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【降臨111日目】 所持品 レンコン2個 『そろそろ出すとしますか、本気って奴をね♪』

『やれやれ。

そろそろ出すとしますか、本気って奴をね♪』



「冒頭からオチが見えたニャーッ!!!」



『くっくっく、見せてやるですぅ。

大魔王の真のチカラをッ!!!』



「天丼芸は法律で禁止しろニャーッ!!」



俺の名は遠市厘。

たったの4ヶ月で異世界を征服した男だ。

人民からは大魔王の尊称で愛されている。


地球は故郷なのでのんびりやらせて貰っていたが…

そろそろウォームアップは切り上げるとしよう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



ドガーーーーーーーンッ!!



『きゃっ!』



「ぐわーなのだ!」



突如、パドルを猛回転させた松村はボートを強引に上陸させた。



『もー、先生!

急に上陸しないで下さいよぉ。』



「ボートも壊れちゃったのだ。」



「バーカ。

ここがゴールだニャ。」



『「え?」』



「匂わねーか?

潮の香り。

これ以上行くと河口。

上陸ポイントが確保出来ねー可能性があるニャ。」



『言われてみれば。』



「そんな気もするのだ。」



「ボートはここに沈めるニャ。」



そう宣言すると松村は貫手で分厚いゴムボートを深々と貫いて潰し、月明かりに照らされた河原の淵に蹴り落してしまった。



「行くぞ。

あっちに野球場が見えたニャ。

つまり市街地が近い。」



松村が指した方向には薄っすら人工的な平地が広がっており、言われるままに河原を進むと月に照らされたゴールポストが見えた。


深夜3時22分。

俺達は徳島市への上陸を果たした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「それにしても猫先生は無駄にタフなのだ。」



『もう人間辞めてますねぇ。』



「…いや、今回ばかりは流石の奈々ちゃんもちょっち疲れたニャ。

もう吉野川はコリゴリニャガよ。

思えばトイチが入学してから、ずーっと尻拭いさせられてるニャ!

面倒ばっかり掛けさせやがって!

今だから言うけど、オマエの為にキチガイでも入所できる作業所を探してやってたニャガよ!」



『すみませーん♪ (てへぺろ)

もう二度と吉野川下りなんてさせませんから。

機嫌直して下さいよー。』



「当たり前だニャ!

2度とこんなことしねーニャガからな!」



「まあまあ、都会に来たんだから落ち着くのだ。」



「ちっ、調子のいいオスガキ共ニャ。

都会って言っても糞田舎の四国四県の中でも最小の県庁所在地が徳島だニャ。

期待できねー。」



『へー、先生って意外に地理関係詳しいんですねぇ。』



「シャカイカキョーシ(怒)!!」



『あははは!

そうでしたそうでした(笑)

あんまり怒ると小皺が増えますよ(笑)』



「キーキー!

ニ゛ャオ゛ーンッ!!」



河原のグランドから上がった俺達は暗闇の中をゆっくりと見渡す。

眼下には月明かりに照らされた国道と市街地。

よし、都市部に帰って来た。



「おう2人共。

どっか店入るニャガぞ。」



「『はーい。』」



松村は徳島を田舎だと言うが、そうは思わない。

日振島に比べれば深夜だというのに灯りも見える。



「お、松屋だニャ。

入るぞ。」



「『へーい。』」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



【松屋 徳島常三島店 入店】



「松村奈々」


牛めし特盛 860円×5杯

うな皿   850円×10皿

半熟玉子  100円×5個

豚汁単品  240円×2杯



「金本光戦士」


うまトマハンバーグ定食

980円×1膳



「遠市(以下ry」


たっぷりチーズ

200円×1皿


ポテサラ生野菜

240円×1皿



※食事代15200円を金本光戦士が支払い



「ガツニャガ! ガツニャガ!!」



「リン兄ちゃん。

これからどうするのだ?」



『そうですねえ。

結構疲れましたし、どこかに隠れたいですね。』



「ガツニャガ! ガツニャガ!!」



「ずっと揺れてたから、ボク何だかお尻が痛いのだ。」



『あ、わかりますう。

普段使わない筋肉を使いましたよね。』



「ムシャニャガ! ムシャニャガ!!」



(机の上に薬剤ドン)



「えー、特濃ドーピングタンポポっすか?

