【顛末記32】 摂政
東方人がパニックになって砂漠に駆け付けている。
それも貴族階級が総出である。
突然来られても迷惑なのだが、彼らの応対は俺の仕事なので四方を駆け回ってゲルを恵んで貰う。
マキンバ公爵が将校用ゲルを50組贈ってくれたので、慌てて礼状を書く。
「公王様!
何卒お口添えを!」
東方人達が泣きそうな顔で俺に縋る気持ちも分からなくはない。
摂政コレット・コリンズがこの砂漠地帯に出現したからである。
いよいよ、統一政府の東方侵攻が始まると考えたのだろう。
(もう他に攻める土地も残ってないしな…)
例によって突如、訪問中の帝都を出発した摂政はカロッゾ領の1つであるグレート・オアシス(49万石)に布陣。
魔王ダンを預けると、親衛隊を率いてポールソン領への入国を申請してきた。
この世で1番入れたくない女なのだが、拒めば謀反人として討伐対象となるので泣く泣く歓待する。
(実際に幾名もの諸侯が摂政の抜き打ち入国を拒絶したという理由で粛清されている。)
「突然申し訳ありません。
ご迷惑かとは思いますが、公王の顔を久し振りに見れたのは喜ばしい限りです。」
砂漠に来た摂政は屈託の無い笑顔でそう言った。
表面上の愛想はいいが、背後では親衛隊のトルーパーがどんどん搬入され、偵察タイプの機体が勝手に測量を始めている。
『…いえ。
御行幸の栄誉に身のうち震える思いです。(棒)』
比喩ではない。
俺は本当に震えている。
この女に領地を把握される恐怖は筆舌に尽くしがたい。
偵察機は3機。
完全に砂漠仕様の足回りである。
先程から確かめるように砂丘を登り降りしていている。
…マズい。
完全に宮殿周辺の地形を測量されてしまった。
明らかにカロッゾ領経由の進軍ルートを練りに来た動きだ。
「公王には苦労ばかり掛けてしまいましたから、今回は顕彰の意味合いで来訪しました。
こちらは魔王ダンからの下賜米です。」
『恐縮至極であります。 (棒)』
なーにが顕彰だよ。
俺の視界に入ってるだけでトルーパーが8機も搬入されてるじゃねーか。
しかも全機が最新式のランチャーを装備している。
(高威力の光弾をアホみたいに連発可能)
控え目に言っても粛清5秒前の布陣である。
誰がどう見ても摂政にタゲられてるのは俺なのだが、東方人はそう思わないらしい。
摂政&公王が仲良く東方征服事業に乗り出したと解釈したらしいのだ。
それが東方圏の貴族階級が総出で砂漠参りに来た理由。
まぁな、俺が彼らでもそうするだろうしな。
例によって、東方人達は膨大な貢納品を持参した。
気持ちは分からないでもない。
彼らの文明圏(というより一般的な価値観として)では、誠意は貢納品の量で示すものだからである。
ただ極めて不幸なことに、コリンズ朝の創始者である大魔王リンは贈答の類を露骨に嫌っていた。
というより、この世に貧富の格差があることを憎悪していた。
なので、コレット・コリンズはその忠実な妻である事を天下に示す為にも必要以上に清貧な統治姿勢を取っているのだ。
(元々、華美を好まない気質ではある。)
兵士と同じ食事を取り、兵士と同じ天幕で起居し、兵士と同じ軍服を着用している彼女は、まるで古参の下士官の様な風格すら備えていた。
そんな少女に宝石やらドレスやら美童奴隷やらを贈ろうとするのは、自殺行為なのではないだろうか。
俺は何度も何度も何度も東方人達にそう訴えたが、今の所カルチャーギャップが埋まる気配はない。
『清掃奴隷と仰いますが、摂政殿下はご自身でゲルを掃き清められるお方です。』
年の頃10歳くらいの美少年達を引き連れた東方貴族が、俺に摂政への謁見を打診して来たので思わずそう答えた。
貴族氏は大袈裟に驚く。
「まさか、ご冗談を。
清掃など奴隷の仕事ではありませんか(笑)」
自分が掃除屋の息子である事を伝えた方が良いのか悩むが、話がややこしくなりそうなのでスルー。
「全土から選りすぐった美童奴隷に御座います。
女性である摂政殿下に女奴隷を贈るのは不敬と公王様に教わったので、我々も心を入れ替えました!」
…駄目だ。
言葉は通じるのに会話が成立しない。
これが異文明コミュニケーションか…
正直、辛い。
ふと背後を振り返ると、摂政親衛隊の面々が俺と貴族氏のやり取りを観察している。
