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【降臨104日目】 所持金60億6300万円 「正月に餅でも配ります。」

俺の名は遠市厘!

4ヶ月で異世界制覇を成し遂げた最強の大魔王だ!

能力名は【複利】!

天下万民に幸福を与える為の究極スキルッ!!


地球人類諸君。

安心して欲しい。

恩恵は異世界のみではなく我が祖国地球にも与える!!


歓呼で迎えよ!!

我が黄金色の覇業を!!



##はァ(糞デカ溜息)##



『な、なんですかエルデフリダさん!!

人が決意表明している時に水を差さないで下さいよぉ、ぷんすこ!』



##アナタが何を勘違いしているのかはわからないけど。

制覇したのはコリンズ母娘だから。##



『…え!?

あ、いや!

私も結構頑張ったですぅ!』



##あのねぇ。

そもそもワタクシ、寝たきり状態のアナタしか知らないのだけれど。

コレットちゃんの介護で生き延びてただけの癖に何を言っているんだか。

どれだけあの2人が苦労したか理解してる?##



『う、ううー!!

で、でもでも!!

おカネはいっぱい渡してました!

家庭にも世界にも!!』



##で、でたー!

生活費さえ渡せば義務を果たしたと誤解している配偶者ーッ!!

予算さえ確保すれば責務を果たしたと誤解している為政者ーッ!!

まさしくワタクシの夫や祖父がまさしくそういう人だったのだけど。##



『私のドナルドさんを悪く言わないで下さいーー!!』



##ソウルクラッシュ!!!##



『ぐえッ!!!』



##ワタクシのよッ!!!!!!##



『ひえっ!!』



##大体アナタねえ…

地球に損害ばっかり与えてるじゃない!##



『あ、与えてませんよぉ!

日本銀行券とか色々増やしました!

今日もきっと増えますぅ、知らんけど!』



##見たわよー、仮想通貨報道。

地球経済、完全に壊れちゃってるじゃない。

なーにが救済よ。

経済テロ! 経済テロ!

アナタって存在が迷惑なのよ!##



『め、め、め、め、迷惑なんかじゃないですぅ!

あ、あれは産みの苦しみなんですぅ!!

この先、人類1人あたり10億円配るから地球は豊かになるんですぅ!!』



##それをしたら間違いなく悪性インフレで地球が滅ぶような…

まあ、ワタクシの世界ではありませんし、好きになさったらいいと思うけど。##



『と、兎に角!!

私の【複利】は無敵の能力なんですぅ!!!

これさえあれば負ける事なんてあり得ないんですぅ!!』



##確かにアナタのスキルが無敵なのは認めるわ。

ワタクシが知る限り、人類史上最強能力の双璧を担っているわね。

もはや神魔の領域よね。##



『ほーら、エルデフリダさんも認めてるじゃないですかぁ。』



##だから!!!

こんな凄いスキルを持ってるのに失敗し続けてるアナタが大馬鹿だって言ってるの!!

普通、こんな超絶チートスキル持ってたら、どんな低能でも負けようがないわよ!

なのに、どうしてこうなってるのよっ!!!

この無能ッ!! 脳味噌ポールソンッ!!##



『わ、わわわわ!!!

私は無能じゃないですぅーーーー!!!!!

皆が私の指示通りに動かないから上手く行かないんですぅ!!!』



##うっわー。

*イワン2世と同じこと言ってるー。

暗君特有の責任転嫁!!##



*200年程前に対外戦争で四連敗して帝国に暗黒期をもたらした君主。

エルデフリダは彼から数えて11世の子孫となる。



『あ、あああああああ暗君ではないですぅうううッ!!!!

私は異世界に平和と繁栄をもたらした大魔王なんですよおお!!!!』



##だーーーーかーーーーらーーーー!!!!!

平和も繁栄も!!

もたらしたのはコレットちゃんでしょ!!!!

アナタ、経済テロしかやってないじゃない!

このヒモッ!!!! 甲斐性しか無しッ!!##



『キーッ!! キーッ!! キーッ!! 

ギャオーン!!!』



##キーッ!! キーッ!! キーッ!! 

ギャオーン!!!##



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「…ボ、ボクの名は光戦士(ずんだもん

ハアハアッ!!

嵐の海から奇跡的に生還した洗浄済み枝豆なのだ…

ゴホッ! ゴホッ!

こ、ここは海岸?

な、何故生きてるのか我ながら不思議なくらいなのだ。」



##うおー! ソウルクラッシュ!!##



『ぐはぁ! 魂ぱんちですぅ!!』



##ごべぇ!! まだまだぁ!!##



『ぶべぇ!! ハァハァ、やりますね。』



##アナタこそ伊達に大魔王を名乗ってないわね##



『うふふふふ。』



##あはははは。##



『##あっーーーはっはっはっは!!##』



『隙ありッ! 魂ぱんーち!!』



##油断したわね! ソウルクラッシュ!!##



『どっげぇええーー!!』



##ごっ はぁああーー!!##



「駄目なのだ!

異世界BBA悪霊に取り憑かれたせいで、ただでさえアレだったリン兄ちゃんが完全なるキチガイになってしまったのだ。

頼みの綱の福田さんも、ボク達を庇って大怪我をしたし…」



「お、俺は大丈夫ばい…

気にするな。」



「口から血が出てるのだ!!」



「グハッ (吐血音)。

大したことなか。

アバラが何本かイッただけばい。

それより光戦士。

暗黒魔法ば使わせて、船とカネば隠せ。

ハァハァ!!

同時に現在地ば調べて、近場でセーフハウスを確保してくれ。

寒河江隊と合流するまでは、そこで身ば隠すぞ。」



「わ、わかったのだ!

ボクも福田さんも嵐でスマホが壊れてGoogleマップが使えないから、目視で現在位置を確かめるしかないのだ。

というか、小牧さんは!?」



「あん人は最後に船が傾いた時にトイチを庇って落水した。

救命胴衣も付けとったし、あの対岸の島に泳いでいくのも見えた。

回収方法は俺が考えるから、まずは食料と水ば確保してくれ。

コンビニが近かと助かるとばってん…

ゴボッ (吐血)」



「福田さん!

無理に喋らなくていいから、安静にしてるのだ!

くぅう!

それにしても、かなり詰みに近い状況なのだ!

リン兄ちゃんは発狂、小牧さんは漂流、福田さんは重傷!


…なのに、なんでオマエらはピンピンしてるのだー!」



  「えー、光戦士クンひどーい。

  レニーちゃんは陸にさえ上がれば無敵っス♪」



  「アネモネちゃんも船以外なら余裕でーす♪

  人生舐めてまーす、ぶい♥」



  「コイツは本当に舐めてるから気を付けなよ。

  お姉さんがお布団の中で守ってあげよっか?

  オヒョヒョヒョヒョ♪」



  「1番舐めてんのレニー姐さんだけどね(笑)」



「…2人共無駄に元気そうで何よりなのだ。

じゃあ、ボクは現在地を調べてくるから、アネモネ姉ちゃんは魔法で船を隠しておいて欲しいのだ。」



  「お!

  アネモネちゃんが真価を発揮する時が来た!

  任せて光戦士キュン♪

  お姉さんのカッコいいとこ見せてあげる。」



  「えー、アネモネばっかりズルーい。

  焼き尽くしたいものがあったら何でも言ってね?

  レニーファイヤーを炸裂させてあげるっス!

  その後、夜のRFで楽しませてあ・げ・る♥」



「…ボクはしばらくタスクに集中するから、おとなしく待っておけなのだ。」



  「「はーい♥」」



「やれやれ、まあいいのだ。

ボクらのキャッシュは10億残ってるし、国道にさえ出れたら勝確なのだ!」



「ニャガーッシュwwww!!

ニャガラーッシュwwww!!」



「…コイツも無傷か(落胆)。」



「本州にさえ着いてしまえばこっちの物ニャガ!!」



「…。」



「聞いて驚けニャ♪

な、な、な、なーーーーんと!!

