【降臨107日目】 所持金133億2043万円 「目に焼き付けよ、大魔王の真の力を。」
夜陰に紛れて豊之浦(佐田岬)を出発した俺達は亀浦(佐田岬)に潜伏場所を変更した。
よし、この位置なら伊方越(佐田岬)に向かえるぞ!!
##…。(ジト目)##
『ななな何ですか、エルデフリダさん!
その目つきは!』
##…。(ジト目)##
『仕方ないでしょ!
佐田岬が無駄に長いのが悪いんですよ!』
##…無能。##
『むむむ無能ちゃうわッ!』
##ハァ。(クソデカ溜息)
この数日アナタを観察させて貰ったけど…##
『な、何ですか!』
##相変わらず使えない男ね。
あの人がどうしてあんなに入れ込んでたのか不思議で仕方ないわ。
どうせ利殖以外に何の取り柄も無いんだから、素直にコリンズ母娘のお神輿に徹するべきじゃない?##
『ギャオーン!!』
##だってそうでしょ。
アナタの全盛期って寝たきりで母娘に全権移譲してた頃じゃない。
あの頃は破竹の勢いだったわねぇ。##
『そそそ、そんな事ないですぅ!
エルデフリダさんに取り憑かれる前は、地球でも結構凄かったんですぅ!!』
##…。(ジト目)##
『キーッ!!
悪霊の分際でその態度は何ですかッ!!
私は大魔王ですよッ!
本気を出したら凄く凄いんですぅ!』
##…ハァ(クソデカ溜息)。
…じゃあ、見せてよ。##
『ふぇ?』
##凄く凄い本気とやらで、この状況を打開してみなさいって言ってるの。
ワタクシは口を挟まないから。##
『い、いいですよ!
ややや、やってやるですぅ!
純友さん!
作戦会議をしますよ!』
##純友卿の助力は無しで。##
『どどど、どうして!』
##当たり前でしょう。
純友卿はワタクシの召喚術で顕現したの。
彼のチカラを借りると言う事は、結局ワタクシに頼っているのと同じでしょう。##
『ぐぬぬ、ロジハラしおってからにですぅ!』
##じゃあ、そういう事だから。
ワタクシは手出しも口出しもしないから。
存分に見せて頂戴。
大魔王の本気とやらをね。##
『クキーーーッ!!』
売り言葉に買い言葉とはよく言ったもので、悪霊2匹の助力は当面受けない事となった。
なので、今はエルデフリダも純友と共に俺の背後に無言でプカプカ浮んでいる。
(召喚術を応用すれば可視霊体にもなれるらしい。)
ふと振り返ると2人揃って腕を組んだまま冷ややかな目で俺を見下していた。
採点されてるみたいで心底気分が悪い。
『はぁーい。
大魔王パーティー集合ー♪』
「猊下、何なりとお命じ下さい!」
「ボクも頑張るのだ!」
「ハァハァ、お、俺も戦列に復帰…
ゥグッ!」
気持ちは嬉しいが、福田は体力消耗が激しいので引き続き荷台で休ませる。
ジョーンズ夫妻も協力を申し出てくれるが、国内問題に口出しされたくないので、婉曲に謝絶する。
「大麻スパーッス♪」
「大麻スパーッです♪」
「大麻スパーッニャ♪」
『ほら、作戦会議…』
「知らんぷいッス❤」
「知らんぷいッです❤」
「知らんぷいッニャ❤」
まぁ、コイツらは大人しくしているだけで良しとするか。
最近、大麻の吸引量が増えてる気もするが、吸っている間は問題も起こさないしな。
「だけど、リン兄ちゃん。
もう道が残ってないのだ。」
そう。
状況はあまり好ましくない。
佐田岬から外に出る全ての街道にバリケードが張られていたのだ。
バリケードは無人だが、撤去を試みれば発見されるリスクが高まるだろう。
「小牧さん。
やっぱり、ボクらが佐田岬に居るってバレちゃったのだ?」
「いや、それにしては敷設方向が逆だね。
あれは根元から岬に逃げ込むのを防ぐ為の配置だ。
