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【降臨105日目】 所持金78億8190万円 「オマエの帆先であの月を斬れ!」

深夜の佐田岬南岸。

俺達のヨットは全ての灯火を消して息を潜めていた。



「ねぇ、りんこりん。

ひょっとして、アタシら追い詰められてないっスか?」



『まだ、そう決まった訳じゃないですぅ!』



海保の巡視船が過ぎ去ってから、レニーが退屈そうに呟いた。

山育ちのこの女にとって船旅は相当なストレスらしく、ラムを片手にソファに深く身体を沈めている。



『兎に角、やり過ごせば私達の勝ちなんですぅ。

皆と合流さえすれば、四国を拠点化して西国全域を抑えることすら可能なんですぅ!』



アネモネが白けたように、小牧は気まずそうに俺を見ている。

仕方あるまい。

拠点化も何も、俺達は四国に上陸することすら出来ずに夜の海を彷徨っているのだから。

豊後灘から伊予灘に抜けたいのだが、監視網があまりに厳重で佐田岬を越えることが出来ずにいる。

眼前には海を埋め尽くすような海上保安庁の巡視船。

まだ発見されていないのが不思議なくらいだった。



『小牧さん。

海上保安庁って、こんなに船を持ってたんですね。』



「猊下。

これは恐らく緊急シフトです。

本来、対馬海峡や種子島周辺を哨戒している筈の部隊が、ここに展開しているとしか考えられません。」



「まるで犯罪者でも捜しているみたいだニャ。」


*松村が入牢の腹いせに海保に信号を送ろうとしたので船室に収容した。



『ホントホント。

物騒な世の中ですねぇ。』



「悪い事してる奴ほど自覚がないのだ…」



「おい、言われてるニャガよトイチ。」



『先生、言われてますよ。』



「オマエら、少しは当事者意識と罪悪感を持てなのだ。」



小牧曰く、通常は海保が1つの海域に集中することなどない。

敵国の工作船が発見されたか、余程の重犯罪者が海路を逃げているかしない限り…



##ねぇ、大魔王。##



『なんですか、エルデフリダさん。』



##アナタ、もう詰んでるんじゃなくて?##



『つつつ、詰んでなーい!

私は最強の大魔王なんですぅ!

負けるなんてありえないんですぅ!』



##あ、うん。

アナタのそのスキルさえあれば、普通はどんな馬鹿でも順当勝ち出来る筈なのだけどね。

逆にここまで駄目だと感心するわ。##



『まままま、まだ駄目と決まった訳ではないですぅ!

東京にさえ! 東京にさえ凱旋出来れば後は遠市劇場の開幕なんですぅ!!』



##まあ、確かにアナタのスキルは都市生活と相性良いと思うけどね。

でも、実際問題。

首都凱旋どころか四国にすら取り付けてない訳じゃない?

アナタ、無能なんだからもう諦めたら?##



『むむむむむ、無能ちゃうわっ!』



##自己評価は勝手にすれば良いのではなくて?##



『ぐぬぬぬぬ!!

王都脱出キャラバンはあんなに上手く行ったのにぃ!』



##あ、うん。

資料を見る限り、あれはヒルダやドナルドのお陰だから。

自分の手柄みたいに言うのやめなさいね。##



『ぐぬぬぬぬ!

私だってぇッ! 頑張ったぁッ!』



##へぇ、じゃあアナタは何をしたの?

聞かせてよ。##



『お、おカネを払ったり!

おとなしくしてたり!

後、皆の指示をちゃんと守りました!』



##ふーん、あっそ。

じゃあ地球でもそうすればいいのではなくて?

おとなしく皆の指示通りに出資してれば、全部上手くいくはずよ?##



『うるさいうるさいうるさーーい!!

私には私の構想があるんですぅ!!』



##ふーん。

せめて四国に上陸する構想が思い浮かべば良いわね。

まあ凱旋出来たとしても、全地球人から憎悪されてる今、何かをなしとげられるとは思わないけど。

アナタがサトシ・ナカモトだと知られれば凌遅刑では済まないでしょうね。

それと日経平均が1900円台に突入したらしいから、後で弁償しておきなさいね。##



『ぐぬぬ!

愚かなる地球人共め、一々手間を掛けやがってですぅ!

はいはい、わかりましたよ!

弁償すればいいんでしょ、弁償すれば!

地球にも10垓払ってやるから、ゴチャゴチャ言うなですぅ!!』



##…暗君。##



『キーキーキー!! 

ギャオーーーーン!!』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



それにしても参ったな。

海保がずーっとサーチライトを回しているせいで、身動きが取れなくなった。


宇和島港と八幡浜港はパトライトが回り続けているので、怖くて近寄ることすら出来ない。

強引に佐田岬を高速旋回して伊予灘に突入を図る案も出たが、巡視船が交代で岬の先端を遊弋しているので断念した。

思い悩んでいるうちに雨がパラつき、すぐに海が荒れだす。



『福田さん、また嵐が来るんでしょうか?』



「あー、小型の熱帯低気圧ばい。

マズいな、かなり強くなっちょる。

ピンポイントに、この辺に…」



ガツーーーーンッ!!



『キャッ!』



「ニャガー!」



「のだー!」



船内に走った衝撃に俺たちは船室を転がる。

聞けば機関部が岩礁に接触してしまったとのこと。



「Oh!

今のでエンジンが破損したのかも知れない。

動力が…

クッ!」



さっきまで飄々としていたジョーンズ氏の額に冷や汗が浮かぶ。



##Mr.ジョーンズ。

異変ですの!?##



「エンジンが壊れたかも知れない…」



ケイト夫人が素早く戸棚からマニュアルのようなものを取り出してジョーンズ氏に見せる。

夫妻の表情が曇っているということは、あまり好ましくない状況なのだろう。



「…嵐さえ、この嵐さえなければヨットモードで難を逃れるのですが!

マズい!

岸壁に引き寄せられてる!!

このままでは転覆しまーーす!!!

くっ、救命胴衣は3着しかないのに!!」



そのジョーンズ氏の台詞を聞いた瞬間、3つの影が非常箱に躍りかかった。



  「レニーちゃん救命胴衣確保ッス!」



  「アネモネちゃんも救命胴衣ゲットです♪」



  「この救命胴衣は頂いたニャw」



…くッ、この屑共め。

保身に関してだけは神速だな。



「福田さんが怪我をしている!

せめて彼に胴衣を譲って下さい!」



ジョーンズ氏が駄目元で訴えるも、屑共はニヤニヤ笑うだけである。



  「オヒョヒョ♪」



  「ウェヒヒ♪」



  「ニャガガ♪」



いや、コイツらに仏心を期待する方が間違ってるんだけどさ。



「うわああ、マズいのだ!

な、流されてる!

このままじゃ、岸壁にぶつかるのだ!」



##Mr.ジョーンズ!

