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【顛末記24】 輜重兵

『帰還が許されるのですか?』



意外な話の流れに思わず聞き返してしまった。

ここは魔界の首都エデンに張られたコレット・コリンズの天幕。

護衛は1人ずつのみ、双方に帯刀が許されている。



「ですから、以前もそう申したではありませんか。

明らかに負担が公王に集中しております。

ポールソン軍にだけ帰郷休暇を与えられていない状況を非常に心苦しく感じておりました。」



『…そうですね。

実は我が軍でも兵士達が精神的に参っておりました。

あんな砂漠でも故郷ですからね。』



王国をほぼ掌握した現在、もう統一政府に軍事的な脅威は残っていない。

そう、(俺以外の)敵が完全に消滅してしまったのだ。



「まず、公王軍の本国への帰還をこの場において正式に許可します。」



『ありがとうございます。』



「そして、ここからが本題なのですが。」



『あ、はい。』



…切腹か?



「多大な功績を挙げた公王にどのような恩賞を与えれば良いのか見当も付かず…

こうして、内々に意見を汲み取っておこうと思い立ったのです。」



『なるほど。』



「単刀直入にお願いします。

欲しい物を言えとは申しませんので、世論が納得するような恩賞を要求して頂けませんか?」



『はあ、そうは仰いましても…

義援米を受け取ったばかりですしね。』



「あれは参戦準備の為のものです。

他の将にも与えております。

何か落としどころを考えて貰えませんか?」



『うーーーん。

諸将の恩賞に準ずる形で良いのではありませんか?

確か、ノーラ… 

いえ、ウェイン卿が新領のハリッタ湖畔12万石を加増されたと伺っております。』



「公王の武功が凡百のものであればそれで良かったのです。

現にハリッタ伯爵領の隣のミズーリ伯爵領を与える予定で話を進めておりました。

あそこは15万石前後なので、公王の体面に傷は付かないと思ったのです…」



『はあ、お気遣い恐縮です。』



「ただ、参謀本部から昨日苦言を呈されまして…

王国西部と公国を4日で帰順させたポールソン公王には、相応の恩賞を与えるべきであると。

でなければ世論の納得を得られないとの意見でした。

私も同じ思いです。」



『いや、待って下さい。

私がギャロ領に入った時には、既に諸侯達は出頭を決意しておりました。

なので、彼らの態度は魔王様及び摂政殿下の御威光によるものです。

私は単なる伝令役に過ぎませんよ。』



「公王、公王。

タテマエの話はやめましょう。

これではわざわざ時間を割いて貰った意味がありません。

あくまで本音で。

私も腹を割ります。

なので、忌憚のない意見を聞かせて下さい。

天下を安定させたいという想いに限っては共有出来ていると信じております。」



『…失礼しました。

確かに、バランスを欠いた賞罰は民心に動揺を与えます。』



「まず、私から本音を申し上げます。」



『はい。』



「誠に申し訳ありませんが、現在の公王は政権にとって非常に扱い辛い存在です。

今が神話時代であれば公王こそが英雄であり、私も無邪気に讃えることが出来たのですが…

セオリーから言えば魔王位そのものすら貴方に譲っていたことでしょう。」



『…。』



「ただ、残念ながら現代社会では真逆の反応をせざるを得ません。

王都出身の私がソドムタウン出身の公王に語るのは滑稽かと思いますが、功績が個人に集中し過ぎるのは好ましくありません。」



『申し訳ありませんでした。』



「責めている訳ではありません!

あくまで一般論です。


…貴方は《詩的》過ぎる。」



なるほど、《危険》という単語はそう置き換えるのか…

勉強になる。



「ブラッドベアの巣穴での寝泊まりや、一夜で軍用道路をエデンからギャロ領に繋げてしまった話。

これらが王国中に広まっております。

しかも、ゴブリン2名とオーク1名しか従軍させなかった。

まるで神話世界の英雄王ではありませんか。」



『申し訳ありません。』



「謝罪は不要です。

貴方のお陰で王国の混乱収拾が大幅に早まりました。

これは素晴らしい功績です。

それだけに、同時代に生まれてしまった事を残念に感じております。」



『以上を踏まえた上で世論が納得する恩賞をねだれと。』



「はい、事が事だけに親衛隊から意見を募る訳にも行かず、途方にくれておりました。

筋合いからすればブルース公国を接収して、貴方への加増分とするのが自然なのですが…」



公王同士だし、意外に円滑に引き継ぎが出来るかもな。



『砂漠と離れすぎていて、逆に統治コストが掛かります。』



「ええ。

それで砂漠と隣接した地域となると、帝国…」



『いえ、帝国はもう一円を共和化する路線で話が進んでおります。

時計の針を戻すのは危険かと。』



「となると、与える知行は砂漠の向こうの東方文明圏くらいしか残ってませんよ?