奈々ちゃんはオマエらを油断させる為に仲間になったフリをしてたんだニャ♪」



「…猫先生って仲間だったんすか。

ソイツは初耳なのだ。」



「おやおやおやーww

もしかして必死で動揺を堪えてるニャ?

無理もないニャガねえww

メインヒロインが裏切るという、この驚愕の衝撃展開ッ!!!

恥じる事はニャいニャww

人間、予想外の出来事に直面すると脳がフリーズするものニャ♪」



「えっと、むしろ予定調和すぎる事に驚いてるんすけど…

っていうか、犯罪者の分際で自分をヒロイン扱い出来る厚顔無恥に衝撃を受けてるのだ。」



「そして!!

裏切る動機はっ、ななな何とカネ!!

実はッ!

この積み上げられたカネを盗むチャンスを密かに狙ってたニャ!!」



「何が《実は》なのだ。

オマエ、全然密んでなかったのだ。」



「ニャガハハハハ!!

本州にさえ着けばこっちのものニャガよ!!

このカネは奈々ちゃんが頂いた!!

この山岳用リュックに残りの10億を積んだのが運のツキだニャ!!

うんしょっと♪

この重みに有難みを感じるニャ♥」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】


10億円

 ↓

0円


※松村奈々に10億円窃盗される。

※昨日増加分の紙幣は全額海中に転落

※僚船に46億2524万0283円を積載中


大麻0キロ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「…えっと、10億円って概算100キロなんすけど。

え? それを担いで逃げるんすか?」



「ヌルいこと言ってんじゃねー!!

女の人生、毎秒関ヶ原ニャんだよおおおッ!!

このまま頂いてイクーーーッ!!

後ろが海ということは、あの山を越えれば街に着く計算ニャ!!

カネさえあればパタヤに逃亡出来るニャ!!

明日の今頃は奈々ちゃんパタヤでマリファナパーティー♥

んーーッ♪ 夢が広ガトリングっ!!

ダダダダダダダダダダッ!!

ニャガーーーッハッハッハッハwww」



「…てか、軽々100キロを持ち上げる膂力は凄いと思うんすけど、指名手配状態で海外逃亡とか。

流石に見通し甘くないっすか?

空港とか税関とかどうするのだ?」



「相変わらずヌルいショタだニャ。

覚えておけ、金本弟!

世の中カネだニャ!!

カネこそ万能ッ!!!

カネさえあればッ!

なんでも できるッ!!

なんでも なれるッ!!

輝くカネを抱きしめてええぇッ!!

さらばニャーッ!!」



「…あー、行っちゃったのだ。

いやー、おカネってそこまで万能っすかねぇ。

目の前に負け犬成り金が居るんで…

その意見には賛同しかねるのだ。」



『##ギャオーン!!##』



『魂ぱんちっ!!』



##ソウルクラッシュ!!##



『ぐっへぇぇぁああ!!』



##ぶっぼぉぉぉおお!!##



『##ウオオオおおおおッ!!!##』



「…リン兄ちゃん、おいたわしやなのだ。」



『ハアハア!!

光戦士君!!

ようやく決着が付きました!!

これでボディの操縦権は私のモノですぅ!!』



「…おめなのだ。」



『ところでここはどこなの?』



「それを今から確かめるから、そこで福田さん達とおとなしくしておけなのだ。」



『キャッ、福田さんが怪我してますぅ!』



「騒ぐな、大したことなか。」



「ちなみに小牧さんはあの島に泳ぎ着いたみたいなのだ。」



『え!?

どうしてこんな寒い時期に!?』



「オメーを庇って落ちたのだ! (ボカッ)」



『ぐえー。』



「兎に角、ボクはドラッグストアを見つけて応急措置の役に立ちそうな物を探して来るのだ!」



『がんばれー♥ (まるで他人事のように)』



「…リン兄ちゃん一言いい?」



『あ、はい。』



「ちゃんとエルデフリダは追い出せたんすよね?

今は元のリン兄ちゃんなんすよね?」



『追い出せなかったですけど、激闘の末に身体の主導権を取り戻しました。

ほぉら負け犬さん、今のご感想はぁ↑www?』



##ガ、ガハッ!

他人の魂の中なんて、アウェイの極みよ…

こ、こんなので勝った気にならないで頂戴##



『キャハッww

負け惜しみですかぁwww↑?

アハハハハハ!!

例え相手が女でも、喧嘩に勝つのって気ん持ちいいですぅwww↑』



##こ、こんなゴミクズにこのワタクシがぁー!##



『光戦士君♥

これで分かってくれましたか?

私が本物のりんこりんです♪』



「ますます悪化してるのだ…

まあいいのだ、今は町に出る事だけを考えるのだ!

太い道に出てコンビニかタクシーさえ見つければボクらの勝ち!

じゃあ、くれぐれもおとなしくしてるのだ!」



『あーあ、行っちゃいました。』



##随分お仲間が減ったじゃない。##



『ええ、今のメンバーは…

福田さんにぃ、光戦士君にぃ、レニモネさんにぃ…

よし、概ね無事に下船出来たようですね!

後は小牧さんさえ回収すれば、私の勝ちですぅ!』



##あ、大魔王!

向こうから老人が歩いて来るわ。

地元民よ!##



『丁度、良かったですぅ。

コンビニかタクシーを用意して貰いましょう。

こっちにはおカネがいっぱいあるから親切にしてくれる筈ですぅ!』



#ちょっと駄目よ!#



『え?』



##手持ちのキャッシュはあの獣人に持ち去られたわ。##



『また、あの駄猫ですか。

早く死刑になればいいのに。』



##だからチップは払えない。

ここは明らかに僻地の漁村。

そんなに豊かそうには見えないわ。

財力を振りかざしたら、反発されるだけよ。##



『う、うう。

確かに。』



##ワタクシが原住民懐柔のお手本を見せてあげる。

大船に乗ったつもりでいなさい。

こう見えても卒業論文が表彰された事もあるのだから♪##



『何かフラグが見えて来たのですぅ。』



  「あらあ、民宿のお客さん?

  泊まってたの?」



##御機嫌よう御婦人。

ワタクシ達通りすがりの旅行者ですのよ。

バカンスを楽しんでいたのですけれど、道が分からなくなって。

ここはどちらですの?##



  「え? 道…?」



『ちょっ! エルデフリダさん、あからさまに怪しまれてますよ!

お婆さんが他のお婆さんを呼んでヒソヒソとこちらを観察してます!』



  「「「ヒソヒソ…」」」



##うるさいわね!

田舎なんてどこもこんなものでしょ!

ほらボディ!

もっと背筋を伸ばしなさい!

怯えた様子を見せては駄目!

悪いことは何もしてないのだから堂々となさい!##



『そうですね!

私ぃ、生まれてこの方1度も悪いことをしたことがありません!

なので堂々としてます、えっへん! (背筋ピン!)』



##…捨てた妻子に少しは後ろめたさを感じなさいよ。##



  「「「…。」」」



##御婦人方、安心なさって!

怪しいものではありませんの!

ワタクシの名はエルデフリダ!

今はこんなボディに身をやつしておりますが、帝国における至尊の身ですのよ。##



  「「「え、ええ… (ドン引き愛想笑い)」」」



##あっちで倒れているのがフクダ。

破れた服の下には大きな入れ墨が見えますわね。

でも安心なさって、彼は反社会的勢力ではありませんの。##



「サカズキ貰ってないからカタギばい。」



  「「…え、え。(巨大な和彫にドン引き)」」」



##とのことですわ。

紹介を続けますわね。

横のチンチクリンは荷運び用の囚人奴隷ですわ。

ワタクシ、進歩主義者なので山民も他の奴隷と平等に扱いますのよ。##



「レニーッス♪

懲役25年っス♪

あ、安心して下さいねー♪

今はすっかり更生して囚人三等兵っス♪」



  「「「…。」」」



##その隣の薄汚いのはダークエルフですけど、安心なさって。

麻薬漬けにして屈服させましたから。##



「アネモネちゃんでーす♪

ダークエルフの麻薬術は天下一ッ!!