もう少し沖に出れませんの!?##



「しゅっ、出力が上がらないっ!」



「うおっ、転覆するばい!!」



  「救命胴衣確保してて良かったっス♪

  さぁ、アタシだけ助かるとしますか♪」



  「アネモネちゃんはセーフ♪

  胴衣の無い人ご愁傷様でーす♪」



  「自分だけ生き残るのは気持ちいいニャ♪

  おい虫ケラ共wwww

  1秒1億円で掴まる権利を売ってやるニャww」



「う、うわああああ!!

もう崖が目の前に迫ってるのだぁあ!!

も、もう終わりなのだぁあ!!」



『莫迦野郎ッ!!

男が泣き言言ってんじゃねぇ!!』



「え!?

リ、リン兄ちゃん?」



『野郎共ッ!!

甲板に上がるぞッ!!』



「…は、はいなのだ!」



『帆があるじゃねぇか!

今すぐ張るぞ!!』



「む、無理だよ!

この嵐の中で…

自殺行為だ!」



『ふっ。


いいか、聞け野郎共ッ!!

誰かの決めた(ことわりに殺されたいなら黙って死ね!!

でもなぁ!!

テメェらも男なら、己の最期は己で決めろッ!』



「に、兄ちゃん。」



「げ、猊下…」



「と、トイチ…」



「Yes.Boss…」



『オラァ!!

ここで死ぬのが満足なら隅でメソメソ念仏でも唱えてやがれッ!!

己の男を証明したい奴は俺と一緒にこの綱を取れッ!!

船体を廻すぞッ!!』



「「「「オオオオオッ!!!」」」



『全体重を綱に落として右に抉れぇええッ!!』



「「「「ウオオオオオオオッ!!」」」」



『もっとだッ!!

魂魄全てここで吐き出して行けッ!!

オマエの帆先であの月を斬れーーッ!!』



「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーッ!!」」」」



ギシッ、ギシギシギシギシッ!!



ブワッァアアアアッ!!



ゴーーーーーッ!!



スーーーーーッ!!



「ハァハァ!

た、助かったのだ?」



「Oh.信じられない。

あの体勢から人力で旋回するなんて…」



「あ、ありえんばい。」



「猊下、まさしく奇跡ですよこれは。」



『奇跡?

それは違うぞ。

紛れもないテメーらの手柄だ!

よくやったな野郎共ッ!!』



「「「「ウオオオオオッ!!」」」」



『さあ、嵐も収まり掛けて来た!

すぐに半帆に戻すぞッ!!』



「「「「はいッ!!」」」」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「いやあ、それにしてもさっきの指揮は凄かったのだ!!

見直したのだリン兄ちゃん!!」



「猊下に着いて来て良かったです!!」



「great!!」



「トイチ、見直したばい!」



『?

といち?』



「え?

リン兄ちゃん… だよね?」



『?

りん?』



「え?

ひょっとしてエルデフリダなのだ?」



##あー、ごめんなさい。

ちょっとワタクシから事情を説明させて。##



「あ、こっちはエルデフリダなのだ!」



##ワタクシ、あのままでは船が転覆して全員が危ういと判断しましたの。##



「お、おう。

それで帆を張ってくれたんすね?」



##舟遊びに興じた事はあったけど、自分で動かした事は無かったわ。

それで、この海域に1番詳しくて操船経験が豊富であろう人物を召喚して、大魔王の肉体に憑依させたの。##



「え? え? え?

何を言ってるのか分からないのだ。」



##分からないのは仕方ないわ。

これは召喚魔法の中でも禁術中の禁術。

アチェコフの秘伝なのだから…##



「え? ひょっとして何かヤバい事をした?」



##ここから先は本人に説明を任せた方がいいわね。

召喚早々申し訳ありませんが、お願いします。##



?:…釈然としないが、我自身の情報整理も兼ねて語らせて貰う。



「う、うわああ!!

いつの間にかリン兄ちゃんの後ろに背後霊みたいなのが浮かんでるのだ!!」



?:なるほど、その反応から察するに今の我は魍魎に堕しているということだな。



##坊や、彼は命の恩人よ。

無礼な態度を取っては駄目。##



「た、確かに。

すみませんでしたなのだ。 (ペコリ)」



?:いや、苦しゅうない。

立場が逆なら我も驚いていただろう。



「い、意外に話が通じる幽霊なのだ?」



?:自己紹介の前に、まず礼を述べさせてくれ。

先程は我の拙い指示に従ってくれて助かった。

オマエ達の勇気と奮闘に感謝する。(ペコリ)



「あ、いえ。

ボク達は指示に従っただけなのだ。

あの、貴方は?」



?:伊予掾 藤原純友である。

よしなに。



「え!? え!? え!?」



##帝国が密かに研究していたのよ。

地元の英霊を召喚して支援させる秘術を。

術者の基礎パラメーターに大幅なバフを掛ける効果もあるわ。

全項目が1.75倍になる驚異の魔術よ!

新兵でも歴戦の勇者になれるハイパーチート!

…大魔王が弱すぎて、一切強化の実感がないけど。

ゼロを何倍してもゼロだからね。



『余計なお世話ですぅ!』



「え? ちょ? え? ちょ?

何言ってんだテメー。」



純:落ち着け寵童。

男子たるもの、みだりに取り乱してはならぬ。



「あ、はい。

すみませんなのだ。」



##説明を続けるわね。

この術式はお祖父様…

かつてウラジミール7世という魔術偏重の皇帝が巨額の資金を投入して完成させた術式なの。

危険過ぎて封印されたけど。##



「そんなに危険な術なのだ?」



##だってそうでしよ?

英雄の魂を勝手に呼び出して使役しているなんて知られたら、その子孫や崇拝者はどう思う?##



「そ、そりゃあいい気はしないのだ。」



##お祖父様はこの術を使って合衆国から領土を奪う事に成功したのだけれど、英雄・キホーテの霊魂を使役したことを地元民に知られてしまったの##



「分かるものなのだ?」



##何人かの捕虜がお祖父様の背後にキホーテの霊魂が浮かんでいるのを目撃したのよ。

肖像画そっくりの霊魂だったらしいわ。

それで、彼らが命懸けで脱走して合衆国中に広めたの。

騎士キホーテと言えば合衆国人全員から崇敬される英雄だからね。

恐ろしい反発を受けたと聞くわ。

キホーテの子孫も怒り狂って蜂起したらしいし。##



「そりゃあ、敵が御先祖様を利用してたら許せないのだ。」



##それで反帝国義勇兵が物凄く集まって…

こちらとしても返還交渉に応じざるを得なくなったわ。

お祖父様が帝位を追われた切っ掛けね。

だから使い所が難しい術なのよ。

特に敵地でこの術を使った場合、確実に敵国の英雄が召喚されてしまうからね。

政治的なデメリットが大き過ぎるわ。##



純:安心せよ。

我は大逆人である。

使役した所で反発はあるまい。



##いいえ、純友卿。

反発はあると考えます。

だってワタクシ、この世界の人間ではありませんの。##



純:うむ?

