【顛末記25】 作業員
遊牧的に本拠を移動し続けている摂政コレット・コリンズだが、魔界滞在期間は数十日と極めて短かった。
だが、短すぎる滞在に対して魔界側から不満の声は挙がらない。
何故なら、過去にこの地で大規模ジェノサイドを敢行したコリンズ母娘は他の地域同様にかなり嫌われているからだ。
そんな彼女が早々に首都エデンを立ち去った事に魔族一同は胸を撫で下ろしていた。
「ですが、タダで帰る御仁ではありませんでしたな。」
『うん。
摂政は最初からリザードを一本釣りするつもりだったのかも知れないな。』
「陸に上がっているリザードだけでも20は居たでゴザル。」
『という事は、岸壁の底には100以上が待機しているのだろうな。』
今回、魔界の首都エデンに滞在していたコレット・コリンズは諸種族の陳情を広く受け付ける傍らでリザード種と長い協議をしていたらしい。
親衛隊曰く、潜水服を着用して水中リザードの集落にも挨拶に行ったとのこと。
(本来、あれは重罪人がやや遠回しの死刑として無理矢理着せられるものである)
もはや正気の沙汰ではない。
ないのだが…
人類史上、彼らに対して真剣に接した為政者が居なかったこともあり、どうやらリザード種全体からの支持を得たフシがある。
もしそうだとしたら、またしてもコレット・コリンズは世紀の偉業を達成したことになる。
そして単に歴史的意義に留まらず、彼女は実務面での活用を開始した。
その第一弾が、着岸するなり発表した魔族留学構想である。
魔族と人間種が技術・制度を相互伝授し、互いについての知識を深める事によって、世界全体の生産力を向上させ、紛争発生率を引き下げるという表向きの趣旨。
無論、摂政の本音は皆が知っている。
彼女が会議の度に力説しているエッセンシャルワーカーの確保。
それが低税率社会を築いてしまった彼女の至上命題。
今回のリザード招聘を突破口の1つにしたいのだろう。
具体的には水中作業にリザードを、地中作業にゴブリンを活用出来ないかを検討しているのだ。
勿論、世論の反発は予想されるが、試験導入の意思は固そうである。
それ程までに労働力不足は喫緊の課題なのだ。
コレット・コリンズの善政によって豊かになった人民は昔の様に苦役に従事してくれなくなったからである。
元々不人気だった軍隊や鉱業への志望者は更に激減し、比較的マシだった工場労働や土木作業も人手不足に悩んでいる。
そして本当に人が居なくなったのが、危険極まりない地中・水中作業員である。
そりゃあそうだろう。
せっかく食うに困らなくなったのだ、あんなに危険な仕事を続ける馬鹿は居ない。
危険な職場を辞めた彼らは、実入りの良い人民農場で適度な汗を流し、農場に併設された快適な人民住宅で家族と楽しく暮らしている。
「誰があんな地獄に戻るものか。」
元作業員は口を揃えて、そう言っていた。
想像してみてほしい、彼らの元の職場を。
まず街から遠く離れた飯場に最低1年は拘束される。
職長は冒険者か傭兵崩れの乱暴者ばかり。
毎日のように仲間が殉職する。
それも地底で岩に押しつぶされたり、空気筒の破損で苦しみ抜いて窒息死したりなので、死体は極めて酷い状態となる。
自分達が低賃金で酷使されているのに株主や経営陣は工事の完了で莫大な利益を得る。
そして彼らは満面の笑みで経済誌の取材にこう答えるのだ。
「労働力など幾らでも確保出来ます!