大麻如きには負けませんよー♪」



  「「「…。」」」



##いかがかしら?

御婦人方、ワタクシ達が怪しい者ではないと理解して頂けた?##



  「「「…ヒソヒソヒソ。」」」



『もー、エルデフリダさんの所為で怪しまれてますぅ!!』



##人の所為にするんじゃないわよ!

アナタがそういう人材しか揃えてないのが悪いんでしょ##



『##キーキー!!##』



  「(絶句ドン引き)」



「ニャガーー!!

おーーい、オマエラー。

山に登ったけど、海しか見えねーから戻って来たニャガ。

誰かナビしてくれニャーー!!」



##あ、泥棒猫が帰って来ましたわ。##



『松村先生、よくそんな大荷物背負えますねぇ。』



  「あーーーー!!!

  松村奈々容疑者!!」


  「本当だ!!!

  人殺しの松村容疑者!

  ワイドショーで見た!!!」


  「殺人・大麻取締法違反って!!

  船着き場に貼り紙してたわよ!!」



「ニャガッ!?」



##あらー、流石は凶悪犯罪者。

知名度抜群ね。

物騒だから早く死刑にして欲しいわぁ。##



『ホントホント、警察はもっと本腰入れて捜査して欲しいですぅ。』



「ニャハハハ。

松村?

人違いニャガよ(汗)

そんな絶世美女は知らないニャガねぇ。」



  「手配書にあった通りの猫の耳。」


  「変な喋り方。」


  「早く駐在さんを呼んだ方がいいかも。」



「ニャガーッシュ!!

ブッ殺すぞババア共ッ!!」



  「「「ヒィッ」」」



「クッソ!!

もう一度さっきの山の中に逃げ込むニャ!!」



『どうするんですか?

私達まであの屑の一味扱いされちゃってますぅ。』



##まったく、世話の焼ける大魔王ね。

いいわ、これからワタクシが事態を収拾してあげるから、黙って見てなさい。##



『はーい。』



  「「「ヒソヒソヒソ。」」」



##あーあー、御婦人方。

勘違いなさらないで。

ワタクシ達は特別任務中の密偵ですの。

あの犯罪者を治安局本部まで護送しておりましたのよ。##



  「「「…。」」」



『ちょっとエルデフリダさん。』



##何よボディ。##



『治安局って自由都市の呼称でしょ。

我が国では警察庁って言うんですぅ。』



##はぁ?

一々細かい男ね。

似たようなものでしょ。##



  「「「怪しい。」」」



##くっ、疑い深い連中ね。

まぁ、いいわ。

ここはどこですの?

鉄道に乗りたいから、下関への道を教えて頂戴。

ちゃんとチップも支払いますわ。

ほら、ボディ。

チップを出しなさい、ホント気の利かない男ね。##



『さっきおカネには頼らないって言った癖にぃ。』



##臨機応変よ。

ほら、早くなさい。##



『あ、おカネを入れた箱がなくなってるー。

じゃあ、気絶してる福田さんの荷物から勝手に出しときますぅ。

福田さん、後で100倍にして返しますね♪

(1000万円ドーン!)』



  「え? 何この大金?」


  「偽札? 強盗犯?」


  「怖いわぁ。」



##ちょ! このお馬鹿!

成り金みたいな財布の開き方するんじゃない!

怪しまれてるでしょ!

ワタクシまで犯罪者扱いされてるでしょ!##



『ううっ。

ドナルドさんはここぞと言う場面でこういう払い方してたのにぃ。』



##あの人は超絶イケメンだから何をやっても補正が掛かるの!!

ふざけて頭に靴を被ったら、そういう形の帽子が流行るような人なの!!##



『ぐぬぬ。』



##あ、少年が戻って来たわ。##



「みんなー、状況がわかったのだ!

ここは日振島!

大分県と愛媛県の真ん中にある離島なのだー!」



  「あら、可愛い枝豆ちゃんね。」


  「もう朝ご飯は食べたの?」


  「付き合う相手は選ばなきゃ駄目よ。」



「何だか分からないけど、何となく状況が飲み込めたのだ!

まず、お婆さん達!

ご迷惑をお掛けしました!

誠に申し訳御座いませんでしたなのだ! (全力ペコリ)」



  「「「あらあら、まあまあ。」」



「今、その女が差し出している札束は迷惑料としてご笑納下さいなのだ!

そいつは成り金なのでお気遣いなくなのだ。」



結局、光戦士が話を収めてくれた。

かなり苦しいが俺たちは《自力帰還可能な漂流者》という扱いになり、通報は猶予して貰える事になった。

次の船便で本土(愛媛県宇和島市)に渡ることも黙認すると言ってくれた。



##但し、条件付きだけどね。##



そう。

松村奈々容疑者の回収。

これがなされない限り通報せざるを得ないということ。


そりゃあ、そうだろう。

こんな小さな離島に凶悪犯罪者が紛れたなんて生きた心地がしないだろうからな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



《関門海峡を渡る》というプランは追手を撹乱するダミー情報だったらしい。

発案者は寒河江。

俺も欺かれた訳だが、松村や脳内エルデフリダというヒルダ寄りの人員を抱えてた以上仕方のない判断である。


実際は北九州市へ移動したと見せかけて、大分県に入っていたらしい。

そして嵐に乗じて豊後灘を押し渡り、佐田岬沿いに航行し八幡浜に上陸する算段だったとのこと。


ただ、予想外の荒天で手間取ったところに俺の複利が発動してしまった。

その所為で重量過多で航行不能となり、この島に漂着したとのこと。


日振島か。

どこかで聞いた覚えがあるのだが…



##アナタの記憶フォルダに入ってるわよ。

ほら、社会科の授業。

松村奈々が承平天慶の乱を説明したでしょ。##



ああ、そんな授業もあったな。

地方税の解説をしている際に松村が例示したんだっけ。

重税と地方自治が極まると大規模反乱に行き着くという話な。

思い出した。

その話が俺の低税率思想の論拠になったんだ。

異世界でミュラー卿を支援したのも、ああいう将門的な装置が歴史に必要だと松村に教わったからだ。

あの爺さんどうしてるかな?



##え?

普通に叛逆罪で賞金首だけど。##



驚く俺にエルデフリダが答える。



##当たり前でしょ。

《旦那を夜遊びに誘った罪》でコレットちゃんが死刑判決を出したわ。

見つけ次第、拷問して殺すって決定よ。##



相変わらず酷い女だと思うが、エルデフリダ曰く帝王が娼婦を抱くなど言語道断だそうだ。



##あのねぇ、歴史上多くの名家が素性不明の非嫡出子の登場で内乱に突入してるでしょ。

アナタの国だって、足利直冬や畠山義就の存在が大乱を引き起こしているわ。

いい?

帝王の後継は正室の子のみ。

側室の設置に関しては、正室だけが決定権を持つ。

それを厳守しないと王朝なんてすぐに壊れちゃうのよ。

ミュラーは大罪人。

生かしてはおけないわ。##



なんとか命乞いを頼むも強く拒絶される。

俺が私人なら笑って許されることでも、世界全体を統治している以上、通用しないらしい。



##話を戻すわよ。

日振島!##



そう。

俺達が漂着した日振島は宇和島沖に浮かぶ離島。

1000年以上前に大海賊・藤原純友が拠点としたと伝わるだけに、分かり辛い場所にある。


そして今、集落の住民達に囲まれて松村関係の説明を求められている。

愛嬌のある光戦士が必死に交渉してくれた事で即時の通報は見送られたが、松村を捕獲しないのなら駐在所に連絡するとの警告。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「わかったのだ!