唐天竺からでも参ったか?



##いえ、天の果てから霊魂のみでやって参りましたの。

そんなワタクシが日本文明圏の歴史的著名人を勝手に呼び出したなどと知られれば、必ずや住民感情を刺激しますわ。##



純:ふーむ。

まあ、それなら反発はあるやも知れんな。



「えっと、純友さんに消えて貰う事は不可能なのだ?」



純:うわぁ…

勝手に呼び出されて助けてやったのに、用済み処分されるとは…

海賊にもそんな酷い奴はおらんぞ?



「あ、いや!

そういうニュアンスではなく!

姿だけを透明化するとか出来ないのだ?」



純:そんな手妻を使えるなら太宰府だけでなく、京も陥落させておっただろうな。



「あ、なれないんすね。」



##そういう訳だから、当面の間は純友卿には大魔王の背後に浮いていて貰うわ。##



「あの、リン兄ちゃんは日本中から追い回されてて、目立ったらアウトだと思うんすけど、それは…」



##日本中?

地球中からの間違いでなくて?##



「まあ、何かの拍子に兄ちゃんの正体がサトシ・ナカモトだと知られたら…」



##楽には殺して貰えないでしょうね。##



純:やれやれ逃亡の果ての死から目覚めたと思ったら、オマエ達も逃亡者か…

因果とはよく言ったものだ。



「純友さんも逃げてたんすか?」



純:逃げ回って最後は日振で腹心に斬られた。

あの瞬間は恨んだが…

今思えば、我などに長年同心してくれたものだと感心するな。



##純友卿に召喚術・英霊憑依の法則を説明致しますわね。

今、発動している術式はワタクシと連動しております。

なので、本国にあるワタクシの本体が死亡すれば、術式は消滅します。

また、御身がこの時代に満足・納得をすれば自動的に解除されますわ。##



純:理不尽に呼びつけられて、納得しろと言うのは無理筋ではあるまいか?



##仰る通りです。

それも禁術に指定された理由ですので。##



純:あのなぁ。

禁止事項を破るなよ。



##返す言葉も御座いません。##



「あ、あの。

ボクも解説動画を作った事はあるんすけど、そこまで純友さんのこと知らなくて…

良かったら掘り下げた自己紹介を伺わせて頂きますかなのだ?」



純:おいおい。

身勝手な言い分だな。

まずは我に状況を説明する方が先だろう?

そもそも、オマエ達は何者だ?

まずはそちらから名乗れよ。



「ご、ごめんなさいなのだ!

ボクの名前は光戦士(ずんだもん)

純友さんが死んでから1000年以上後の人間なのだ。」



純:千年と来たか…

流石に想定外だな。

京は栄えておるか?



「財政赤字で苦しんでいるのだ。

人件費の圧迫とか、宗教法人への非課税とか…」



純:相変わらず進歩しない奴らだ。

そっちの派手な刺青。

オマエは九州あたりの者か?



「御賢察恐れ入りました。

肥後の福田魁と申します。」



純:先程の働き見事であった。

負傷を物ともしない力強い動き!

船隊を任せ得る益荒男振りよ。



「終生の誉れと致します。」



純:そして、お主。

噂に聞く胡人か?

安禄山は奇怪な目玉をしていたと伝わっておるが。



「胡人と長く和戦を続けているアーリア種です。

名はジョーンズ。

日本から見て遥か西に住んでおりましたが、高祖父の代に罪を犯し日本の遥か南に流れつきました。」



純:やれやれ、海は罪人の溜まり場だな。

そして、さっきから我の死角に隠れ続けているオマエ。

大方、検非違使庁の密偵であろう。

名を名乗れ。



「申し訳御座いませんでした。

内閣国際連絡局の職員、小牧晃と申します。

最近まで防諜任務に従事しておりましたが、部署が解体された為、独自に義勇活動を行っております。」



純:よく聞く話だ。

ところで小牧よ。

オマエのような者の末路を知っているか?



「…やはり、あまり良くない終わりを迎えるのでしょうか?」



純:少なくとも我はそうだった。

宜しくな、後輩。



「はッ!」



純:そしてこの男?女?

これがエルデフリダ殿か?



##申し訳御座いません。

ワタクシは、この者の肉体に間借りしてあるだけの者です。

名はエルデフリダ・アチェコフ・チェルネンコ。

この状況では証明の術もありませんが、天の果てで元首の補佐役を務めております。##



純:いや、それはわかるよ。

さぞかし政治的な場数は踏んでいるのだろうな。


で?

肝心の…



##大魔王、出てきなさい。##



『はぁい。

どうも、大魔王の遠市厘ですぅ。

さっきは助かりましたぁ。』



純:…そうか。

まず、君は男?女?



『えっとえっと、多分男だと思いますぅ。』



純:…そうか。

自分の性別くらいは、ちゃんと把握しような。



『あ、はい。

ゴメンナサイですぅ。』



純:で?

頭目の遠市君に事情を説明して貰おうか。



『あ、はい。』



俺も大抵の事では驚かないつもりだったが、まさかこの令和の世で1000年前の海賊と対峙させられる事までは想定していなかった。

古風な甲冑を纏った純友公はかなり威圧感があって怖かったが、光戦士と共にざっくりとこれまでの経緯を説明する。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【これまでの異世界複利】


ある日突然、異世界に呼び出された俺こと遠市厘は所持金に日利が適用される能力を得て、4ヶ月で異世界を制圧する。

そして次は地球人民を解放すべく俺は帰還した。

以上。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



純:え!?

毎日資産が3割弱増える能力!?



『あ、はい。』



純:そんなものは無敵ではないか。

唐土の天子をも凌駕する理不尽。

いや、もう勝ったも同然であろう。



『えへへー。

無敵でーす、ぶい♪』



純:いや、そんな無敵能力を持ってる癖に…

何故漂流してるのか、と言う話をしているのだが?



『…。』



純:と言うか、さっき賞金首と聞いたのだが…

オマエ、もう限界まで追い詰められてないか?

我でも斬られる寸前まで自前の艦隊と多数の島嶼を支配していたぞ?



『あ、いや。

追い詰められていると決まった訳では…』



純:えっと…

そんな超常的な異能を持ってるのに、四国にすら取り付けてないって…

無能過ぎないか?



『むむむむ、無能ちゃうわ!!!』



しきりに首を捻る純友だったが、俺達が操船指南を頼むと案外快く引き受けてくれた。

特に報酬をねだる様子もない。



純:いや、礼には及ばぬ。

元々はこの海域の航路整理も我の職掌の範疇だからな。

それにしても、佐田の岬は変わらぬな。

1000年も経ったのだから、伊方辺りに運河の一つでも掘れよなぁ…



ぶつぶつ文句を言いながらも闇夜の中で海保巡視船の進行方向を正確に言い当て、海流の読み方を教えてくれる。



「さ、流石なのだ!!