公王領の隣接地だけでも豊かなオアシスが数え切れないほど存在するようですし、あの一帯を加増出来るのであれば世論も納得するとは思うのですが…

難しいですね。」



『ええ、あの辺を私が接収してしまうと彼らの経済がリカバリー不能になってしまいます。

ようやく持ち直してくれたのに、このタイミングで破綻されてしまっては、今までの支援が無駄になってしまいます。』



「私の悩みを理解して頂けましたか?」



『いつも御心労ばかりをお掛けして申し訳御座いません。』



「いえ。

貴方はよくやってくれてます。」



『…恩賞。

いや、私としては義援米を来年も頂ければ領民に対して面目が立つのです。』



「来年度分の支給は既に予算案に組込済です。

従って、これは恩賞には含まれません。」



『…私も腹を割りますね。

本音を申し上げれば、領民や幕僚のスカウトをフリーハンドでやらせて頂くのが一番ありがたいです。

例えばリチャード・ムーア、例えばレ・ガン。

彼らは元からの知己ですし、許されるのであれば帷幕に加えたいです。

でもそうやって上澄みだけを吸い取って行くのは社会のバランス上好ましくない。』



「公王の思考は恩賞受領に向いておりませんね。

自分が賞されることの弊害部分だけが目に入ってしまう。

…天下人に向いておりますよ、貴方は。」



『…御冗談を。』



結局、旧チャップマン候王領の税収が、そのままポールソン大公国に割り振られることになった。

名目は【国際造成費】。

何を造成するのか謎だが、まあ無難な落としどころではあるだろう。

俺の幕僚にチャップマン准尉が名を連ねており、同地が全くの無縁の地ではないのも辻褄はあっている。


旧候王領は、王国の検地帳を信じるならば50万石前後。

実質税率が二公八民なので、理論上は毎年10万石が支給される計算となる。

勿論、石高通りの税収が上がってくるほど世の中は甘くないとは重々承知だが、これが続くなら永劫砂漠の民は慎ましくなら暮らせるようになる。

なるほど、世間の諸侯が血眼になって手柄を上げたがる訳だ。



「え?

その話の流れで何でボクなんですか?」



『あ、いや。

ゲコ君が王国民の救済を願っていたから。

摂政の諮問会議への出席権を貰ってきた。』



「ちょ、急に言われても心の準備が。」



『セクハラは絶対にするなよ。

親衛隊は後先考えずに情緒で無礼討ちしてくるから。』



「彼女達って悪い意味で乙女回路が発動しますよね。」



『それ絶対口に出すなよ。

私が巻き添えを食う。』



「まあ、ええですわ。

諮問会議に向けて、心の準備を念入りに…」



『あ、もう始まってるから早く行けよ。』



「ちょ!

この政権スピード感あり過ぎでしょ!

んー!

わー国のゴミ審議が懐かしいッー!」



文句を言いながらゲコは駆け出して行く。

アイツは摂政殿下のお気に入りなので2割以上の確率で殺されずに済むだろう。

羨ましい限りである。



「これで一段落でゴザルか?」



『うん。

ニック隊にも撤収許可が下りたから、帝都で合流かな。

それで本当に任務完了。

オマエらが頑張ってくれたおかげだよ。』



「いやいや、1人で武功を挙げた人に言われましても。」



『まだその話題引っ張るの?』



「世間がその話題で持ちきりなのでゴザル。

…流石にベアの巣穴に布陣はやり過ぎでしょう。

面白過ぎですぞ。」



『ゴブリンとベアが、人と犬並みに仲良いからな。

俺の手柄じゃないぞ?』



「いい加減学びなされ、誰の手柄かを判定するのは世間様でゴザルよ。

…これで一件落着ですかな?」



『世界はな。』



「では、後は永劫砂漠だけですな。」



『ゾンビホースがアホほど沸いてるんだろ?』



「ポーラ殿の書簡では、あれから悪化しているそうでゴザル。

拙者の所領《凄く高い砂丘0万石》に至ってはスケルトンバッファローの巣窟になってしまったようですな。」



『奪還戦なら付き合うぞ?』



「あそこは傾斜が激しすぎて近づけないのでゴザルよ。

いや、奪還した所で使い道が思い浮かばないのでゴザルが…」



『了解。

じゃあ遠目に見て【清掃クリーナップ】しとくわ。』



「相変わらずのチートスキルでゴザルな。

まあ、問題は砂漠のモンスターが帝国領や東方文明圏にも越境を始めている点なのですがな。

カロッゾ卿のオアシスにも流れ着いた個体があるそうですぞ。」



『あ!

今回のオチが見えた!』



「え?

それはどのような?」



『今回の加増分あるじゃん?

それが全部周辺諸国への被害弁済で消えるんだよ。』



「あー、そのパターンでゴザルか。

昔っからポール殿はプラマイゼロに持って行く天才ですからな。

いやあ、加増なんてどうりで話が上手すぎると思ったのでゴザル。」



『じゃあ、その旨を諸将に伝達するわ。

カロッゾの奴に借りを作りたくないし、補償は早めに始めた方がいいだろう。』



「あんなに豊かなオアシスを支配している御仁にサソリを貪ってる我々が支払うのも釈然としませんがな。

カロッゾ領では山羊に食わせるほどデーツが余っているそうではゴザラぬか。」



『その話はするな。

隣領への妬みは紛争の原因となる。

現に、王国人と合衆国人の国境争いも互いへの嫉妬が発端だしな。』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ゲルから出ると、何やら騒ぎが起こっていた。