露骨に敵意を向けて来る者までいる始末である。
仕方あるまい。
娼婦で構成された軍隊を主力に建国されたのがコリンズ朝なのだから。
摂政コレット・コリンズは天下の大権を掌握すると同時に、全ての売春行為を禁止した。
特に未成年者への性的搾取を厳禁している。
結果、解放娼婦が一斉に摂政の親衛隊に志願した。
報恩と報復が原動力である為、忠誠と結束が尋常ではない。
そんな親衛隊員達の目に東方人の奴隷文化がどう映るか…
何度も彼らに注意したのだが、この点が特に伝わらない。
やむを得ないのかも知れない。
ここに居る東方貴族達は数千年に渡って奴隷制度の恩恵を蒙って来た側である。
もう意識の根底に染み付いているのだろう。
『摂政や大魔王は、奴隷も主人もない世界を願っております。』
俺は再度彼らにコリンズ朝の設立理念を説いたが、貴族氏は分かったのか分かってないのかの表情で曖昧に頷いただけだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「公王。
腹を割って話がしたいです。」
俺の王宮である《ひんやりとした岩場》に入って来るなりコレット・コリンズはそう言った。
断る訳にも行かないので、隅っこで寝転んでいたエミリーとレニーを追い出す。
2人は悪態を吐くとゴブリン団子をクチャクチャと噛みながらどこかに行ってしまった。
「粗餐ではありますが。」
義父のリチャードが暗黒タロイモ料理を運び込む。
このゲテモノ素材も義父が魚醤に漬け込む手法を開発した事により、ダークエルフ以外も食べられるようになった。
「公王領の食事を見るのは初めてです。」
摂政は暗黒タロイモのピリ辛魚醤漬けを半分だけ口に入れて、注意深く咀嚼している。
奇妙な女だ。
「弐ノ膳で御座います。」
今度は娘のメアリがドブネズミの唐揚げを運んで来る。
そして、ここでは貴重品の冷水。
摂政はグラスの水を半分だけ飲むと、溜息を漏らした。
「公王の生活姿勢は見事です。
あるもので賄い、贅美は求めない。
まさしく為政者の鑑と言えましょう。」
この女はいつも口先では俺を絶賛してくれる。
着々と俺の逃げ道を塞いで来ることを除けば理想の上官である。
「東方の者には常々、公王を模範とするように言い聞かせているのですが…」
『恐縮です(棒)。』
「彼らのあり方は大魔王の理念と相反するとの結論に至りました。」
遂にコレット・コリンズがそれを口に出してしまった。
今まで東方へのコメントを避けていた事を思えば大きな変化である。
この会食が公式なのか非公式なのかは分からない。
だが聞いてしまった以上、今後の俺はその意図に沿わざるを得ない。
そりゃあそうだよな。
富の公正なる分配を訴え続けた大魔王と、厳格な身分制度を敷いている東方世界では相性が悪いよな。
『摂政もお聞き及びかと思いますが。
彼らが献上を申し出た少年奴隷達…
皆、喉と舌が潰されておりました。』
「ええ、先程親衛隊からも同様の報告を受けました。」
東方に奴隷文化は根強い事は以前から知っていたが、それでも喉や舌を潰すという振る舞いはここ最近のものである。
『つまり、奴隷と統一政府の意思疎通を封じる意図があるのでしょう。』
そんなに意思疎通させたくないのなら、奴隷献上自体をやめればいいと俺は思うのだが…
彼らなりに何らかの理屈は通っているのだろう。
「公王に教えを乞いたいのですが、もしも大魔王がここに居れば何と仰られるでしょうか?」
上手いなー、この女。
結論ありきの癖に…
『…まず、大魔王は奴隷制度を始めとした労働者搾取構造を嫌ってました。
ましてや身体を傷つけるなど論外です。』
「なるほど。
公王の仰る通りかも知れませんね。」
なーにが、【なるほど】だよ。
白々しい女だ。
『摂政。
ここから私も本音で話して良いですか?』
「…はい、お願いします。」
『大魔王は世襲に反対です。
共和主義者という次元の話ではなく、富の継承すら許してくれそうもない雰囲気でした。』
「…。」
『世間が思う以上に彼の思想は徹底しております。
スキルの異常性ばかりに着目されてますが、大魔王の本質は…』
「大魔王がダンへの王位継承に反対するなら、私は身を引くつもりでおります。」
『あ、いや!