1000年のブランクを感じないのだ!!」



純:それも我の仕事だったからな。

よし、ではあの船が島陰に入ったら、こちらも帆を張るぞ。

岬の先端までは進めるだろう。



「わ、わかったのだ!

早速ボクも甲板に戻るのだ!!」



純友の指示に従い、皆で甲板に上がる。

巡視艇の遊弋タイミングさえ読めば、佐田岬を越えて伊予灘に入ることが出来るとのこと。



純:よし!

官船が去った!

急いで帆を張るぞ!!



  「ちょっと待つニャガー!!」



  「ふっふっふ。

  可愛いアネモネちゃんを忘れてますよ?」



  「りんこりーん。

  仲間を見捨てないっスよね?」



見れば、救命胴衣を着た3人がプカプカとヨットから離れた場所で浮いている。

転覆を見越して海に飛び込んだはいいが、海流の関係で陸に近づけないまま、一カ所で洗濯機のようにグルグル回っていたらしい。



純:アレは?



「さあ、知らない人のだ。

そんなことより純友さん。

早く行こうなのだ。」



  「ニャビーーーン(号泣)

  奈々ちゃんも船に乗せてーーー(号泣)

  せめてその浮き輪を投げてーーー(号泣)」



「…じゃあ1秒10億で触らせてやるのだ。」



  「ニャガ――――ッシュ(号泣)」



純:うーーーーん、末法の世だなー。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ハアハア!

流石のアタシも死ぬかと思ったっス!!」



純:コレは?



##ワタクシ達の世界の犯罪者です。

懲役25年で服役中。##



純:あまり厳しい事を言いたくないが、囚人はちゃんと管理してね?



##誠に申し訳御座いません。##



「ハアハア!!

可愛い可愛いアネモネちゃんが捻り死ぬ所でした!」



純:コレは?



##ワタクシ達の世界の犯罪種族です。

麻薬の密売で有名なダークエルフという嫌われ者です。##



純:あまり厳しい事を言いたくないが、問題部族はちゃんと管理してね?



##誠に申し訳御座いません。##



「ハアハア!!

謝罪と補償を要求するニャガ!!」



純:コレは?



##地球側の犯罪者です。

誓って我々の世界とは関係御座いません。##



純:疑う訳ではないが…

日ノ本にこんな耳をした人間は居らぬぞ?

本当はエルデフリダ卿の世界のモノノケではないのか?



##いえ!!!

本当に!! 誓って無関係なのです!!##



純:うーーーん。

この時代の日ノ本には、こんな猫又まで棲みついているのか…

世も末だなーーー。

あー、成仏したかった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



##さて、と。

ここらでワタクシ達の利害が分岐する訳ね。##



「残念ながらそうなるのだ。」



##ワタクシの希望は大魔王をヒルダ・コリンズに回収させること。

それが一番丸く収まる道だと思うのだけれど、賛成はしてくれないのね?##



「リン兄ちゃんがここまで露骨に嫌がっている以上、素直には従えないのだ。」



##ヒルダの指示に従えば、大魔王の本懐は一瞬で達成されるとおもうのだけどね。

まあ、男の人は女の力を借りる事を異常に嫌うものだし、こんなものかしら。

王国女は束縛が激しすぎるから殿方が辟易するのよねー。##



「独占欲の強い女の人とは聞いているのだ。」



##でもね、坊や。

記憶を覗いたけれど、ヒルダは相当良い暮らしをしているみたいじゃない?

そんなに大魔王が大事なら虎ノ門のタワマンとやらに住ませてやるのが忠義だと思わない?##



「思わないのだ。

この人はコソコソフラフラしている時が一番幸せそうなのだ。」



##そこは否定しないわ。

似た人をずっと見て来たからね。##



「…。」



##まあ、いいわ。

ワタクシは邪魔はしない。

でも、ヒルダの郎党と接触の機会があれば、強引にボディの操縦権を奪って出頭と言う形で引き渡すわよ。##



「リン兄ちゃん、聞いてるー?

兄ちゃんはどうしたいのだー?」



俺?

どうしたいんだろう?

胡桃亭以外の宿に泊まりたいだけの気もしなくもないけどな。



『わ、私は。

貧富の差のない世の中を作りたいだけなんですぅ。』



「論点ズレてるけど、そこがブレないのは偉いと思うっすよ。」



##この人、ワタクシ達の世界でもそれしか言ってなかったの。

それがきっと絶大な支持率の秘訣なのね。##



『純友さん!

私人類1人あたりに10億円ずつ配りたいんですよ。

でも、皆が邪魔をするんで何とかして下さい。』



純:え? 何で我に話を振るの?



『だって承平天慶の乱の本質ってそこじゃないですか?

そう思いません?』



純:いや、あれは我らの世代の問題であって、千年後のオマエらと語り合う気はないし。



『私なら乱という過程をすっ飛ばして分配という結果だけを残せるんですぅ!

全人類が永遠に幸福の絶頂で暮らせる時代が到来するんですぅ!』



純:ふーん。

我の目には真逆に見えるのだがな。

とりあえず、この画面を見るにオマエが起こした騒動は《世界超恐慌》と命名されたらしいな。



『それは産みの苦しみです!!』



##純友卿。

騙されてはなりませんわ。

その男は女の背中に隠れるしか能のない男です。

本国に居た時も実務は全て義母と妻に丸投げ。

実務能力は皆無ですのよ!!##



『ちょっと!

出鱈目言わないで下さいよ!!』



##本当のことでしょ!!##



『キーキーキー!!!』



##キーキーキー!!!##



純:うわぁ、紛うこと無き地獄絵図だなー。

なあ、光戦士君。

本当はここは地獄なのではないか?



「否定出来ないのが辛いところっすね。」



『ギャオオオオオ――――――ンッ!!!』



##ギャオオオオオ――――――ンッ!!!##



純:絵面が壮絶だなー。



「ちなみに、ボクの視界には純友さんも入ってるから更にショッキングな絵面なのだ。」



純:そうかー。

令和終わってるなー。

…我の時代より悪化してないか?



「ひ、否定出来ないのが辛いのだ。」



純:オマエラこの1000年、何をやってた訳?



「も、申し訳御座いませんのだ。」



純:いや、別に叱責している訳ではないのだがな…

もう少し建設的な人間関係を築いた方が良いと思うぞ?



『ギャオオオオオ――――――ンッ!!!』



##ギャオオオオオ――――――ンッ!!!##



「返す言葉も御座いませんなのだ。」



純:じゃあ、我は操船に関しては支援するけど。

後は知らんから。



「え? やっぱり不干渉なのだ?」



純:流石に1000年前の人間がしゃしゃり出るのはおかしいだろう?

