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【転移77日目】 所持金68兆1139億0620万ウェン 「ゴメン、誰か1兆ウェンあげるから、このカネが何兆あるか数えてくれないかな?」

どうしても帰る気になれなかったので、昨夜はポールズバーに泊まった。

流石ハーレムを目指すだけあって寝具は余っていたので、適当な空きスペースに布団を敷いて寝たのだが、久しぶりに熟睡出来た。



朝一でウェーバー局長が来訪する。

ポールはどうせ起きないので、ハーレムメンバーのレニーちゃんに頼んで2人分の朝食を出して貰った。




「おはようございます。

先日の件は、私共も何と申し上げて良いか…」




『あ、いえ。

それが必要な段階だったから、皆さんがその様に判断されたのでしょう。


この事態、収拾出来るのですか?』




「決行に当たっての人選はかなり慎重に選びました。

造反の可能性のある者は1人も残っておりません。


原則的にソフトランディングに向けて…」




『あ、話を遮ってすみません。

恐らくイレギュラーな費用が相当額発生すると思うのですが

幾らあれば足りますか?』




「我が国の情報管制に関しては現行の予算で執行可能です。

王国・合衆国・南洋海域方面への世論操作にやや費用が嵩むのではないか、とは思うのですが。」





『一方面につき1兆あれば足りますか?』




「いえいえいえいえ!!!

そんな額があれば3方面全てに費やしてもお釣りが来ます!」




『それでは問題の発生しにくい資金提供ルートをご指定下さい。

私の方から予算として回させて頂きます。』




「…あ、いや

我が国としては非常に助かるのですが…

本当にそんな大胆な援助を頂いてしまって宜しいのでしょうか?


私如きでは想像もつかない金額ですので

少し混乱してしまって…」




…オマエラの方がよっぽど大胆だと思うがな。

普通白昼堂々何千人も殺すかね…

こっちの方がよっぽど混乱してるよ。


まあいいさ。

人間、自分の持たないリソースに関しては過大に感じるものだ。

俺がヒルダの策謀能力やウェーバー局長の政治力に舌を巻くように、向こうから見た俺の資金供給能力も戦慄を催すほど異常なのだろう。


そうだな。

冷静に考えれば、地球で1兆円を無造作に出す金持ちが居たらさぞかし恐れられるだろうから。

それと同じだ。




==========================



今日は動かない事に決める。

このバーに1日中滞在する。

用事のある連中はこの居場所を見つけて訪ねてくるだろうし。

あまり親しくない人間の応対をせずに済む。



キーンからのメッセンジャーが

「今日は行けそうもありません。

事後処理が片付き次第伺わせて下さい。」

との趣旨の伝言を伝えてくれる。



他の者も似たような情勢だったので、役人や軍人の応対に専心する。

と言っても、配給の邪魔をしたく無かったので奥の空き倉庫をポールから借りて、皆をもてなした。



『この様な所で申し訳ありません。』



心から各担当者に頭を下げる。

この部屋にはポールのコレクションである子供向けのコミック(異世界にも漫画っぽいものはある。)や魔物のフィギュアが散乱しており、とてもではないが高官を招いてよい環境ではない。

俺の脚さえマトモなら、これらのガラクタをせめて整頓するのだが…



担当者達は「いえいえいえ!」と慌てて顔の前で手を振ってから説明を始めてくれた。




==========================



【自由都市同盟政府による神聖教団総本山落雷火災事故への公式見解】


1、昨夜、神聖教団の総本山に超大型落雷が直撃した。

2、当局の懸命な捜索にも関わらず、まだ生存者は見つかっていない。

3、総本山に備蓄されていた資産や資料は完全に消失したと見られる。


==========================



『え、あの…

そういうタテマエの話ではなく…

私共の…』



「はて?

建前?

コリンズ社長が何を仰っているか解りませんが。

あれは完全な事故です。

あ、事故調査報告書を提出しておきますね。


いやあ、不幸な事故でした。

コリンズ社長の勇敢な救命活動にも関わらず

生存者が見つからなかったのは残念でしたねー。」




…え?