何もそこまで!』
「大魔王… リンは非情極まりない人です。
己の妻子にすら一切の容赦はしてくれないでしょう。
私はあんな恐ろしい人を他に知りません。
ヒルダ・コリンズもあの偏執的な為人には酷く怯えておりました。」
『…。』
女から見たら、あんな男は本当に怖いと思う。
だってアイツ本音を隠さないんだぜ?
ぶっちゃけ、女は仕事の邪魔だし、セックスの相手なんて誰でもいいし、子供の認知や養育なんてアホらしいし、何なら女が自我や人格を持つのって男にとって百害あって一利ないじゃん。
そりゃあ男は全員そう思ってるよ?
俺は穏健派だけど、その俺ですら母性以外の人格を女に求めてないもの。
勿論、普通はそれを態度や口には出さないのだけれどさ。
大魔王は露骨だった。
己の妻子に対する冷淡さは群を抜いていた。
だってアイツ、地球に帰る際に【妻子をお願いします】と誰にも頼まなかったんだぜ?
普通、形式的であっても頼むじゃない、周囲に。
皆がその言葉を待っていたが、大魔王は振り返りもせずに去って行った。
文字通り、糟糠の妻を捨てたのだ。
それが天下万民が未だに大魔王を畏れる理由。
やはりあれは人間ではなかったのだ。
もっとも、だからこそ主君としては最高の男だった。
何があっても絶対に家族より社会を優先する人間であると皆が確信していた。
偏執的なまでの滅私奉公。
だからこそ男達が喜んで命を賭したのだ。
それが、大魔王にとっての「滅すべき私」たる摂政が苦悩し続け必死で政務に打ち込む理由。
大魔王は我が子ダンに興味がない。
アレの望みは完全平等。
等しく全人類を愛し、等しく関心を持たない。
そう。
アレは神そのものなのだ。
故に東方の奴隷解放は神の意に沿っている。
摂政の手腕なら、年内にも東方を直轄領に組み込み善政を敷く事は可能である。
だが、大魔王の平等思想の前では東方貴族も我が子ダンも等しく排除すべき世襲政治家に過ぎない。
コレット・コリンズは誰よりも神意を理解しているだけに整合に苦しんでいる。
(ちなみに大魔王が顕現しても永劫砂漠は本領安堵されそうな気がする。
神は苦難を背負う者には寛容だからだ。)
「もしも、大魔王がこの場にいれば…
どのような判断を下したでしょうか?」
『我々に丸投げしたと思います。
ただ、少年達を傷付ける行為には怒りを顕にする事でしょう。』
「ダンの進退に関しては…」
『あ、いや。』
「忌憚の無い意見を求めます。」
『…。』
「重ねて乞わせて下さい。」
『…我々に丸投げしていたと思います。』
容易に想像がつく。
大魔王は頼めば我が子をあやすかも知れないが、言われなければ存在すら忘れているだろう。
男同士の歓談中にダンが泣き出せば、露骨に不機嫌になってコレット・コリンズに押し付けるだろう。
アレはそういう男だ。
だからこそ、主君として仕える価値がある。
為政者にとって最も邪魔な私心がない。
いや厳密には心すら無い。
故に絶対に優先順位を間違えない。
そういう最高の君主なのである。
邪魔に感じたら、ダンやコレットも何の気なしに粛清するだろう。
それも自らの手は一切汚さずに平然と殺す。
それこそが大魔王は万民に求められ恐れられている真の理由。
「私は母の義務と妻の義務の両方を果たさなければなりません。」
『はい、理解しております。』
「妻としての義務とは、夫の公務と相反しない振舞をする事に尽きると考えております。
夫婦で社会に対して異なるメッセージを発信するのは間違った行為だと思いますので。」
言いながらも摂政は僅かに眉間に皺を寄せている。