四国で何者かに対する非常線が張られているのは事実。
でも、佐田岬に潜伏している事はバレてない。
そんなところだね。」
確かに小牧の言う通り逆茂木の穂先が四国側を向いている。
つまりバリケードは岬からの脱出ではなく、岬へ逃げ込む事を警戒して張られたもの。
純∶あったあった。
この状況は伊予追捕あるあるだわ。
『昔からそうだったんですか?』
純∶八幡浜や松山の悪党は、島嶼や佐田に一旦潜んでから伊予の外に逃げるのが一般的だからな。
我が追捕任務に当たっていた時は、いの一番に佐田の根元に見張り番を飛ばしたな。
『へぇ。
平安時代からやってる事はあんまり変わらないんですね。』
純∶人間が進歩してないからなぁ。
オマエに至っては激しく劣化してるし…
『れれれ劣化ちゃうわ!』
純∶陸路は諦めろ。
この海岸の道は松山からの最短路。
追手が余程の馬鹿では無い限り、この先も捕吏が待ち構えている筈だ。
『こんな細い道にそこまでのリソースを割くとは思えないんですけど。』
純∶我が捕えた悪党共も驚いた顔でそう言っていたがな。
こんなショボい一車線道路で検問があるとは思えないが…
1000年前とは言え実務に携わっていた人間の忠告は聞かざるを得ないだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『と、なると海路しかありませんね。
佐田岬のどこかの浦で船を拝借して、海路で安全な場所に上陸しますぅ!
アネモネさん!
船を入手したらアナタの出番ですよ!
今からウォーミングアップしておいて下さい!』
「ふわぁ。 (相手の顔の前で欠伸)
何だかやる気出ないんですよねー。
なんでかなぁ?
(大麻スパーーーーーーーーー)
生理休暇を申請しまーす。」
『くっ!
この役立たずさんめ!!』
ここ数日のアネモネは特に反応が鈍い。
大麻を与え過ぎたか…
麻薬統制は加減が難しいな。
「なあ、トイチィ。
(大麻スパスパ)」
『何ですか先生。
今、忙しいんで邪魔しないで下さい。』
「もう諦めろニャ。
(大麻スパスパ)
聖職者として自首を推奨するニャ。
(大麻スパスパ)」
『私が諦めたら、先生も逮捕されるんじゃないですか?』
「奈々ちゃんは糞雑魚ナメクジのオマエと違って力こそパワーだニャ。
1人なら検問も山も突破する自信があるニャ。
(大麻スパスパ)
山で旅人を襲撃して再起を図る為の軍資金を集めるニャ。」
『ぐぬぬ。』
「悪いことは言わニャいからエルデフリダに頭を下げろニャ。
(大麻スパスパ)
一緒に謝ってやろうか?」
『ななな、何で私が謝らないといけないんですか!!』
「あのニャぁトイチィ。
(大麻スパスパ)
仕事って言うのはニャ?
そういうモンじゃねーんだよ。
理屈だけじゃ進まないんニャ。
出来ねぇ奴は出来る奴にお願いしてでも、欠落を埋めニャきゃならねぇ。
(大麻スパスパ)
オマエみたいなアスペ無能は周りの皆様に頭を下げてナンボだぞ?」
『キーーーーーーッ!!!
ああああアスペちゃうわっ!!
私は他人のチカラなんて借りなくても一人で勝てるんですぅ!!!』
「はぁ。(クソデカ溜息)
ダニング=クルーガー効果の有効サンプルがまた増えてしまったニャガねぇ。
(大麻スパーーーーーーーーー)」
『ふーーーーッ。 (憤怒の息吹)
どうやら先生には私の真の実力を分からせておく必要があるようですね!』
「で、でたー。
無能御用達ワード《真の実力》。
あからさまな失敗フラグだニャ。
オマエ、テスト前も毎回そんなこと言ってたニャ。
物理の濱中俊彦先生も頭を抱えておられたニャ。」
『るっさい!