ボクこれ臭いから苦手なのだ。」



『加齢臭しますぅ。』



(拳で机ドン!!)



「ひえっ、おかのした!」



『ちゃんと摂取しますよぉ。』



見れば松村は特濃ドーピングタンポポを生卵と共に牛丼に振り掛けて貪っている。

折角の食事に畜生の唾液など混ぜたくないのだが、松村が怒るから仕方ない。



「ニャガモグ! ニャガモグ!!」



「ドーピングハンバーグなのだ!!」



『ドーピングサラダですぅ!!』



「ニャガパク! ニャガパク!!」



「…折角のハンバーグがオバサンの唾液風味で台無しなのだ。」



『サラダが生臭くなっちゃったですぅ。』



「ニャガゴク! ニャガゴク!!

(伏せ丼ターンッ)

ご馳走さーん。」



「ちょ、待つのだ!

パクパクパク、御馳走様でしたなのだー。



『待って下さいよぉ。

チビチビチビ、御馳走様ですぅ。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



腹ごしらえを終えた俺達は国道をテクテク歩く。

ドーピングのお陰なのか足取りは随分軽い。



「あ、兄ちゃん。

右側の山。

多分、あれが徳島城なのだ。」



『と言う事は、かなり市の中心ですね。』



「おう、ちゃんとネグラ探せニャガよー。」



「ホテルは当然駄目なんすよね?」



「指名手配犯でも泊れるホテルがあればいいんニャけどねえ。」



『どこも閉まってますねぇ。

諦めるしかないですよ。』



「諦めたらそこで逃亡終了ニャガよ?」



「はは、そっすね。 (それは良い事なのでは?)」



『あはは、ですぅ。 (それは良い事なのでは?)』



「もう軽く寝っ転がれるだけでいいニャガよ。」



「ボクがお殿様ならお城に泊めてあげるんすけどねえ。」



「それニャガ。」



「え?」



「現代の城なんてどこも公園的に活用されてるニャ。

蜂須賀家みたいな国持大名なら居城も広いはず。

徳島城の周りで寝転がれるところ探すニャガよ。」



『へー、先生って意外に歴史関係詳しいんですねぇ。』



「シャカイカキョーシ(怒)!!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「おう、オスガキ共。

とっとと来い。

堀を10メートルほど飛べば城内ニャガよー。」



「あ、スミマセン。

走り幅跳びの世界記録でも9メートル弱なんで…」



「ちっ!

これだから人間は使えねーニャ。

そっち戻るからどいてろニャ。

(虚空をピョーーーーーーーーーーーン)」



「いやあ、ははは。

(早くこのバケモノ逮捕されて死刑になって欲しいのだ。)」



『あ、先生!

堀の外側に公衆トイレがありました!』



「おっ、トイチにしては気が利くニャ。

ふー、壁に寄りかかって丸まって寝るニャ。」



「え?

猫先生、ここで寝るのだ?」



「ぐーすかぴー。

にゃーすかぴー。」



「ちょ!

何かこの人、どんどん人外化が進むのだ!


ねえ、リン兄ちゃんもそう思わ…

え!?」



『すやすやですぅ。』



「えーーー!!!!?????」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



はい、茶番終わり。

こうして俺達は無事に徳島市内に辿り着く事に成功した。

泥にまみれたお遍路ルックのままだが、四国なのでギリギリセーフ。



「ニャふあああ。

よく寝たニャ。」



『おふぁようございますぅ。』



「…2人共、こんな所でよく寝れるのだ。」



「金本弟ー。

男が細かいことを気にしてちゃいかんニャガぞー。」



『光戦士君。

オトコノコガンバですぅ。』



「あ、いや。

1ミリも納得出来ないけど…

一応ハイなのだ。」



「お、缶コーヒーあるニャ。

オマエラ気が利くニャ。

(グビグビプハア、ポイ捨てポーン!)」



「地元の人が恵んでくれたのだ。

ほら、ボク達お遍路さんの恰好してるから、行き倒れと思われたんすよ。」



「ふーん、さっすが宗教。

利用価値満点ニャ。」



「ドブの水より腐った答えをありがとなのだ。

で?これからどうするんすか?