この聡明な少女は当然理解している。
そもそもとして世の夫が妻の意見表明を嫌うことを。
この女が好きで天下人などを務めていない事を知っているだけに、やや同情する。
コレット・コリンズはたまたま政治の天才だっただけで、政治に関心がない。
故国である王国を含めた全世界をあっさりと臣従させてしまったが、そもそも世界にすら関心がない。
それどころか、政務や戦争は男の仕事であって女が口を出すのは不道徳であるとさえ公式の場で幾度か発言している。
ただ、出来てしまうだけの話なのだ。
不幸にも夫の理想を実現してしまえる才覚がこの少女にはあった。
リン・コリンズが唱えた幼稚な平等論。
物の見事に現実に落とし込んでしまった。
全世界の労働者を解放した人民住宅や人民農場。
原資をバラ撒いたのは大魔王だが、数多の苦難と誹謗中傷を乗り越えて実現したのは摂政である。
(あの男には微塵の実務能力も無かった。)
コレット・コリンズほど妻としての責務を果たした女は存在しないと断言出来る。
そして、仮にその功績を見ても大魔王は一言も褒めず、平然と没収してしまうであろう未来も容易に想像がつく。
社会全体にとっては大魔王の身内に対する酷薄さこそが求められているのだが、その社会を構成する個々の人間にとっては戦慄ものだろう。
それ故、誰もが大魔王を崇拝する事で人格の異常性から逃れようとするのだ。
きっと最初からあの男には宗教的な方面にしか居場所がなかったのだろう。
『摂政こそが貞婦の鑑でありましょう。』
これは皮肉ではない。
その点は皆が認めている。
「妻の立場と母の立場を並立させるのは難しいことです。」
グラスを空にした摂政は憂鬱気に溜息を吐いた。
メアリが二杯目を注ごうとするが微笑で謝絶する。
『御言葉ですが、摂政は魔王ダンに対しても母親としての責務を十二分に果たされておられると思います。』
これは社交辞令。
その点は皆と同じ感慨を抱いている。
抱き寄せようとする度に息子が号泣するのなら、如何なる理由があったとしても母親失格なのだ。
比喩ではなく、コレット・コリンズからは死の臭いがする。
「本質において母の義務とは…。」
摂政が俺の目を見たまま、ゆっくりと言葉を続ける。
「夫から我が子を護ることです。」
『…お戯れを。』
流石だ。
この女は見事に世界の仕組みに辿り着いている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『大魔王であれば、まずは人民の救済から始めることでしょう。』
「ええ。」
『傷つけられている奴隷を見たならば、その治癒を周囲に命ずる筈です。』
「…仰る通りです。」
俺も摂政も気が重い。
東方の奴隷を助けるということは、結果として彼の地の貴族階級全体への攻撃に至ってしまうだろう。
そして軍事力・経済力の格差を鑑みれば、統一政府は広大な東方文明圏を吸収してしまう。
政治的なメリットが一切ない。
一方、供出を強いられるリソースは途方もない。
一番の苦痛は俺も摂政もあまり東方世界に興味がない点である。
当然、俺は頑張って各種資料に目を通した。
それなりに同地への知識は持っているつもりである。
ただ、どうしても関心が湧いてくれなかった。
「オリジナルエリクサーを供出します。」
『…今、少年達に使いますか?』
「ええ、そうしましょう。」
摂政は唇を噛んで俯く。
聡明な彼女には先の展開が完全に見えているのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日、少年奴隷達にはエリクサーが与えられた。