さらなる効率化で前年度対比〇〇%の増益を達成致します!」
賭けても良いが、そんな職場に戻る馬鹿は居ない。
『俺が摂政を評価するのはさ。
最初からこの問題に当事者意識を持ち続けている点なんだ。
戦争に勝ったとか領土を広げたとか、皆はそういう点ばかりに着目するけど、あの人の本質はもっと深いよ。
もしも、俺とあの人の年齢が逆で…
あの人がソドムタウンで立候補してくれたら…
生命を捨ててでも支援してただろうな。』
「それを本人に言ってあげれば宜しいのでは?」
『俺たちのソドムタウンは既に失われた。
ただそれだけの話さ。』
俺達の眼前をリザードの一団が通り過ぎる。
雰囲気からして武人階級ではない。
恐らくはリザード社会における本職のエンジニアだ。
内々に聞かされている事だが、摂政はかつてピット家が私有していたハフマン島なる南洋への中継島嶼をリザード種に下賜する腹づもりである。
元々リザード種の居住地だったところを百年程前にピット家が海軍や冒険者を使って征服した土地なので、ある程度は筋道の立った話だ。
ただ民意の反発を最小限に抑える為にも、魔族との協力が有益である事を天下に示さなければならない。
なので、リザードにとっても摂政にとっても、今回の危険作業への魔族活用は正念場である。
当面は魔族にインフラ整備を委託しながら、人間種だけでも維持可能な体制を整える。
それがエッセンシャルワーカー不足に対する摂政の回答。
「ポール殿と連動しておりますな。」
『え? 俺?』
「ゴブリンとオークを領土に招聘したでゴザロウ?」
『あ、いや。
あれはあくまで友人としての招待であって…』
「でも、砂漠に到着すればポール殿は必ずやオーク式やゴブリン式の手法を導入するでゴザル。
結局、文明や産業を興すのですよ。」
『まあな。
オークは植林や養茸に長けていると聞いているから、学びたいとは思っているよ。
お互いに何かは得たいな。』
ジミー曰く、今回の渡海は統一政府の武威を大きく高めたそうだ。
客観的には統一政府が完全に王国と魔界を取り込んだように見えるらしい。
王国などは実際は全然なのだが、賢王エドワードの名義で(統一政府にとって限りなく都合が良い)布告が発されるようになり、見ようによっては制圧が完了したとも言える。
魔界に関しても、俺がゴブリンやオークと行軍したり、コボルトを近侍させていた摂政が今回リザードまでを招聘したので、完全に支配下に置いたように誤認する者も居るだろう。
そう、統一政府は去年までと比較して明らかに覇権の質を向上させているのだ。
去年までは天下統一と言っても、遠方の勢力にとっては《新興の魔王とやらに服従せざるを得なくなった》、程度の覇業に過ぎなかった。
今はそんな生易しい状態ではない。
世界から余白が完全に失われてしまった。
『嫌な時代になったよなー。』
「ちなみにこの時代を作った最大功労者がポール殿でゴザル。
貢献度高いでゴザルぞー。」
『マジかー。
みんなゴメーン。』
「いいのではないですか?
税金も下がりましたし。
やはり減税こそが最大の善政なのですよ。
親が殺されてもなお摂政殿下を支持している者も珍しくはありませんぞ。」
『…今までが酷過ぎたんだよ。
コリンズ夫妻を間近で見た身としては、人類史はあまりに低レベルだわ。』
「今後の為政者は摂政殿下やポール殿と比較され続けるから大変でゴザル。」
『俺?』
「ベアの巣穴で野営、砂漠の真ん中をくり抜いた宮殿、腹が減ったらサソリを炙って飢えを満たす。
これ程カネの掛からない為政者も珍しいのでは?
少しは懐を肥やせと世人が逆に不安がってますぞ。」
『懐も何も、ガキの頃に散々周りに甘やかされたからな。
もうイランわ。
オマエがとっとけよ。』
「拙者、幼少の頃よりポール殿に甘やかされて育ちましたからな。
もう不要でゴザル。」
『あっそ。』
俺とジミーがぼんやりと眼下を眺めていると、リザードと摂政親衛隊が談笑しながら水路の前で何やら作業をしていた。
きっと歴史的に見れば劇的な光景なのだろうが、遠巻きにしている群衆に然程の動揺はない。
彼らが鈍感だからではない。
大魔王降臨以降、あまりに衝撃が連続したからだ。
俺も含めて皆、脳が驚愕に飽きている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
無論、幸か不幸か全人類の脳は麻痺し終わってはいない。
僅かながら健常な思考を行う者も存在する。
「何卒、公王様からお口添えを…
我々一同、多大な衝げ…
感銘を受けておりまして。」
『いやー、口添えと申しましても。』
俺のゲルの前に積み上げられていていたのは、東方の名産物。
金銀の細工物や古代の魔導具など。
要は献上品である。
なるほど、常道ではある。
どうやら東方文明圏の連中は俺達ほど驚愕に慣れていないようだった。
「我らの文明の粋を凝らした名品の数々で御座います!
金銀宝石!!
国宝である龍の魔石も献上致します!!
摂政殿下の為に不死鳥の羽毛で編み上げたドレスも用意致しました!!
全身に777個のルビーを散りばめております!!」
『あ、ちょっと。
あ、ちょっとスミマセン。』
「は、はい?」
『いやいや、前にも申し上げたと思うのですが…
摂政は華美を嫌う方です。
こんなに多くの貢ぎ物を持って来られましても…
逆効果になるのではないかと…』
「あ、いえ。
こちらの貢ぎ物は公王様の分です。
奥方様に喜んで頂けましたらと!」
…奥方?
え? 具体的には誰だ?
自称奥方ならいっぱいいるのだが。
ポーラ? 元嫁? エミリー? レニー?
…うん、却下。
「無論!
他の四天王の皆様にも抜かりは御座いません!