周囲に事情を尋ねると、摂政がブラッドベアの巣穴を体験中であるとのこと。

案内人はレ・ガン。

今の所、無事は確認されているが予断を許さないということ。



「ああ、そうか…

摂政殿下はレ婦人とサシで話したかったのですな。」



『話すって何を?』



「ポール殿の処遇以外に何を話すのでゴザルか。

レ婦人は命を懸けてポール殿の命乞いをしてくれているのです。

ついでにゲコ君も。」



『そんなに気を遣わなくていいのに。』



「レ婦人は魔界を纏めて摂政殿下への忠誠度を高める。

代わりに摂政はポール殿の身の安全を保証する。

ついでにゲコ君も。

大体その線で話が進んでる筈でゴザル。」



『ふーん。

御婦人は昔から律儀だからな。

そんなに頑張らなくていいのに。』



「レ婦人が頑張ってくれなければ大規模内戦が起こるでゴザルよ。

ついでにゲコ君が死にます。」



『内戦? どこで?』



「摂政VS公王。」



『…まあ、否定はしないよ。

攻められれば自己防衛はするんじゃない?

個人的にはあの人が死んでくれた方が嬉しいし。』



「ポール殿は戦意が高いのか低いのか分かりませんな。」



『あの人が天下にとって必要不可欠なことは理解しているからな。

俺には不要だけど。』



「まあ、摂政殿下は英傑でゴザルな。

侵略特化のポール殿とは大違いでゴザル。」



『俺、そんなに侵略的か?』



「あくまで世評の話でゴザル。

今更日常には戻れないでゴザロウ?」



『まあな。

認めざるを得ない。

多分、俺は軍陣で寝泊まりするのが性に合ってたんだろうな。』



「そういうことでゴザルよ。」



参謀本部との打ち合わせを終えたロベールが戻って来たので3人で切り株を背にゴブリン団子を貪る。

水が潤沢な所為か砂漠より魔界のそれの方が風味が良い。



「兄さん。

本当にレ婦人を引き抜くのですか?

魔界ではかなりのビックネームなんでしょ?」



『摂政ともその話題を掘り下げたんだけどさ。

あの人は昔馴染みだし、俺を叱責してくれる人も殆ど残ってないしな。

手元に置いておきたいんだよ。

歳を取り過ぎたわ…

ここまで見事に自分の周りから年長者が消えるなんて、ほんの数年前まで考えもしなかった。』



「だからレ婦人とムーア先生を引き抜くと。」



『分かってるよ。

摂政にしたってあの2人を手元で抱えておきたいことくらいは。

だからこそ、敢えて恩賞としてスカウト権をねだった訳で。』



「摂政殿下は何か仰ってましたか?」



『表向きは快諾してくれたけどね。

政治的には不快なんじゃない?

レ・ガンは先々代魔王の母親だし、好ましくは無いだろうな。』



「ムーア先生もかなりの著名人になってますしね。」



『うん。

あの人は食に携わってるから、功績が目に見えやすいんだ。

まあ、今までが評価されな過ぎたんだよ。

ソドムタウンもさあ、下らない猟官野郎に過大な恩給を払ってる暇があったら、食料問題の解決に自腹を切ってたムーア店主を顕彰するべきだったんだよ。』



「御一新直前はかなり迷走してましたものね。

ここだけの話、摂政独裁の方がソドムタウンにとっては良かったと思います。」



『まあなぁ。

義務教育であれほど衆愚政治の弊害を教わったのに、自ら衆愚を選んだ街だからな。

人間がそういう生き物って言ったらそれまでだけどさ。』



そんな話をしながら、帰路の隊列を割り振り始める。

当然、隊列を組んだり帰還命令を獲得したくらいでは居城にまで辿りつけない。

何せ過酷な長征でかなりの駱駝が死んでしまい、途中で生まれた駱駝はまだ使役に耐えない。

よって、荷馬なり驢馬を調達しなければならないのだが…

内情は他の部隊も似たようなものだ。


特にノーラやカロッゾは大量の荷馬を使い潰しながらトルーパーを東西南北に運搬したので、血眼になって各地で徴発を行っている。

残念ながらトルーパーの示威効果は抜群である。

全高7メートルの殺人兵器を見せ付けられたら、大抵の人間の戦意は挫けてしまう。

今後の末長い統治を見据えるなら、出来るだけ各地に実物を見せておくに越した事はない。



「ポール殿。

軍都以北の荷馬はカロッゾ卿が全て買い上げてしまったようです。

また合衆国ではノーラ卿がロバの徴発を相当強引に行った模様。」



『流石に統一政府の2枚看板だな。

仕事が早いわ。』



「どうします?

親衛隊に頼んでみますか?」



『アイツらに借りを作るのは癪だな。

うん、俺にいい考えがある。』



「あ、オチが見えたでゴザル。」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『じゃーん!

トリケラトプスだー!』



「チューッス。

御者のスプ男でーす。」



「ポール殿ぉ。

政治的に微妙な立場に居る方が、悪目立ちしてはなりませんって。

え?

スプ男君も付いて来るのでゴザルか?」



「俺のツレも公王様に付いて行きたいって言ってるんすけど、駄目ですか?」



「えー、オークの食性とか拙者知らないでゴザルぞ?