当然、潰された喉が回復した少年達は東方貴族の無道を口々に訴える。
要は東方の全人民は統一政府の統治下に入る事を願っている。
それを阻止すべく東方貴族達は厳重な出国規制を行い、東方人民が統一政府と接触しないようにありとあらゆる弾圧を行っていたのだ。
「『そ、そうだったのですね。 (棒)』」
俺と摂政は初めて知ったような顔で驚く素振りをする。
心底アホらしいので、演技もおざなりである。
「まさか、こんな実態だったとは。 (棒)
公王、統一政府はこの事態に際してどう取り組むべきでしょうか? (棒)」
『はい、殿下。 (棒)
大魔王様の理念に従い全ての人民の幸福の為に行動に移すべきです。 (棒)』
「なるほど、公王の進言もっともです。 (棒)
私は流血が苦手なので、穏便な手段があれば良いのですが。 (棒)」
…どの面下げて言うかね。
『まずは話し合いでの解決を図るべきです。 (棒)
彼らと協議する場を設けましょう。 (棒)』
「流石は公王です。 (棒)
まずは話し合いでの解決を図りましょう。 (棒)」
そんな白々しいやりとりを皆の前で交わした後、摂政は親衛隊に命じて東方貴族全員を逮捕拘束してしまった。
提案したのは俺だが、こんなエグい事を平然とやってのける摂政は心底信用出来ない。
幾らなんでもここまで悲惨な事態に陥るとは思っていなかった東方貴族達は泣き叫んで赦しを乞うが、摂政は眉1つ動かす事もなく護送命令を下してしまう。
彼らが送られるのはよりにもよってカロッゾ領のグレートオアシスである。
(つまり自動的にあの殺人鬼が御預奉行を務めることになる。)
その後、統一政府首脳と東方貴族団の間で親善会議が開催され、東方貴族団は奴隷制の廃止を含む人民保護条例の即時施行を宣言した。
もっとも、会議の前週にカロッゾ領を通ったィオッゴが街道に晒されている大量の東方人の死骸を目撃しているので、摂政はいつもの摂政だったのだろう。
血も涙もない女だが、解放された少年奴隷達は涙を流して拝跪している。
摂政が解放軍の派遣を宣言したことにより、少年達の歓喜は絶頂に達した。
いや、派遣されるのはどうせ俺なんだけどな。
【異世界紳士録】
「ポール・ポールソン」
コリンズ王朝建国の元勲。
大公爵・公王・総司令官
永劫砂漠0万石を所領とするポールソン大公国の国主。
「クレア・ヴォルコヴァ・ドライン」
四天王・世界銀行総裁。
ヴォルコフ家の家督継承者。
亡夫の仇である統一政府に財務長官として仕えている。
「ポーラ・ポールソン」
ポールソン大公国の大公妃(自称)。
古式に則り部族全体の妻となる事を宣言した。
「レニー・アリルヴァルギャ」
住所不定無職の放浪山民。
乱闘罪・傷害致死罪・威力業務妨害罪など複数の罪状で起訴され懲役25年の判決を受けた。
永劫砂漠に収監中。
「エミリー・ポー」
住所不定無職、ソドムタウンスラムの出身。
殺人罪で起訴されていたが、謎忖度でいつの間にか罪状が傷害致死にすり替わっていた。
永劫砂漠に自主移送(?)されて来た。
「カロッゾ・コリンズ」
四天王・軍務長官。
旧首長国・旧帝国平定の大功労者。
「ジミー・ブラウン」
ポールソン大公国宰相。
自由都市屈指のタフネゴシエーターとして知られ、魔王ダン主催の天下会議では永劫砂漠の不輸不入権を勝ち取った。
「テオドラ・フォン・ロブスキー」
ポルポル族初代酋長夫人。