ボク達もあの屑猫は処刑すべきだと考えているのだ!

直ちに捕獲するんで、通報だけは勘弁して貰えないっすか?

勿論、迷惑料もお支払いしますのだ!」



受取は保留されたが、こちらの誠意はある程度伝わった気がする。



##で?

あの駄猫を捕まえればいいのね?##



「エルデフリダ。

イノシシ用の箱罠を譲ってもらえたのだ。

猫BBAを捕まえたら、ここに閉じ込めるのだ。」



##あら、結構丈夫そうじゃない。

良い仕事よ、少年。##



「地元の人に聞いたんすけど、猫BBAが逃げ込んだ山は結構見晴らしがいいみたいなのだ。

昔、藤原純友が見張り台を置いてたって。

たまに地元の人が頂上にある石碑を掃除してるみたいっすよ。」



##あら、駄猫の最期の地に相応しいわね。

海賊王に麻薬王、石碑が2つも並んだら観光名所になるんじゃない?##



そんな軽口を叩きながら、俺達はレニーに火魔法で煙を焚かせて松村を燻り出すことにした。

派手に木々の揺れが左右に動いているので、山中を猛スピードで疾走しているのだろう。

純友が追討された際もこんな感じだったのかも知れない。

光戦士が住民に対して誠実に対応したこともあり、雑談に応じてくれるようになった。

レニモネが必死の形相(大麻切れが原因)で松村を燻しているお陰なのかもしれない。



  「ハァハァ!!

  うおお、レニースモーク!

  大麻が無いと…」



  「ハァハァ!

  暗黒魔法ッ! 狼煙封じの術ッ!

  チカラが入らない…」



よし、煙を発生させつつ島外から視認は出来ない状態。

理想的だ。

猫退治を開始したことで島民達の表情も少し明るくなった。


大麻切れの禁断症状で精彩を欠くレニーが操作をミスって、天草を干す網に引火する。



  「あ、スンマセン。

  いつもはこんなヘマしないんスけど。

  大麻、大麻さえあれば…」



##大魔王!

急いで住民に謝罪!!

光戦士君、そこらで水が汲める場所を聞いて!##



「この裏手に井戸があるみたいなのだ!」



『みなさーん。

ウチの囚人三等兵が申し訳御座いませぇん。』



光戦士と共に民家の裏手にある古い洗い場の様なものから水を汲んで消化する。

曰く、藤原純友も使ったとされる由緒正しい井戸らしい。



「もう少し丁寧に使えばいいのになのだ。」



呟いた光戦士に老婦人が答える。



「上水道が引かれるまでは重宝してたみたいだけどねえ。」



##光戦士君。

インフラは更新される宿命にあるのよ。##



皆でそんな話をしながら、勢いを増すレニースモークを眺める。

一匹の子狐? イタチ?がフラフラと山から降りて、大きく痙攣してから死んでしまった。

ふむ、意外に効果があるものだな。

糞猫にも効くと嬉しいのだが。



「懐かしいわあ。

私は隣島の生まれなんだけど、昔にドブネズミが大発生してね。

泣く泣く逃げて来たのよ。

その時も燻したわねぇ。

猫もいっぱい島外から持ってきたのよ。

小学校で出陣式とかやったし」



『へえ、私は猫の方が有害だと思いますぅ。』



「そう?

猫ちゃんは可愛いじゃない。

イジメちゃ駄目よ?」



『あの憎たらしい泥棒猫に付き纏われて困ってたんですぅ。』



「そっちは殺処分でいいんじゃない?」



『ええ、1秒でも早く絞首台に送りたいですぅ。』



俺が話している老婦人はサヨという名で、数年前まで婦人部の部長をしていたらしい。

近所の奥さんを纏めて天草を集めたり、草むしりをしていたのだが、高齢を理由に引退したとのこと。



「昔はねぇ。

日振にももっと人が居たのだけれど…

もう駄目ね。

小学校も1人しか居ないし。

私も年内には宇和島の施設に入るしねぇ。」



『私はいい島だと思うんですけど。』



「不便よ。

嫁が宇和島市内の生まれなんだけど、日振に嫁ぐのが決まった時は友達全員が号泣して止めたらしいからね。

《そんな絶海の孤島なんかに行くな》ってさ。」



サヨ婆曰く、ただでさえ僻地の四国の中でも宇和島は陸の孤島と呼ばれるような土地である。

その宇和島から高速艇で1時間半掛かる日振島は紛う事なき絶海の孤島ならしい。


その証拠に島には商業施設が存在しない。

かろうじて民宿が港毎にあり、それが数少ない外界人との接点とのこと。


問題は、そんな絶海の孤島にすら俺や松村容疑者の手配書が貼ってある点である。

当然、宇和島港には大型トレイルカメラを装備したパトカーが2台常駐し、港の入り口では警官が全船舶の乗降客を監視しているとのこと。



##もう諦めなさい。

ヒルダにはワタクシから取りなしてあげるから。##



無論、拒絶。

あの女は岸田総理や豊田会長を抹殺して、全ての権力を俺(と言うより自分が産んだ俺の子)に集中させようと画策している。

なるべくそういう展開は避けたいのだ。



##ねぇ、1つ謎なんだけど。##





##どうして男の人って家庭を頑なに拒絶する訳?##



…俺の父さんは誰よりも家庭的だった。

だが女はそういう男の良さを理解しようとせずに、外に攻め続けるタイプの男を好む。

女が家庭を蔑ろにして外征を行う気質の男の血を残し続けてきた。

ただ、それだけの話なのだ。

それにヒルダに夢中になるような俺なんて、ヒルダは絶対に相手にしてくれないと思うぞ。



##理解不能だわ。##



なあエルデフリダよ。

アンタに溺れるドナルド・キーンなんか見たいと思うか?



##…。##



俺は自力で戦力を集めて俺の革命を完遂する。

自称、内助の功は迷惑なだけだ。

俺は部品以外の何者もいらない。



##嫁に助けて貰わないと生きれない癖に。##



じゃあ死ぬよ。

だから失せろ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



##ねえ、今転がり落ちて来たのって。##



『あの駄猫でしょうねぇ。』



  「あ、松村容疑者!」



「ゴホッゴホッ、煙攻めとは卑怯ニャガよ…

(ヨロヨロバタン!)」



##皆さん、危ないから下がって。

噛まれるとどんな病気が伝染るか分かりませんわよ。##



  「病気は困るよー。

  宇和島まで片道2000円も掛かるのに。」



##囚人三等兵、そこの駄猫を箱罠に叩き込みなさい。##



「はあ!?

アタシはポールさんの系列!

アンタに指図される筋合いはないんスけど!」



『四天王権限で相方共々減刑申請してあげる。

名目は罪人追捕への協力。

感状も書いてあげるわ。』



「オヒョヒョヒョ!

流っ石チェルネンコ四天王!

そうならそうと早く言って下さいよぉ♪

実はね!

ここだけの話、アタシは親帝国派だったんスよ!

忠烈するッスよー!」



『…ワタクシはいいからハロルドの子を帝位に就けて頂戴。』



「んー?

ハロルド皇帝は共和主義でしょ?

帝国解体されるって聞きましたよ?」



『…ハロルドの子を帝位に就けて頂戴。』



「…了解。

偉い人も大変っスね(笑)

じゃあ、ブチ込みまーす。」



「とほほ、100キロ登山はもう懲り懲りニャガよ…」



「おい犯罪者、ジタバタするなッス。」



(乱暴にドガーーーンッ!)



「ニャガーーーーッシュ(涙)」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】


0円

10億円

9億円



※松村奈々から10億円を奪還。

※藤原純友公供養に1億円奉納

※僚船に46億2524万0283円を積載中

※松村奈々が隠し持っていた大麻1キロを押収


大麻1キロ



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



##よし、ノルマ達成!