ボク、あんまりおカネ残ってないっすよ。

ちなプルデンシャルの米国本社がチャプター11を申請したらしいのだ。」



「奈々ちゃんは全身にカネを隠し持ってるけど、他人の為にはビタ1円使いたくないニャ。」



『あはは、私は手持ちゼロ円ですぅ♪』



「おいおい頼むぜトイチー。

オメーはカネ以外に取り得がニャいんだからさぁ。

せめて金蔓として機能してくれニャー。」



『おカネはないですけどぉ。

頼りになるカネ本光戦士クンが居るから安心でーす、ぶい♪』



「ちょ、照れるのだ///」



『頼りにしてますからね///』



「///。」



『///。』



「待てィ!!

(チョップ×2)」



「のだっ!」



『ですぅ!』



「オメーら一々いい雰囲気になるニャよ!

見ててちょっとドキドキするニャろ!!」



「…オバサンには関係ないことなのだ。」



『別に私達は健全ですぅ。』



「あーーー!!!

あーーー!!!

そうやってすぐに奈々ちゃんを仲間外れにするぅ!!!

傷付いたニャ!

謝罪と補償を要求するニャガ!」



『「…どうしろと。」』



「慰労せよ!!

恩師を!!!

オマエラの脱出行に多大な貢献をした恩師様を労わり尽くせニャ!!」



「あ、いや。

脱出してるのは何もかも猫先生の所為であって、ボクは別に追われてないのだ。」



『そもそも地球でのトラブルの半分くらいは先生の所為ですからねぇ。』



「オイオイ冗談キツいニャガよ、オマエラー。

すぐに責任転嫁するのはZ世代の悪い癖ニャよ。」



いや、考えれば考える程…

俺の計画はこの女に悉く潰されているのだが。

お陰で相当な軌道修正を強いられてしまった。


…もっとも、大魔王のチカラの前では腐敗した資本主義など敵ではなかったのだがな。



「トイチー。

オメー今とんでもなく邪悪な顔で笑ってたニャガよ。

まーた悪い事考えたニャ?」



『えー、悪いことなんて生まれてこの方一度も考えたことがないですぅ、にぱっー♪』



「本当かぁー?

世界ではナカモトの所為で1日10万人くらいが自殺してるニャガよー?

ビットコイン担保にしてた奴ら全員死亡ニャ。」



『わー、大変ですねー。(棒)

リン子怖ーい。(棒)』



「一番怖いのはオマエだけどニャ。

で?

これからどうするニャ?」



『大阪に渡って坊門さんと合流します。』



「坊門のジジーなのだー♪

ボクもまた逢いたいのだ♪」



「おお、何か金持ちを捕まえたって話だったニャ。」



『かなりの有力者です。

関西では彼が支援の中軸を担ってくれてました。

大きなお屋敷もいっぱい持ってます。』



「へー、いいニャガねえ。

奈々ちゃんも匿って貰おうっと。」



『えー、先生なんかを匿ったら坊門さんに迷惑ですよお。』



「ふーん。

恩師を見捨てると祟りが下るニャ。

具体的にはオマエがサトシ・ナカモトだってみんニャにバラすニャ。」



『そんなことされたら私死んじゃいますよぉ(笑)』



「あ、またズルそうな笑顔になった!

さてはトイチ、もう何段階か企んでるニャガね!!」



『えー、私ぃ。

何かを企んだ事なんて生まれてこの方一度もないですぅww』



「コイツーーww」



『キャーーwww』



「…この2人の呼吸の合い方は本当に不吉なのだ。」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「それにしてもよお、トイチィ。

鳴門大橋は全車検問、フェリーも乗員乗客全員の顔写真撮影が実質的に義務付け。

当然、空港は常時サミット並の厳重警備。

大阪に渡る方法なんて無いニャガよ。」



『じゃあ一生四国で暮らしましょうかw?』



「お断りニャ。

奈々ちゃん田舎が大嫌いニャガよ。」



『でも、都市部に近づいたら逮捕リスク高まりますよ。』



「それニャ。

でも、どーせ生きてる限りリスクはあるニャ。

だったら奈々ちゃんは幸福と快楽の最大値を獲りに行くニャ!!」



『流石は麻薬王ですね。』



「そんなに褒められると照れるニャ❤」



『とりあえず情報収集をしながら大阪への渡海方法を考えましょう。


純友さーん、協力してくれる気になりましたー?』



純:断る!!