君達は蠍を食べれる?」



「サソリ?」



「凶暴な毒虫でゴザル。」



「いやぁ、虫系はちょっと。」



「爬虫類系はどうでゴザルか?」



「俺達オークは爬虫類を結構食べますよ。

なのでリザードの連中から嫌われてます。」



「そうなの?」



「大昔、オークとリザートは朝から晩まで殺し合ってたらしいです。」



「へー、仲良さそうに見えるでゴザルが。」



「ここ千年ほどは共通の敵に圧迫されてましたからね。」



「そうでゴザルか…

いつか共通の友人になれるように励むでゴザル。」



「人間種が宰相様みたいな方ばかりなら良かったのですが…」



「残念ながら拙者も公王も少数派。」



「「あっはっは!」」



さて、粛清の順番待ちをしている俺は呑気に笑っている訳にも行かず、トリケラトプス運用の許可を貰いに向かう。



「公王は英雄であるなぁ。」



摂政が笑ったので親衛隊も表向きは合わせていたが、どの隊士も目線は極めて冷ややかであった。

軍隊では突飛なことをしてはならないのだ。

内心「オメーらに言われたくねーよ。」と反発心が湧くが、悪いのは俺なので黙って耐える。

ジル曹長なる顔に大きな刀疵のある少女が「統一政府の武威には貢献してくれるでしょ。」と同輩に呼び掛けてくれたので、少しだけ場の雰囲気が収まった。



余程きっちりした性格なのだろう。

摂政がその場でトリケラトプス運用許可の朱印状を発給してくれた。

御者としてオークグループの従軍も許可される。

不思議だ。

戦いが終わってからの方が陣容が充実してしまった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【スカウト部将一覧】



「リチャード・ムーア」  (侍講)


旧知の料理人。

実娘メアリはポールの愛人として既に永劫砂漠入りしている。

創意に定評があり、新食材の活用法考案に数々の功がある。

人民住宅への配給食規格の制定者として著名。

レンタル移籍なので、2年後は魔王城勤務に戻らなくてはならない。




「レ・ガン」  (元四天王)


先々代魔王ギーガーの母親(厳密には遠縁の養母)。

御一新前は魔界の代表としてソドムタウン在住魔族の指揮を執っていた。

政府系鉱業会社の設立を通してゴブリン種の存続を図ろうとしている。




「ベルガン・スプ男・ゴドイ」  (家事手伝い)


輜重部隊長として公王軍に従軍。

大魔王がエデンにて敢行した恩寵の儀を補助したことで、魔界の有名人となった。

トリケラトプス10頭を輜重家畜として試験運用することが任務であり、戦闘参加は免除されている。

オーク種30人(男15女15)を引き連れて、永劫砂漠へのお試し移住に向かう。


※途中帰国可




「ビル・チャップマン」 (王子)



ポールソン公国軍少尉。

王国内で独立勢力を築いたジム・チャップマンの次男。

候王号が摂政判断で遡及承認されたので、社会的身分が逆賊の子から王子に昇格した。

統一政府への志願が認められ将校待遇でポールソン公国への仕官が許された。

初陣は14歳。

父や兄に従いハノーバー伯爵領制圧戦争を戦い抜いてきたので実戦経験は豊富。




「ホセ・ガドベト」 (自由騎士)


ポールソン公国軍少尉。

ポール・ポールソンの1歳年上の幼馴染。

ソドム大学卒業後、母親の故郷である帝国に復籍し子爵位を継承する。

帝国屈指の猛将ミハイル・トハチェフスキー公爵に騎士叙任され、対王国戦線で数々の武功を挙げた。

騎士として順調にキャリアを積んでいたが、主君ミハイルが粛清されたことに憤慨し出奔、以降は生まれ故郷のソドムタウンで復讐の機会を伺っていた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「随分派手な道中になりそうですなぁ。」



『トリケラは魔界でも目立ってるからな、港に着いたら騒ぎになるぞ。』



「じゃあ、ぼちぼち出立するでゴザル。」



『長く苦しい戦いだった…』



「そりゃあ毎回毎回スタンドプレーしてりゃあ疲れて当然でゴザル。」



『「あっはっはっは。」』



こうして、俺達は長い軍役を果たし終わり無事帰路に…



  「ちょっと待って下さいよ!」



『おお、ゲコ君。

君との旅は色々楽しかったよ。

じゃあ、達者でな。』



  「ちょっと待って下さいよぉ!」



『え?』



  「不思議そうな顔せんとって下さいよ!

  ボクら仲間やないですか!

  置き去りは酷いですよー!」



『え? 仲間?』



  「その反応傷付くからやめてー!」



聞けば、摂政にセクハラ発言を繰り返したゲコに対して親衛隊が怒り狂っており、公然と斬り捨てを宣言しているらしい。

泣きながらトリケラトプスに飛び乗って来る様は中々ピエロポイントが高い。



「ここで置き去りにされたら、ボク絶対殺されますやん!

あの人ら冗談通じなさすぎですよ!!」



…凄いな。

この世界でアイツらに下ネタ煽りするのは君くらいのものだぞ。



『親衛隊は忠誠心高いからなー。』



「もう砂漠でも何でもええから、連れてって下さいよ!」



『まあ、私の後宮にセクハラしないって約束してくれるなら。』



「おお!

流石公王様!

口ではお硬い事ばっかり言ってる癖にヤルことしっかりヤッてはるんですねー。

ボクにもハーレムの作り方教えて下さいよ。

ちなみにどんなハーレムメンバーが居るんですか?

美人? 美人? 」



『いもうとー。』



「初手からヤバいやないですかー!