御婦人、これで宜しいわね?##



  「松村容疑者さえ始末してくれたら何でも。」



##海賊にネズミに泥棒猫。

島暮らしも大変ねぇ。##



  「1番大変なのは人口減少だよ。

  毎年毎年減る一方。

  どうやったら増えるかね?」



##減れば自然に増えるんじゃなくって?##



  「あはは、増えるのかねぇ。」



『増えますよぉ。』



…君達が俺にとって有益な部曲となればの話だがな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



さて、宇和島港はブロックされている。

つまり定期航路での四国入りは不可能。

上陸ルートは自力で何とかしなければならない。


小牧が泳ぎ着いたのは戸島という島らしい。

戦国大名化した一条家の当主が長曾我部元親に放逐され、この地で没したと伝わる。


こちらに向かって反射光がチカチカ光っているということは、無事かつこちらを視認しているのだろう。

光戦士がピカピカと返信すると、同じ回数の発光が来た。

よし、意思疎通は出来ている。

島民たちに周辺島嶼の情報を聞きながら燃料を漁協で入れて貰う。

サヨ婆の息子さんが責任者らしく、あまり良くないのだがナアナアでなんとかして貰えた。



『サヨさん。

ここは漁獲量もありそうですし、儲かってるんじゃないですか?』



「そりゃあ、アワビが採れたら助かるけど…

でも毎日100個採れるものでもないからねぇ。」



聞けば燃料高騰が洒落にならない状態らしい。

乱獲で漁獲高が激減しているにも関わらずだ。



「ウチの息子達も、漁師は地獄だって言ってるよ。

漁業資源だけが、取り柄の島なのにね。」



『ふーん、魚が増えればいいんですかぁ?』



「そりゃあ、昔みたいに採れれば…

少しは生活も楽になるけど。」



『よーし。

それじゃあ、プチ恩返しをしまーす♪』



「?」



『今日だけ、この海は大魔王の領海でーす♪』



「??」



##アナタ、私物化を嫌ってたんじゃなかったの?##



『んー?

お魚が増えるんだからいいじゃないですか。

《漁業資源》なんですよね?』



##まあ、アナタなら増やすでしょうけど。##



『どうせ地球も私の物になるんですから、ちょっとくらい前倒ししてもいいじゃないですか。』



##ああ、やっぱり地球制圧するつもりなのね。##



『私につもりが有ろうが無かろうが、どうせ皆さんが勝手に王権を献上して来るでしよ?』



##ワタクシは成功例を間近で見ているから、到底笑う気にはなれないわね。##



『あ、ついでにあの漁協の給油タンクも召し上げてあげます。』



##本気?##



『だって、この島には駄猫を持ち込んだ負い目がありますもの。

埋め合わせくらいはしますよ。』



##変な病気とか流行ったら申し訳ないしね。##



『サヨさん、各船に満タン給油させておいて下さい。』



「ねぇ。

お嬢ちゃん。」



『はい?』



「貴女は何者なの?

何をしに来たの?」



『あはは、私は通りすがりの純友2号ですぅ。

今度は勝ちますよ、ぶい♪』



うむ、これで義理は果たした。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】


9億円

 ↓

8億円


※一条兼定公供養に1億円奉納(サヨ婆に委託)

※僚船に46億2524万0283円を積載中


大麻1キロ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



さて、日振島の港(明海)にはプレジャーヨットが泊まっている。

乗員は白人系の男女。

デッキに腰掛けて談笑している。

サヨ婆曰く、多島海の愛媛沿岸には各地からヨットマン達が集うらしい。

今日の様に外国船は珍しいながらも、年に一回は入港するとのこと。

俺と目が合うと親しげに話しかけて来た。



「perapera.」



『そーりー、あいあむのーいんぐりっしゅ。』



##ちょっと待ちなさい。

アナタ、英会話出来るでしょ?##



『え?

そんなの出来ませんけど。』



##今、アナタの記憶を読んでるけど。

シニアスクールで3年、ハイスクールで2年受講してるでしょ。##



『あ、いや。

習いましたけど、英語なんて喋れませんよ。

教師の教え方が悪くて全然飲み込めないんです。』



##ソウルクラッシュ!##



『ぶえ!

いきなり殴らないで下さいよ!』



##今、アナタの記憶の英語授業を精査してるけど、この上なく分かり易い授業よ。

きっちり体系化されて、どんな馬鹿でも習得可能な教え方をしてるわ。

特に中学2年時の担任でもあった岡脇奈緒子教諭。

誰よりもアナタの前途を心配してた!##



『…あのオバサン、口煩いから嫌〜い。』



##ソウルクラッシュ!##



『ぶぼえっ!』



##アナタはそうやって他者の思い遣りを踏み躙る!

心を改めなさい!##



『…はいはい、じゃあ。

エルデフリダさんが私の心を侵食している間に勝手に改めておいて下さい。』



##ワタクシを寄生虫みたいに言うな!##



『ぶべぇ!!』



##Good day everyone.

Great yacht.##



俺があれだけ苦しんだ英語教育だが、何故かこの異世界女が習得してしまっている。

釈然としないのだが、エルデフリダ曰く苦労したのは岡崎教諭であって俺ではないそうだ。



(以下英語での会話、エルデフリダが自動的に邦訳してくれている。)



##こんにちは、良い船ですわね。##



「おお、褒めてくれてありがとう。

日本人はシャイなのか、中々話しかけてくれないから嬉しいよ。」



##どちらからお越しですの?##



「豪州だ。

マレーシアを通って日本にやって来た。

このまま日本をぐるっと回って澳門に遊びに行こうと思ってる。」



##何か面白い物は見れましたの?##



「マツムラヨーギシャ(笑)」



##あら、もう少し文化的な観光をすればよろしいのに。##



「キョートは逃げないが、マツムラヨーギシャは逃げる。

その違いは大きいねぇ(笑)」



##あらあら、オッホッホ。

そんなに興味があるならエサを与えてみます?##



「え、いいのかい?

ワイフが大ファンなんだよ。

いい歳して猫耳なんて最高にcoolだってね。」



##檻に近づき過ぎないでね。

いかがわしい病気を伝染されるわよ。##



「Oh!

病気は船旅の大敵だ。

私の先祖もボルネオで死んだ。」



  「ん?

  この毛唐は何ニャガ?

  おい、ミセモンじゃねーぞ!!

  (檻ガチャ✕20)」



「uuuuum.

流石は凶悪逃亡犯だ。

まるでケダモノだね。

ねぇ、お嬢さん。

マツムラヨーギシャは純血の人間?

クローン技術とかそういうの使ってない?」



##いえ、猫の股から生まれた畜生です。

人間のフリが巧妙ですので、騙されないように気を付けて下さいな。##



  「おい、いい話があるニャ。

  10倍にして返すからさぁ。

  3000ドル貸してくれニャー。」



「うわ、本当だ!!

典型的な詐欺師の口上だよ。

ねぇ、お嬢さん。

賞味期限の切れたクラッカーを与えてもいい?」



##ええ、雑食性なので指を食い千切られないように気を付けてね。##



「Oh! 怖い怖い。

指はヨットマンの命だよ。

ほら、食っていいぞ。

(ポイッ)」



  「テメー!!

  舐めてんのか!!

  ブッ殺すぞ!! 

   (檻ガチャ✕30)」



「うおおっ。

流石は人外凶悪犯罪者だ。

迫力あるなー。

日本に寄港した甲斐があったよ!」



##ねぇ、次はどこの港に行くのかしら?##



  「たっく、どいつもこいつも…

  奈々ちゃんを馬鹿にしやがって。

  (ボリボリムシャムシャ)」



「ん?