物理なんか出来なくても社会を渡って行く上で何の支障もないですぅ!』
「顕在化した支障こそがオメーの現状ニャのでは?」
『うるさいうるさいうるさーい!
もう先生は黙っていて下さい!
皆さんもッ!!
手助けは無用ですよ!!
今日は大魔王の無双ショーです!!』
「オイオイ、トイチィ。
オメーの悪い癖だぞニャ。
すーぐムキになる。」
『先生は後ろで見学して来なさい!!
今から大魔王のスーパーパワーで船をチャチャッと入手ですぅ!!』
「ゴメン、なんかオチが見えたニャ。
トイチ、いい子だから実務は諦めよう?
折角、頭と腰が軽いんだから神輿に徹しようニャ。
ニャ? ニャ?」
『ふっ?
この私が神輿ぃ?
やれやれ、相変わらず先生は見る目がないですねぇ。』
「あー!
いつもの無駄イキリ!!
いつものフラグ!!
もうチートラノベは法律で禁止しろニャ!!
低スぺ陰キャ共に悪い影響ばっかり与えてるニャ。」
『(クワッ!)
目に焼き付けよ、大魔王の真の力を。』
「うっわー。
あの頃の苦労がフラッシュバックするニャ!!
オマエの存在、共感性羞恥!!
残業製造機!! 文科省の観察指定サンプル!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ひなびた漁港だが港には大量の漁船が停船している。
こうして見ると、結構デカい船も多い。
一隻でも入手出来れば、福田の回復を待って本州まで辿り着けるのではないだろうか。
「ああ、船を盗むんニャガね。
それなら15時前後が一番盗みやすいニャガよ。
カネが欲しいなら船外機だけ盗む方が賢いニャ。」
『先生みたいな泥棒猫と一緒にしないで下さい。
仮にも私は大魔王ですよ?
ちゃんと正規の手段で入手するんですぅ。』
「なーんかオチが見えたニャ。
なーんかオチが見えたニャ。」
俺は茂みに潜み、港内を執拗に眺め回して獲物を物色する。
30分経過。
「オメーのその悪事を働く時だけ発揮される集中力。
なーんで学業に反映されなかったニャガねぇ。」
『シッ! うるさい!』
「はいはい。」
作業の合間なのか、皆が談笑しながら漁具を整理し、終わった者から軽トラに乗って集落方面に戻って行く。
残ったのは皆の会話に入ってなかった気難しそうな中年男のみである。
この時点で90分が経過していた。
「ふわ~あ。(退屈欠伸)
オイ、トイチ。
正規入手も何もあのオッサンだけになっちまったニャ。」
『ええ、最初からあの人に目星を付けてました。』
「ニャー?
あの頑固そうなオッサン?
喧嘩も強そうだし、他の奴を標的にした方が良くニャいか?」
『先生はそこに居て!』
「お、おう。」
スタスタスタ。
『こーんにちわぁ♥
お仕事終わりですかぁ?
ねぇ、お兄さん♪
少し私と遊んで行きません?』
「と、トイチ!
初手淫売ムーブ!?」
「…うわっ、びっくりした。
え? 遊ぶってパパ活やらそういう話?
ゴメンね、俺もたまには女遊びしたいんじゃけどさ。
懐に余裕全然無いけん。」
『えー♪
おカネとかいらないんでぇ♥
ちょっとだけ楽しいことしましょうよぉ♪
このお船カッコいいですね♥
私も乗ってみたーい♪』
「…アイツにカメラ付けとくだけで
AV量産出来そうだニャ。」
「え? え? え?