この人絶対アカン人やわ!」



『安心してくれ。

戸籍上の夫はロベールだから。』



  「どうもー、ポールソン公王の妹の夫です。」



「怖い怖い怖い、何かおぞましい物を感じる!

他のハーレムメンバー教えて下さいよ!」



『もとよめー。』



「次手もヤバいやないですかー!

他には!?」



『実は個人的な本命はレニーという子なのだけど。』



「お!

オッサンのマジトーン恋バナ来た!

可愛いっすか?」



『いや、狸やビーバーに似てる。』



「異世界にビーバーがおるという衝撃ッ!」



『居るよビーバーくらい、地球マウントやめろよな。


まあいいや。

レニーはねえ、ずんぐりしていて遠目にはコミカルなんだけど、実は全身筋肉の塊だから、近寄ると地味に生命の危険を感じる。

軽く手首を掴まれただけで、骨にヒビが入ったことあるぞ。』



「そういう危険猛獣は動物園に収容するべきでしょ。」



『…レニーは詩的なだけだよ。

服役中だから、あんまり親しい態度が取れなくてさ。

大っぴらに遊べるのは彼女の懲役が終わる25年後かな。』



「怖っ!

重犯罪者やないですか!

何をやったら懲役25年コースなんですか?!」



『いや、普通に人殺してるし…

軍隊に喧嘩売ったり、公有地で勝手に猟をしたり、その近所の猟師さん達からミカジメ料を脅し取ったり…』



「極悪人やないですか!

25年は短すぎですよ!」



『ここだけの話、結構本気で彼女のことを好きだから、セクハラはやめてな。』



「あ、いや…

公王様とボクは十分棲み分け可能やと理解しました。

ははは。」



極めて不本意であったがゲコも永劫砂漠に連れ帰ることになる。

何にでも変身可能と言った癖にイケメンに化け直す気配がない。

最初はゴブリン姿が気に入ったのかと思ったが、レ・ガン達への応対を見るに、この男なりのマイノリティ配慮のつもりらしかった。



「マイノリティと言えば俺達オークっすよ。」



『ゲコ君はゴブリンに飽きたらオークに化けるらしいぞ?』



「えー、それは嫌だなあ。

何かキショイ。」



『うん、本人には厳しく戒めておく。

なあ、本当に良かったのか?』



「え?

何が?」



『砂漠は不毛だよー。

魔界が豊穣の地に見えるくらいだから。』



「ははは、らしいっすね。

でも、大魔王様が居られたら恩寵してくれるでしょ?」



『うん、2人で約束したんだよ。

いつか不毛の大地に恩寵を与えようと。』



「それ3人っすよ。

俺も居ましたから。」



『え?

そうだった?』



「あ、ひっでぇ。

俺、頑張ってスプリンクラーしたのに。」



『あー!

思い出した!!

あの時、お尻に敷くゴザを持って来てくれたのが、スプ男君の妹さんだ!!』



「おー、そこは覚えてくれてるんですね。

おいスプ子、公王様に挨拶しろ。」



  「もーーー、お兄ちゃん!!

  そのあだ名はイヤって言ってるでしょ!」



聞けば妹さんにはキリイと言う可愛らしい名前があるそうなのだが、不肖の兄貴の所為で不名誉なあだ名が定着し掛けているらしい。

不肖仲間の俺としては親近感が湧く。



「お2人にとっては俺なんか単なる肩車係なんでしょうけど。

こう見えて結構触発されたんすからね。」



『ゴメンゴメン。

でも君のことはちゃんと覚えていただろ?

そこまでマジに受け止めてくれてるとは思わなかったんだよ。』



「ねえ公王様。」



『んーー?』



「俺、チートは持ってないっすよ。」



『君達オークの雄渾な肉体は我々から見ればチートだ。』



「残念、俺は種族内ではかなりの虚弱っ子なんです。

一緒に来てる連中も、全員インドア仲間ですよ。」



『え? マジ?

そうは見えないけど。』



「オークガチ勢と見比べたら一目瞭然っすよ。

本気で鍛えてる連中は胸板や肩幅がヤバいんで。」



『君は本気で鍛えないの?』



「勘弁して下さいよー。

アイツら滝行とか試し割とか、年中身体を痛めつけてるんです。

命が幾つあっても足りませんよ。」



『あー、わかる。

私もああいうスポーツマンとか軍人のノリが昔から嫌いだったわ。』



「でね?