我々東方人が贅美を凝らして作り上げた宝飾を献上致します!」
そう言って東方人は眼下の馬車群を力強く指さす。
あの長々と続く馬車列の全てに統一政府首脳への貢ぎ物を満載して来たらしい。
しかも全ての馬車に仕立師が乗り込んでいて、どのような体型の女性に対しても極上のドレスを献上可能とのこと。
流石は絢爛豪華な宮廷文化で知られる東方文明圏である。
しかも彼らは洗練された贈答作法も備えている。
天下人がコレット・コリンズでさえなければ、意外に上手くやれていたかも知れない。
…でも、多少の政治的パフォーマンスも含まれているのかも知れないが、あの人は華美な物が嫌いだからな。
「…我々の誠意が摂政殿下に届けば良いのですが。」
特使は不安そうな顔で俺を見つめるばかりであった。
安心してくれ、俺はもっと不安だ。
『…そうですねえ。
摂政は異文化の学習に熱心な方ですから、必ずやフィルターを突き抜けてくれると信じております。』
東方文明圏は俺が統治(?)する永劫砂漠0万石の東に広がっている。
我々の文明圏との接点は極めて少なく、俺にとっては博物学上の存在でしかない。
こっそり本音を打ち明けると、俺は彼らにあまり関心がない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
3年前。
この東方文明圏は帝国に一大決戦に挑み、歴史的な大惨敗を喫した。
我々の文明圏でも無敵と畏怖された皇帝アレクセイの電撃奇襲作戦によって本陣を全滅させられたのだ。
王族・諸侯・将官・豪商・官僚、みんな死んだ。
当然、東方文明圏は大混乱に陥った。
それまで人民に重税を課していたこともあり、各地で叛乱が頻発したのだ。
結果、数え切れない住宅地・農地・牧草地が焼け落ち、彼らは生存不能状態に陥った。
こちらに混乱が波及しても迷惑なので、統一政府は仕方なく人道支援を行なった。
領土の近さ故に義援米支援の最終責任者となった縁もあり、俺が対東方文明圏の申次に任命された。
「彼らも最初は喜んだのでゴザルがな。」
『え? そうだったの?』
「ポール殿は袖の下を一切要求しないし、諸官庁にも意地悪せずに取り次いでくれるでゴザロウ?」
『いや!
俺は申次職なのだから、少しでも円滑な仲介に努める義務がある!』
「…得難いですなぁ。」
『皮肉か?』
「旧世界に対してのでゴザルよ。
権威主義的な彼らにとって当初のポール殿は与し易く映ったのでしょうなぁ。
どこか態度に馴れもありましたし。」
『俺は一介の役職者に過ぎん。
幾らでも馴れてくれて構わないさ。』
「こういう殊勝な態度を取り続けている御仁が、実は武闘派であると判明した。
今回の王国遠征、世の人は全員見ておりましたぞ。
東方人が焦るのも致し方ありますまい?」
アレクセイの時もそうだったらしい。
即位後の彼は東方文明圏に対して温和な姿勢を取り続けていた。
生まれの低さを隠す訳でもなく、抱えていた東方との諸問題に対しても武力ではなく外交的努力で解決しようと努めていた。
これが東方人のアレクセイ軽視に繋がった。
「今度の皇帝は軟弱で臆病だ!」
そう誤認した東方人達は大々的な領土拡張の好機として捉え、民族総出で帝国侵略を始めた。
彼らの目算では500万石以上の新領土が労せず手に入る筈だった。
迎撃に出てきたアレクセイの手勢が万にも満たないと知った時の彼らは狂喜乱舞したらしい。
その直後の悲劇は今更語るまでもない。
『俺如きを天才アレクセイと並べられてもな。』
「彼らの中で重なる部分があるのでしょうなぁ。
当初ポール殿を侮っていただけに、余計にトラウマを刺激したのでしょう。」
『…もうさあ、アイツらの世話をジミーに丸投げさせてくれない?』
「駄目。
それをしたら彼ら発狂しますぞ。
拙者はあくまで陪臣。
魔王様の御直参であるポール殿とは身分が隔絶しております。」
『くだらねぇ時代になったよな…』
「それは向こうの台詞でゴザロウ?
単騎で遷都をする摂政殿下。
単騎で軍道を敷いて国主を攫って来る公王。
その気になれば2人で東方を征服できるのではないのですか?」
…あの女と2人旅?
頼むから勘弁してくれ。
「あー、馬車が親衛隊に追い散らされてますな。」
『摂政と東方人は相性が悪いよなぁ。
まだ俺との方が話が合うと思うわ。』
「あ、今の発言を脚色して親衛隊に伝えておくでゴザル。」
『やめーや。』
「これも宰相の仕事でゴザル。
それでは、ドヒュン!」
何をする訳でもなく、俺は眼下のジミーを眺める。
親しげに摂政親衛隊と談笑し愛想良く参謀部のゲルに入っていった。
俺、アイツがいなけりゃ1000回位は死んでるんだろうな。
小一時間、草むらに寝転がり蝶と戯れる。
「はい!
話がつきました!」
『早いな。』
「ポール殿もドレス選びに付き合う事になりました!」
『勘弁してくれ…』
「そういう仕事でゴザロウ?」
『…なあ、誰か公王職を代わってくれないかな?