長い岬を迂回して宮島を見に行くつもりだけど。」



##あら、そう。

それじゃあ1つお願いがあるのだけど。##



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『ねぇ、エルデフリダさん。』



##んー?##



『どうして彼らは、気前よく船内にまで案内してくれてるんですか?』



##あら、人の懐に潜り込むのは大魔王の十八番でしょう。##



『茶化さないで下さいよ。

悪意あるなー。』



##考えてもみなさい。

彼らは日本に来てから話しかけられる事が殆どなかったのよ。

口ぶりからしてマレーシアでは港毎の交流があったみたいね。

水上行商人も押しかけてきたみたい。

だから、この日振島で同じ資本家階級のアナタから話し掛けられて嬉しいんでしょう。##



『彼ら資本家なんですか?』



##少なくとも資産家ではあるわね。

そもそも労働者階級は船旅を楽しむ可処分所得も可処分時間も無いもの。

こんな巨大なヨットで国外旅行出来るなんて、限られた層よ。##



『ふーむ。』



##越境は資本家の特権。

現にコリンズ一家は王都からソドムタウンまでやって来たじゃない。

彼らも裕福だから船旅が出来るの。

仲良くしておきなさい。##



『金持ちだから仲良くするっておかしくないですか?』



##資本家なんて所詮は超少数派。

弱者同士つるんどきなさいって話。##



『はーい。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「じゃあ、向かいのあの島に流れ着いたお仲間を拾えばいいんだね?

えっと、確か戸島とか言ったか…

あの地形じゃ接岸出来ないけど。」



##安心なさって。

彼、特殊な訓練を受けてますの。

接近すれば自分で泳いで来ますわ。##



「ジャパニーズニンジャ(笑)」



##最近まで警察機構に在籍したらしいですわ。

辞めてからは追い回されてみたいですけど。##



「ヌケニンww ヌケニンww」



##そう笑ってあげないで。

本人は悲壮なのだから。##



「お嬢さんは何のビジネスをしているの?

ジャパニーズマフィア? ヤクザ?」



##誓って反社会勢力ではありませんわ。##



「HAHAHA!

浜辺の大男、凄いビューティフルな刺青をしていた。

あれで一般人は無理があるね。」



##返す言葉も御座いませんわ。

でも、比較的善良な精神に基づいて行動しておりますのよ。##



「お仕事は何をしてるの?」



##金融? 

区分としては資産家になるのかしら?##



「HAHAHAHA。

じゃあ悪い金持ち同士仲良くしよう。」



##本人は善良な資産家でありたいようなのですけれど。

中々、難しいですわね。##



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



豪州船で小牧が流れ着いた日振島の対岸にある戸島に接近。

岩礁のギリギリまで豪州船を近づけると、小牧はスルスルと泳いでヨットに上がって来た。



「ハアハア!

猊下、申し訳御座いません!」



『謝る事はないですぅ。

小牧さんはよくやってくれていますよ。』



「こちらの方々は?」



『通りすがりのジョーンズさんですぅ。

メルボルンで何棟かテナントビルを経営しているらしいですぅ。』



「Mr.ジョーンズ。

主君が大変お世話になりました。」



「礼を言うのは私の方さ。

面白い物を色々見せて貰ったからね。」



ジョーンズ氏は愉快気に松村への餌付けを語る。

結局、俺達はジョーンズ氏にカネを握らせて運んでもらう事にした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


【所持金】


8億円

 ↓

7億円


※舟渡し賃としてテッド・ジョーンズに1億円支払い。

※僚船に46億2524万0283円を積載中


大麻1キロ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



そこそこ裕福なのだろう。

1億円を渡した時の驚き方が薄かった。

カネよりも体験を重視しているらしく、豊後灘の渡海に用いた船舶を圧壊させる様子を見せると爆笑しながら喜んでくれた。



  「レニーファイヤー!!」



  「アネモネダークネス!!」



  「「合体奥義!!」」



  「「ダークフレイムッ!!」」



  (ドンガラガッシャ!!)



  「オヒョヒョヒョ♪」



  「ウェヒヒヒヒヒ♪」



「Bravo! Bravo!

It's great to see the antics of barbarians!!」



##思いのほか喜んでくれたわね。##



『やっぱり動きがあると食いつきがいいですよ。』



##暗黒魔法も火魔法もビジュアルが派手だから助かるわ。##



乗って来た船を抹消し、ジョーンズのヨットで四国入りする段取りとなる。

松村を海に放り捨てたかったのだが、サヨ婆にゴミの不法投棄を厳しく戒められたので断念。

まあな、島民にとっては養殖業は命綱だからな。

松村の死体がこの辺で上がってしまったら、とてつもない風評被害を蒙るだろうからな。



搬入用のミニクレーンで箱罠ごとデッキに積み、シートで覆った。

ニャガニャガ煩かったので、ジョーンズ氏がスピーカーからラップを流す。



「ニャガーッシュ!! (チェキラッ)

ニャガラーーッシュ!! (Oh Yes!!)

ブッ殺すぞテメーら!! (Love&Peace!!)

オラァッ! トイチッコラァっ! (チェキラッ!!)」



よし、これで誰かに聞かれても《豪州式ラップ》と言い訳出来るな。



##ねぇ、大魔王。##



『はいー?』



##恩寵の儀はどうするの?##



『あー、もうそんな時間ですかぁ。』



##アナタねぇ、自動発動系のスキル使いなら時間管理キッチリしなさいよ。

常識でしょ。##



『私、スキル文化圏で育ってませんからぁ。』



##言い訳しないの。

もうスキル習得から、かなり時間経ってるでしょ?

いい加減に適応なさいよ。##



『ぶー。』



##ほら、レディが不貞腐れないの。

どうする?

ここで紙幣出しちゃう?

目撃者はどの範囲まで始末するの?##



『どうせ、近いうちに公知になるんだから、松村容疑者以外は殺す必要ないんじゃないですか?』



##この能力を見られたら、余程鈍い人間以外にはアナタがサトシ・ナカモトだって気付かれるわよ?##



『ふうむ、確かに。

そうですね。

キャッシュは寒河江船に送ります。』



##出来るの?

そんなこと。##



『?

だって寒河江さんは私のですし。』



##あ!

その為の衆道なのね!?

あー、確かにそれならパスが開くわ…#



『パス?』



##呆れた、知らずに運用してる訳?

スキルの通行許可証のようなものよ。

例えば、アナタが精度の高いワタクシの仮装をしたことで、ワタクシとの間にパスが通った。

これは召喚術の初歩。

アナタは意識せずにやってたのだと思うけど、スキルの本質って召喚なのね。

寒河江と寝た事で、アナタは彼に対してパスを開いたの。##



『はぁ、説明は3行以内で簡潔にお願いしますぅ。』



##あー、また思考を放棄した!

駄目よ、せめて自分の状況くらいは理論立てて理解しなくちゃ!##



『…うるさいですね、考えてますよぉ。

私なりに色々作戦があるんですぅ!』



##嘘おっしゃい。

アナタの脳味噌をチェックしてるけど

《江本に全てを委ねる》

としか書かれてないわよ!

丸投げは亡国の道よ、猛省なさい。##



一々口煩い女だ。

うーん、俺なり色々想定してきたつもりだが…

異世界人が脳内に寄生する事態までは流石に考えてなかった。

神社のお祓いか何かで消し去りたいのは山々だが…

一応、こんなのでもドナルドの奥さんだからな。

ポールの初恋相手だと聞いたが…

こんなオバサンのどこが良いのだろう?



##ワタクシはまだ若い!

20代後半に見られる事もあるッ!!##



ねぇ、オバサぁ↑ン↓

社交辞令って知ってますぅ↑?



##キーッ!!

この去勢野郎ッ!!

ソウルクラッシュ!!##



ごべばッ!