  我の望みはオマエに罰が下ることだけだ!!



『あははは、レスポンスいいですねー♪

流石は海賊王、期待してますよ♥』



「背後霊と談笑…

相変わらずおぞましい絵面だニャ。」



『まあ、何とかなりますよ。』



「何?

勝ち確ニャの?」



『ずっとそう言ってるじゃないですか。

先生も理解してるから私の側に居るんでしょ?』



「まあニャ。

今のオマエはキチガイに刃物。

まさしく無敵だニャ。」



『ふふふ、褒め言葉と取っておきます。』



「で?

キチガイ刃物クンに四国脱出案はあるニャガか?

言っておくけど奈々ちゃんも光戦士もスマホ壊れてるニャ。

あのキショいスマホは雑音しか聞こえねーし。

ほら、トイチも聞いてみ?」



  「ポール・ポールソン!

  キサマは反逆罪で死刑だ!!」



  『…ぐ、ぐふっ。

  …ま、待ってくれ。』



  「問答無用!

  地獄に堕ちろッ!」



  『ぐわーーッ!!』



『本当だー。

雑音ばっかりで何も聞こえませんね。』



「スマホ含めた最近の家電ってワザと壊れやすく作ってるからニャ。

ちょっと濡れたくらいで壊れるんだから酷いよニャ。」



『スマホが使えないのは不便ですねぇ。』



「じゃあ、山で旅人を襲って奪うニャガか?」



『純友さんが睨んでるので山賊行為は禁止にしましょう。』



「アイツの任務、海賊退治ニャろ?」



『挙兵前は普通に山賊や盗賊も取り締まってたみたいですよ。』



「ふーん。

御熱心なことニャガねぇ。

でも、トイチィ。

スマホをどっかで奪わなきゃ情報収集も出来ねーぞ?

恩師心で高校入学の頃から何千回繰り返してやった台詞をもう一度吐くぜ?


どうすんだ、オメー。」



『やれやれ。

そろそろ出すとしますか、本気って奴をね♪』



「あ!

既にオチが見えたニャーッ!!!」



『くっくっく、見せてやるですぅ。

大魔王の真のチカラをッ!!!』



「天丼芸は法律で禁止しろニャーッ!!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




『お兄さーん♪

ホ別苺でどうですかー?』



  「え? お遍路コス男の娘?

  安すぎて怖いよ。」



「ノータイムで売春すニャーーーッ!!!」



『そっちのお兄さん♪

ホ別苺で遊びませんかー?』



  「え? お遍路コス男の娘?

  希少価値があるんだから、高値付けなきゃ。

  もっと自分を大切にしなさい(キリッ!)」



『こんにちわー♥

少し遊んで行きませんかー?

ホ別苺でーす♪』



  「へえ、お遍路コス男の娘?

  どうして徳島なんかで立ってるの?

  東京行ったら儲かるのに。」



俺が立っているのは徳島県最大の歓楽街・秋田町にあるパンパン通りである。

この秋田町は旧遊郭地帯であり、そのまま歓楽街の代名詞となっている。



「いや、それはいいんニャガ。

オメーはどうして、そんなに立ちんぼ慣れしてるニャ。」



『ふっふっふ。

私、異世界に着いた途端に金持ちになっちゃったんです。

それで金銭的な余裕を悟られたのか淫売のお姉さん達から一斉に声を掛けられるようになって…

立ちんぼの呼吸は、その時の経験で大体習得済ですぅ。』



「いや、奈々ちゃんが聞きたかったのは

どうしてそんなに活き活きしてるの?

って事ニャんだけど…

まあいいや。」



『先生!