そ、そんなゴリ押し、通ってしまうものなのか?

いや、官僚機構が強弁すれば本当にそれが事実になってしまう事例は日本でも散々見て来た。

役所が事故と断定したのであれば、それはもう事故なのだ。


カネをせびる宗教団体と、国債を2つ返事で購入する俺。

官僚組織は後者を選んだ。

それだけの話である。




『皆様。


…売れ残ってる公債とかありましたら。

気軽にご相談下さいね。

償還は特に不要ですので。』



「いえいえいえいえ!!

わ、我々はそんなつもりでは!!」



『ああ、いえいえ。

私も一市民として、自由都市の為に何が貢献出来るかを考えているのですが…

恥ずかしながらこれと言って能の無い男でして。』



「いえいえいえいえいえ!

社長! コリンズ社長!

滅相も御座いません!」



『いえいえ。』



しばらく役人達とイエイエ攻撃を交わし合ってから、国庫短期証券を4000億ウェンだけ引き受けた。

想像以上に担当者が喜んでいたので、事件のケアとしてはこれは悪くないのだろう。





==========================





午後にカインがやって来たので、2人でのんびり茶菓子を楽しむ。

ぽつりぽつりと彼が事態の経緯を切り出す。




当初のヒルダは。

教団の勢力を掣肘する為のロビー活動の作戦を練っていた。

だが、すぐに気づく。

《これだけの軍資金があれば、教団首脳部を壊滅させた方が安上がりなのでは?》

と。


俺はうっかり忘れていたが、ヒルダの手元にも1兆ウェン以上のキャッシュがある。


…1兆あれば大抵のことは出来るよな。

殺したと言っても、丸腰の坊主を3000人チョイ騙し討ちにしただけなので、そこまで大した経費は掛かってない筈である。



その後、渋い顔をしたグリーブがやって来て。

部屋に入るなり平謝りを始めた。

彼の謝り方を見て《ああ、これ殆どヒルダ一人で計画立案したな》と改めて悟る。

そもそも、グリーブもケルヒャーも凄腕だが、自発的に政変に関与するタイプではない。




グリーブの持って来た菓子折ホワイトクリームのウェハースを3人で堪能しながら今後の展望を語り合う。




「この先、コリンズ社長はどうされるのですか?」




『元々、俺は元の世界に帰るつもりだったのです。

総本山に召喚関連の資料があれば良いのですが…』




ヒルダが見つけたら焼き払うだろうな。

あの女に俺を帰すメリットがない。



「やはり帰られますか。」



『ええ。

故郷で為すべき事もありますし。』




もしも地球に【複利】を持ち帰れたら。

ここで試してきたことを実践してみよう。

異世界ほど甘いとは思えないが…

俺なりに学んだ事も多い。



暴力の買い方、権力の買い方。

それぞれにちゃんと手順があり作法があった。

当然、地球には地球のローカルルールがある筈だ。

帰ったら、複利が残っていたら、それを学び取るところから始めよう。




「それにしてもコリンズ社長。

これから社長はどのように教団を運営されるおつもりなのですか?」



『??』



あれ?

グリーブさん、アナタ今… 変なこと言った?



「ああ、いえ。

社長には社長のお考えがあると思います。


ただ、あれだけ巨大な組織を引き継ぐとなると

これまで以上のプレッシャーが掛かって来るのではないか、と思いまして。」




『ファ?』




「?

ああ、社長が直接教団のトップに就任する訳では無いのですね。」




『ファファい!?』




「ですよね。

コリンズ社長は公職に就かれてますし

これ以上、スケジュールは入れようもありませんものね。」




え?

ゴメン、事態が把握出来ない?


え?

俺、宗教とかそういうのが生理的に駄目な人なんだけど。

と言うより神敵だろ? 俺。



「いやいや。

コリンズ社長は筆頭信徒ですよね?