俺にとっては結構カルチャーショックだったんです。

大魔王様も公王様も…

人間種の中では陰キャに属してますよね?」



『言葉をオブラートに包めよー。

私も気にしてるんだよー。』



「すんません。

でも、陰キャでもあのアプローチなら輝けるのが分かって、凄く前向きになれたんすよ。

大魔王様を肩車させて頂いた事で、有名になって…

それまで全然付合いがなかったリザードやらゴブリンやら猫族やらコボルトやらと話すようになったんです。」



『へえ、それまでは付き合いが無かったんだ?』



「そうっすね。

種族を跨いだ付き合いは、基本的に族長クラス同士が仕事としてするものですからね。

俺なんかエデン育ちですから、まだ他種族と挨拶くらいはしますけど、田舎にはオーク以外を見た事も無い奴もチラホラいますよ。」



『そういうものなんだな。

漠然と色々な種族がシャッフルされて生活している様子を想像していた。

あー、でも私の故郷のソドムタウンでも割と人種ごとに固まっていたから、どこの社会もそういうものかもな。』



「砂漠でもそうなんでしょ?」



『うん。

ゴブリンはゴブリン同士、エルフはエルフ同士固まってる。

後、リャチリャチ族って肌のゴツゴツした連中も住んでるんだけど、そいつらも固まってる。

つい最近まで普通に殺し合ってたってさ。』



「俺らもそんなもんすよ。

俺の実家にはリザードと戦争した時の鹵獲品が飾ってますし。

ショボい脇差なんすけど、当時のリザード社会の幹部を討ち取った証拠だとかで、我が家では昨日のことのように未だに語り継がれてますからね。

ちな1900年前の話っす。」



『うおおお、家に歴史ありだなあ。』



「じゃあそれから1900年何してたんだよって先祖代々にツッコミたいんすけどね。

俺の代でたまたま大魔王様と縁が出来て良かったです。

これからはリザード連中は敵じゃなくて、同じ奇跡を体験した仲間として暮らせますから。」



『そっか。』



「そっす。

アイツらから砂漠で暮らす方法を教わって来ましたしね。」



『え、マジ?

っていうか何でリザードがそれを知ってるの?』



「だって、彼ら乾燥帯で生きれないから。

長男は水中の縄張りで済み続けれるんですけど、次男以下は地上で暮らさなきゃなんで、保水・保湿を一生考えなきゃなんですよ。」



『ああ、そっか。

彼ら水棲種族だから。

そういう社会運用になるんだ。』



「本当は何人か保湿に長けた奴を連れて来たかったんすけど。

砂漠って猛暑の乾燥帯なんですよね?」



『うん、灼熱地獄。』



「アイツら秒で死んじゃいますから、誘うのは諦めました。」



『確かに。

あ、でもさ。

トリケラはどうするの?

砂漠に適応できそう?』



「うーーーーーん。

何となく行けそうな気がするんです。」



『あ、そうなんだ?』



「トリケラって皆、すっごく雑に扱うんですよ。

基本ほったらかしで、誰も世話しないという。」



『うわ、ひでえ。』



「でも一ヶ月位放置してても、ノソノソ生きてるんですよ。

土をムシャムシャ食べたりして、何食わぬ顔で生きてるんです。

酷使しても怒りませんしね。」



『マジかー。』



「腹が減ったらバラして食います。

エデンの西に、地下に住んでるグリーンゴブリンって連中が居るんですけど…

アイツらは地下でトリケラを飼ってるみたいです。

何度かアイツらが入り口に捕まえたトリケラを押し込んでる所を見ました。

今思えば手伝いを申し出ても良かったかもっす。

あの頃は他種族と交流を持つ発想がなかったので。」



『君って結構《生産的》なんだな。』



「知ってました?