もう疲れたわ。
最近、背中が痛いんだよ。』
「そうは申されましてもなぁ。」
分かっている。
俺以外に務まる奴は居ないのだ。
流石にそれが理解出来ない年齢ではない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、摂政の護衛にはクュ07なるコボルト種が居る。
祖父が大魔王の侍医を務めていた縁で、医官として招かれた女だ。
クュ医師は政治から距離を置き医道のみに専念する君子人だったが、この孫娘は違っていた。
医療への関心は極めて乏しく、最初から剣で身を立てることを望んでいた。
摂政は最初は彼女をコボルト種とのパイプとして期待していたので従軍させなかったのだが、懇願されて軍陣に連れて行くようになった。
出陣の度に手柄首を挙げたので気に入られ、医官ではなく警護兵として取り立てられた。
帯刀したまま摂政の寝所に入る事を許された数少ない1人であり、最近では政治的な相談も受けているらしい。
そんなクュ07に内緒話を持ち掛けられた。
「公王様。
少しお時間を頂戴出来ないでしょうか。」
『クュ殿であれば喜んで。』
「殿下は東方の者の貢ぎ物を拒絶する方便を考えております。
極力、先方の体面を傷付けたくないとお考えです。
その件について公王様のお知恵をお借りしたい。」
このコボルト女は万事において要求が手短で助かる。
無遠慮にズケズケと指図してくるが、断じてテイカーではない。
皆の功績や献身を遺漏なく摂政に伝える事を心掛けてくれている。
自身が厳罰型の為政者であると自覚している摂政が意識してクュ07を重宝しているのかも知れなかった。
『確かにあの膨大な献上品は過剰ですね。
あれを受け取ってしまった場合、摂政が贅を尽くしているような印象を世間に与えてしまいます。』
「然り。」
俺が問題意識を共有している事を知り、彼女は少しだけ安堵したように笑った。
「殿下は首脳部の清貧姿勢こそが天下静謐に必要と常々仰られてます。
東方の者は…
殿下の理想とは真逆の考えのようで。
ああいう贈答のやり方は迷惑です。」
『クュ殿、申し訳ありません。彼らには何度も道理を説いたのですが、イマイチ伝わらず。
私の至らなさが原因です。』
「いえ!
公王様はとても励まれておられます。
生活が質実剛健なのも素晴らしいですし。」
好きで剛健している訳ではないが、面倒なのでウンウン頷いておく。
『角が立たないように、彼らの貢納を拒めば良いのですな?』
「はい、仰る通りです。
何とか公王様のお知恵を拝借出来ればと…」
『分かりました!
政権のイメージに関わる問題です。
足りない頭を捻りましょう!』
足りない頭と聞いたクュは上品にクスクス笑う。
コボルトは融通が効かず冗談の通じない種族と聞いていたが、彼女は例外らしい。
或いは、俺がコボルトを知らないだけなのかも知れなかった。
「当家は代々医道を家業としているのですが…」
『あ、はい。』
「どうしても身が入らず、親に隠れて武芸を磨いておりました。」
『ええ、クュ殿はかなりの達人であると伺っております。』
「自分なりに、こちらの道の方が種族存続の役に立つと思ったのです。」
『…。』
クュは以前から摂政に対してコボルト種を売り込んでいたらしい。
この犬頭種族はその強悍俊敏をもって魔族の中でも戦争向きであると認識されていた。
事実、王国が大魔王の級友を率いて侵略して来た時も、コボルト隊は獅子奮迅の働きを見せ彼らのうちの数名を見事に討ち果たした。
「逆でした。
今の時代に求められていたのは…
摂政殿下は私にも祖父の様に医道で貢献することを期待しておりました。
私が戦場に出れば出るほど人間種のコボルト種に対する憎しみが深まるとのことです。
今回のリザード族スカウトも、殿下なりの魔族への回答なのです。」
『そうですね。
魔族の皆さんは強靭な肉体をお持ちです。
戦士として用いれば功績は挙がるでしょう…
でも、ええ、ヘイトはますます高まるでしょうね。』
「聞けば公王様もオーク種を雇用するにあたって、戦闘義務を免除したとか…」
『まあ、彼らは体格も大きいし、暴れたら目立ってしまいますしね。
悪い意味で語り草となるでしょう。』
「これが天下を平定なさる方々の視点なのだと感服致しました。
結局、私は剣以外になんの取り柄もありません。」
『クュ殿は諸将への取次を行ってくれているではありませんか。
貴女には自覚が無いかも知れませんが、公正な勤務ぶりであると評判が良いのですよ。』
「そう仰って頂けると幾分救われます。」
大切なことなので繰り返す。
統一政府は派手なバラ撒きで政権を取った。
空前の減税を行ったので人民の生活には余裕が出来た。
配給や住宅支援もあるので、皆が10年は寝て暮らせる状態である。
(そりゃあ大魔王が崇拝される訳だよな。)
結果として、危険作業・被差別職業から一斉に労働者が去った。
水中作業・地中作業・葬儀関連、そして何より清掃業界。
生活にゆとりがあるのに、これらに従事する馬鹿はいない。
なので現在の摂政は労働力確保を至上命題と捉えている。
「以前、摂政殿下に申し上げたのです。
コボルトは戦争と狩猟以外に取り得がない、と。」
『それで、摂政は何と?』
「ただ一言です。
派遣制の狩猟チームを作っておけ、と。」
直線的な女だ。
そりゃあ、誰も勝てない訳である。
『作ったのですか?』
「故郷に泣きついて10チーム集めました。
我々の風習で1チームの定数は12名です。
先日、エデンで殿下の謁見を賜った際、海外派遣も覚悟せよとの旨の訓示を受けております。
年内には試験的にウェイン四天王の所領に投入されることが決まってます。」
『相変わらず決定が早いですね。』
「ええ、ウェイン四天王も我々も驚いております。
ですが、私如きには言語化出来ませんが、それが必要であることも理解しております。」
『摂政は封建諸侯と事業体を置き換える算段なのでしょうね。』
「…。」
『失礼、失言でしたか?』
「…あ、いえ。
殿下が公王様を重用される理由がようやく分かりました。
はい、恐らく殿下はその方向を目指しておられます。」
これはドナルド・キーンの受け売りだが、戦争と徴税しか能のない封建諸侯など百害あって一利ない。
あの男は株式会社への置き換えを狙っていたが、世界を買い取り終わったコリンズ家にとっては自家が支配する事業体での置き換えを着想するのが自然なのだろう。
「いつか業務に対して爵位が与えられる時代が来るかも知れませんね。」
『え?