確か同格の方はおられないと伺っておりますが。」



『あの…

俺、神敵って言われて。』



「いやだなあ。

事故直前の大主教勅令で、それはめでたく解除されたじゃないですか。」



『え?え?』



「それと同時に、凄い称号を授かったと伺いましたが。

何でも全ての信徒の頂点に立つ称号、と。」




しょ、称号?

何のことだ?


慌てて俺はステータス画面を開く。




==========================



【名前】


リン・コリンズ



【称号】


ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒


==========================



な、なんだコレは!!??

え?

画面がバグってる?


いや違う。

称号名が長すぎて…


おいおいおい!!

残高が見えないぞ!!


え?

ちょっと、これ困るよ。


ステータス欄のド真ん中に

《ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》

なんて書かれたら。


他の表記が見えないじゃないか!



あ、いや。

本当に困ります。



ステータス画面そのものは正常に作動している。

ただ、俺の位置はそれが覆いかぶせられているのだ。



おいおいおい。

あの坊主共、最後の最後まで迷惑しかない連中だな。




《ンディッド・スペシャルアンバサダー信徒》当が支払われました。》




ん!?


あれ?

今のいつものアナウンスだよな?

あれ?

今、金額が聞き取れなかったぞ?

何?

バグ?



あ、あれ?

俺は今、手元に幾らあったっけ。

50兆くらい?

あ、でも国庫短期証券を買う約束はしちゃったのか。

それはちゃんと買わなきゃ。



…あ、ヤバ。

これ、真面目に記録しないと残金が把握出来なくなる。


いや、嘘だろ?

俺の無敵のスキルがこんな下らない手法で妨害されちゃうのか?


いやいやいや!

流石にこれは不具合だろう!!



あ、ヤバい。

金額が把握出来なくなった事で

管理への不安が沸いて来た。

…最近の俺、全然金額見てなかったからな。





カインもグリーブも不思議そうな顔で俺を見ている。

そりゃあそうだろう。

急に冷や汗をダラダラ流し始めたのだから。




「リン?

何か問題発生?

体調面?」



『あ、いえ。

身体は調子いいんです。』



「コリンズ社長。

精神面の不安ということですね。

情勢が情勢です、お察しいたします。」



『あ、いや。

精神的にもそこそこ平静でして。

あれだけの死者を出しておいて不謹慎かも知れませんが。』



「「…。」」




『財務面に若干の不安を覚えております。

今日からは財務管理を少し正確に行わせて下さい。

あ、いや今すぐキャッシュがどうこうという訳ではないのですが

今までがドンブリ勘定過ぎたので…』



「…リン、その話は。」 




『ええ、承知しております。

外部にこういう話をしてはならないのですよね。

弱みを見せる事になるから。』




「…はい。」




俺の、いや俺達の力の源泉は複利の力による、有り余る財力と、その無造作な使い方である。

もしもそれが鈍ったら?

影響力の低下を招くだろう。

いずれにせよ、好ましくない方向に状況が転び兼ねない。





…鈍る。


残高が見えないという恐怖が、絶対に俺のカネ払いを鈍らせる。



…どうしよう。

金庫に籠るか?



いやいやいや。

そんな馬鹿な事をすれば、《何かあった》と邪推されるだろう。



うーーーーん。

地道に配当を見ながら、逆算して総額をチェックし続けるか。



あれ?

俺の日利ってどれくらいだったか?


あ、そっかレベル表記を見ればいいんだ。

レベル、レベルっと。




==========================



【名前】


リン・コリンズ




【職業】


(株)エナドリ 創業オーナー

駐自由都市同盟 連邦大使 

連邦政府財政顧問




【称号】


ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ【ステータス】プラチナム・ゴールドエ《LV》 メラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒(3/5)


《腕力》 2

《速度》 3

《器用》 2

《魔力》 2

《知性》 4

《精神》 7

《幸運》 1


==========================




クッソ!!!

俺の表記が目隠しされとる!!!


あーーーー、クソ!

あの坊主共、俺に迷惑ばっかりかけやがって!!



いや、待てよ。

そうだ!