帝国の名門貴族ロブスキー伯爵家(西アズレスク39万石)に長女として生まれる。
恵まれた幼少期を送るが、政争に敗れた父と共に自由都市に亡命した。
「ノーラ・ウェイン」
四天王・憲兵総監。
自由都市併合における多大な功績を称えられ四天王の座を与えられた。
先々月、レジスタンス狩りの功績を評されフライハイト66万石を加増された。
「ドナルド・キーン」
前四天王。
コリンズ王朝建国に多大な功績を挙げる。
大魔王の地球帰還を見届けた後に失踪。
「ハロルド・キーン」
帝国皇帝。
先帝アレクセイ戦没後に空位であった帝位を魔王ダンの推挙によって継承した。
自らを最終皇帝と位置づけ、帝国を共和制に移行させる事を公約としている。
「エルデフリダ・アチェコフ・チェルネンコ」
四天王筆頭・統一政府の相談役最高顧問。
前四天王ドナルド・キーンの配偶者にして現帝国皇帝ハロルド・キーンの生母。
表舞台に立つことは無いが革命後に発生した各地の紛争や虐殺事件の解決に大きく寄与しており、人類史上最も多くの人命を救済していることを統計官僚だけが把握している。
「リチャード・ムーア」
侍講・食糧安全会議アドバイザー。
御一新前のコリンズタウンでポール・ポールソンの異世界食材研究や召喚反対キャンペーンに協力していた。
ポールソンの愛人メアリの父親。
「ヴィクトリア・V・ディケンス」
神聖教団大主教代行・筆頭異端審問官。
幼少時に故郷が国境紛争の舞台となり、戦災孤児として神聖教団に保護された。
統一政府樹立にあたって大量に発生した刑死者遺族の処遇を巡って政府当局と対立するも、粘り強い協議によって人道支援プログラムを制定することに成功した。
「オーギュスティーヌ・ポールソン」
最後の首長国王・アンリ9世の異母妹。
経済学者として国際物流ルールの制定に大いに貢献した。
祖国滅亡後は地下に潜伏し姉妹の仇を狙っている。
「ナナリー・ストラウド」
魔王ダンの乳母衆の1人。
実弟のニック・ストラウドはポールソン大公国にて旗奉行を務めている。
娘のキキに尚侍の官職が与えられるなど破格の厚遇を受けている。
「ソーニャ・レジエフ・リコヴァ・チェルネンコ」
帝国軍第四軍団長。
帝国皇帝家であるチェルネンコ家リコヴァ流の嫡女として生を受ける。
政争に敗れた父・オレグと共に自由都市に亡命、短期間ながら市民生活を送った。
御一新後、オレグが粛清されるも統一政府中枢との面識もあり連座を免れた。
リコヴァ遺臣団の保護と引き換えに第四軍団長に就任した。
「アレクセイ・チェルネンコ(故人)」
チェルネンコ朝の実質的な最終皇帝。
母親の身分が非常に低かったことから、即位直前まで一介の尉官として各地を転戦していた。
アチェコフ・リコヴァ間の相互牽制の賜物として中継ぎ即位する。
支持基盤を持たないことから宮廷内の統制に苦しみ続けるが、戦争家としては極めて優秀であり指揮を執った全ての戦場において完全勝利を成し遂げた。
御一新の直前、内乱鎮圧中に戦死したとされるが、その詳細は統一政府によって厳重に秘匿されている。
「卜部・アルフォンス・優紀」
御菓子司。
大魔王と共に異世界に召喚された地球人。
召喚に際し、超々広範囲細菌攻撃スキルである【連鎖】を入手するが、暴発への危惧から自ら削除を申請し認められる。
王都の製菓企業アルフォンス雑貨店に入り婿することで王国戸籍を取得した。
カロッゾ・コリンズの推挙により文化庁に嘱託入庁、旧王国の宮廷料理を記録し保存する使命を授けられている。
「ケイン・D・グランツ」
四天王カイン・D・グランツの長男。