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




その後、小一時間ほどエルデフリダと拳で親睦を深めあっているうちに複利が発動してしまう。

隠蔽手段を思案する暇も無かった。



《13億6300万円の配当が支払われました。》



アナウンスとは裏腹にカネは噴出されない。

ただ、確かに手応えはあった。

十中八九、寒河江隊に送れているだろう。

つまり、俺の生存を伝えることが出来た。



気になるのは、アナウンスが整数だったこと。

明らかに俺へのメッセージだ。



##親切で教えてあげるけど。

サガエ達は手持ちを40億ウェン丁度に減らしたわ。

アナタの7億と合わせて、47億ウェンに29%の日利が発動した結果が今日の金額よ。##



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持金】


7億円

 ↓

60億6300万円



※配当13億6300万円を取得

※大麻1キロを取得



大麻1キロ

  ↓

大麻2キロ



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



なるほど。

じゃあ、ますます寒河江隊の意図は明白だ。

《いつ合流出来るか分かりませんから、勝手に使いますよ。》

恐らくは、そういうこと。

これに対する賛否表明は簡単。

明日も俺が寒河江隊にカネを射出すれば、《ある程度、自由に使ってくれ》という意思表示となるし、逆に彼らに送らなければ、《資産を温存せよ》と解釈してくれるだろう。



問題は大麻がまた増えたこと。

そしてジョーンズ夫妻がこの分野に熟達していたこと。



「これは上物です!」



『はぁ、そうなんですね。』



「私が見てきたマリファナの中では1番良質だ!

少し吸わせて貰っていいですか?」



「ちょっと待つニャー!

その大麻は奈々ちゃんの精製した感度3000倍のスペシャル大麻ニャ!

勝手に吸うニャー!!」



『はいはい。

じゃあ、耳を揃えて元本をお返ししますよ。

(足元にパサッ。)』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【所持品】


大麻2キロ

 ↓

大麻1キロ



※大麻1キロを松村奈々に返還



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ニャ!?」



『ジョーンズさん、こっちは射出したての所有権100%私の大麻ですからご自由にお楽しみ下さいね、

奥様もどうぞ。』



「ちょっと待つニヤー!」



『え?』



「不思議そうな顔すんニャ!

元はと言えば奈々ちゃんの大麻だぞー!」



『ですから、元本はちゃんとお返ししたじゃないですか。

今、ジョーンズ夫妻にお譲りしたのは、私が自力で増やした大麻ですぅ。

だから、所有権は100%私なんですぅ!』



「ちょっと待てニャ!!

そんなの認めたら、資本家の総取りになってしまうニャ!

利息は悪ニャガよ!」



『はぁ↑?

言い掛かりは止めてくれますぅ↑

私の総取りは正義の総取りなんですけどぉ↑』



「ニャガーッ!

オマエ、女の嫌な部分だけ精密トレースしてんじゃねー!!」



##うん、そこはアグリーね。##



『はぁ↑?

いい部分だってトレースしてますけどぉ↑?

プリキュアの声真似ックスは男の人に好評ですけどぉ↑』



「それが1番嫌な部分ニャーッ!!」



結局、松村がゴネたので《大麻解禁法案に反対しない》という交換条件で、大麻の利息を受け取ることを認めさせる。



「おい、ド素人!!

奈々ちゃんの大麻は世界最高峰のキメキメ大麻だからニャ!

そこは忘れるニャよ!」



『はいはい、大袈裟乙(笑)』



「ホントだって!!

じゃあ、そこの毛唐に聞いてみろニャ!!」



どうせいつものビックマウスだと思ったのだが、ジョーンズ夫妻曰く、まるでロマネコンティのように芳醇な世界最高峰品質の大麻らしい。

夫妻は地元でも夜な夜なドラッグ乱交パーティを主催して荒稼ぎしているらしいので、信憑性はある。



「ほーら見ろニャ!

ほーら見ろニャ!

奈々ちゃんは大麻製造の天才なんだニャ!」



『あ、いや。

我が国では無資格者の大麻製造が厳禁されているのが問題なのであって…』



「今オメーも製造したニャガ!!」



『えー、私のは自然増殖しただけであって、製造はしてないですよぉ↑?』



「キーッ!!

オメーはズルばっかりする!!

卑怯者! 犯罪者! ホモ野郎! 独占資本!」



『どどど独占ちゃうわ!!』



「キーキーッ!! ニ゛ャオーンッ!!」



『キーキーッ!! ギャオーンッ!!』



俺と松村が罵倒し合う様子をジョーンズ夫妻は温かい眼差しで見ている。

曰く、世界の変人奇人との触れ合いはカネでは買えない最高の娯楽らしい。

夫妻が希望したので、俺と松村は4ショット撮影に応じてやる。


出力されたポラロイド写真を見たジョーンズ氏は頬を紅潮させて「Yes!! Yes!!」と嬉しそうに叫んでいるので、まあ我が国のインバウンド政策には貢献出来たとみるべきだろう。



『サヨさん。

燃料増えました?』



「タンクが満タンになってた…

どういう仕掛け?」



『あははは、どこからか持って来たのかも知れませんよ。』



「ねぇ、アンタは海賊なのかい?」



『いいえ。

良い海賊です。』



「よしなよ。

純友さんもそう言って殺された。」



『私は勝ちます。

勝って1000年越しの悲願を成就してみせます。』



「悲願?」



『当然の権利のような顔して税金取る奴こそ海賊ですよ。

私がそういう連中を根こそぎ抹殺して、皆が豊かに暮らせる社会を作ります。』



「…税金下がるの?」



『泥棒が死ねば嫌でも下がりますよ。』



「…ねぇ。」



『はい?』



「アタシらみたいな離島の老人が、アンタらの世代から重税を取り立てている張本人だとしたらどうする?」



『…正月に餅でも配ります。』



「あはははは!!

アンタ海賊向きだ(笑)」



『師の教えが良かっただけです。』



サヨ婆は俺に若手(厄年は過ぎていたが)の漁師を紹介してくれて、宇和島本土の様子を聞き出してくれた。

供養料が効いたのか、海保や水上警察の哨戒範囲の穴を教えてくれる。

そしてジョーンズ氏も交えて佐田岬越えのタイミングを練った。

ケイト夫人がヨットからラム酒を持ち出して島民に振る舞う。

盃を傾けながら、皆で互いの無事を祈った。

最後にサヨ婆と固く抱き合って別れを惜しんだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



船内。

デッキの松村以外は全員船室に招かれ歓談。

水に濡れて使えなくなったスマホを乾燥させて、復旧を図る。


福田のスマホは駄目だったが、光戦士のスマホは微回復。

重要なデータを高速でメモ帳に書き写している様子を見るに、やはり光戦士は現代っ子なのだろう。


それにしても今日は疲れた。

俺は何もしてないのだが、魂の中でエルデフリダと延々に殴り合っていたので、全身がズキズキする、



「リン兄ちゃんの異世界スマホも壊れちゃったのだ。」



『そりゃあ、派手に水没しましたからねえ。』



「あーあ、完全に液晶が滲んじゃってる。

これは絶対に…


え?

リン兄ちゃん!!

何か聞こえるのだ!!」



『まさか?

完全に海水に浸かってたんですよ?』



  「ポール殿!!!

  9時の方向から熱源多数接近ッ!!!」



  『くっそ!!!

  何故、こっちの位置が…

  

  (ドガ――――――ンッ!!)


  ぐわあああああ!!!!』



  「ぐわあああああああ!!!

  

  ハッ!?

  左腕損傷ッ!!!

  シールドが展開できません!!!」


 

  『何ぃ!?』




「え?

嘘、何で水没スマホが機能してるのだ?

異世界パワーって奴っすか?」



『あらぁ、確かに何か聞こえますぅ。

音量が小さくてよく聞こえないけど。』



「うわー、異世界凄いっすね。

だってデッキに溜まった海水に一晩浸かってたんすよ。

ボクのNintendoSwitchなんて、大雨で壊れちゃったのに。」



『あ、光戦士君いいなあ。

私もゲーム機欲しかったんですよ。』



  『ジミーッ!!!