エナドリだよ、エナドリ!

あれの増え方から今のレベルを推測すればいい。


って、エナドリ残量も糞長称号に塞がれてしまった。

何なんだよコレ!!



そう。

俺の日利はせいぜい3割程度だった筈だ。


すぐに過不足は発生しない! …と思う。





==========================



【所持金】 (リン・コリンズからは視認不能状態)


51兆1139億1130万ウェン

  ↓

68兆5139億1130万ウェン

  ↓

68兆1139億1130万ウェン

  ↓

68兆1139億1120万ウェン

  ↓

68兆1139億0620万ウェン



※17兆4000億ウェンの配当を受け取り。

※国庫短期証券を4000億ウェン分引き受け。

※ポール・ポールソン個人に10万ウェンの小遣いを支給

※ポールソンハーレムに500万ウェンの生活支援金を支給




【ポールソンハーレム】


レニーちゃん  (ポールズバー店員)      

メアリちゃん  (ポールズバー店員)  ← 復帰

エミリーちゃん (営業部長)  

ナナリーさん  (近所のシンママ)  

ビッキーちゃん (ポールズバーのお手伝い)     

ノーラちゃん  (ポールズバー店員) 


ソーニャちゃん (潜伏中の貴族令嬢)  ← 勧誘中



==========================




うーーん。

カネは多分ある。

恐らくこの世界で一番の金持ちは俺である確率が高い。

仮に俺を越える富豪が存在したとしても来週には追い抜いてしまっているだろう。


だが…

残高が見えない、収入額が聞こえない…

たったのこれだけで、不安感が押し寄せて来る。


カインとグリーブに頼んでカネを保管している倉庫まで連れて行って貰う。


1人で金庫ブースに入室し、積み上がったミスリル貨を数えようとして…



『あ、これ無理。』



その莫大なカネの山を見た瞬間に心が折れた。

ゴメン、誰か1兆ウェンあげるから、このカネが何兆あるか数えてくれないかな?



分かるか、こんなもん!!!!

こんなにカネが増え過ぎたら、もう数え切れる訳ねーだろー!!!

【名前】


リン・コリンズ




【職業】


(株)エナドリ 創業オーナー

駐自由都市同盟 連邦大使 

連邦政府財政顧問




【称号】


ロイヤルトリプルクラウン・ファウンダーズ・エグゼクティブ・プラチナム・ゴールドエメラルドダイアモンディッド・スペシャルアンバサダー信徒




【ステータス】 (リン・コリンズからは視認不能状態)


《LV》  34


《HP》  (5/5)

《MP》  (3/5)


《腕力》 2

《速度》 3

《器用》 2

《魔力》 2

《知性》 4

《精神》 7

《幸運》 1


《経験》 965億3945万1313ポイント   

次のレベルまで残り51億9265万9373ポイント 




【スキル】 (リン・コリンズからは視認不能状態)


「複利」


※日利34%  

 下11桁切上




【所持金】 (リン・コリンズからは視認不能状態)


68兆1139億0620万ウェン



※バベル銀行の10億ウェン預入証書保有

※国際産業道路98号線交通債100億ウェン分を保有

※第11次魔族領戦時国債200億ウェン分を保有

※第4次帝国インフラ債550億ウェン分を保有

※帝国総合プランテーション債230億ウェン分を保有

※自由都市海洋開拓債1000億ウェン分を保有

※第2次自由都市未来テック債1000億ウェン分を保有

※首長国臨時戦時国債1100億ウェン分を保有

※自由都市国庫短期証券4000億ウェン分を保有。



【試供品在庫】 (リン・コリンズからは視認不能状態)


エナドリ 21244ℓ 

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― 新着の感想 ―
誰か大司教任命して称号の書き換えすれば済む話だけど、すぐにたどり着けるかな?
[良い点] マジかあ、義母さんに戦慄。 全く予想できていなかった。
[良い点] たかが一高位司祭の一言で称号が決まるなら適当に称号破棄するとか言えば治りそうなもんではある
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