それって《陰キャ》の言い換えなんすよ。

迂闊にも最近まで気付きませんでしたけど。」



『あははは、私なんかハイスクール時代に《生産改善賞》を受賞したことあるぞ。』



「おお、何かすげえ!!」



『表彰されたらモテるかと淡い期待を抱いたのだがな…

全然だったよ。

きっとその言い換えは正しい。』



『「はははは。」』



さて、戦争は終わった。

何せ今回の遠征で俺以外の不穏分子が一掃されたのだからな。

大戦が起こるとしても、後一回で済む計算になる。

天下にとってこれほど素晴らしいことはない。


元々、最初は経済フォーラムに出席する為の出張だった。

クレア・モローと経済システムの復興案について対談して、マスコミの前で互いを大袈裟に讃え合う。

それで任務は完了する筈だったのだが、いつの間にかお互い軍服に身を包んで文字通り血槍を振るっていた。


その過程で結論が出てしまった。

最も効率の良い経済活性化とは征服戦争を仕掛けて他人の領土を奪うことである、と。

俺もクレアも口には出さないが、完全にそれを理解してしまった。

だって、【景気】って文字通り【気が大きくなる】ことだもの。

戦勝のニュースが連日舞い込めば、人々の意識は活性化して、それは嫌でも社会に反映される。

残念ながら、現にそうなっている。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



港から降りた俺が驚いたのは満面の笑みを浮かべた群衆に歓迎されたことである。

特に、オークチームが輸送船からトリケラトプスを降ろした瞬間に熱狂は最高潮に達した。

大き過ぎる群衆の歓呼の所為で口頭指示が行き渡らなかったので、ロベールに旗信号を出させる。

軍隊にとって上陸は神経を遣う作業なので集中させて欲しいのだが、一切それを気遣ってくれず老若男女が駆け付けて取り巻いていた。

手にはプラカード。

何やら文字が書いてある。

最初、意味不明だったのだが、しばらく見ているうちに気付く。

彼らは俺や四天王が接収した街の名前を羅列しているのだ。

摂政が制圧した軍都やノーラ隊が先日落城させた合衆国蜂起軍の城塞の名が大きく描かれている。

そしてひときわ大きい横断幕には…


【×ブルース公王 → ◎ポールソン公王陛下】


と狂信的な文字が躍っていた。



やはり彼らは本能で知っているのだ。

自分達の属する政府の支配地が広がれば、自分達にも何らかの形で経済的な恩恵が波及すると。

なるほど、戦争がなくならない訳である。


勘の良いスプ男は人間種の文字を知らないなりに、内容を感じ取ってしまったのだろう。

何も分からない素振りでトリケラトプスの轡を引いた。

それを見た若い青年が叫ぶ。



「公王様はオークも捕らえて来たぞッ!!」



その絶叫に周囲が唇を醜く歪めて笑いながら歓呼した。

反応に困ったのかスプ男が振り返ったので、俺は駱駝に乗る事を中断してオークチームと共にトリケラの手綱を引いて歩くことにした。

突然トリケラが大きな尻尾を振ったので、俺達の軍服には泥や糞尿が容赦なく降り注いだ。

5メートルも進まないうちに歓声は萎み、奇怪な物でも見るような目で群衆は俺を眺めていた。


きっと彼らが自己投影したかったのは鞍上で威張っている俺であって、糞尿塗れでロープと悪戦苦闘している俺ではないのだろう。

俺とスプ男がトリケラに段差を越えさせる為に身体に巻き付けたロープを引き始めた時には、群衆は一言も発さず、ただ真顔で俺達を凝視していた。


港には俺達の咆哮にも似た掛け声だけが響き渡っていた。

【異世界紳士録】



「ポール・ポールソン」


コリンズ王朝建国の元勲。

大公爵。

永劫砂漠0万石を所領とするポールソン大公国の国主。



「クレア・ヴォルコヴァ・ドライン」


四天王・世界銀行総裁。

ヴォルコフ家の家督継承者。

亡夫の仇である統一政府に財務長官として仕えている。



「ポーラ・ポールソン」


ポールソン大公国の大公妃(自称)。

古式に則り部族全体の妻となる事を宣言した。



「レニー・アリルヴァルギャ」


住所不定無職の放浪山民。

乱闘罪・傷害致死罪・威力業務妨害罪など複数の罪状で起訴され懲役25年の判決を受けた。

永劫砂漠に収監中。



「エミリー・ポー」


住所不定無職、ソドムタウンスラムの出身。

殺人罪で起訴されていたが、謎忖度でいつの間にか罪状が傷害致死にすり替わっていた。

永劫砂漠に自主移送(?)されて来た。



「カロッゾ・コリンズ」


四天王・軍務長官。

旧首長国・旧帝国平定の大功労者。



「ジミー・ブラウン」


ポールソン大公国宰相。

自由都市屈指のタフネゴシエーターとして知られ、魔王ダン主催の天下会議では永劫砂漠の不輸不入権を勝ち取った。



「テオドラ・フォン・ロブスキー」


ポルポル族初代酋長夫人。

帝国の名門貴族ロブスキー伯爵家(西アズレスク39万石)に長女として生まれる。

恵まれた幼少期を送るが、政争に敗れた父と共に自由都市に亡命した。



「ノーラ・ウェイン」


四天王・憲兵総監。

自由都市併合における多大な功績を称えられ四天王の座を与えられた。

先々月、レジスタンス狩りの功績を評されフライハイト66万石を加増された。



「ドナルド・キーン」


前四天王。

コリンズ王朝建国に多大な功績を挙げる。

大魔王の地球帰還を見届けた後に失踪。



「ハロルド・キーン」


帝国皇帝。

先帝アレクセイ戦没後に空位であった帝位を魔王ダンの推挙によって継承した。

自らを最終皇帝と位置づけ、帝国を共和制に移行させる事を公約としている。



「エルデフリダ・アチェコフ・チェルネンコ」


四天王筆頭・統一政府の相談役最高顧問。

前四天王ドナルド・キーンの配偶者にして現帝国皇帝ハロルド・キーンの生母。

表舞台に立つことは無いが革命後に発生した各地の紛争や虐殺事件の解決に大きく寄与しており、人類史上最も多くの人命を救済していることを統計官僚だけが把握している。



「リチャード・ムーア」


侍講・食糧安全会議アドバイザー。

御一新前のコリンズタウンでポール・ポールソンの異世界食材研究や召喚反対キャンペーンに協力していた。

ポールソンの愛人メアリの父親。



「ヴィクトリア・V・ディケンス」


神聖教団大主教代行・筆頭異端審問官。

幼少時に故郷が国境紛争の舞台となり、戦災孤児として神聖教団に保護された。