あっちから太客来たんで黙ってて!』



「…一番苦労させられた生徒が立ちんぼに成り下がってる件について。

チ●ポしゃぶるしか能の無いゴミに高校入学資格与えるニャよなぁ。

低能をクラスに混ぜる事がどれだけ教育現場を疲弊させると思うニャガか。

しわ寄せはぜーんぶ教員に行くんだから勘弁して欲しいニャ。

トイチ級の糞ガイジは教員の独断でB型作業所か公娼施設に送り込めるようにするべきニャ。」



『オジサマー♪

ちょっと遊んで行きませんかー?』



  「え!?

  お遍路コス男の娘?

  見ようによっては冒瀆以外の何物でもないけど…

  こんな田舎にまでLGBTの波は来てるんだねぇ。」



恐らく世の淫売共も似たような技能は持っているのだろうが、パンパン通りの端の物陰で立ってるうちにコツが分かってくる。

地球ではメスガキッズ共から色々話を聞いたし、異世界でも様々な娼婦に追い回された。

活きているのだろう、その経験が。


娼婦か…

王都で俺に絡んで来た少女。

名を聞かず仕舞いだったので、今でも【娼婦】と言えばあの少女を思い出す。

母娘は俺に情報を一切渡さなかったが、身分を伏せた貴族令嬢だったらしい。

今となっては事情を確かめる術も無いが、あの少女なりになんらかの使命を秘めて王国に乗り込んでいた。

賤業に身を窶してまでの旅だったのだから、余程の覚悟があったのだろう。

なら、全ての人類の救済を志す俺こそが倣うべきであろう。

世界は今革命されなくてはならないのだから。



『ホ別苺でーす♪』



無論、声を掛ける相手はそれなりに選別している。

同額の花代であれば、より裕福でより人格的の円熟した相手を狙うべきなのだ。

パンパン通りを行きかう無数の男達。

その足音に耳を傾け、息使いに触れるうちに…



カチリ!



自分の中で歯車が完全に噛み合う音がする。

一陣の風が吹き抜け…

己が透き通り、全てを知覚出来たことを理解する。



『…見えるッ

俺にも見えるぞッ!!!』



瞬間、全方位から洪水の様に情報が降り注ぐ。

嗚呼、これが世界だったのか…


もう分かってしまうのだ、俺には。

客の懐具合と性欲加減が…


いや!

それどころか性癖や性格、そして残存精力まで手に取るように見える!!

…どうしてだろう?

はっ!? もしかして鑑定スキルにでも覚醒した!?



「…単にオメーが肉便器に向いてるだけニャ。」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



【所持金】


0円→47000円


※花代15000円×3+チップ2000円を受領



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



『ふぅー。

労働の汗はひとしおですね。』



「日本国では売春が禁止されてる件について。」



『ぶーっぶー♪

ざーんねんでした、私は男ですから売春防止法違反の構成要件を満たしてませーんww』



「で、出たー!!

その場その場で性別切り替える奴!!」



『まあまあ、先生にはお小遣いあげますから。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



【所持金】


47000円

  ↓

30000円


※売春グループの元締・松村奈々に上納金17000円を献上



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




「しれっと恩師様を主犯に仕立て上げるのやめーニャ。

まあ受け取るけど。」



『はい、光戦士君には残りをあげます。』




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



【所持金】


30000円

  ↓

0円



※クラスメートの弟・金本光戦士に自宅までの交通費として3万円を譲渡



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「…何もしてないのに、おカネは受け取れないのだ。」



  「何かしてたら奈々ちゃんの罪状が増える定期。」



『まあまあ、このご時世です。

手元にお金があって困る事はありませんよ、にぱーっ♪』



  「こんなご時世になったのはオマエの所為定期。」



「ねえ、兄ちゃん無理してない?

おカネが要るのなら、ボクも頑張るよ?」



『光戦士君にこんな事させちゃったら天国の光宙君に申し訳ないですぅ。』



「…ピカ兄ちゃんはキャラ的に閻魔様に舌抜かれてそう。」



  「オマエらの両親よりかなりマシ定期。」



『まあ、収穫があったから、立ちんぼは一旦中止で。』



「え?