我らで言えば、廟堂に日本武尊命が介入してくるようなものだからな。

まあ、《頑張れ若人》としか言いようがない。



「が、頑張るのだ。」



純:うむ。



「あ、あの!」



純:ん?



「具体的にはどう頑張ればいいと思うのだ?

枝豆的にはいっぱいいっぱいなんすよ。」



純:いやぁ、この少人数なのだから。

まずは全員の特技を棚卸した上で、採り得る手段を羅列するのが先決なのではないか?



「や、やってみるのだ!!!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『なるほど。

私達の特技を持ち寄って状況を打開する訳ですね。

じゃあ遠市厘から発表しますぅ。

私の特技は【複利】♪

お金を増やせちゃいます、えっへん!』



##エルデフリダよ。

ワタクシがこの状況で使えるのは一部の召喚術だけね。

これ以上は求めないでね。

本体が死に掛けてるから。##



「小牧です。

大した芸はありませんが、現在スミス&ウェッソンのシグマを所持しています。

20メートル以内なら確実に射殺可能ですが、猊下との合流までに2度の戦闘を行っているので残弾が3発しかありません。」



「福田魁。

人より力は強い方やが、このザマばい。

戦力としてはアテにならんやろ。

…各地のマリーナ事情はそこそこ詳しい。」



「テッド・ジョーンズです。

こちらは妻のケイト。

いやー、アメージングな体験に驚いてます。

今、Wikipediaで調べたのですが…

藤原純友卿、凄まじい海賊っぷりですね。

私の先祖よりエグいかもです。

ん? 特技?

うーーーん、この船も壊れてしまいましたしね。

こっそり銃やキャッシュを積んでいるくらいですよ?

え? 銃と言ってもルガーですよ?

役には立たないと思いますけど。」



「金本光戦士なのだ。

残念ながらボクはお子様枝豆。

大した役に立てるとも思えないのだ。

パパ上とママ上によって全ずんだもん動画を脳に刷り込まれているので、浅い雑学なら詳しい方なのだ。」



##これで全員よ。##



純:ふむ。



「ちょっと待つニャーー!!」



「仲間外れは酷いっス!!」



「アネモネちゃんを忘れてはいませんかー?」



純:…。



##じゃあ、この6人で状況を打開する方法を考えましょう。

ワタクシも四国への上陸と都市圏への移動までなら手伝うわ。##



純:まあ、このまま沖で浮いていても仕方ないからな。

もうすぐ夜も明ける。

まずは上陸点を決めるぞ?

我らの時代では、南から佐田を越えたら北岸の喜木津で補給と船体点検を行うのが通例だったのだが…



「やめた方がいいんすか?」



純:思ったより官船が多い。

我が軍が大宰府を陥した時より警戒が厳重なのではないか?

伊予灘の四国側には島嶼がないからな。

佐田岬を越えたら官船から丸見えになるぞ?



「アタシ思ったんスけど、乗員を皆殺しにしてあっちの船に乗り換えませんか?」



「ふっふっふー♪

アネモネちゃんの暗黒魔法なら気付かれずに接近出来ますよー♪」



「それは名案だニャ!!

水も食料も全て頂きだニャ!!!」



純:コラコラ、海は公共財であるぞ。

海賊行為は許さん。



「「「へーい。」」」



「あ、後30分で日の出みたいなのだ。」



純∶マズいな。

この地形では沖から丸見えになってしまう。



「はいはーーい♪

アネモネちゃんが暗黒魔法使えまーす♪

この船のサイズでも丸ごと闇に包めまーす♪

褒めて褒めて、ウェヒヒヒヒ―♥」



「却下なのだ。」



「何故ーーー!!!」



「福田さんから聞いているのだ。

暗黒魔法は監視衛星から見て相当不自然に映るって。

ナカモト疑惑が掛けられているわー国が、これ以上国際社会からの不信感を招く訳には行かないのだ。」



「ちぇっ、つまんなーい。」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



結局、消去法で安全策を取って佐田岬の先端に上陸する羽目になる。

ヨットは純友が1000年前に使用していた鹵獲船隠蔽用の沿岸海淵に沈めた。



純∶いやあ、懐かしいなぁ。

沈めた沈めた。

この辺に証拠を全部沈めた。



「ジョーンズさん、すみませんなのだ。

かなり高価なヨットなのに。」



「またまたー、わかってる癖にー♪

こっちの方が得だからそうしたに決まってるじゃないですか。

一応、沖で転覆して泳ぎ着いたことにしますので、口裏は合わせて下さいね?」



「了解なのだ。」



「本当はプサン沖で韓国の反社チームに紙幣を買い取って貰うつもりだったんです。

やっぱり表に出せないキャッシュってありますからね♪ (ウインクパチ)」



『あー、それ繭子さんの知り合いですね。

韓国にそういうヤバい紙幣買取グループがあるって聞いたことあります。』



「え?

ホントに?

コネがあるんなら紹介して下さいよ。

マユコさんって、Japanese? Korean?」



『日本人です。

児玉繭子って言うんですけど。』



「Oh!!

コダマ!?

シューホー・コダマ!?」



『あ、はい。

児玉秀峰さんの奥さんです。』



「Oh…

その悪名はかねがね…

JapaneseYAKUZAの中でも一番悪い人。

そんなコネがあるなんで、リンはとんでもない悪党ですね…」



どうやら繭子の夫の児玉秀峰というのは、悪い意味での有名人だったらしい。

俺が会った時は物静かで親切な初老男に見えたのだが…

《性根が残忍な上に語学に堪能》というのが裏社会での彼の評判とのこと。

それ、地味に怖ぇな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ヨットを見送った後、皆で荷物を持って佐田岬の先端に上陸。

消去法なので仕方ないが、どんどん社会から遠ざかっている気もする。



「おい、トイチ。

その荷物重いだろ?

奈々ちゃんが代わりに持ってやるニャガよ。」



『間に合ってますぅ。

うんしょうんしょ!』



「まあまあ、そう言わずに。

カネを代わりに持ってやるから。」



『先生はそのまま福田さんを運んで下さい。』



「ニャガーン (号泣)!!

コイツ重いから嫌いー!!」



「すまんな。

ちなみに120キロの俺を運べる松村は凄いと思うぞ。」



「おい福田!

少しは奈々ちゃんを見直したか!」



「あ、うん。

危険だから一刻でも早く殺処分するべきだと思った。」



「ニャガラーッシュ(憤慨)!!」



『んしょ、んしよ。』



「それにしてもトイチは意外に体力あるニャ。

今の金額だと100キロ越えてるニャろ?」



##騙されちゃ駄目よ。

背負ってるのはワタクシと純友卿だから。##



「ニャ!?」



『んしょ、んしよ。』



##この男はただ掛け声を掛けて、働いてるように装ってるだけ。##



『んしょ、んしよ♪』



「お、おう。

昔はもう少しマシな奴だった気もするけど…

闇深いニャー。」



純∶ふーむ、ここは?