爵位ですか?』
「養殖伯爵とか、製塩侯爵とか。」
『じゃあ私は清掃員に戻ろうかな…
他に取り得もありませんし。』
「…いえ。」
『はい?』
「公王様は既に闘争という技能をお持ちです。
なので、世間がその特技を手放す事はないでしょう。」
『…私に何かと争う気は無いのですが。』
「本当にそうであれば我々も助かります。」
話はそこで終わる。
結局、天下人の摂政と地方領主の俺が真面目に仕事を突き詰めれば、粛清か簒奪かの二択に行き着くのだ。
(既に互いの存在を看過出来ないフェイズに突入しているという事はお互いに余程精勤したのだろう。)
これは構造論なので仲裁や回避が非常に難しい。
せめて共通の敵が居れば時間稼ぎも出来るのだろうが、東方文明圏は長持ちしてくれなさそうには見える。
これは東西文明の優劣論ではない。
旧来社会へのカウンターである統一政府と、古式ゆかしい東方圏との相性の問題なのだ。
例えば眼下の光景。
クュ07と2人で眺める長い馬車の列。
指揮官らしき男が御者を殴りつけている。
雰囲気的にあの暴行は日常的なものなのだろう。
勿論、西方文明でも珍しい出来事ではない。
だが、外交現場でアレをやってしまうセンスの乏しさは俺達にとってつけ込み易い。
話にすらならないのだ。
なので、彼らは俺と摂政の共通敵として機能しない。
…平和を愛する俺としては極めて残念である。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後。
クュと2人で東方人の死角に回りながら、様子を観察する。
『それにしても、凄い数の仕立師です。
馬車の作りからして、全てオーダーメードですね。』
「そうなのですか?」
『ええ、全台が個々の職人専用にカスタマイズされてます。
使っている道具が異なるので、共同作業は想定されてないでしょう。』
「確かに…
一台一台、車内の間取りが異なりますね。」
『…それを踏まえて、ドレスを拒む方法を考えました。』
「ほう、それは如何に?」
俺はクュに口上を教えて去ろうとしたのだが、「摂政に直接伝えるべきだ。」と魔王城に強引に連れられてしまう。
クュ07を親し気に出迎えた侍従長だが、俺と目が合うと笑顔を消して恭しく頭を下げた。
指揮系統的に侍従長は俺の上役的な存在なので、俺も深々と頭を下げる。
俺が頭を上げ終わった頃には侍従長の姿は消え、コレット・コリンズが表情の無い目で俺を観察していた。
「よく来てくれました。
公王だけが頼みです。」
『摂政、単刀直入に申し上げます。』
「あの贈答騒ぎですね。
何か追い返す方便は思いつきましたか。」
『コンペをさせましょう。
摂政が御題を出して一斉に作らせる。』
「…ふむ。
それでは贅沢品が増えてしまうだけなのでは?」
『私に一案があります。』
我ながら何故この女の為に奔走しているのかは謎だが、ドレスを献上したがっていた東方人達に俺はお題を出した。
『お待たせしました。
摂政の所望の衣装を伺って参りました。』
「おお、公王様!
ありがとうございます!
そ、それで摂政殿下はどの様なドレスをお望みでしょうか?
無論!
如何なるデザインであってもお応え出来ますぞ!
連れてきたのは我ら中央民族が誇る宮廷服飾師ですからな!
そして、ありったけの宝石で飾りましょう!」
『今着ている衣装に不満があるそうなので、改善が可能ならお力を貸して頂けませんでしょか。』
「はい、喜んで承ります!
仕立て直しの達人も多数連れて来て参りました!