い、いや。
流石にタダはいかんろ。
例え数千円でも、ちゃんと受け取らな。
パパ活の相場崩したら、他の子が迷惑するって爆サイでも議論になっとったよ。」
「うんうん。
安売り馬鹿女共には迷惑してるニャ。
奈々ちゃん達が真面目に守ってきた相場が崩れるニャ」
『あははは♪
お兄さんって真面目ですぅ♥
じゃあ、えっちな事する代わりに少しだけお船に乗せて下さい。』
「あ、いや。
君みたいな可愛い子じゃったら、寧ろこっちから頼んで乗って欲しいくらいだけど…」
『えー、可愛くなんかないですぅ♪
私なんか全然ですよぉ♥』
「いやいや!
ホントホント。
最初、どっかのアイドルの子思うたし。」
『もー♥
お上手なんだからぁ♪
でもね?
私ぃ、実はぁ♥
(ゴニョゴニョ♥)』
「え!?
嘘!?
男!?
いや、まさか!?
こんな可愛い子が男の娘な訳が!」
「えー、可愛くなんかないですよぉ♪
私なんかまだまだですぅ♥」
「一番の劣等生が結局夜職方面行った件…
こんな奴、高校に入れる必要なかったニャ。」
『私ぃ♪
全プリキュアの声で出来ますよ?
と言うか、男のヒトがどのプリキュアが好きか当てる事が出来るんですぅ♪』
「えーー!?
いやいや!!
今年のスカプリで18作目ぞな!?
流石にこれだけの数のキャラから好みを当てるって不可能でしょ。」
『キュアマリン。』
「え!?
え!? えーーーーーーーーー!?
な、何でわかるの!?
お、俺ってそんなロリコンっぽう見える?
いや、驚いたなぁ。
うん、正解。
俺、マリン推し。」
『って言うかぁ♪
変わり種枠を気に入ってくれそうな人を探してたんてす。
要はマリンを好きなそうな人は、破天荒な事態も楽しんでくれるかなって♥
それでぇ。
この浜じゃお兄さんかなぁって♥
思ったんですぅ♪』
「いや、俺は破天荒やら、そういうのは縁のない男じゃけんど。
ああ、でもまあ、言われてみたらかな。
君の言う通りアクシデントは結構ワクワクしてしまう方かも。
不謹慎なんじゃけどさ。
今の世界超恐慌も歴史の転換点に立ち会うとるみたいで結構楽しんどるんじゃ。
昨日なんか中国政府が突然上海市場閉めちゃたやない?
群衆が証券会社に押し入ってしもうてさ。
あの中継なんかは映画みたいで興奮したなぁ。
うん、ほうじゃけんキュアマリンも好き!」
『じゃあ、ちょっとだけマリンでやってみますね♥』
「え、マジ!?
え、マジ!?」
『は♥ は♥ はーときゃっち♪』
「うおおおおっ!
え!?
ちょ!?
イントネーションの再現性が緻密ッ!
凄!? ちょ!? 凄!?
当時のニチアサが脳内で再現されたァッッッ!!!!!」
『私とぉ、フォルテッシモする?』
「あ、あ、あ、あ、あ…」
「これねー。
教育者の禁句ニャんだけど。
チ●ポしゃぶるしか能のない奴…
そんな奴を教師がケアする義務ってある?
割くべきリソースは他にあったニャ…」
『お兄さん、見た目の割におとなしいですよねえ。
お名前は、なんて言うんですかぁ?』
「え?
あ、モニョモニョ…」
『はぁ~ん?
お兄さんは声まで控えめなんだぁ♥』
「うおっ! うおっ! うおっ!」
『やるっしゅ♥』
「あ、頭がおかしなりそうじゃ!」
『うふふふ♪』
「っく、松山のソープより気持ちいい!」
『えー、私なんかまだまだですぅ♥』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
萩森一誠(54歳)は見た通り地元の漁師である。
あまり遠出はしないが、月に1度か2度ふらっと松山市内まで遊びに行く。
特に郷土愛が強い訳では無いのだが、ここ30年は愛媛県から出た記憶がない。
(仕事柄、対岸の広島県は毎日見ている。)
元々アニメには興味が無かったのだが、たまたま見掛けた朝アニメ『明日のナージャ』に感銘を受けて熱烈なファンとなったそうだ。
萩森はナージャの続編を熱望しているのだが、後番組のプリキュアシリーズが大ヒットしたことにより、ニチアサ枠は同シリーズに占められてしまうことになった。
以来20年。
萩森は毎年TV局に淡々と嘆願書を送り続けながら、ナージャの続編を静かに待っていたとのこと。
萩森にとってプリキュアはナージャ2が放映されるまでの繋ぎに過ぎない。
そんな不遇に耐えて来た男だからこそ、さっき俺が追加サービス・ナージャをしてやると、全身で感涙した。
「あ、あのお。
5000円くらい払おか?