「砲台跡なのだ。

太平洋戦争の頃に作ったけど、建造年度に敗戦したから使われなかったのだ。」



純∶あー、懐かしい。

我もここに見張り台置いたなー。

佐田の先端抑えると、一方的に視界を確保出来るからな。

随分重宝したわー。



「純友さん、現代四国のご感想はどうなのだ?」



純∶何か妙に寂れてない?



「四国は高齢化で人口が減る一方なのだ。」



純∶四国は立地がね。

殆ど山だから、産業が育たないんだわ。



「あー、それ讃岐や土佐の人も言ってたのだ。」



純∶土佐はどうなってた?



「みんなお酒ばっかり飲んでたのだ。」



純∶進歩のない連中だなー。



「でも楽しそうだったっすよ」



純∶そうか。

まあ、アイツららしいな。



『うんしょ♪ うんしょ♪』



「…あの、やっぱりリン兄ちゃんは荷物持ってるフリだけなのだ?」



純∶ああ、今のところ荷重はエルデフリダ卿と我が分担してるな。



『うんしょ♥ うんしょ♥』



「スミマセンなのだ。

多分リン兄ちゃんに悪気はないのだ。」



純∶我の時代には居なかった種類の邪悪だなー。



「ニャガー♪

ニャガニャガするなら今のうち♪

ニャガニャガポン♪

ニャガニャガポン♪」



「平安時代にこういうタイプの邪悪は居たんすか?」



純∶こんなの居てたまるか。

いや、噂にはなってたんだぞ。

丹波の辺りで、猫又が出るとは話題になってなー。

丁度その頃、将門君と飲んでてな。

討伐令が下ったら、一緒に討伐隊に志願しようとは話してたんだよ。



「へー、そこで将門さんと繋がるんすね。」



純∶ただ、その後すぐに彼が暴発したからなー。

猫又の話も今の今まで忘れてたわ。

将門君、ちゃんと成仏出来たかなー。



「今でも勝手に周りで工事するとタタリがあるそうです。」



純∶へー、相変わらず沸点の分かりにくい奴だなー。

普段話してる分には周りが恐縮するくらいに腰の低い男なんだけどなー。



そんな話をしているうちに、砲台跡に辿り着いたので、皆で大砲を囲んで小休止。

うんしょ♪



純∶ここは?

軍事施設?



「Wikiには豊予砲台って書いてるっすね。

あー、敗戦の年に建造されたのだ。」



純∶懐かしいなぁ。

我らもここに哨戒櫓を組んだわ。

皆、考える事は同じだなー。



「福田さんの容体がかなり悪いのだ。

この砲台で小休止したいのだ。」



純∶ふむ。

では斥候を飛ばしている間に手当てをせよ。



「…斥候っすか。」



「おい、金本弟♥ (ニヤニヤ)

優しい優しい恩師様が偵察任務を引き受けてやるニャ♪ (ニヤニヤ)」



「却下なのだ。」



「ニャガビーン!

何故!?」



「オマエ、カネを盗んで逃げた上で、ボクらの居場所を売るつもりなのだ。」



「えーーー!?

どうしてバレたニャーーー!?」



「寧ろ見抜かれてないと思う神経が怖いのだ。」



「光戦士君、私が付近を探索して来よう。

君は福田さんの容体を見ていてくれ。」



「了解なのだ。


レニー姉ちゃん、傷を治す魔法なんて使えなっすよね?」



「え?

治癒魔法みたいな地味スキルは覚えようとも思わないっスね。

火炎魔法なら幾らでも撃ってやるっスよ(笑)

ドガーン♪ ズガーン♪」



「アネモネ姉ちゃんは治療とか…」



「あー、ゴメンねー。

アネモネちゃんは闇専門なの。

闇の事なら何でも気軽に相談してね。」



「なるべく品行方正に生きたいものなのだ。

エルデフリダは治療とか…?」



##本国では医療チームを召し抱えているわ。

ただ、ワタクシの本体が昏睡しているから他所にリソースは割かないと思うけど。##



「アンタ、死ぬのだ?」



##あのねぇ。

魂を分割されたら普通は即死なの。

召喚術に通暁しているワタクシだから何とかなっているのだけよ。

でも、このまま大魔王の肉体に魂を拘束されていれば、長くはないでしょうね。##



「…そっか。」



##ねぇ、大魔王。

エナドリの余りとか隠し持ってたりしない?

アナタ妙に血色が良いけど、こっそりエナドリ飲んでるんじゃないの?##



『隠してないですよ。

お肌のことはよく言われますけど、私も睡眠前の洗顔とか色々頑張ってるんですぅ。』



「エナドリって何なのだ?」



##ああ、大魔王は異世界でエリクサーという万能薬を密造量産して皆に配ってたのよ。

そういう人気取りが功を奏して、今でも大魔王の好感度は最高よ。##



『えっへんですぅ。』



「お、おう。

兄ちゃんって人気取りには手を抜かないっすね。

まぁ、金持ちの処世としてはそれが最善なのか…」



『こっちでも頑張りたいんですけどねぇ。』



##アナタが頑張った結果が世界超恐慌よ。

猛省なさい。##



『はーい。』



そんな話をしているうちに福田が再度吐血する。

本人は強がっているが、明らかに重症である。



『病院に行きましょう。』



「阿呆。

芋蔓式にトイチが捕まるぞ。」



そう言い捨てて福田は瞑目した。

どうやら体力の温存に努め始めたらしい。



純∶福田はオマエの親類か?

随分と絆が深いようだが。



『あ、いえ。

友人の父親の友人です。

先々月くらいに出逢ったばかりです。』



純∶そうか。

オマエはボンクラなりに資質があるのかも知れんな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



日が上がり、太陽が煌々と伊予灘を照らす。

海保の哨戒艇、視界に入っただけでも4隻。

10時になるとヘリが豊後の上空を旋回し始めた。

斥候から帰った小牧が人里の様子を教えてくれる。

盗めそうなハイエースを2台発見したそうだ。



「猊下。

地元民に接触してみませんか?」



『ふぇ?』



純∶官憲に通報されるぞ?

トイチは世界を破綻させている張本人なのだろう?



「普通なら、されます。

猊下なら、されません。」



純∶論拠は?



「このお方は人知を越えておられます。

しかも気前が良い上に可憐(オブラートに包んだ人物評)です。

対人接触なら、悪い目は出ないと断言出来ます。」



『えー、可憐なんてとんでもない♪

私なんかまだまだですぅ♪』



純∶一理あるな。

そして福田程の猛者を消耗するのは余りに惜しい。



「では、猊下・純友公直ちにファーストコンタクトの策を練ります!」



小牧が策を練っている間、純友と俺は四国トークで盛り上がる。

首都が関西にあった頃の人なので、阿讃地域への評価が高い。



純∶そうかー。

坂東に都をなぁ。

あの辺は耕作に向かないだろう。

干拓にはどれくらいの年月が掛かったのだ?