どのようなドレスであっても新品以上の絢爛豪華に蘇らせることが可能で御座います!」
『それは心強いですね。
てまは、まずは現物をチェックして下さい。
今、摂政が来られますので。』
東方人は安堵したように胸を撫で下ろした。
そりゃあね、砂漠の向こうから遥々とやって来て、受け取りを拒否されてしまったら、本国に帰れなくなってしまうだろうしね。
彼らが摂政のゲルに向かって跪こうとしたので、慌てて訂正する。
『いえいえ、摂政はあちらです。』
「え?」
東方人が一瞬戸惑ったのも無理は無い。
俺が指差したのは、造成中の小運河だったのだから。
「え?
水?」
次の瞬間だった。
リザードが音も無く水面に浮上し工具箱を作業艇に乗せた。
俺達と目が合うとリザード氏は少し驚いた様子で、こちらにペコリと黙礼する。
「さ、流石は摂政殿下ですね。
あの様な異形畜生まで使役するとは!
み、見事で御座います。
うむ、確かに考えてみれば水中作業のような卑しい仕事は奴隷よりもバケモノにやらせる方が効率的かも知れません。」
東方人がそう言った直後であった。
今度は飛沫を上げて、無骨な潜水服が勢い良く作業艇に飛び乗った。
そして作業艇の上でヘルメットをゆっくりと脱いだのは…
『摂政、東方の皆様をお連れしました。』
「公王、御苦労様です。」
コレット・コリンズの着用する潜水服には、大量の藻と汚泥が纏わりついており、異臭を放っていた。
きっと汚泥の中には動物の糞尿が、いや人糞すらも混ざっていると考えるのが自然だろう。
「あ、あ、あ、あ…
え? 摂政殿下?」
東方人がパニックになる気持ちも理解出来る。
封建国家にこういうタイプの為政者は存在しないだろうから。
いや、俺がかつて暮らしていた共和制国家にすら前例がない。
コリンズ夫妻は人類が初めて遭遇するタイプの天下人なのである。
「公王!
東方の潜水服が見たいです。
性能が良ければ発注もしましょう。
無論、対価も支払う旨を伝えて下さい。」
俺はゆっくりと東方人を振り返るが、有効な返事は期待出来なさそうだ。
完全にフリーズしてしまっている。
『貴方達の文明圏は服飾技術が発達しているようです。
水中や地中作業時に着用する装備があれば送って頂けませんか?』
「え? あ、いえ。」
『勿論、技術を一方的に吸い上げる意図はありません。
私達も貴方達に技術提供を致します。
労働環境の改善こそが摂政の望みですので。』
我ながら白々しい申し出だと理解している。
眼前の使者氏は王侯身分である。
だから危険作業の実態なと知らないし、考えたことすらないだろう。
『ご安心下さい。
急かすつもりはありませんので。
帰国してから調査に着手して頂けますと幸いです。』
そこまで説明すれば、余程の馬鹿でもこの茶番の意味を解する。
無論、使者氏も我々の真意を完全に悟る。
「…公王様、ドレスは不要だという事ですか。」
『…女性が着る分には悪くないのではないでしょうか。
為政者に必要だとは思いませんが。』
そして、ゆっくりと近づいて来た摂政が快活に宣言した。
「誰でもドレスを着れるような豊かな社会を作りたいものですね。」
そのまま何事もなかったように使者氏の隣を歩き抜けて、厩まで移動してから親衛隊に藻を洗い流させた。
声色こそ優しかったが一瞥すらしなかった。
話はそれで終わりである。
そう、統一政府は権威主義的な東方とは真逆の社会を築くのだ。
使者にとってはショックな宣言だろうが仕方ない。
我々には彼らに合わせる義理が無いのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「公王。
先程はありがとうございました。
貴殿の機転のお陰で無難な落とし所が見つかりました。」
『…。』
「公王?」
『摂政は何故こうも御精勤されるのですか?