流石にタダでこんな事して貰うちゃまずいわい。」
「…ツッコミどころが多過ぎるニャ。」
『うふふ♪
私から誘っただけですし♪』
「…でたー、売春婦の常套句。」
「いや、まあ、そうなんじゃけどさ。
何?
宗教の勧誘か何?
入信は出来んけんど、安いグッズくらいなら買うちゃるよ?」
「…そういやアイツ、宗教もやってたニャ。」
『もー、萩森さん気を遣い過ぎですぅ♪
男の人なんだから、とっと堂々と振舞って貰わないと。』
「…どの性自認からの発言だニャ。」
「あ、うん。
君の性的立ち位置がイマイチ分からんけど、うん。
え?
俺は何をすればいいの?」
「…あのオッサン、優良顧客過ぎんだニャ。」
『お船に乗せて欲しいんです。』
「…アクロバティック乗船ニャ。」
「いや、船くらい幾らでも出すけどさ。
不法投棄やら、そういうの手伝うたらええの?」
「…あのオッサン、物分り良すぎだニャ。」
『そ、そんな!
不法投棄なんてとんでもないですぅ!』
「…あ、オチが見えたニャ。」
「ほっ。」
『ただ、出処の言えない現金と大麻を処分して欲しいんですぅ。』
「…ほーらね。」
「ん?」
『う、う、うー! (見え透いた嘘泣き)』
「…あ、いつもの泣き芸始まったニャ。」
「ど、どうしたの急に!」
『実は私、悪い人達に追われてるんですぅ!』
「…悪いのはオマエ定期。」
「え?
それは大変だ!
や、ヤクザとか?」
『警察庁さんとかインターポールさんとかですぅ。』
「えー、あれって実在するの?
ルパン3世の設定かと思ってた!」
「…反応が的外れ過ぎだろニャ。」
『私は何も悪いことしてないのに、皆がイジメるんですぅ (見え透いた嘘泣き)』
「…頼む、誰かツッコめニャ。」
「うーむ、そりゃ酷いなぁ。
よし、オジサンが味方しちゃろう。」
「…なんでやねーん!」
『えー、本当ですかぁ。
やったぜですぅ。』
「…イライライラ。」
「うん、大船に乗ったつもりで…」
「ちょっと待つニャー!!」
「うわ、びっくりした。」
『もー、邪魔をしないで下さいですぅ。』
「誰かツッコめニャ!!」
「…え?
今、抜いたばっかり。」
「ケツマンの話してんじゃねー!!
殺すぞこのボンクラ共!!」
「うわっ、何この人、怖。
…って、あれ? この顔どこかで。
あーッ!!
令和最悪の犯罪者・松村奈々容疑者ー!!
懲役太郎で見たぁ!!」
(ヒョコヒョコヒョコ)
(バチン!!)