収穫?」



『じゃーん、紹介しまーす。

太客の埴渕社長でーす。』



「あ、ども。

さっきリン子ちゃんに推し変した埴渕です。」



  「まーた行きずりのオッサンを拾って来た定期。」



「あ、こんちわなのだ。」



『埴渕社長はなーんと、毎日パンパン横丁で遊べるほどの成功者なのですぅ。』



「徳島は遊ぶところ本当に無いからねー。

私も長男じゃなかったら絶対捨ててるよ、こんな糞田舎。」



「ぼ、ボクは結構いい場所だと思ったのだ。」



「うーーん。

外から来てくれた人は気を遣ってそう言ってくれるんだけど。

ロクな所じゃないよ?

何もないし。」



「あ、阿波踊りがあるのだ。」



「ごめんねー。

私、アンチ阿波踊り派だから。」



「え?

阿波踊り嫌いな人も居るのだ?」



「…利権とか。

…色々、ね。

あれだけ補助金降りてるのに赤字とか絶対おかしいやろ。」



「あ、察しなのだ。」



「衣装は結構好きなんだけどさ。」



『あ、じゃあ今度ぉ♥

埴渕社長の為に阿波踊りコスプレでリン子頑張りまーす♪』



「え!?

あ、うん。

そ、それはちょっと嬉しいかも///

リン子ちゃん可愛いし絶対似合うよ///

ま、まあ、あんなのでも地元の行事だし悪く言うのは良くないかもな。」



  「秒で転向すニャー!!」



『そんな訳で今日は埴渕社長の御屋敷に泊めて貰うことになりましたー。』



  「コイツ、淫売の才能に関してだけは天才的だニャ。」



「お屋敷って言っても、無駄に広いだけだよ?

徳島の中でも田舎だから。」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



車で小一時間。

埴渕のヴェルファイアに乗って55号線を進み阿南市という街に到着。



「ほーらね、何もないでしょ。

田んぼばっかり。」



『田んぼがあるじゃないですかぁ。』



「社会に田んぼは必要だけど、その真ん中に住みたいとはきょうび百姓ですら思ってないんだよ。」



『深いですねぇ。』



埴渕家は江戸期以前からの農家。

祖父の代から阿南市では珍しくレンコンを栽培している。

それなりに儲かっているのだが、職業柄引っ越しが出来ない。

カネがあるのに使い道に困るという状況に親近感が湧いたのでクスリとしてしまった。



『お邪魔しまーす♪』



「久しぶりの屋根なのだ。」



「ふー。

やっと笠を脱げるニャ。」



三人で遍路笠を脱ぐ。



「う、うわあああ!!!

その猫耳!!!

令和最悪の殺人鬼・松村奈々容疑者ー!!!」



「そんなに褒められると照れるニャ♥」



『まあまあ、好きなプリキュアでしてあげますから落ち着いて。』



「ハアハア。

じゃあキュアトゥインクルで。

フー、動悸が落ち着いた。」



埴渕の言葉に甘えて飯を御馳走になったので、一宿一飯の礼で風呂で身体を洗ってやることにした。



「うおー! うおー!

未成年男の娘が2人も!!??

私捕まらない!? これ私逮捕されちゃわない!?」



『大丈夫。

捕まるなら、ここに居る松村先生が先ですから。』



「ほっ。」



「奈々ちゃんを売る前提なのはヤメロニャー!」



風呂から上がって埴渕の部屋でニュースを見る。

今日のトピックスは金価格が歴史的暴騰。



「そりゃあそうだよ。

債券も株式も全面安だからね。

投資家達が一斉に金を買い占めている。

私も財産を金地金に換えた方がいいのかなー。

紙幣は紙切れになるってユーチューバー達も言ってるし…

いつもそう思って徳島市内まで行くんだけど、女を買って帰っちゃうんだよねー。」



『ふふふ、埴渕さんは泊めてくれるから特別情報を教えてあげます。』



「え?

情報!?」



『なんと!

