。
何故なら、僕達には時間が無いからだ。
ディルスが長男かどうかは分からないが。
少なくとも、このままでは僕達3人が死ぬ事は間違い無いだろう。
おそらくディルスの余裕も、そこから来ているのかもしれない。
「このっ!」
美喜子がぶん殴る!
だが。
その腕がディルスの体に当たる前に止まった。
なんだ!?
「くっ!!」
びくともしない。
間違いない。
ディルスの能力だ。
だが、一体どうやって止めているんだ?
あの美喜子のスピードとパワーを止めるなんて。
並大抵の力じゃない。
一体?
ん?
さっき粉々になった鉄球の破片が目に入る。
それが。
少し浮いている。
ほんの少しだが。
そういえば。
あの破片は、美喜子が殴る直前に足で踏んづけていたはず。
それが浮いたまま止まってるなんて。
いや。
良く見れば、微妙に揺れている。
待てよ。
もしかして。
「風の精霊よ!!」
もし僕の推測が正しければ。
「エアー・スラッシュ!!」
風のかまいたちを起こす。
ついでに、ある物も巻き込んで。
「くっ!」
ディルスは避ける。
そして。
それは空中で止まっていた。
「しまった!貴様、まさか!!」
「そのまさかだ。さっき美喜子が破壊した鉄球。それの破片の中には砂鉄のように粉々になってるのもある。それも一緒に飛ばした訳だが」
そう。
あんな小さな粒でも止まっている。
それも急に止まったんじゃない。
良く見ていたら、美喜子の時と一緒だ。
徐々に動きのスピードが緩やかになる。
そして、一定の距離になると止まる。
「これは?」
林道さんが不思議がる。
「おそらく奴は磁力を操るんだ。鉄は磁力にもっとも影響される物質だしね」
だからこそ、奴はあの鉄球を自在に操っていたんだ。
「それでは、美喜子さんが止まったのは?」
「その応用だ。人間は微力ながら電気を通す性質がある。そして電気が通るという事は、そこから電磁力も発生する」
そして、その電磁力で美喜子の動きを止めたんだ。
かなり遠回り的な使い方だが。
美喜子の動きを止めるという事は、かなり力は強いという所か。
「それが分かったからどうなるという?誰も俺に近づけないって事になる」
確かに。
もしここが地上だったならば。
土の精霊を使って、電磁力を遮断する事も可能だろう。
だが。
ここは古代兵器の中。
かなり近代的な装置ばかりだ。
自然の物なんて、無いに等しい。
つまりここで僕が使える力と言えば。
ポケットにあるライターを使った火の精霊か。
風の精霊ぐらいか。
あとは光や闇の精霊。
駄目だ。
どれも磁力に対抗できる力じゃない。
せっかく奴の能力が分かってきたのに。
「それに」
ん?
「いつまでこいつをこうしているつもりかな?」
そうだ!
美喜子が身動き出来ないままだった!!