「痛ぁッ!」
「馬鹿野郎、デカい声出すんじゃねーニャ!!」
『ちょっと先生ぇ。
今、真面目な場面なんですから、しゃしゃり出ないで下さい。』
「オマエの真面目は世間的にはいっつもアレだニャー!!」
『アレとは!?』
「伏字にされた時点で悟れニャーーッ!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、5分位の紆余曲折があり、俺達パーティーの移動は萩森に一任することになった。
全員が萩森の遊漁船に乗り込み身を伏せている。
軽トラは両方処分したが、現金と大麻の処分は女共の強硬な反対に遭い断念。
デッキでは、萩森が福田達と談笑している。
よし、読み通り馴染んでくれそうだな。
##ちょっと大魔王。##
『何ですかエルデフリダさん。
行き先なら教えてあげませんよ。
まあ、私も知りませんけど。』
##じゃなくて!!##
『?』
##ああいう行きずり女みたいな募兵は止めなさい!##
『どうして?』
##リスクがッ…
いえっ、品格が落ちるでしょう!!##
そうは言ってもなぁ。
俺は帝都から王都まで単身乗り込んできた姫様を見ているからなぁ。
その姫君も娼婦に紛れてまで目的の達成を狙い続けていたしな。
平民出身の俺ならもっと身体を張るべきだろう。
『でもエルデフリダさん。』
##何よ!##
『船が手に入りました。』
##そうだけど!
それにしたってやり方があるでしょう!
こんなの統治者じゃないわ!
徴発とか購入とか!
もっとちゃんとした手順を踏みなさいよ!
純友卿だってそう思うでしょう!##
純∶…。
##純友卿?##
純∶心底見下げ果てた男だと思う。
##ほら見なさい!##
純∶だが、誰も傷付かなかった。
異能すら用いなかった。
##…。##
純∶遠市厘。
我はオマエを断じて認めない。
『それは残念ですぅ(笑)』
純∶だが、最後に勝つのはオマエだと確信したよ。
##純友卿!
それは過大評価です!##
純∶だが、貴殿の世界は4ヶ月で征服されたのだろう。
##…そ、それは!
前にも申し上げた通り、この者の妻が優れていただけです。##
純∶なら、遠市厘は。
我々の世界でも優れた妻を娶って…
すぐに天下を獲らせるだろうな。
##…その場合、今の妻はどうなりますか?##
純∶見えている景色を尋ねるのは愚かしいことだ。
##…異常よ、こんなの。##
純∶女の目にそう映ったのなら、遠市も捨てたものではないのかもな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「りーんこりん♥
おネイルのケアに参りましたッス!」
「大魔王様♥
御髪を整えますね♪」
「ニャンニャンニャン♥
(特に何か貢献する意図はない。)」
屑共が寄って来たという事は17時が近いという事か。
やれやれ、今日も過ぎ去るのが早い一日だったな。
『あのねえ、アナタ達。
おカネなら幾らでも分けてあげますけど、受け取った所で貯金の手段がないでしょうに。』
「でも!
カネや大麻が増える瞬間って脳が痺れるんス!!
いや!
確かに貰った所で保管場所がないんですけど!」
「福利厚生の一環としてアネモネちゃんに給料を払う手段を考えておいて下さいよ。」
「奈々ちゃんも奈々ちゃんも♥
恩師料金として100兆円欲しいニャ!!!」
ここに来て、俺の能力の欠点が見えて来た。
体制内に軸足を置いていない場合、噴出したキャッシュの処理に悩む。
異世界の時は良かった。
ソドムタウンの官僚達とのパイプが早々に作れていたからな。
カネの使い道なんて彼らが勝手に色々考えてくれたし、俺の能力に合わせた法案を通してくれた。
その点日本はなぁ。
先にヒルダが抑えちゃったからなぁ。
霞ヶ関と連携しようとすると、絶対あの女が出て来るだろうからなぁ。
##大魔王、後5分しかないわ。
クルーに通達しなさい。##
エルデフリダの指摘もあったので、300㌔強の荷重が増える事を萩森に伝える。
「大丈夫大丈夫。
5㌧船だから!」
…参ったな、上限500億か。
やっぱり海に捨てるべきじゃないか?