金よりもレンコンの方が価値が上がっちゃうんですぅ。』



「あははははww

ナイナイwww

そうなら嬉しいんだけどねー。」



言いつつも、俺の趣旨は何となく伝わったのか資産を全て金に換えるという腹案は放棄してくれる。

画面の向こうではアナリスト達が如何にゴールドに価値があり、安定してるかを賢し気に説いている。

各国・各資産家も最後のチカラを振り絞ってゴールドを買い集めていた。


場面が切り替わり英語字幕。

バイデン大統領が記者団の質問に怒鳴り返すような剣幕で答えている。

曰く、アメリカは世界最大の金保有国であり人類史上最大の資金力を保有しているとのこと。

故に米国経済は不滅であると力説している。

どうやら水面下で進めていたビットコイン準備金構想が裏目に出た事で、政府が世論から袋叩きにあっているらしい。

そりゃあ膨大な予算を費やして集めたビットコインが超暴落しちゃったらね…

責任問題になるよね…

画面は更に切り替わり、ドナルド・トランプ大統領が物凄く嬉しそうな表情でバイデン大統領への訴追を提案する会見で報道は締め括られた。



24金相場:グラム5万2千円台を突破



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



埴渕は何もないを連呼するのだが、近くを流れる那賀川は清流として知られ有名な釣りスポットとのこと。

実際、ヴェルファイアの車窓からは幾名もの釣り人が見える。



「そりゃあ、釣りくらい誰だってするでしょ?」



地元民の埴渕から見れば何でもない光景らしく、俺や光戦士の感動は伝わらない。

無産階級の俺としては、このレンコン畑は美しいと思うのだがな。



『…この生活圏、手放すのは勿体ないですよ。』



「…。」



埴渕はボート状のコンテナに積んであったレンコンを無言で渡して来る。



「㌔1200円。」



『?』



「泥にまみれて寒い思いして指先はいつもボロボロ…

病害虫で全滅して廃業する奴も居る。

そんな商売。

私も息子は大阪の大学に進ませた。

継がせたくはないけど、アイツの保険として続けてる。」



『そうですか。』



「最近の子は根菜なんて嫌いだしさ。

まあ、私は今でも嫌いだけど。

おせち需要も年々減ってるし。

知ってるか?

最近のおせちにはローストビーフが欠かせないんだってさ。


…価値ないよ、こんな仕事。」




《本日の配当は御座いません。》




「…。」



『…。』



突如空中に生じ、足元に転がり落ちたレンコンを俺達は無言で眺めていた。

配当として払い出された以上、それは富なんじゃないかな?

少なくとも俺の中では。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



『せんせーい、何してるんですかー?

帰りますよー。』



「うにゃにゃ?」



レンコン畑の見学を終えて帰ろうとしていた所、松村が寺社の手前でウロウロしている。



『せんせーい。

置いて行きますよー?』



連れ戻す為に近寄ると、招き猫?

大きな招き猫が飾ってある。

お松大権現?



「ここは化け猫を祀ってるんだ。」



『化け猫?』



「あまり他所の人には話したくない。

我々阿波人の卑しい性根を体現したような伝承だからね。

化け猫が悪人を誅した逸話があるのさ。」



埴渕の寂しそうな表情を見るに、あまり後味の創建譚ではなさそうである。



「ニャーハッハ!!

聞いたか、トイチ!!」



『え?』



「ここは猫が悪をやっつけた神社だニャ!!!

理論上、奈々ちゃんに御利益がある筈ニャ!!」



『いやー。

先生って猫属性以上に悪属性が強いですからねぇ。

寧ろ神罰が下る側なんじゃないですか?』



「何を訳の分からない事を言ってるニャガかww

可愛いは正義!!

だから奈々ちゃんは正義!!」



『いやー、私の方が遥かに可愛いと思いますけど…』



「ふはははは、チカラが溢れてくるニャ!!

ん? 

トイチから没収したスマホから、また雑音が聞こえて来るニャ?

アカシックレコード?

【インストールを開始しますか?】

ニャンだこれ?

【Enter】

まあいいや、貰えるものは全て奈々ちゃんの物だニャ♥」



##大魔王、緊急事態よ!##



『うわっ、エルデフリダさん。

急に出て来ないで下さいよ。』



##わからないの!?

原因不明の時空的超常波動が発生している!!

ワタクシですら見たことがない光よ!!

あの畜獣に神秘を与えるのは危険!

今すぐ引き離しなさい!!##



「ニャ!? ニャ・ニャ・ニャ・ニャ!?

【インストール中です 32%/100%】」



『えー?

神秘だなんて大袈裟だなあ。』



##いいから!!