『えっとえっと。

ちょつと分からないですねぇ。』



純∶おいおい。

自分の国の成り立ちくらいは理解しておけよ。



『ごめんなさいですぅ。

社会に詳しい人が居れば説明係に任命するんですけど。』



「ニャ!?」



純∶うむ。

史書に精通し、出来ればそれを生業にしている者と話が出来れば助かるのだが。



「ニャッ♪  ニャガ(笑) ニャン♥  ニャッへん!」



『すみません。

私の観測範囲には居ないですぅ。』



純:そうか。

本職の教育家など居れば話が早かったのだが。



「ニャンニャンニャニャーン♪

シャカイカキョーシ♥ シャカイカキョーシ♥」



『あ! 1人居ました!

それも私達の仲間に!!』



「トイチーーーーーーーーッ♥」



『社会と歴史に通暁し、その叡智を広く伝える皆の恩師が私の仲間に居るんですぅ。』



「任せろニャーーーーーーッ♥」



純∶ほぅ。

流石に手駒を揃えているようだな。



「そんなに褒められると照れるニャ♥」



『それでは紹介しましょう!

私が尊敬し最も信頼する知の巨人!』



純∶おお!



「トイチーーーーッ♥

ちゅきちゅきニャンニャンッ!!」



『金本光戦士君です!』



「ニャガッ!?」



純:ふむ、この少年がかね?



『ええ、先程自己紹介でも言ってましたが、彼は雑学を解説する仕事に従事しているのです。

この年齢で収益もちゃんと上げてますよ。

私は彼を令和時代のエースとして認識しております。』



純:おお! 頼もしいな!



「いやあ、照れるのだ。」



「えっと、えっと…

奈々ちゃんは恩師で猫耳で教員免許ニャんだぞー!」



『光戦士君、純友さんに色々この時代に至るまでを解説してあげて。』



「引き受けたのだ!」



純:ふむ…

では、我の死後1000年のざっくりとした経緯を解説して欲しい。



「承知したっす。

じゃあ、まずはママ上に刷り込まれたずんだもん動画を海馬から取り出してっと。

それじゃあ第一話。

【ずんだもん解説 「平安時代の闇!承平天慶の乱とは何だったのか!」】

なのだー!!」



『ぱちぱちぱちー。』



純:ふうむ。

侮れんな



「ミーンミンミンミン。 

シャカイカキョーシ シャカイカキョーシ…」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



純友にとって光戦士の解説は相当分かり易かったらしく、何度も膝を打って感嘆していた。

ただ、平家政権の誕生辺りからは彼にとって不本意な展開の連続だったらしく、唇を噛んで無言で耐えていた。

鎌倉→室町→江戸→明治→現代。

この男にとっては不本意な歴史の連続だったらしい。

かろうじて瀬戸大橋の説明を聞いている時だけ表情が和らいだ。



『どうでしたか?』



純∶もっと換金作物の生産に注力しなければならんな。

不使用島嶼に関しては、養殖技術を持った大学機関に与えて、尖った研究を進めさせるべき。



『じゃあ、いつか私がこの国を制したら実現しますぅ。』



「あ、純友さん。

今ググったら、そのアイデアは胡桃倶楽部が有識者会議で提案して、2026年度までの特区設置が閣議決定しているのだ。

あ!

愛媛県も特区候補に上がってるのだ!」



純∶あ、うん。

じゃあ、我は胡桃倶楽部支持で。



『ちょっと待って下さい!

私も同じ意見でした!

純友さんは私の守護霊ですよね!

私に支持表明すべきです!』



純∶え?

いや、我を呼んだのはエルデフリダ卿であってオマエではないからな。

別に子孫でもないようだし、守護してやる義理もないだろう。

そもそもオマエみたいな男色野郎なんて、我らの時代なら見世物小屋の嘲笑侮蔑枠だしな。

軽蔑以外の感情を持つのが難しいぞ。


大体、同意見も何もオマエは我の提案に便乗しただけだし、それなら奥方が頭領を務めている胡桃倶楽部を我は支持するな。



『ギャオーン!

ヒルダさんはいっつもいっつも私の想定を軽々上回るんですぅ!

能力があり過ぎて腹が立つんですぅ!』



純∶いや、オマエが無能なだけだと思うぞ?



『むむむむむ、無能ちゃうわッ!!』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



さて。

小牧の偵察の結果。

警察官が集会所を回って手配書(松村と俺)を掲示している最中なので、住民への接触は断念する。

夜陰に紛れて漁船か車両を盗み、佐田半島の根元を目指す事に決まる。



純∶なぁ、トイチ。



『あ、はい。』



純∶オマエの異能、【複利】とか言ったか。



『あ、はい。』



純∶日に3割弱の利息が付くんだな?



『付きますぅ!』



純∶それは確実?



『確実ですぅ!』



##それだけがアナタの存在意義だしね。##



『そこ外野は黙ってろですぅ!』



純∶小牧。

何も言わずに自動車とやらを3台持って来い。

出来れば同じ型番がいいな。



「あっ!!」



『ほぇ?』



純∶では、小牧。

17時までに何とかしてくれ。

福田を治療出来る場所まで連れて行ってやりたい。



「行けます!

港に同型の幌付き軽トラが駐車してました!」



##盗みは目立つわよ?##



「いえ!

所有権だけ猊下に移します。」



『ほぇ?』



「純友公。

どうしてこの手を思いつかなかったのか…

己の不明を恥じいるばかりです。」



純∶岡目八目だよ、気にするな。

小牧、オマエはよくやっている。



「直ちに作戦に取り掛かります!」



『はぇぇ。』



##ねぇ、大魔王。

そのキャラ付け何なの?##



『ドナルドさんの好みですぅ。』



##え!?

嘘ぉ!?##



『あの人は本当に白痴女を庇護するのが趣味なんてすぅ。

店とか持たせてあげてましたよ。』



##いや、流石にそれはないでしょ!

ないないないない!!

それはない!##



『信じるも信じないもエルデフリダさんの勝手ですぅ。

ちなみに早口眼鏡さんは、私やドナルドさんが好きなタイプですぅ。』



##えーーーッ!?

嫌嫌嫌嫌嫌ーーー!!!

あ、ありえなーーーい!!##



そんなアホな話をしながら、17時を待つ。

ジョーンズ夫妻が怪し気な豪ドル札や怪し気な人民元札を投資したいようだったので、16時57分にこれを快諾。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【預金サービス】


・人民元札と豪ドル札が入ったデカいリュック。


※明らかにカタギのカネではない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



皆でワイワイと各国のマネロン対策をボヤきながら時間を潰す。



《18億1890万円の配当が支払われました。》



ん?

小牧の割り出した想定額より多い。

レベルアップしたか?

デカいリュックも膨れて、人民元札がゴボッと噴き出す。



「WHooooooo!!!!