俺としてはたかが数百億の為に機動性を犠牲にして欲しくないのだが、人心の離反が怖いので口には出せない。
《30億7395万円の配当が支払われました。》
増加重量300㌔。
船は少しだけ揺れたが、すぐに安定する。
これだけの重量になって来ると、もう水運に切り替えた方がいいかもな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【所持金】
102億4648万円
↓
133億2043万円
※配当30億7395万円を取得
※大麻1キロを取得
※怪しげな人民元札と怪しげな豪ドル札は廃棄。
※軽トラは合体魔法ダークフレイムで処分。
大麻3キロ
↓
大麻4キロ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺はデッキに敷かれたブルーシートに寝転がって星を眺める。
少し肌寒かったので、光戦士のくれた毛布がありがたい。
「ねえ、リン兄ちゃん。」
『んー?』
「兄ちゃんは結局何がしたいのだ?」
『為すべき事を為しているだけですよ。』
「それが今の経済テロなのだ?」
隣に寝転ぶ光戦士は無言でニュース画面を見せてくる。
世界的な全面安が順調に続いているな。
唯一暴騰しているのがGold。
24金相場がグラム4万5千円台を突破した。
そりゃあ、そうだろう。
逃げ場を失った投資資金が殺到しているのだから。
『私は皆が平等に幸せになる社会を作りたいだけですよ。』
「平等な不幸なら簡単なんすけどねー。」
そんな遣り取りをしてから思わず2人で噴き出してしまう。
不謹慎である事は重々承知の上だが、世界の混迷は台風警報みたいでやはり楽しい。
アテネ、モスクワ、アムステルダム、ウランバートル、オタワ、カイロ、シドニー、ケープタウン、ロサンゼルス、上海、ソウル、ナイロビ、パリ、ブエノスアイレス、ベルリン、メキシコシティ、リオデジャネイロ、ローマ、ロンドン。
全ての街で大規模な暴動と略奪が発生し、派手に火の手が上がっていた。
デモの参加者は転がっている死体も含めてみんな楽しそうだった。
喜べ諸君。
俺がもっと楽しませてやるからな。
【名前】
遠市・コリンズ・エルデフリダ・リン子・厘
【ステータス】
※全基礎パラメーターに1.75倍のバフが掛かっているが、元数値が低すぎて効果を体感出来ず。
《LV》 30
《HP》 ドーピングタンポポにて回復
《MP》 ドーピングタンポポにて回復
《力》 最弱 (1.75倍)
《速度》 鈍臭ギリ健アスペ低運動性IQ野郎
《器用》 どんくさ (1.75倍)
《魔力》 微弱 (1.75倍)
《知性》 ド低能 (1.75倍)
《精神》 病 (1.75倍)
《幸運》 金運宇宙最強/女難の相 (1.75倍)
《経験》 91億5852万6841
本日取得 0
本日利息 21億1350万6194
次のレベルまでの必要経験値15億7889万1399
※レベル31到達まで合計ポイント107億3741万8240
【スキル】
「複利」
※日利30%
下4桁切り上げ
【所持金】
所持金133億2043万円
1億8342万BTC (下4桁切り上げ)
↓
2億3845万BTC
7823万XRP (下4桁切り上げ)
↓
1億0208万XRP
7823万SOL (下4桁切り上げ)
↓
1億0208万万SOL
☆保有大麻4㌔
【残り寿命】
1億9989万8500日 (下4桁切り上げ)
↓
2億5986万8500日
【約束/エルデフリダ】
コレット・コリンズ 「ヒルダ討伐を邪魔しない。」
ヒルダ・コリンズ 「コレット討伐を邪魔しない」
× ハロルド・キーン 「義絶届にサインしておくように。」
× ドナルド・キーン 「離婚届にサインしておくように。」
クレア・V・ドライン 「所領監査に応じる」
金本光戦士 「王朝存続の暁にはヒルダを連れて異世界に帰還すること」
ウラジミール7世 「全時空永遠帝国の建国を託す!!」
レニー・A 「四天王権限でエミリー共々減刑申請する。」
〇ポール・ポールソン 「君のことはボクがずっと守ってあげりゅ!」
【約束/リン子】
上甲小夜 「離島支援の為の補正予算を獲得する。」
松村奈々 「大麻解禁法案への不干渉。」
萩森一誠 「明日のナージャの続編制作に出資する。」