世界の危機なのッ!!!##



ちっ、毎回毎回うっとおしい女だ。

ドナルドの嫁だからこっちは大目に見てやってるのに…

いつもは呼んでも返事しない癖に、主張がある時だけ偉そうにしやがって。



『はいはい、分かりましたよ。

何もかもエルデフリダお姉様の仰る通りです。』



##…お願い、取り返しのつかない予感がするの。##



「…見えるッ

奈々ちゃんにも見えるニャッ!!!

【インストール中です 68%/100%】」



ちっ、手間の掛かるキチガイだな。



『せんせーい、早く来ないと置いて行きますよー。』



「勝手にしろニャ!

奈々ちゃんは今、宇宙の真理に辿り着きそうだニャ!!

あ、あ、あ、後3秒でアカシックレコードがインストール完了するぅ!!

【インストール中です 89%/100%】」



マジかー。

前々から頭のおかしい女だと思ってたが、やっぱり大麻は有害だなあ。

やはり俺の民衆管理以外には使わせないようにするべきだな。



『せんせーい。

酒と麻薬と男とカネをプレゼントしますよー。』



「え!?

本当ニャ!?

【インストール中です 94%/100%】」



『いやだなあ。

私が敬愛する先生に嘘を吐く訳ないじゃないですか。

よ、恩師♪

人類三大恩師♪

大恩師♪

正統派お姉様系ヒロイン♪』



「ニャ♥ ニャ♥ ニャ♥

【インストール中です 99%/100%】

【インストールを中断しますか?】」



『はい、行きますよー♪』



「ニャーン♪

【Yes】」



やれやれ。

どいつもこいつもこの俺に手間を掛けさせやがって、屑共が。

【名前】


遠市・コリンズ・エルデフリダ・リン子・厘



【職業】


立ちんぼ



【ステータス】  


※全基礎パラメーターに1.75倍のバフが掛かっているが、元数値が低すぎて効果を体感出来ず。


《LV》   32

《HP》   全快

《MP》   全快

《力》   最弱 (1.75倍)

《速度》  鈍臭ギリ健アスペ低運動性IQ野郎

《器用》  エンスト (1.75倍)

《魔力》  微弱   (1.75倍)

《知性》  ド低能  (1.75倍)

《精神》  病    (1.75倍)

《幸運》  金運宇宙最強/女難の相  (1.75倍)


《経験》 267億6596万2293


本日取得  0

本日利息 63億3393万0008

次のレベルまでの必要経験値161億8371万0657


※レベル33到達まで必要合計ポイント429億4967万2950




【スキル】


「複利」 


※日利32%

下4桁切り上げ 




【所持金】


所持金0万円




5億3607万BTC  (下4桁切り上げ)

  ↓ 

7億0762万BTC



2億2950万(下4桁切り上げ) 

 ↓

3億0294万XRP



2億2950万SOL (下4桁切り上げ)

 ↓

3億0294万SOL




【所持品】


レンコン2個

特濃ドーピングタンポポ2㌔




【残り寿命】


5億8422万8500日 (下4桁切り上げ)

  ↓

7億7118万8500日




【約束/エルデフリダ】


 コレット・コリンズ  「ヒルダ討伐を邪魔しない。」

 ヒルダ・コリンズ   「コレット討伐を邪魔しない」

× ハロルド・キーン   「義絶届にサインしておくように。」

× ドナルド・キーン   「離婚届にサインしておくように。」

 クレア・V・ドライン  「所領監査に応じる」

 金本光戦士      「王朝存続の暁にはヒルダを連れて異世界に帰還すること」

 ウラジミール7世    「全時空永遠帝国の建国を託す!!」

 レニー・A      「四天王権限でエミリー共々減刑申請する。」


〇ポール・ポールソン   「君のことはボクがずっと守ってあげりゅ!」




【約束/リン子】


 上甲小夜       「離島支援の為の補正予算を獲得する。」

 松村奈々       「大麻解禁法案への不干渉。」

 萩森一誠       「明日のナージャの続編制作に出資する。」

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― 新着の感想 ―
神秘やべー
お遍路コスの立ちんぼはさすがにマズい
あーあ、あと少しで阿波の化け猫を松村先生憑代にして召喚出来るとこだったのに。
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