父親の逐電が準叛逆行為と見做された為、政治犯子弟専用のゲルに収容されていた。
リベラル傾向の強いグランツ家の家風に反して、政治姿勢は強固な王党派。
「ジム・チャップマン」
候王。
領土返納後はコリンズタウンに移住、下士官時代に発案した移動式養鶏舎の普及に尽力する。
次男ビルが従軍を強く希望した為、摂政裁決でポールソン公国への仕官が許された。
「ビル・チャップマン」
准尉→少尉。
魔王軍侵攻までは父ジムの麾下でハノーバー伯爵領の制圧作戦に従事していた。
現在はポールソン大公国軍で伝令将校として勤務している。
「ケネス・グリーブ(故人)」
元王国軍中佐。
前線攪乱を主任務とする特殊部隊《戦術急襲連隊》にて隊長職を務めていた。
コリンズ朝の建国に多大な貢献をするも、コリンズ母娘の和解に奔走し続けたことが災いし切腹に処された。
「偽グランツ/偽ィオッゴ/ゲコ」
正体不明の道化(厳密には性犯罪者)
大魔王と共に異世界に召喚された地球人。
【剽窃】なる変身能力を駆使して単身魔王軍の陣中に潜入し、摂政コレット・コリンズとの和平交渉を敢行。
王国内での戦闘不拡大と民間人保護を勝ち取った。
魔界のゴブリン種ンゲッコの猶子となった。
「ンキゥル・マキンバ」
公爵(王国における爵位は伯爵)。
元は遊牧民居留地の住民として部族の雑用に携わっていたが、命を救われた縁からコリンズ家に臣従。
王国内で一貫して統一政府への服従を呼びかけ続けた為、周辺諸侯から攻撃を受けるも粘り強く耐え抜いた。
御一新前からの忠勤を評価され、旧連邦アウグスブルグ領を与えられた。
「ヴィルヘルミナ・ケスラー」
摂政親衛隊中尉。
連邦の娼館で娼婦の子として生まれ、幼少の頃から客を取らされて育った。
コリンズ家の進軍に感銘を受け、楼主一家を惨殺して合流、以降は各地を転戦する。
蟄居処分中のケネス・グリーブを危険視し主君を説得、処罰を切腹に切り替えさせ介錯までを務めた。
「ベルガン・スプ男・ゴドイ」
魔界のオーク種。
父親が魔王城の修繕業に携わっていたので、惰性で魔王城付近に住み付いている。
大魔王コリンズの恩寵の儀を補助したことで魔界における有名人となった。
その為、異性に全く縁が無かったのだが相当モテるようになった。
以上の経緯から熱狂的なコリンズ王朝の支持者である。
「ヴォッヴォヴィ0912・オヴォ―」
魔界のリザード種。
陸上のみで生活しているという、種族の中では少数派。
その生活スタイルから他の魔族との会合に種族を代表して出席する機会が多い。
大した人物ではないのだが陸上リザードの中では一番の年長者なので、リザード種全体の代表のような扱いを受ける事が多い。
本人は忘れているが連邦港湾において大魔王コリンズの拉致を発案したのが彼である。
「レ・ガン」
元四天王。
魔王ギーガーの母(厳密には縁戚)
ギーガーの魔王就任に伴いソドムタウンにおける魔王権力の代行者となった。
在任時は対魔族感情の緩和と情報収集に尽力、魔王ギーガーの自由都市来訪を実現した。
「ジェームス・ギャロ」
ギャロ領領主。
現在行方不明中のエドワード王の叔父にあたる人物。
早くからエドワードと距離を置き、実質的な国内鎖国を行っていた。
能書家・雄弁家として知られる。
「ジョン・ブルース」
公王。
王国の有力貴族であったブルース公爵家が主家に独立戦争を挑み誕生したのが公国であり、ジョンは6代目にあたる。
武勇の誉れ高く王国・魔界に対して激しい攻撃を行う反面、綿密な婚姻政策で周辺の王国諸侯を切り崩していた。