  もうチャフは撒くな!!

  煙に紛れて砂丘の裏側に逃げるぞ!!』



  「了解ッ!!

  このまま動力を温存しつつ…」



  『ん?

  どうした?』



  「…背後から敵影ッ!!」



  『機数は何機だ!?』



  「いえ、それが…

  敵影は一機だけなのですが…」



  『…よし、ここで迎撃するぞ!!!』



  「いや、ありえない。

  何でゴザルかこのスピードは!!!

  一機が通常の3倍の速度で…

  

  ハッ!?

  この動きはカロッゾ機ですッ!!!!」



  『…馬鹿な、大将機が単騎強襲!?

  あ、ありえん!!!』



「え?

意外なのだ。

リン兄ちゃんはゲームとか興味の無い人だと思ってたのだ。」



『ほら。

私の実家って貧しかったじゃないですか。

なのに父が自分よりも私を優先するタイプの人だったので。

迂闊に何かを欲しがれなかったんです。』



「ああ、言い難い話をさせてしまってゴメンなのだ。」



『いえいえ、光戦士君が気を遣う必要はないですよ。』



「ねえ、リン兄ちゃん!

もしも、もしもボクらが無事に帰れたら!」



『はい。』



「2人で羽根を伸ばして遊ぶのだ。

ゲームをしたり、散歩をしたり。

おカネや社会のことを忘れて、少しだけ息抜きをするのだ。」



『はい!』



  「ポール殿ッ!!

  ハッチを開けてはなりません!!!」



  『こうなったら一か八かだ!!!

  俺が相手の全弾をスキルで消す!!!

  カロッゾの奴が距離を詰めると同時に

  カウンターを叩き込むぞ!!』



  「そんな容易い相手ではゴザらん!!!」



  『他に手が無い!!

  ランチャーを起動させろ!!!』



  「もう予備弾しか残ってません!!!」



  『それでいい!!!

  ゼロ距離で叩き込む!!!』



  「死にに行くようなものでゴザルぞ!!!」  



  『いいからランチャー装填だ!!!

  オマエは機体の制御に専念しろ!!!』



##ねえ、光戦士君。##



「何なのだエルデフリダ。

今、ボクがリン兄ちゃんと話してるのだ。

引っ込んでろなのだ。」



##違う違う。

その端末よ。##



「この異世界スマホがどうかしたのだ?」



##早口眼鏡がスマホでゲームをやってるのを見たわ。

大魔王にゲームをやらせたいなら、スマホで何か体験させてあげたら?##



「ふむ、エルデフリダにしては気が利いているのだ。」



##ふっ、伊達に社交界の女王と呼ばれてなくてよ。##



「リン兄ちゃん。

どんなゲームやってみたいとかあるのだ?」



『そうですねえ。

一度、光戦士君のお兄さんにゲーム画面を見せて貰った事はありますけど。』



「へえ、ピカ兄ちゃんはどんなゲームをやってたのだ?」



『女の人のおっぱいが揺れるゲームでした。』



##キモッ! そいつ最低ね!!##



「あちゃー、あの人らしいのだ。」



『これ光戦士君に言っていいのか分かりませんけど。

金本君、画像検索で拾って来たイケメンの写真を使ってマッチングアプリしてたんです。

ゲームの最中もずっと通知が来てて驚きました。』



「うっわー。

それ、ボクのパパ上が使ってた手口なのだ。

ママ上に見つかって、凄く怒られてたのだ。」



『彼、イケメンを悪用しつつルッキズムを激しく憎悪してましたからね。

《世の女への復讐に優るゲームなんかあらへん!》

って言ってました。』



##キショ! キショ! キショ!##



「エルデフリダ。

あまり人の身内をキモがるななのだ。

男は色々大変なのだ!」



『そうですよ、エルデフリダさん。

男の人は色々大変なんですから。

私達が分かってあげなきゃ駄目なんですぅ。』



##アナタ、どの立ち位置よ…##



  「カロッゾ機、真っ直ぐに突っ込んで来ます!!

  7秒後に接触ッ!!」



  『初撃に賭けるぞおおおッ!!!!!』


  

  「了解ッ!!」



##あ、大変。##



「どうしたのだ?」



##お化粧落とさなきゃ。

お肌が荒れちゃう。##



「あー、ボクのママ上も言ってたのだ。

歳を取ると生活のダメージがそのまま肌に来るって。」



##ワタクシはまだ若いッ!!##



『くすくす、オバサンは全員そう言いますよね(笑)』



##キーーーーーッ!!!

つべこべ言わずにスキンケアなさーーーーい!!!##



『はいはい。』



「必死乙(笑)なのだ。」



  「このまま高速右旋回でゴザルッ!!!」



  『この一撃で決めるッ!!!

  落ちろォォォォッ!!!!!』



  「『うおおおおおおおおおおッ!!!』」



##ギャオ――――――ンッ!!!!##



「『あっはっは♪』」



エルデフリダがうるさかったので、ケイト夫人に手伝って貰い念入りにメイクを落とした。

俺の身体だからいいじゃないかと思うのだが、この女に言わせれば自分に扮している以上は美貌を保つ義務があるとのこと。

まあ言い分はわからんでもない。


気が付けばヨットの中は大麻で満ち、ジョーンズ氏とアネモネが内緒話をしながら嬌声を挙げていた。

ケイト夫人は福田が気に入ったらしく重傷で苦しむ彼に跨って爆笑している。

やれやれ、金持ちの遊びって不健全だよなあ。


光戦士のスマホが完全復旧したようなので、エルデフリダと3人でパズルゲームをして遊んだ。

右舷には途方もなく長い佐田岬が延々と続いていた。

【名前】


遠市・コリンズ・エルデフリダ・リン子・厘



【ステータス】


《LV》  29

《HP》  地球側重傷/異世界側意識不明重体

《MP》  疲れた/ハロルドが見舞いに来ない

《力》   最弱

《速度》  どんくさ

《器用》  どんくさ

《魔力》  微弱

《知性》  ド低能

《精神》  病

《幸運》  金運宇宙最強/女難の相


《経験》 42億0096万6396


本日取得  0

本日利息 9億4440万3298

次のレベルまでの必要経験値11億6774万2714


※レベル30到達まで合計ポイント53億6870万9110




【スキル】


「複利」 


※日利29%

下4桁切り上げ 




【所持金】


所持金60億6300万円




8413万BTC  (下4桁切り上げ)

  ↓

1億0853万BTC



3587万XRP (下4桁切り上げ)

 ↓

4628万XRP



3587万SOL (下4桁切り上げ)

 ↓

4628万SOL



☆保有大麻1㌔




【残り寿命】


5955万8500日 (下4桁切り上げ)

  ↓

7683万8500日




【約束】


 コレット・コリンズ  「ヒルダ討伐を邪魔しない。」

 ヒルダ・コリンズ   「コレット討伐を邪魔しない」

× ハロルド・キーン   「義絶届にサインしておくように。」

× ドナルド・キーン   「離婚届にサインしておくように。」

 クレア・V・ドライン  「所領監査に応じる」

 金本光戦士      「王朝存続の暁にはヒルダを連れて異世界に帰還すること」

 ウラジミール7世    「全時空永遠帝国の建国を託す!!」

 レニー・A      「四天王権限でエミリー共々減刑申請する。」

 上甲小夜       「離島支援の為の補正予算を獲得する。」

 松村奈々       「大麻解禁法案への不干渉。」


〇ポール・ポールソン   「君のことはボクがずっと守ってあげりゅ!」

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― 新着の感想 ―
8413万BTC  (下4桁切り上げ)↓10億8530万BTC のところが理解できなかった。 なぞ?
喋る害猫はちょっと檻ごと海に沈めて海水で消毒してやろう 塩で殺菌されるさ 大体一時間も沈めれば身も心も綺麗になるはず
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