I’m coming!!!」



ケイト夫人がその場で飛び上がって倒れ、目を剥いたまま痙攣を始める。

汚い女だなあ。

まあ、気持ちは分からんではないが。

ジョーンズ氏も目を潤ませて俺を見つめる。



「Mr.トイチ。

アナタは何者ですか!? (トゥンク)」



『通りすがりの大魔王ですう。』



興奮したジョーンズ夫妻に纏わりつかれて辟易した。

夫妻で俺の両脇をガッチリ固めて、手放さないモードに入られる。

気持ちは分からんではないので、【豪州取次】という役職をその場で作って授与してやる。

要は、今後俺が政治や経済で豪州に関与する場合にジョーンズ夫妻を排他的エージェントとして雇用する約束である。

体よく追い払う為の思いつきだったのだが、夫妻は狂喜乱舞する。



『いや、こんなの口約束じゃないですかぁ。』



「でも、トイチさんって口約束を意固地に墨守するタイプじゃないですか!」



『否定はしませんけどぉ。』



「もう乗るしか無いんです!

このビックウェーブに!!

だってトイチさんはイエス・キリストを越えるミラクルスターだから!!」



##末路に関しては確実に越えるでしょうね。##



『縁起でもないこと言うなですぅ。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


60億6300万円

  ↓

78億8190万円



※配当18億1890万円を取得

※大麻1キロを取得

※怪しげな人民元札と怪しげな豪ドル札を増やしてやった。



大麻1キロ

  ↓

大麻2キロ



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



20時。

砲台に小牧が帰還する。



「猊下!

車両を確保しました!」



『え?』



「純友公。

ご助言に感謝します!」



純∶我は独白しただけだ。



小牧はスマホを灯り代わりに地面に広げた書類を照らす。



「あっ!

車検証なのだ!!」



「そうなんだよ光戦士君。

私が接収した3台の軽トラの隣に、新車が1台出現した。

丁度17時だ。

確認した車両には、猊下のお名前が、ほら!」



*内閣国際連絡局職員には非常時の徴用権限が広めに与えられている。

日本国が無政府状態に陥った場合に速やかに新政権を打ち立てる為である。



「本当なのだ!

遠市・コリンズ・厘って書いてる!」



…コリンズ家の籍には入ったままなのだな。



「しかも、車両ナンバーは隣の車両とは異なる数字!

これは、これまでの紙幣番号法則からして、陸運局に実際に登録済みと推測されます。

何故なら、猊下が出された富は全て本物だったから!

私が灯台駐車場に停めたあの新車両も本物!

だって猊下!

猊下は自動車に資産価値があると思いますよね!?」



『はぁ、まあ。

動産っていうくらいですからねえ。

課税対象である以上は富でしょうねぇ。』



「猊下ッ!

やはり貴方は最強です!」



『はぁ、知ってますけど。』



「まだまだ理解度が低かった、この小牧晃は愚かですっ!」



いや、逆だろ。

この男は優れているから、こんな外連をアテにする発想が生まれなかったのだ。



「猊下っ!

夜陰に紛れて佐田岬を横断します!



そんな訳で、地元住民との交流案は保留し、新品の軽トラで静かに夜の佐田岬を走る。

アネモネの闇魔法で隠行しながらの走行、対向車は極度に少ない。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【リン子車両】 


※スズキキャリイ/陸運局正式登録済/遠市・コリンズ・厘名義 


小牧晃    (運転席)

遠市以下略  (助手席)

エルデフリダ (憑依中)

藤原純友   (守護霊/但し守護は拒絶)



「荷台」   


金本光戦士

福田魁

レニー・A

アネモネ・I・G 

松村奈々

テッド・ジョーンズ

ケイト・ジョーンズ

+大量の現金 (日本円/豪ドル/人民元)

+大麻

+拳銃 (S&Wシグマ)

+拳銃 (ルガーP08)


※現在、過積載状態


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



目的地は聞かされていない。

俺に伝える=エルデフリダに情報を与えてしまうことになるからだ。

目的地は光戦士だけが知り、ルートは小牧が専決する。

これならエルデフリダがヒルダ派との接触を図りにくい。

キャリイの振動に抱かれながら、俺は無言で腕を組んだ。


途中、岬の切れ目から大きな港湾が見える。

小牧曰く、あれが九州との連絡路である八幡浜港であるとのこと。

そこに輝く大量の赤色灯を俺とエルデフリダは飽きもせずに眺め続けていた。

【名前】


遠市・コリンズ・エルデフリダ・リン子・厘



【ステータス】  


※全基礎パラメーターに1.75倍のバフが掛かっているが、元数値が低すぎて効果を体感出来ず。


《LV》  30

《HP》  地球側重傷/異世界側意識不明重体 (1.75倍)

《MP》  疲れた/死に掛け (1.75倍)

《力》   最弱 (1.75倍)

《速度》  どんくさ (1.75倍)

《器用》  どんくさ (1.75倍)

《魔力》  微弱   (1.75倍)

《知性》  ド低能  (1.75倍)

《精神》  病    (1.75倍)

《幸運》  金運宇宙最強/女難の相  (1.75倍)


《経験》 54億1924万6651


本日取得  0

本日利息 12億1828万0255

次のレベルまでの必要経験値53億1817万1589


※レベル31到達まで合計ポイント107億3741万8240




【スキル】


「複利」 


※日利30%

下4桁切り上げ 




【所持金】


所持金78億8190万円




1億0853万BTC  (下4桁切り上げ)

  ↓

1億4109万BTC  



4628万XRP (下4桁切り上げ) 

 ↓

6017万XRP



4628万SOL (下4桁切り上げ)

 ↓

6017万SOL



☆保有大麻2㌔




【残り寿命】


5955万8500日 (下4桁切り上げ)

  ↓

7683万8500日




【約束】


 コレット・コリンズ  「ヒルダ討伐を邪魔しない。」

 ヒルダ・コリンズ   「コレット討伐を邪魔しない」

× ハロルド・キーン   「義絶届にサインしておくように。」

× ドナルド・キーン   「離婚届にサインしておくように。」

 クレア・V・ドライン  「所領監査に応じる」

 金本光戦士      「王朝存続の暁にはヒルダを連れて異世界に帰還すること」

 ウラジミール7世    「全時空永遠帝国の建国を託す!!」

 レニー・A      「四天王権限でエミリー共々減刑申請する。」

 上甲小夜       「離島支援の為の補正予算を獲得する。」

 松村奈々       「大麻解禁法案への不干渉。」


〇ポール・ポールソン   「君のことはボクがずっと守ってあげりゅ!」

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― 新着の感想 ―
ヒルダの仲間は優秀だのう。
これ、将門様の連鎖召喚というフラグっすかね?
厘君が、首都上陸からのメイクミラクルに期待してます! 藤原純友の登場は、流石です。 土地解説の一部と思ってましたが、まさか、御本人登場とは!!
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