「クュ07」
コボルト種の医官。
大魔王の侍医であったクュの孫娘。
紆余曲折あってコレット・コリンズの護衛兼愛人となった。
以前からポール・ポールソンの人格と能力を絶賛しており、即時抹殺を強く主張している。
「ニック・ストラウド」
ポール・ポールソンの義弟。
大公国建国後は旗奉行として軍事面から諸種族の取り纏めに奔走している。
エスピノザ男爵叛乱事件の鎮圧に大功あり南ジブラルタル13万石の領有を許された。
実姉ナナリーが魔王ダンの乳母に就任しその娘キキに尚侍の官職が与えられたことで、全世界からの嫉妬と羨望を集めている。
「ハワード・ベーカー」
大魔王財団理事長。
元は清掃会社の職員だったが、コリンズ家のソドムタウン入り直後に臣従。
大魔王パーティーの一員として、キーン・グランツと共にリン・コリンズを支えた。
主に(株)エナドリの代表取締役としてビジネス界から大魔王の覇業に貢献した事で知られる。
大魔王の経済テロの後始末に誠意をもって奔走したことで、世論からの信頼を勝ち取った。
「テオドラ・ヴォルコヴァ」
ヴォルコフ家前当主。
幼少時に実家が政争に敗れ族滅の憂き目に遭い、単身自由都市への亡命を余儀なくされた。
その後、紆余曲折あって清掃事業者ポールソンの妻となり一男一女を設ける。
統一政府の樹立と同時に旧臣を率いて帝国に電撃帰還、混乱に乗じて旧領を奪還した。
家督を財務長官クレア・ドラインに譲ってからは、領内で亡夫の菩提を弔う日々を送っている。
「シモーヌ・ギア」
大量殺人事件容疑者。
冒険者兼林業ヤクザとして高名だったギリアム・ギアの戦死後、その敵対勢力が尽く家族ごと失踪する事件が発生。
自由都市同盟治安局は妹のシモーヌを容疑者として捜査するも統一政府による国土接収で有耶無耶になった。
「ミヒャエル・フォン・ミュラー」
旧連邦の私的記録に頻出する人名。
新支配者であるノーラ・ウェインの連邦史保存プロジェクトにおいて、その文字列がノイズと判断されたので関連の文言は新史への記載を見送られた。
「アンドリュー・アッチソン」
魔王城剣術師範。
言わずと知れた世界最強の剣士であり、奇術師としても高名。
御一新前はピット商会で護衛隊長を務め、その卓絶した武技で数々の逸話を残している。
摂政コレット・コリンズが三顧の礼で招いた逸材であり、魔王ダンの警護及び不忠者への上意討ちを任務としている。
「アレクサンドル・イワノフ」
農学博士。
帝都大学農学部を主席で卒業後、同大学で教鞭を取る。
専攻は階層生態学。
トハチェフスキー公爵家に招聘され、州都ウラジオストクの農業法人を指導していた。
ソドム大学に特別講師として派遣中にコリンズ朝が成立、自由都市の滅亡に伴い大学ごと統一政府に吸収された。
学識と忠勤が認められ、魔王ダンの学術師範に任命されることとなった。
「コレット・コリンズ」
摂政・録尚書事・大元帥・終身最高判事・ピット諸島及び東アラル地方に対する全権庇護者。
大魔王リンの唯一の妻にして、魔王ダンの生母。
元は卑しい身分であったが、夫の建国を甲斐甲斐しく支えた。
大魔王の帰還後は母ヒルダとの抗争に勝利、卓絶した政治センスと果敢な軍事指導力を発揮し天下一統を果たした。
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異世界事情については別巻にて。
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