人民が惰眠を貪っているのにも関わらず、貴女は寝る間もなく働き続けております。』
コレット・コリンズは不思議そうな表情で首を傾げる。
「何度も説明したではありませんか。
私は宿屋の娘に過ぎない、と。」
なるほど。
実に説得力のある回答だ。
為政をホテル業務に見立てる構図には思い至らなかった。
そうか彼女にとって人民は客なのだ。
どうりで至れり尽くせりな訳である。
戦争も虐殺も潜水作業すらも、彼女にとっては天下という巨大ホテルを維持する為の必要業務なのだろう。
思えば、ドナルド・キーンとリン・トイチも元は彼女の宿泊客に過ぎなかった。
2人が宿を去ったにも関わらず、その息子は皇帝と魔王なのだ。
もはやホスピタリティの域を遥かに越えている。
きっと胡桃亭とやらは過ごしやすい良宿だったのだろう、俺は御免だが。
「逆にお尋ねしたいのですが、公王は何故こうも精勤されるのですか?」
『以前から申し上げている通りです。
私は清掃会社の息子としての責務を果たしているだけなのです。』
「ゴミはまだ残っておりますか?」
『いえ、もう終わります。』
「それは天下の慶事ですね。」
穏やかな笑顔でそう告げると、摂政は潜水服姿のままで兵舎へと戻って行った。
【異世界紳士録】
「ポール・ポールソン」
コリンズ王朝建国の元勲。
大公爵。
永劫砂漠0万石を所領とするポールソン大公国の国主。
「クレア・ヴォルコヴァ・ドライン」
四天王・世界銀行総裁。
ヴォルコフ家の家督継承者。
亡夫の仇である統一政府に財務長官として仕えている。
「ポーラ・ポールソン」
ポールソン大公国の大公妃(自称)。
古式に則り部族全体の妻となる事を宣言した。
「レニー・アリルヴァルギャ」
住所不定無職の放浪山民。
乱闘罪・傷害致死罪・威力業務妨害罪など複数の罪状で起訴され懲役25年の判決を受けた。
永劫砂漠に収監中。
「エミリー・ポー」
住所不定無職、ソドムタウンスラムの出身。
殺人罪で起訴されていたが、謎忖度でいつの間にか罪状が傷害致死にすり替わっていた。
永劫砂漠に自主移送(?)されて来た。
「カロッゾ・コリンズ」
四天王・軍務長官。
旧首長国・旧帝国平定の大功労者。
「ジミー・ブラウン」
ポールソン大公国宰相。
自由都市屈指のタフネゴシエーターとして知られ、魔王ダン主催の天下会議では永劫砂漠の不輸不入権を勝ち取った。
「テオドラ・フォン・ロブスキー」
ポルポル族初代酋長夫人。
帝国の名門貴族ロブスキー伯爵家(西アズレスク39万石)に長女として生まれる。
恵まれた幼少期を送るが、政争に敗れた父と共に自由都市に亡命した。
「ノーラ・ウェイン」
四天王・憲兵総監。
自由都市併合における多大な功績を称えられ四天王の座を与えられた。
先々月、レジスタンス狩りの功績を評されフライハイト66万石を加増された。
「ドナルド・キーン」
前四天王。
コリンズ王朝建国に多大な功績を挙げる。
大魔王の地球帰還を見届けた後に失踪。
「ハロルド・キーン」
帝国皇帝。
先帝アレクセイ戦没後に空位であった帝位を魔王ダンの推挙によって継承した。
自らを最終皇帝と位置づけ、帝国を共和制に移行させる事を公約としている。
「エルデフリダ・アチェコフ・チェルネンコ」
四天王筆頭・統一政府の相談役最高顧問。
前四天王ドナルド・キーンの配偶者にして現帝国皇帝ハロルド・キーンの生母。
表舞台に立つことは無いが革命後に発生した各地の紛争や虐殺事件の解決に大きく寄与しており、人類史上最も多くの人命を救済していることを統計官僚だけが把握している。
「リチャード・ムーア」
侍講・食糧安全会議アドバイザー。
御一新前のコリンズタウンでポール・ポールソンの異世界食材研究や召喚反対キャンペーンに協力していた。
ポールソンの愛人メアリの父親。
「ヴィクトリア・V・ディケンス」
神聖教団大主教代行・筆頭異端審問官。
幼少時に故郷が国境紛争の舞台となり、戦災孤児として神聖教団に保護された。
統一政府樹立にあたって大量に発生した刑死者遺族の処遇を巡って政府当局と対立するも、粘り強い協議によって人道支援プログラムを制定することに成功した。
「オーギュスティーヌ・ポールソン」
最後の首長国王・アンリ9世の異母妹。
経済学者として国際物流ルールの制定に大いに貢献した。
祖国滅亡後は地下に潜伏し姉妹の仇を狙っている。
「ナナリー・ストラウド」
魔王ダンの乳母衆の1人。
実弟のニック・ストラウドはポールソン大公国にて旗奉行を務めている。
娘のキキに尚侍の官職が与えられるなど破格の厚遇を受けている。
「ソーニャ・レジエフ・リコヴァ・チェルネンコ」
帝国軍第四軍団長。
帝国皇帝家であるチェルネンコ家リコヴァ流の嫡女として生を受ける。
政争に敗れた父・オレグと共に自由都市に亡命、短期間ながら市民生活を送った。
御一新後、オレグが粛清されるも統一政府中枢との面識もあり連座を免れた。
リコヴァ遺臣団の保護と引き換えに第四軍団長に就任した。
「アレクセイ・チェルネンコ(故人)」