統一政府樹立にあたって大量に発生した刑死者遺族の処遇を巡って政府当局と対立するも、粘り強い協議によって人道支援プログラムを制定することに成功した。



「オーギュスティーヌ・ポールソン」


最後の首長国王・アンリ9世の異母妹。

経済学者として国際物流ルールの制定に大いに貢献した。

祖国滅亡後は地下に潜伏し姉妹の仇を狙っている。



「ナナリー・ストラウド」


魔王ダンの乳母衆の1人。

実弟のニック・ストラウドはポールソン大公国にて旗奉行を務めている。

娘のキキに尚侍の官職が与えられるなど破格の厚遇を受けている。



「ソーニャ・レジエフ・リコヴァ・チェルネンコ」


帝国軍第四軍団長。

帝国皇帝家であるチェルネンコ家リコヴァ流の嫡女として生を受ける。

政争に敗れた父・オレグと共に自由都市に亡命、短期間ながら市民生活を送った。

御一新後、オレグが粛清されるも統一政府中枢との面識もあり連座を免れた。

リコヴァ遺臣団の保護と引き換えに第四軍団長に就任した。



「アレクセイ・チェルネンコ(故人)」


チェルネンコ朝の実質的な最終皇帝。

母親の身分が非常に低かったことから、即位直前まで一介の尉官として各地を転戦していた。

アチェコフ・リコヴァ間の相互牽制の賜物として中継ぎ即位する。

支持基盤を持たないことから宮廷内の統制に苦しみ続けるが、戦争家としては極めて優秀であり指揮を執った全ての戦場において完全勝利を成し遂げた。

御一新の直前、内乱鎮圧中に戦死したとされるが、その詳細は統一政府によって厳重に秘匿されている。



「卜部・アルフォンス・優紀」


御菓子司。

大魔王と共に異世界に召喚された地球人。

召喚に際し、超々広範囲細菌攻撃スキルである【連鎖】を入手するが、暴発への危惧から自ら削除を申請し認められる。

王都の製菓企業アルフォンス雑貨店に入り婿することで王国戸籍を取得した。

カロッゾ・コリンズの推挙により文化庁に嘱託入庁、旧王国の宮廷料理を記録し保存する使命を授けられている。



「ケイン・D・グランツ」


四天王カイン・D・グランツの長男。

父親の逐電が準叛逆行為と見做された為、政治犯子弟専用のゲルに収容されていた。

リベラル傾向の強いグランツ家の家風に反して、政治姿勢は強固な王党派。



「ジム・チャップマン」


候王。

領土返納後はコリンズタウンに移住、下士官時代に発案した移動式養鶏舎の普及に尽力する。

次男ビルが従軍を強く希望した為、摂政裁決でポールソン公国への仕官が許された。



「ビル・チャップマン」


准尉→少尉。

魔王軍侵攻までは父ジムの麾下でハノーバー伯爵領の制圧作戦に従事していた。

現在はポールソン大公国軍で伝令将校として勤務している。



「ケネス・グリーブ(故人)」


元王国軍中佐。

前線攪乱を主任務とする特殊部隊《戦術急襲連隊》にて隊長職を務めていた。

コリンズ朝の建国に多大な貢献をするも、コリンズ母娘の和解に奔走し続けたことが災いし切腹に処された。



「偽グランツ/偽ィオッゴ/ゲコ」


正体不明の道化(厳密には性犯罪者)

大魔王と共に異世界に召喚された地球人。

剽窃(パクり)】なる変身能力を駆使して単身魔王軍の陣中に潜入し、摂政コレット・コリンズとの和平交渉を敢行。

王国内での戦闘不拡大と民間人保護を勝ち取った。

魔界のゴブリン種ンゲッコの猶子となった。



「ンキゥル・マキンバ」


公爵(王国における爵位は伯爵)。

元は遊牧民居留地の住民として部族の雑用に携わっていたが、命を救われた縁からコリンズ家に臣従。

王国内で一貫して統一政府への服従を呼びかけ続けた為、周辺諸侯から攻撃を受けるも粘り強く耐え抜いた。

御一新前からの忠勤を評価され、旧連邦アウグスブルグ領を与えられた。



「ヴィルヘルミナ・ケスラー」


摂政親衛隊中尉。

連邦の娼館で娼婦の子として生まれ、幼少の頃から客を取らされて育った。

コリンズ家の進軍に感銘を受け、楼主一家を惨殺して合流、以降は各地を転戦する。

蟄居処分中のケネス・グリーブを危険視し主君を説得、処罰を切腹に切り替えさせ介錯までを務めた。



「ベルガン・スプ男・ゴドイ」


魔界のオーク種。

父親が魔王城の修繕業に携わっていたので、惰性で魔王城付近に住み付いている。

大魔王コリンズの恩寵の儀を補助したことで魔界における有名人となった。

その為、異性に全く縁が無かったのだが相当モテるようになった。

以上の経緯から熱狂的なコリンズ王朝の支持者である。



「ヴォッヴォヴィ0912・オヴォ―」


魔界のリザード種。

陸上のみ生活しているという、種族の中では少数派。

その生活スタイルから他の魔族との会合に種族を代表して出席する機会が多い。

大した人物ではないのだが陸上リザードの中では一番の年長者なので、リザード種全体の代表のような扱いを受ける事が多い。

本人は忘れているが連邦港湾において大魔王コリンズの拉致を発案したのが彼である。



「レ・ガン」


元四天王。

魔王ギーガーの母(厳密には縁戚)

ギーガーの魔王就任に伴いソドムタウンにおける魔王権力の代行者となった。

在任時は対魔族感情の緩和と情報収集に尽力、魔王ギーガーの自由都市来訪を実現した。



「ジェームス・ギャロ」


ギャロ領領主。

現在行方不明中のエドワード王の叔父にあたる人物。

早くからエドワードと距離を置き、実質的な国内鎖国を行っていた。

能書家・雄弁家として知られる。



「ジョン・ブルース」


公王。

王国の有力貴族であったブルース公爵家が主家に独立戦争を挑み誕生したのが公国であり、ジョンは6代目にあたる。

武勇の誉れ高く王国・魔界に対して激しい攻撃を行う反面、綿密な婚姻政策で周辺の王国諸侯を切り崩していた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



異世界事情については別巻にて。

https://ncode.syosetu.com/n1559ik/

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― 新着の感想 ―
> それだけに、同時代に生まれてしまった事を残念に感じております。」 両雄並び立たず的な感じの宣戦布告なんだろうか?
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