チェルネンコ朝の実質的な最終皇帝。
母親の身分が非常に低かったことから、即位直前まで一介の尉官として各地を転戦していた。
アチェコフ・リコヴァ間の相互牽制の賜物として中継ぎ即位する。
支持基盤を持たないことから宮廷内の統制に苦しみ続けるが、戦争家としては極めて優秀であり指揮を執った全ての戦場において完全勝利を成し遂げた。
御一新の直前、内乱鎮圧中に戦死したとされるが、その詳細は統一政府によって厳重に秘匿されている。
「卜部・アルフォンス・優紀」
御菓子司。
大魔王と共に異世界に召喚された地球人。
召喚に際し、超々広範囲細菌攻撃スキルである【連鎖】を入手するが、暴発への危惧から自ら削除を申請し認められる。
王都の製菓企業アルフォンス雑貨店に入り婿することで王国戸籍を取得した。
カロッゾ・コリンズの推挙により文化庁に嘱託入庁、旧王国の宮廷料理を記録し保存する使命を授けられている。
「ケイン・D・グランツ」
四天王カイン・D・グランツの長男。
父親の逐電が準叛逆行為と見做された為、政治犯子弟専用のゲルに収容されていた。
リベラル傾向の強いグランツ家の家風に反して、政治姿勢は強固な王党派。
「ジム・チャップマン」
候王。
領土返納後はコリンズタウンに移住、下士官時代に発案した移動式養鶏舎の普及に尽力する。
次男ビルが従軍を強く希望した為、摂政裁決でポールソン公国への仕官が許された。
「ビル・チャップマン」
准尉→少尉。
魔王軍侵攻までは父ジムの麾下でハノーバー伯爵領の制圧作戦に従事していた。
現在はポールソン大公国軍で伝令将校として勤務している。
「ケネス・グリーブ(故人)」
元王国軍中佐。
前線攪乱を主任務とする特殊部隊《戦術急襲連隊》にて隊長職を務めていた。
コリンズ朝の建国に多大な貢献をするも、コリンズ母娘の和解に奔走し続けたことが災いし切腹に処された。
「偽グランツ/偽ィオッゴ/ゲコ」
正体不明の道化(厳密には性犯罪者)
大魔王と共に異世界に召喚された地球人。
【剽窃】なる変身能力を駆使して単身魔王軍の陣中に潜入し、摂政コレット・コリンズとの和平交渉を敢行。
王国内での戦闘不拡大と民間人保護を勝ち取った。
魔界のゴブリン種ンゲッコの猶子となった。
「ンキゥル・マキンバ」
公爵(王国における爵位は伯爵)。
元は遊牧民居留地の住民として部族の雑用に携わっていたが、命を救われた縁からコリンズ家に臣従。
王国内で一貫して統一政府への服従を呼びかけ続けた為、周辺諸侯から攻撃を受けるも粘り強く耐え抜いた。
御一新前からの忠勤を評価され、旧連邦アウグスブルグ領を与えられた。
「ヴィルヘルミナ・ケスラー」
摂政親衛隊中尉。
連邦の娼館で娼婦の子として生まれ、幼少の頃から客を取らされて育った。
コリンズ家の進軍に感銘を受け、楼主一家を惨殺して合流、以降は各地を転戦する。
蟄居処分中のケネス・グリーブを危険視し主君を説得、処罰を切腹に切り替えさせ介錯までを務めた。
「ベルガン・スプ男・ゴドイ」
魔界のオーク種。
父親が魔王城の修繕業に携わっていたので、惰性で魔王城付近に住み付いている。
大魔王コリンズの恩寵の儀を補助したことで魔界における有名人となった。
その為、異性に全く縁が無かったのだが相当モテるようになった。
以上の経緯から熱狂的なコリンズ王朝の支持者である。
「ヴォッヴォヴィ0912・オヴォ―」
魔界のリザード種。
陸上のみ生活しているという、種族の中では少数派。
その生活スタイルから他の魔族との会合に種族を代表して出席する機会が多い。
大した人物ではないのだが陸上リザードの中では一番の年長者なので、リザード種全体の代表のような扱いを受ける事が多い。
本人は忘れているが連邦港湾において大魔王コリンズの拉致を発案したのが彼である。
「レ・ガン」
元四天王。
魔王ギーガーの母(厳密には縁戚)
ギーガーの魔王就任に伴いソドムタウンにおける魔王権力の代行者となった。
在任時は対魔族感情の緩和と情報収集に尽力、魔王ギーガーの自由都市来訪を実現した。
「ジェームス・ギャロ」
ギャロ領領主。
現在行方不明中のエドワード王の叔父にあたる人物。
早くからエドワードと距離を置き、実質的な国内鎖国を行っていた。
能書家・雄弁家として知られる。
「ジョン・ブルース」
公王。
王国の有力貴族であったブルース公爵家が主家に独立戦争を挑み誕生したのが公国であり、ジョンは6代目にあたる。
武勇の誉れ高く王国・魔界に対して激しい攻撃を行う反面、綿密な婚姻政策で周辺の王国諸侯を切り崩していた。
「クュ07」
コボルト種の医官。
大魔王の侍医であったクュの孫娘。
紆余曲折あってコレット・コリンズの護衛兼愛人となった。
以前からポール・ポールソンの人格と能力を絶賛しており、即時抹殺を強く主張している。
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異世界事情については別巻にて。
https://ncode.syosetu.com/n1559ik/